核情報

2017. 7. 5

核兵器90発分以上のプルトニウムを乗せた船、日本へ
関西電力高浜4号用MOX燃料、欧州出発

パシフィック・イグレット

2016年3月21日 東海港に入港するパシフィック・イグレット、左は護衛につく海上保安庁の「しきしま」

英国のセラフィールド核施設の監視を続ける地元団体「放射能の環境に反対するカンブリア人(CORE)」のプレスリリース"Nuclear gunships sail from Barrow on plutonium voyage to Japan"によると、7月2日、核物質輸送船のパシフィック・ヘロン号とパシフィック・イグレット号が施設近くのバロー・イン・ファーネス港を出発してフランスのシェルブール港に向かったとのことです。シェルブール港で関西電力高浜4号機用のウラン・プルトニウム「混合酸化物(MOX)」燃料集合体16体(プルトニウム736㎏)を載せて日本に向かいます。一発当たり8㎏という「国際原子力機関(IAEA)」の計算方法によれば90発分以上になります。この機会に核データ日本のプルトニウム保有量にあるMOX 燃料輸送・装荷・保管まとめを更新しました。

参考:

関電プレスリリース


民間核保安隊(CNC)を載せたこれら2隻の武装輸送船は、相互に護衛し合いながら日本に向かいます。COREによると2隻は、7月5日にもMOX燃料を積み込む予定で、8月中旬から9月初旬頃日本到着とのことです。

この2隻は幽霊船2隻パナマ運河を通過──東海村331kgのプルトニウム回収隠密行動と増産計画でも登場しました。

COREのマーティン・フォーウッド代表は、武装のレベルがプルトニウム輸送の持つ危険性を如実に示しているとして、このような輸送の継続に警鐘を鳴らしています。

なお、プルトニウムの量については、電力会社が核分裂性(Pu239及びPu241)のみを示すことが多いので注意が必要です。例えば、福井新聞は、2016年5月17日の記事「高浜4号MOX燃料、製造開始へ--関電発表、フランスで年内に」で、「仏国内の5・6トンの中から、16体で480キロを利用する」と報じていました。これはどちらも核分裂性プルトニウムの量を示したもので、「全量」だと16体で736kgとなります。国際原子力機関(IAEA)が原子炉から出てくるプルトニウムと核拡散の関連について議論する際に用いるのは全量の方です。先に挙げた1発当たり8㎏という数字も組成を問わない全量の数字です。

電気事業連合会の資料「電気事業者におけるプルトニウム利用計画等の状況について」 (2016年3月29日, pdf)にある次の表でも核分裂性の量だけが示されています。

各社のプルトニウム所有量 (2015年12月末時点)
(核分裂性プルトニウム、kg)
所有者国内所有量海外所有量合計
JAEA
※1
日本原燃
※2
発電所
※3
小計仏国
※5
英国小計
北海道電力595966※666125
東北電力116475206159364439
東京電力1356201388932,073※4,65,9768,0498,942
中部電力811501453761,522※47452,2672,643
北陸電力77909097
関西電力1834546951,3325,573※42,3627,9359,267
中国電力206989423355777867
四国電力63109136308326666981,007
九州電力76261516854731,0301,1031,957
日本原子力発電1011162174842,7393,2233,440
(電源開発)※5        
合計6711,9101,6304,21110,54214,03224,57428,784
※ 端数処理(小数点第一位四捨五入)の関係で、合計があわない箇所がある。また、「─」は核分裂性プルトニウムを所有していないことを示す。
※1 日本原子力研究開発機構(JAEA)にて既に研究開発の用に供したものは除く。
※2 各電気事業者に引渡し済の核分裂性プルトニウム量を記載している。
※3 MOX燃料が原子炉に装荷され、原子炉での照射が開始されると、相当量が所有量から減じられる。
※4 MOX燃料に加工されたもの、加工中のもの、または加工準備中のものを含む。
※5 仏国回収分の核分裂性プルトニウムの一部が電気事業者より電源開発に譲渡される予定。(東北電力 約0.1トン、東京電力 約0.7トン、中部電力 約0.1トン、北陸電力 約0.1トン、 中国電力 約0.2トン、四国電力 約0.0トン、九州電力 約0.1トンの合計約1.3トン)
※6 東京電力が仏国に保有している核分裂性プルトニウムの一部(約40kg)が北海道電力に譲渡される予定。

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