核情報

2024.06.30

日本、「プルトニウム保有量削減」の約束反故に?

経産省:「一時的に微増することも」

6月5日、経産省資源エネルギー庁担当者は、市民グループ主催の会合での質問に対し、「日本のプルトニウムの保有量は一時的に微増することもあり得る…ただし、将来的には減少する見通しが示されることが重要」との見解を示しました。質問内容は要約すると次の通りです。

使用済燃料再処理・廃炉推進機構が4月1日に発表した計画では、「プルサーマルの実施を見込んでもプルトニウム保有量は3年間で 1.3 トン増えることになる」のでは? 2018年7月のエネルギー基本計画や同月の原子力委員会の決定にあるプルトニウム削減方針に従えば、「プルトニウムが増える再処理は実施できないのではないか。」

日本は、2018年「エネルギー基本計画」(7月3日閣議決定)で「プルトニウム保有量の削減に取り組む」と宣言しています。また、原子力委員会は、同月末に発表した「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」(7月31日決定)において、「プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は…現在の水準を超えることはない」と約束し、その約束実現のために「プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う」と述べています。

もくじ

明確でないエネ庁の主張

もし、エネ庁担当者が言いたかったのが、プルトニウム保有量は2018年での「水準」を超えることはどの時点においても決してないが、保有量の下降過程の中で「一時的に微増することも」あり得るということだったとすると、2018年の約束と論理的整合性が保たれていると言い得ます。

問題は、エネ庁担当者の発言の趣旨が明確ではなく、「一時的」、「微増」、「将来的に(長期的に)」が何を意味するかが明らかにされていないことです。これらの用語の定義によっては、2018年の日本政府の国際的約束を反故にするものとなってしまいます。また、「理論的」には論理的整合性が保たれていると言い得ても、これまで同様の用語を使った政府関係者の発言を振り返ってみると、「結果的には約束を反故にするものとなるのでは?」との懸念が生じます。

例えば、2016年の原子力規制委員会臨時会議で、「利用目的のないプルトニウム」についての判断基準を問われた日本原燃は、安全規制上、六ヶ所工場の正常在庫(ラニングストック)が30トンとなっていると答えています。これに従うと、微増どころではない増大が許容されることになります。以下、エネ庁担当者の発言、原子力委の「認識」などについて見た後、これらの過去の発言について、確認してみましょう。

参考
2024年9月までに六ヶ所再処理工場が完成し、翌年度再処理開始?だが、国際公約で需要に合わせて運転するからプルトニウム保有量は増えない?核情報 2023.10.16~

エネ庁代表の発言と、そこで言及されている原子力委員会の認識

2024年6月5日エネ庁担当者の発言

6月5日の市民グループ主催の会合「核のゴミ捨て場」にしてよいのか-むつ中間貯蔵施設への搬入中止を求める集会&政府交渉でのエネ庁担当者の発言の中核部分は、次の通りです。

「単年度では一時的にはプルトニウム保有量が増加するということはあり得ることでして、今年原子力委員会からも我国の全体としてのプルトニウムの保有量が 一時的に微増することもあり得るとの認識が示されているものと承知しております。ただしその上でプルトニウムの保有量については将来的には減少する見通しが示されることが重要です」

この発言は、市民グループの質問が指摘している「3年間で1.3トン増える」という問題について、答えたものです。

エネ庁担当者のいう「今年」の原子力委員会の認識とは?

原子力委員会の最近の「認識」は、二つの文書で示されています。

原子力委は、まず、電気事業連合会の[「プルトニウム利用計画」(2024年2月16日)]が発表された後、「電気事業者等から公表されたプルトニウム利用計画について(見解)2024年2月27日」を公表します(関連部分抜粋は資料編参照)。そして、使用済燃料再処理・廃炉推進機構が「使用済燃料再処理等実施中期計画(2024年4月1日)」を発表するのに先立ち、経済産業省から同「計画(案)」について意見を求められた(2024年3月6日)(pdf)原子力委は、次の文書で回答しています。「使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更について」(2024年3月21日)。

エネ庁担当者が言及・引用しているのは、この「回答」の方です。「回答」は、下に示した抜粋にあるように、今後の状況は読めないから、ひとまず、計画を認めるが、関係事業者は原子力委の2018年の約束を念頭に再処理施設等を適切に運転し、見直しが必要になったら適宜・適切に対処せよと、関係事業者らに下駄を預けています。

ただし、2027 年度以降の MOX 燃料加工施設の稼働状況やプルサーマル炉での消費状況については不確定要素を含むものであり、今後の進捗状況によっては変わり得るものである。このため、今般示された実施中期計画のように、再処理から MOX 燃料集合体への加工、プルサーマル炉での照射までに要する期間を考慮すると、六ヶ所再処理施設及びMOX 燃料加工施設の稼働初期においては、我が国全体としてのプルトニウム保有量が 一時的に微増することもあり得ると、原子力委員会としても認識している。その上で、将来的には同保有量が減少する見通しが示されることが重要である。

そして次のように、「機構をはじめとする関係事業者」らに指示しています。

①…国内施設で回収するプルトニウムの確実な利用とプルトニウムの需給バランスを踏まえた再処理施設等の適切な運転の実現に向けて最大限の努力を行うこと。
② 今後、具体的な取組の進捗に応じて、実施中期計画の見直しが必要になった場合には、適宜・適切に行うこと。

市民グループの言う「1.3トン増える」とは?

「機構」の計画案が公表される前に電気事業連合会が 2024年2月16日に発表した利用計画 が、日本の保有するプルトニウムが「3年間で1.3トン増える」状況を示しています。この状況を整理したのが下の表です。電事連の2月発表の計画と、それについての原子力委の見解、そして、機構の計画案を合わせて纏めています。前提になっているのは、2024年上期に六ヶ所再処理工場が完成し、翌年度からプルトニウムの分離を段階的に進めるというものです。

電気事業連合会発表 プルトニウム利用計画(2024年 2月16日)のまとめ

2024年度 2025年度 2026年度 26年度までの合計 2027年度 2028年度 24年度から28年度までの合計
利用量(トンPut) 0 0 0.7 0.7 2.1 1.4 4.2
再処理による回収見込みプルトニウム量(トンPut) 0 0.6 1.4 2 0.6 2.3 4.9
増加量(回収量ー利用量) 1.3 0.7
[電力会社]所有量合計値(トンPut) 40.1 40.7 41.4 増加量:41.4-40.1=1.3
JAEAも含めた日本のプルトニウム保有量 44.5 45.1 45.8 増加量:45.8-44.5=1.3

出典:電事連プルトニウム利用計画(2024年2月16日)黄色の部分は電事連の表及び使用済燃料再処理・廃炉推進機構の使用済燃料再処理等実施中期計画(2024年4月1日)(pdf)の表の下に参考として示されているデータ。「JAEAも含めた日本のプルトニウム保有量」は原子力委員会の電気事業者等から公表されたプルトニウム利用計画について(見解)(2024年2月27日)(pdf)から。

「1.3トン増える」問題についての原子力委見解は?

資料編にある「電気事業者等から公表されたプルトニウム利用計画について(見解:2024年2月27日)」(PDF:277KB)抜粋を見ればわかる通り、こちらが「機構」の計画案に対する原子力委見解の基になっています。「一時的にプルトニウム保有量が微増するが…将来的に同保有量が減少する見通しが示されることが重要」。「現時点で、令和9年度以降のプルサーマル炉での消費状況を前提に、令和7年度及び令和8年度の『利用計画』の内容を検証し、妥当性を評価することは、不確定要素が多く困難」なので、これをしないとし、後は、「事業者をはじめとする関係者」に対し、「プルトニウムの需給バランスを踏まえた再処理施設等の適切な運転の実現に向けて最大限の努力を」することと、「プルトニウム保有量を減少させる」ための取組を求めて、下駄を預ける構図の原型がここにあります。

なお、見解のタイトルに「電気事業者等」とあるのは、「日本原子力研究開発機構(JAEA)」の利用計画も合わせて検討しているからです。

原子力委が下駄を預けるのをやめ、行動するのは、どの時点?

原子力委の見解、「回答」を見ると色々、疑問が湧いてきます。

どんな状況になったら、これ以上の再処理はだめとだれがどんな形で命じるのか。
そもそも、「現在の水準」とは具体的にどの数字を指すのか。
2017年末の量(45.147トン)か、2018年の原子力委決定「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」発表時の量(46.624トン)か? あるいは別の数字か?
そして、その数値より1㎏でも増える可能性が予測された時点で、その時点での再処理計画の見直しを命じ、増加を防ぐというのが日本の国際的公約か。

このような疑問についての議論を国会で行う必要があります。

この問題について考えるとき、下に例示したような政府機関関係者による同様の用語に関連した発言の歴史を見ると、約束が反故にされることになるのではとの懸念が高まってきます。

「約束を反故にするのでは?」との懸念を高める政府関係者の過去の発言

懸念を持たざるを得なくなる発言の例には、次のようなものがあります。
1)原子力委員会 「長期的」について検討していなかったとの企画官発言や、再処理を止める気のない岡委員長(当時)の説明など
2)原子力規制委員会 六ヶ所再処理工場の適切な在庫は30トン
3)資源エネ庁 余剰プルトニウムは量的概念ではない。利用計画がある限り、余剰プルトニウムではない。
以下、一つずつ見て行きましょう。

2017年10月3日原子力委員会 「長期的とは?」「まあ、あの、そこまではまだ検討はしていない」

この日、「日本のプルトニウム利用について【解説】」の「案」にある次の部分について展開された質疑が興味深い。

六ヶ所再処理工場操業開始までに電気事業者が、「最新の実績を踏まえた新たなプルトニウム利用計画を公表し、国(原子力委員会)がその妥当性を確認……以上のことから……長期的に、日本のプルトニウム保有量の削減という目標が達成されるであろうと認識している」

下に引用するのは、「長期的に」とはどのぐらいの期間?と問う委員長代理と、それに答えた原子力委事務局企画官のやり取り。

阿部信泰委員長代理

ここは非常に重要な文章で、原子力委員会としては減っていくと、こういう認識であると、こういうことですね。川渕さん、この長期的にって、どのぐらいの期間を考えられておられるんですか?

原子力委事務局川渕英雄企画官

「えーっと、まあ非常に難しいところでありますけれども(笑い)、あの、えー、まあ、あの、そこまではまだ検討はしていないということ。」

*詳細は以下を参照:2024年9月までに六ヶ所再処理工場が完成し、翌年度再処理開始? 核情報, 年表式まとめ(詳細編)

2018年1月16日原子力委 前年に笑いでごまかした「長期的には」の再登場

2018年1月16日、2003年の委員会決定「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」を改定して、2018年版「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」を作成することを決めた際の資料「日本のプルトニウム利用の現状と課題」(pdf)に次のようにある。

日本のプルトニウムはこれら[再処理工場及びMOX燃料加工工場]の稼働当初は多少の増減はあるが、「長期的には、日本のプルトニウム保有量を削減するという目標を達成する」ことが必要

*前年10月3日に原子力委事務局企画官が笑いでごまかした文言が似たような形で登場した格好。前年の阿部信泰委員長代理の 「長期的にって、どのぐらいの期間?」 という問いに対する答えはないままだ。

2018年7月31日 原子力委委員長 責任問題が生じるから「止めろ」とは言いたくないと解説

2018年「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」(7月31日決定)発表の後、同日に開かれた記者会見における岡芳明原子力委委員長の発言は、原子力委としては再処理の延期・中止などの決定・命令などに関わりたくないとの考えを示している。以下は、記者会見でのやり取りの抜粋だ(新聞記事から)。

ー削減の時期や目標の数値設定をしなかった理由は?

具体的なことをわれわれが申し上げるのは適切ではない地元との関係もあるし、(再処理を委託した)海外との契約もある」

ープルトニウムの保有量を単純に減少させるなら、再処理工場は動かさずに海外分の削減に努めればいい。再処理工場の稼働にこだわる理由は

再処理工場は既に作られているし、民間事業だ。 国が『止めろ』と言えば国に賠償責任が発生するし、止めたら廃止措置も国の責任になる可能性がある。 今は民間事業者(日本原燃)が動かそうとしているから、それをしっかりやっていただくのが先だと思う。

ー再処理工場の稼働を遅らせたり、再処理を止めたりする選択肢も想定しているのか?

仮定の質問なので答えられないが、『再処理は頑張ってほしい、削減の方もしっかりやってほしい』がメッセージだ。再処理工場はしっかり動かしてもらわなければいけないが、どんどん動かしてプルトニウムがたまってしまうと、国際的な圧力がかかることになる。基本方針の趣旨をご理解いただいて、使う方も一緒にバランスよくみていただきたい」

出典: 【原発最前線】 プルトニウム削減は「フランス流」で 原子力委員長会見 産経新聞 2018年8月7日

2016年12月14日原子力規制委員会臨時会議 再処理工場の適切な在庫は60トンHM

原子力委は、2024年3月21日の経産大臣への「回答」で、「再処理から MOX 燃料集合体への加工、プルサーマル炉での照射までに要する期間を考慮すると…我が国全体としてのプルトニウム保有量が 一時的に微増することもあり得る」としている。だが、原子力規制委員会の2016年12月14日臨時会議において、日本原燃は、通常運転で六ヶ所再処理・MOX燃料工場での「正常在庫(ラニングストック)」は60トンHMと述べている。これは、プルトニウムとウランの金属酸化物の重金属の合計重量を意味し、プルトニウムだけだと30トンだ。30トンというのは微増というようなレベルではない。

田中知委員: 「再処理の事業者として、自らが分離するプルトニウムが平和利用目的のないプルトニウムかどうかを今後どう判断していくのか…判断の基準というか…」
日本原燃 工藤健二社長: 「私どもで、プルトニウムの生産の工程がございますから、利用目的のないものを持っているということではなくて、ある程度の在庫を持つというのは、当然許容されてしかるべき…」

更田委員長代理: 「一定の在庫を持たざるを得ないというのはもちろん当然のことだと思うのですが、では、在庫が膨れ上がってしまっていいかというと、そういうものではない。やはり消費される以上のプルトニウムは生産しないという観点からすれば、過剰にならないという判断をする必要があると思うのです。それはどうされるのでしょう。」
日本原燃 村上秀明副社長: 「安全審査のときも…MOX工場[用]の在庫としてはどのぐらいが適切かという議論があり…在庫としては60トンHM[形状は金属酸化物の粉末]」

更田委員長代理: 「…原子力委員会は平和利用目的の事業であるという観点から判断をされるのだろうと思いますが…これは日本原燃がやる事業であるからといった理由で平和利用目的だという判断はなかなか下しづらいところがあるだろうと思います。そこが、先ほど副社長がおっしゃった、粉末で60トンHMまでを上限とするとか、そういった具体的なもの、もちろん生産側としては、在庫量は事業の裕度を増すものであるから、これ以上小さいとなかなかというところはあるでしょうけれども…」

日経産業新聞の記事(2019年3月19日)は、記者が、これはプルトニウムだけで60トンということであり、規制委も政府関係者も同様の理解をしている、と考えていることを示している。

詳しくは次を参照:
日本のプルトニウム削減宣言の実態 原子力規制委での珍問答と関連機関の説明責任 核情報 2019. 6.27

2006年3月13日資源エネ庁: 余剰プルトニウムは量的概念ではない

2016年3月13日、「六ヶ所再処理工場における各年毎のプルトニウム累積貯蔵量の推移をグラフによって示すこと」などを経済産業大臣に求めた韓国出身の姜政敏(カン・ジョンミン)博士及び日本の5団体に対し、資源エネルギー庁核燃料サイクル産業課企画調整一係長 宮本拓人氏は次のような趣旨の発言をしている。

「余剰プルトニウムは量的概念ではない。業者の側に利用計画がある限り、余剰プルトニウムではない。ただし、1万トンになっても余剰と考えないと主張していると思われると困る。」

*カン博士は、後に韓国原子力安全員会の委員長に就任。

次を参照:青森県も驚いたMOX(混合酸化物)で核兵器ができるという事実 核情報 2006.3

再処理計画見直し・中止なら責任はだれが?

国際的約束を守るために、再処理計画見直し・中止の決定・命令が出され、それにより各年及び運転期間全体の再処理量が減ることになると、元々経済性のない再処理のトン当たりの費用がさらに増大することなります。その費用は誰が支払うのか。電力会社? つまりは電力消費者? 電力会社が主な所有者となっている日本原燃? あるいは、岡原子力委委員長(当時)が恐れていたように、原子力委員会? 国? 税金?

先に述べた用語の定義の明確化問題とともに、約束順守のための措置が講じられた場合に生じる費用の問題についても、国会で議論する必要があります。

また、そのような状況になることが予見されているのにも関わらず、六ヶ所再処理工場及びMOX製造工場の完成に向けた作業、そして、完成後の運転をダラダラと続けたということになると、その責任は誰がとるのか。

原子力委員会? 経産省? 使用済燃料再処理・廃炉推進機構?

この問題についても、国会で早急に議論すべきでしょう。

資料編

2024年6月5日市民グループ質問

関連部分を抜粋すると:

4.使用済燃料再処理機構は、六ヶ所再処理工場の 2024 年度の竣工を前提に3年間の「中期計画」をまとめたが、プルサーマルの実施を見込んでもプルトニウム保有量は3年間で 1.3 トン増えることになる。これは、「(プルトニウムの)保有量を減少させる」「プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う」(2018 年原子力委員会決定「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」)、「プルトニウム保有量の削減に取り組む」(エネルギー基本計画)との方針に反する。海外で MOX 燃料製造に困難が生じ、国内に燃料加工工場がない状況では、プルトニウムが増える再処理は実施できないのではないか。

出典: 「核のゴミ捨て場」にしてよいのか-むつ中間貯蔵施設への搬入中止を求める集会&政府交渉, 質問書

2024年6月5日エネ庁担当者発言

該当部分抜粋(繰り返しなど、一部削除・編集):

お答えいたします。今頂いたご質問についてですが、再処理の中期計画についてですが、再処理の実施からMOX燃料を装荷するまでの期間ですね、時間を要するため、単年度では一時的にはプルトニウム保有量が増加するということはあり得ることでして、今年原子力委員会からも我国の全体としてのプルトニウムの保有量が一時的に微増することもあり得るとの認識が示されているものと承知しております。 ただしその上でプルトニウムの保有量については将来的には減少する見通しが示されることが重要です。

ご指摘の海外のMOX燃料製造についてもですね、機器の更新であったり、その改修によってですね、時間を要しておりましたが、現在、海外のその加工メーカーの加工量については回復に向けて取り組みが進められておりまして、現在、日本の関西電力さんのMOX燃料の製造が今年3月から開始をしているという風に承知をしております。また、日本原燃のMOX燃料工場についても、24年度上期の竣工目標に向けて工事が進捗していると承知をしております。

ちょっと長くなって申し訳ありませんが、さらに、プルサーマルですね、実際のMOX燃料を消費する道についても、現在、高浜原発3・4号機、玄海3号機、伊方3号機の4基がプルサーマルで再稼働を実施しております。今後、審査の方が進み、プル サーマルを実施する原発の再稼働が増えていければ、プルトニウムの消費も進んでいくものと見込まれております。

このように、実際の使用済み燃料の再処理量については、法例に基づいてプルサーマルの着実な実施に必要な量だけ、実施されるよう、毎年、実施中期計画をあの策定をしておりまして、 経済産業大臣が認可しております。引き続きこういった取り組みによってプルトニウムの適切な管理、そしてプルトニウムの利用というところを行っていくところです。

注:2022年末現在、45トン以上のプルトニウム(5600発分以上)を保有。福島事故後、運転再開した12基のうち、MOX利用炉は4基のみ。4基によるプルトニウムの平均年間消費可能量は合計して約2トン。実績を見ると、日本の2016年~22年の平均プルトニウム使用量は、0.5トン/年以下。

4基のうち、現在実際にMOX消費できるのは関西電力の2基のみ。九州電力と四国電力は、MOX製造工場のあるフランスに貯蔵されている自社のプルトニウムを使い果たしている。両社の英国保管分の名義を他社に移し、その分を両社のフランス保管分に変える計画。これをフランスでMOX燃料にして使うというものだが、玄海3号と伊方3号でのMOX燃料装填は、早くてそれぞれ「2026年度以降」、「2027年以降」となっている。この交換でできるMOX燃料は3トンに満たず、両社とも2~3年で使い果たしてしまう。頼みの綱は年間約1.7トンを消費可能という全炉心MOXの大間原発。その着工目標は、2022年に5度目の延期で2024年後半とされたが、審査が長引き、それも再延期となると見られている。

次を参照:プルトニウム利用の「夢」を開陳して再処理政策の正当化を図る電事連 核情報 2021. 4. 6; 2024年9月までに六ヶ所再処理工場が完成し、翌年度再処理開始?だが、国際公約で需要に合わせて運転するからプルトニウム保有量は増えない? 核情報 2023.10.16~

電事連 2024年プルトニウム利用計画(2024年2月16日)


プルトニウム利用計画

2024年 2月16日
電気事業連合会

所有者 所有量(トンPut)*1 (2023年度末予想) 利用目的(軽水炉燃料として利用) (参考)
現在貯蔵する使用済燃料の量(トンU) (2022年度末実績)
プルサーマルを実施する原子炉及び
これまでの調整も踏まえ、地元の理解を前提として、
各社がプルサーマルを実施することを想定している原子炉 *2
利用量(トンPut)*1,*3,*4 年間利用目安量*5 (トンPut/年)
2024年度 2025年度 2026年度
北海道電力 0.3 泊発電所3号機 約0.5 510
東北電力 0.7 女川原子力発電所3号機 約0.4 680
東京電力HD 13.6 立地地域の皆さまからの信頼回復に努めること、及び確実なプルトニウム消費を基本に、東京電力HDのいずれかの原子炉で実施 7,040
中部電力 3.9 浜岡原子力発電所4号機 約0.6 1,380
北陸電力 0.3 志賀原子力発電所1号機 約0.1 170
関西電力 11.3 高浜発電所3,4号機 0.0 0.0 0.7 約1.1 4,390
大飯発電所1~2基 約0.5~1.1
中国電力 1.4 島根原子力発電所2号機 *7 約0.4 590
四国電力 1.3 伊方発電所3号機 0.0 0.0 0.0 約0.5 920
九州電力 2.2 玄海原子力発電所3号機 0.0 0.0 0.0 約0.5 2,620
日本原子力発電 5.0 敦賀発電所2号機 約0.5 1,180
東海第二発電所 約0.3
電源開発 他電力より必要量を譲受*6 大間原子力発電所 約1.7
合計 40.1 0.0 0.0 0.7 19,480
再処理による回収見込みプルトニウム量(トンPut)*8 0 0.6 1.4
所有量合計値(トンPut)*11 40.1 40.7 41.4

本計画は、今後、再稼働やプルサーマル計画の進展、MOX燃料工場の操業開始などを踏まえ、順次、詳細なものとしていく。
六ヶ所再処理工場の操業開始後におけるプルトニウムの利用見通しを示す観点から、現時点での2027年度以降の利用量見通しを以下に記載。
2027年度以降のプルトニウムの利用量の見通し(全社合計)
・2027年度:2.1トンPut *9
・2028年度:1.4トンPut *9
・2029~2030年度:~約6.6トンPut/年 *10

  • *1 全プルトニウム(Put)量を記載。(所有量は小数点第2位を四捨五入の関係で、合計が合わない場合がある)
  • *2 従来から計画している利用場所。なお、利用場所は今後の検討により変わる可能性がある。
  • *3 国内MOX燃料の利用開始時期は、2027年度以降となる見込み。
  • *4 「0.0」: プルサーマルが実施できる状態の場合
    「-」: プルサーマルが実施できる状態にない場合
  • *5 「年間利用目安量」は、各電気事業者の計画しているプルサーマルにおいて、利用場所に装荷するMOX燃料に含まれるプルトニウムの1年当りに換算した量を記載している。
  • *6 九州電力から電源開発への譲渡予定分0.1トンについては、プルトニウム利用の促進のため、九州電力が自社のMOX加工に利用し、当該量については、東京電力HDと中部電力が代替 譲渡することで合意した。結果、電気事業者より電源開発に対し、下記内訳どおり譲渡することとなった。(核分裂性プルトニウム量で東北電力 0.1トン、東京電力HD 0.7トン、中部電力 0.1トン、北陸電力 0.1トン、中国電力 0.2トン、四国電力 0.0トンの合計1.3トン) ※総量は変更なし。
  • *7 島根2号機は、再稼働後、地域の皆さまのご理解をいただきながらプルサーマルを実施することとしている。(0.3トンPut) 再稼働後の運転計画が未定のためプルサーマル導入時期も未定であるが、2025年度以降のできるだけ早期に実施できるよう取り組む。
  • *8 「六ヶ所再処理施設およびMOX燃料加工施設 暫定操業計画」(2024年2月9日、日本原燃株式会社)に示されるプルトニウム回収見込み量。 プルトニウム回収見込量は、最終的には、使用済燃料再処理機構が策定し経済産業大臣が認可する使用済燃料再処理等実施中期計画に示される。
  • *9 仏国回収分のプルトニウムの一部(核分裂性プルトニウム量で東北電力 0.1トン、東京電力HD 1.0トン、中部電力 0.4トン、北陸電力 0.0トン、日本原子力発電 0.2トンの合計1.7トン)と、英 国回収分のプルトニウムの一部(核分裂性プルトニウム量で四国電力 0.7トン、九州電力 1.0トンの合計1.7トン)を交換した上で、九州電力および四国電力が、MOX燃料工場が稼働してい る仏国でMOX燃料に加工し、利用する計画である。
  • *10  2029年度以降、2030年度までに、800トンU再処理時に回収される約6.6トンPutを消費できるよう年間利用量を段階的に引き上げていく。
  • *11  プルトニウム所有量(2023年度末予想)をベースに、今後のプルトニウム利用量および「六ヶ所再処理施設およびMOX燃料加工施設 暫定操業計画」(2024年2月9日、日本原燃株式会 社)に示されるプルトニウム回収見込み量を用いて算出したものである。

出典: 電気事業連合会からのお知らせ プルトニウム利用計画について 2024年2月16日

原子力委員会 電事連の「プルトニウム利用計画」についての見解(2024年2月27日発表)

関連部分抜粋

(3)令和7年度(2025 年度)及び令和8年度(2026 年度)の「利用計画」について
電気事業者及び JAEA の「利用計画」を前提にすると、我が国全体としてのプルトニウム保有量の最大値は、令和7年度が約 45.1 トン 、令和8年度が約 45.8 トンとなる見込みであり、令和5年度末の保有見込量と比べてやや増加している。

事業者の説明によれば、原燃の六ヶ所再処理施設で回収されるプルトニウムについては、回収後すぐにプルサーマル炉で消費できるものではなく、令和7年度に回収見込みの約 0.6 トンのプルトニウムについても、六ヶ所 MOX 燃料加工施設において MOX 燃料集合体に加工後、令和9年度以降にプルサーマル炉で消費することを想定しているが、装荷する炉はこれから具体的にしていく、とのことである。再処理からプルサーマル炉での照射までに要する期間を考慮すると、六ヶ所再処理施設及び六ヶ所 MOX 燃料加工施設の稼働初期において、一時的にプルトニウム保有量が微増することになるが、将来的に同保有量が減少する見通しが示されることが重要である。

このように、現時点で、令和9年度以降のプルサーマル炉での消費状況を前提に、令和7年度及び令和8年度の「利用計画」の内容を検証し、妥当性を評価することは、不確定要素が多く困難である。

このため、当委員会としては、事業者をはじめとする関係者に対して、再処理による回収を実際に進めていくに当たっては、「基本的な考え方」を踏まえ、引き続き、国内施設で回収するプルトニウムの確実な利用とプルトニウムの需給バランスを踏まえた再処理施設等の適切な運転の実現に向けて最大限の努力を行うよう強く求める。同時に、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を堅持し、プルトニウム保有量を減少させるとの観点から、国内での消費に向けた様々な取組だけでなく、海外保有分のプルトニウムの削減に向けた取組の着実な実現を強く求める。

出典:
電気事業者等から公表されたプルトニウム利用計画について(見解)(2024年2月27日)(PDF:277KB)

原子力委員会の経産大臣への回答 2024年3月21日

府科事第393号
令和6年3月21日

経済産業大臣
齋藤 健 殿

原子力委員会委員長
上坂 充

使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更について

令和6年3月6日付け20240304資第18号をもって、原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議を踏まえて意見を求められた、原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律第45条第1項後段の規定に基づき、使用済燃料再処理機構から経済産業大臣に変更認可申請のあった使用済燃料再処理等実施中期計画に対する原子力委員会の意見は、別紙のとおりである。






(別紙)

使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更
について(見解)

令和6年3月21日
原子力委員会

この度、20240304資第18号をもって経済産業大臣から意見を求められた使用済燃料再処理機構(以下「機構」という。)が変更認可申請した使用済燃料再処理等実施中期計画(以下「実施中期計画」という。)について、原子力委員会は、以下のとおり意見を示す。

原子力委員会が意見を求められている実施中期計画は、本年2月に日本原燃株式会社(以下「原燃」という。)による六ヶ所再処理施設及びMOX燃料加工施設の暫定操業計画並びに電気事業者によるプルトニウム利用計画が策定されたことを踏まえ、同年3月に、原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律第45条第1項後段の規定に基づき、機構から経済産業大臣に対して計画変更の認可申請がなされたものである。

今般の実施中期計画には、2024年度から2026年度の3年間における再処理及び再処理関連加工の実施場所、実施時期及び量が記載されている。

実施場所については、原燃の六ヶ所再処理施設及びMOX燃料加工施設となっている。これらの施設及び関連する施設はいずれも国際原子力機関(IAEA)の保障措置活動の対象とされている。

実施時期及び量については、六ヶ所再処理施設及びMOX燃料加工施設の稼働時期を踏まえ、再処理に関しては、2025年度に70トン、2026年度に170トンの使用済燃料を再処理して、それぞれ0.6トン及び1.4トンのプルトニウムを回収する計画となっている。MOX燃料加工に関しては、2026年度に、六ヶ所再処理施設で2024年度から2026年度の3年間に回収されたプルトニウムのうち0.1トンをMOX燃料集合体へ加工する計画となっている。

一方、電気事業者が本年2月に公表したプルトニウム利用計画では、仏国で加工されたMOX燃料集合体に含まれる0.7トンのプルトニウムを2026年度に消費する予定とされている。また、回収されるプルトニウムについては、加工や輸送等に必要な期間を踏まえて、2027年度以降にプルサーマル炉で消費することが想定されている。

ただし、2027年度以降のMOX燃料加工施設の稼働状況やプルサーマル炉での消費状況については不確定要素を含むものであり、今後の進捗状況によっては変わり得るものである。

このため、今般示された実施中期計画のように、再処理からMOX燃料集合体への加工、プルサーマル炉での照射までに要する期間を考慮すると、六ヶ所再処理施設及びMOX 燃料加工施設の稼働初期においては、我が国全体としてのプルトニウム保有量が一時的に微増することもあり得ると、原子力委員会としても認識している。その上で、将来的には同保有量が減少する見通しが示されることが重要である。

以上を踏まえ、原子力委員会としては、今般の実施中期計画を経済産業大臣が認可するに当たっては、原子力の平和利用やプルトニウムの需給バランス確保の観点から、機構をはじめとする関係事業者に対して、以下の点について必要かつ適切な指導を行うよう求める。

  1. ① 再処理による回収を実際に進めていくに当たっては、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」(平成30 年7月31 日原子力委員会決定)を踏まえ、透明性を確保しつつ、国内施設で回収するプルトニウムの確実な利用とプルトニウムの需給バランスを踏まえた再処理施設等の適切な運転の実現に向けて最大限の努力を行うこと。
  2. ② 今後、具体的な取組の進捗に応じて、実施中期計画の見直しが必要になった場合には、適宜・適切に行うこと。
  3. ③ 実施中期計画に基づき事業を推進するに当たって、機構及び原燃は適切な役割分担及び実施体制の下、安全確保を最優先にして、効率的・効果的に事業を進めること。
  4. ④ 六ヶ所再処理施設及びMOX 燃料加工施設の安全かつ順調な操業に向けて、原燃は、安全確保を最優先に適切な工程管理を行うとともに、技術的知見の蓄積・承継に取り組むこと。また、必要に応じて、電気事業者等は十分な技術的・人的支援を行うこと。

以上

出典:使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更について」(2024年3月21日)(pdf)


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