核情報

2019.12.29

米大統領選挙と核の脅威の削減
候補者に核政策表明を求める運動

来年の大統領選挙候補者らに核の脅威削減に向けた政策を明示するよう求める公開書簡が12月5日、ニューハンプシャー州の6紙に全面広告の形で掲載されました。書簡の掲載を企画したのは「憂慮する科学者同盟(UCS)」です。同州では、大統領選挙の民主・共和両党の候補者を選ぶ「予備選挙」が来年の2月11日に全国に先駆けて実施されます。

厳密には、候補者選びの第一回目は、2月3日のアイオワ州でのものですが、こちらは「党員集会」の形をとるため、「予備選挙」はニューハンプシャー州から始まるとみなされていて、その結果は選挙戦において重要な意味を持ちます。書簡には、州内の市議会議員、教授、教師、医師、活動家など30人が署名しました。UCSは、12月12日、各大統領候補者のニューハンプシャー州事務所に同書簡をメールで送りました。メールには、新聞掲載以降に集まったものも含め、計340人分の署名と説明文が添えられています。

選挙を活用して関心を高め、選挙に影響を与える

UCSは、このキャンペーンの意義を次のように説明しています。

次期大統領は、核の瀬戸際から引き返すために行動するのかどうか。これは、私たちの安全保障、私たちの家族、愛する人々の安全に関するものであり、これ以上重要なことはない。大統領候補が核の脅威を減らすための対策を提示することを私たちは必要としているが、有権者に関心がないと思えば、候補らはこの問題を取り上げないだろう。

そして、この考えに基づき、2019年3月から10月にかけて5つの州で世論調査を実施しました。質問項目には次の考えに賛同するかどうかというものが含まれていました。

  1. 米国は決して核兵器を先に使ってはならない。
  2. 大統領候補が核問題についての考えを表明することが重要だ。

各州でこれらに賛同した回答者の割合は次の通りです。ニューハンプシャー州(73%、84%)、アイオワ州(57%、82%)、ミシガン州(67%、82%)、オハイオ州(65%、84%)、ジョージア州(61%、86%)。

公開書簡は、ニューハンプシャー州での調査結果への言及から始まります。このような関心の高い問題だから、態度を明らかにせよと候補らに迫っています。

UCSは、州内での核問題についての関心を高めるために、新聞での論説記事や投書の掲載にも取り組んできています。また、政治問題に関する情報源として定評のある「ニューハンプシャー州公共放送」の番組の合間にUCSの名前が流れるようにするために資金を投入しています。番組のスポンサー団体としてUCSの名前が挙げられた後、「核兵器のリスクを減らすためにニューハンプシャー州と全国で活動している団体です。詳しくはhttps://www.ucsusa.org/nuclear-weapons をご覧ください」という「宣伝」が続きます。

さらに、予備選挙の「選挙戦」に合わせて来年1月にニューハンプシャー州で開かれる大学生大会にも代表を送りこむ計画を立てています。大会は、同地を訪れる選挙スタッフやマスコミ関係者などの話を聞く機会を学生に与えるものですが、UCSとしてワークショップを開いて学生の関心を高めようというわけです。

大統領選挙を活用して、核問題についての関心を高め、同時に、選挙に影響を与えようという戦略。日本とは制度が異なりますが、日本の反核運動にとっても参考になる動きです。日本政府は、核を先には使わないとの「先制不使用(ノー・ファースト・ユース)」策を米国がとることに反対しています。

大統領選挙立候補者へ

核兵器に関する
あなたの立場は?

最近のニューハンプシャー大学の世論調査によると、州内の成人の80%以上が、支持政党に関わりなく、2020年の大統領選挙候補が核兵器についての見解を論じることが非常に、または、いささか重要だと考えている。


下に署名した私たちは、これに同意し、2020年大統領選挙の候補に対し、核兵器のリスクの削減を最重要課題とし、そのための計画を明らかにするよう要請する。


今日、地球上に約9000発の核兵器が残っており、その90%以上を米ロが保有している。これらの兵器のほとんどは、第二次世界大戦の終わりに米国が日本に投下し、数十万人を殺傷した原爆よりずっと大きな威力を持っている。核兵器の使用は、それが世界にどこにおけるものであれ、人道・環境・経済の面で壊滅的被害をもたらし、地球上のすべての人々に影響を及ぼしうる。



現在:

  • 米国は、核戦争を始めるオプションを維持している。
  • 米国の大統領は、これまでの大統領と同じく、米国の核兵器を使う唯一の権限を持っている。
  • 米国は、何百発もの核兵器を一触即発の警戒状態に置いていて、攻撃を受けているとの誤警報に反応して間違って発射してしまうリスクが高まっている。

これらの方針は、冷戦時代からの残滓であり、米国民の安全を必要以上に低めるものである。候補者らは、国民に対し、これらの危険性を減らすために米国の政策をどう変えていくのかについて明らかにすべきである。

さらに、米国は、複数の軍備管理の取り決めから脱退しており、もう一つの取り決めからの脱退の下準備をしている可能性がある。そして、向こう数十年で1兆ドルをかけて保有核兵器すべてを改良型にすることを計画している。これらは、間違った方向へ向けた措置である。



人類は、その存続を脅かす脅威に直面している──気候変動と核戦争である。今こそ、大胆な行動と米国の指導力発揮の時である。解決を将来の世代に委ねることはできない。

私たちの子供や孫は、あなたに期待している。




ニューハンプシャー州6紙掲載の全面広告

参考 核情報掲載記事から


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