核情報

2012.10.11〜 

使用済み燃料の乾式貯蔵への移行を訴える原子力規制委員会委員長
─再処理政策への影響は?

原子力規制委員会の田中俊一委員長が、記者会見やインタビューで繰り返し、使用済み燃料のプール貯蔵の危険性を指摘し、空気冷却の乾式貯蔵への移行を呼びかけています。これは、安全性の観点からのものですが、再処理にも影響を与えうる話です。各地の原発の貯蔵プールが満杯になっているから、再処理工場に送るしかないとの議論がされてきているからです。

下に、原子力規制委員会記者会見の速記録から乾式貯蔵部分を抜粋して載せておきます。

参考




●2012年9月19日 速記録【PDF:320KB】

○朝日新聞 高橋記者

Q 核燃サイクルの政策問題は、これは、皆さんのマターではなくて政府がやることだということは承知しているのですが、現状、各サイトに使用済み燃料があり、それがプールに保管されていると。

今回、福島の事故を通じて、場合によっては炉以上に燃料プールというものが非常に脆弱で、これは、国際問題にもなりかけたと、アメリカなどは、非常にこのセキュリティーに対して憂慮を表明されているわけですけれども、今後、オンサイトもしくは周辺地域の防災対策も含めて、先ほどから更田さんたちがおっしゃっている原発の安全性もしくは最小の危険度を判断する時に、この使用済み燃料の保管というものは、現実にどこかへ移すためには、その場所を設ければいけないので、ここは政府が決めることだと思うのですが、保管状況もしくはほかに移す場所がないとしても、プールが満杯になっていて、そのプールの脆弱性が改善されていないというような場合には、やはり、それは、再稼働はできないという判断に結びつくのかどうか、確認をさせてください。

○田中委員長 具体的な例でお話ししたほうがいいのかもしれないのですが、福島の1号機から3号機まで 3,000 体くらいの使用済み燃料があります。それについては、できるだけ早く地上に下ろしていただきたいと、先日もそういう観点で視察をさせていただきました。いろいろお話を聞いてみますと、地上の共用プールの中に、一応容量的には 6,000 体くらい入れられると、ただし、古い燃料体が入っているので、それを少しどかさなければいけないということです。そのどかし方については、実は、同時に視察させていただいたのですが、乾式の容器に入れてありまして、それは、今回、建物自体が全部津波をかぶったのですが、容器自体と燃料はほぼ、これから詳細な検査はしますけれども、少なくとも健全だったと言われていますので、少々転んでも大丈夫なような安全な形で、強制冷却が必要でないような燃料については乾式容器に入れて保管すると。それを管理していく。とりあえず、多分、5年くらいは水冷却をする必要がありますので、そういったものは、できるだけ早く地上に下ろすということをしていただきたい。ほかのサイトについて、そういうことをするように求めていきたいと思います。おっしゃるとおり、今回明らかになった大きな教訓はそこにあると思っています。

●2012年10月3日 速記録【PDF:271KB】

○記者 福島民友新聞社のカンノと申します。・・・それでは、あと関連して、特定原子力施設の件なのですけれども、福島県民の不安を解消するためということで、特別なケアが必要だということの委員長のお話を伺いましたけれども、委員長は地元で多分お聞きになっていると思うのですけれども、現在の第一原発に対する根強い不安の1つが、第一原発4号機のプールの問題を言う人が県民の方は多いです。いわゆる水素爆発で建屋がかなり壊れて、その上に燃料が詰まったプールがあるということで、そこに対する不安がぬぐえません。それに対して、今度規制委員会としていわゆる措置を講ずべき事項ということで、多分いろいろ指示を出されると思うのですけれども、いわゆるプールとか建屋の耐震の問題についても範囲に入るのでしょうか。

○田中委員長 入ります。それで、先日15日に行ったときに、4号機だけではなくて、今、1〜3はなかなか手がつけられない状況ですけれども、できるだけ早急に建屋の上にある燃料は地上におろしてくださいということをお願いしました。

今、東電からの説明ですと、地上に集中の燃料プールがあって、今、6,000体ぐらい入れられる容量があって、ただし、いっぱいなのです。ですから、古い燃料については、今、乾式容器、これは今回も一部福島1号機で乾式容器に入っていて、そこは屋根まで水につかったけれども、容器自体は全く問題なかったわけですが、私もそれに入れるのが一番安全だと思いますので、そちらのほうに移して、プールの少し余裕をつくって、1〜4号機の燃料は全部そこに、まず下におろしていただくようにお願いしています。

ただし、それをやるにしても、途中いろいろな作業を行います。今回も3号機でプールの上のがれきを片づけようと思って、鉄骨が落っこちてしまったわけですから、そういうこともありますので、ここに細かく安全確保については見ていくということをしていきたいと思っています。それでできるだけ速やかにやることによって、県民の不安をなくしていきたい。それは県民だけでなくてみんながそう思っているところがありますので、そういう方向で進めたいと思っています。

●2012年10月10日 速記録【PDF:488KB】

○記者 朝日新聞の西川です。

使用済核燃料の貯蔵についてお聞きしたいのですけれども、たしか発足の時の会見で、使用済核燃料はプールではなくて乾式で貯蔵するべきだというお話があったと思うのですが、これについて今後、福島第一については、なるべくプールから下に早く下ろしてもらうという話がありましたが、ほかの原発についてはどういうふうにしていくべきか。何らかの指示を出すとか、そういうお考えはありますでしょうか。

○田中委員長 指示という形になるかどうかはわかりませんけれども、要するに核セキュリティーとか今回の事故を踏まえると、原子炉の上の方に使用済燃料をたくさん貯蔵しておくというのはよくないということは明らかですから、今後そういう核セキュリティーの問題とか何かを私どもが議論をしていく中で、下にできるだけ速やかに下ろすということは各発電所共通です。

それから、下ろしても一定期間、10 年ぐらいとか、冷却しないとプールから上げられないので、そのぐらい済んだ使用済燃料というのは、できるだけ乾式タイプの容器に入れておけば、今回も福島第一にも乾式容器に入れた使用済燃料があったわけですけれども、あそこは海岸、この前も見せていただいたのですが、天井まで水がかぶったような状態の中に置かれていたけれども、それ自体は特に問題はなかったという状況ですから、私はどう考えても、乾式タイプの容器に入れるのがより安全だろうと思いますので、できるだけ速やかにそういう方向でやっていただくようにお願いしたいとは思っています。

それは規制委員会の命令とか指示とかということになるかどうかは、もう少し検討しないとわからないですね。

○記者 できるだけ速やかにと言っても、なかなかすぐにそういう施設が、下の方にプールがあるかとか、乾式の設備があるかというのは、すぐにできるかという問題があると思いますけれども、どれぐらいのスケジュール感、タイムスパンを考えて、できるだけ速やかにとおっしゃっているのでしょうか。

○田中委員長 難しいですね。それは下に貯蔵プールをつくるといっても、場所があるかとか、地元の了解も得なければいけないとか、そういう問題がありますし、今、むつ市の方では、いわゆる 5,000 トン分の中間貯蔵施設をつくっていますけれども、できればそういうふうなものが地元の了解を得てつくれるようにした方が、地元の方から見てもより安全な方向に行きますので、そういう意味では私はそういうふうに申し上げたいとは思います。それでつくれるかどうかは、事業者と地元の関係ということになってくるのだと思います。

○記者 では、必ずしもサイト内でということでもない。そういうむつ市のような中間貯蔵のような施設でも。

○田中委員長 それはどんな方法でも、もちろん場所を選びますけれども、それでもいいと思います。

・・・

○記者 新潟日報の前田と申します。

先程のお話がありました使用済燃料を乾式容器に入れることが望ましいという話なのですが、地元自治体にしてみると、サイト内に乾式容器に入れておかれると、そのままなし崩し的に最終処分場のような形になってしまうのではないかという懸念があるのですが、地元に対してはそういうことにはならないというような説明を規制委員会として、していったりとか、もしくは中間貯蔵の処分場を新たにつくるということであれば、政府の方に至急そういうものをつくるように求めるとか、そういったことは発信していくお考えはありますでしょうか。

○田中委員長 政策的なところの発信はしないですけれども、より安全な提案はしていきたいと思います。そういう意味での乾式貯蔵です。これはまだ私個人の考えですから、委員会として決めたわけではないので、今後議論をしなければいけないのですが。

○記者 より安全なものを進めるためには、先程委員長もおっしゃったように、地元の理解がかなり重要になってくると思うのですが、やはり地元の理解が今、得られる状況ではないと思いますけれども、その辺は規制委員会として、その安全性について必要なのだと説明していくことはあるのでしょうか。

○田中委員長 プールに長く置くよりは、乾式容器に入れた方がはるかに安全ですよという、そういった安全評価については御説明をしたいと思いますが、そのまま残ってしまうのではないかとか、そういうことについては安全委員会というか、規制委員会の仕事ではないので、それはまた別だと思います。

●2012年11月21日 速記録【PDF:267KB】

○記者 エネルギーと環境のシミズです。

ちょっとテーマが別になるかもしれませんけれども、原子力規制委員会のミッションに関わるのかどうか、ちょっとその辺もはっきりしないのですが、要するにプルトニウムの国際的な余剰というのは、日本は指摘されているわけですね。原子力委員会が今後どうするかというのは、今、検討中のようですけれども、プルトニウムの管理というか、余剰問題、そして、もう一つ安全性の面から非常に大きな問題だと思うのは、使用済燃料が各サイトにたまっている実態、キャパシティがもう一杯、一杯になっているようなところもある。こういった問題について規制委員会としては、どこまでの役割を果たすということになっているのでしょうか。あるいはお考えがありましたら、お聞かせください。

○田中委員長 今の御指摘は、原子力全体の問題としてとても大事な御指摘だと思うのです。ただ、規制委員会の1つのあれとしては、使用済燃料については、私個人の考えとしてですけれども、できるだけ乾式貯蔵容器等に入れて、その方が安全だから、そういうふうにもっていってくださいということをお願いしているところです。

最終的にどうするかという話は、これは私どもの仕事ではないと思っています。最終的にどうするかという時の安全評価は私たちの仕事ですけれども、どういうふうなことをするかというのは政策の問題で、ちょっと私どものあれではない。

余剰プルトニウムの問題をどう考えるかというのは、これは非常に微妙な問題ですね。ただ、核セキュリティーの問題とか、保障措置というものの中心課題はプルトニウム問題ですので、それが規制委員会の方の1つの仕事になります。

これは、政策とか政治、国際政治との関係もありますので、一概にうちでやりますとか、そっちでやりますと言えないところがあるので、多分、ここについては関係するところが協議していく必要があるのだと思います。

その中で、例えば核セキュリティーの問題については、きちんと安全を担保できるようにしていくと、そういう義務はあるのかなと思っています。


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