核情報
2023.10.162024年9月までに六ヶ所再処理工場が完成し、翌年度再処理開始?
だが、国際公約で需要に合わせて運転するからプルトニウム保有量は増えない?
2024年4月現在、日本は、青森県の六ヶ所再処理工場を2024年度上半期に完成させる計画です。計画通りだと、翌年度には実際の再処理を始め、31年度から年間約7トンのプルトニウムを分離することになります(一発当たりプルトニウム8キログラムという国際原子力機関(IAEA)の数え方で1000発分弱です)。日本は、2022年末現在、45トン以上のプルトニウム(5600発分以上)を保有しています。一方、プルトニウムを消費できる運転中の原子炉はわずかに4基のみです。その平均年間消費可能量は合計して約2トンに過ぎません。再処理工場が順調に運転されれば、核兵器に利用可能なプルトニウムが急増することは必至です。
日本のプルトニウム保有量の増大を巡る国際的な懸念をかわすために、日本政府(及び原子力委員会)は、1991年以来、「再処理で取り出したプルトニウムは消費されるから、余剰プルトニウムが生じることはない」との趣旨の説明をしてきました。しかし、2017年には、「新たな説明」が急務と認識されました。米国起源の使用済み燃料を日本が再処理してプルトニウムを取り出すことを一括して認めている日米原子力協力協定の満期が2018年7月16日に迫っていたためです。このような背景の中、政府は、2018年7月3日に、「プルトニウム保有量の削減に取り組む」との方針を明記した「エネルギー基本計画」を閣議決定しました。続いて、7月31日には原子力委員会が「プルトニウム保有量は…現在の水準を超えることはない」と宣言します。
「新たな説明」は、2016年に経産省管轄の認可法人使用済燃料再処理機構が設立され、同法人が日本原燃に再処理を委託する仕組みになったので、再処理計画に経産省が介入してプルトニウム・バランスを管理できるようになったというものです。だから、再処理工場を運転を開始しても問題ないとの「論理」です。
この説明が、米国の一部で信じられているようです。その一つの例が、米国の軍縮NGO「核脅威イニシアチブ(NTI)」の『核物質セキュリティー・インデックス』の第6版(英文pdf)です。日本ではほとんど報道されていませんが、2023年7月に発表されたこの『インデックス』は使用済み燃料の再処理政策を維持する国々を厳しく批判しています。民生用再処理で取り出したプルトニウムでも核兵器に利用可能だからです。原子力容認の立場をとるNTIがこのような再処理批判をしていることは注目に値します。ただ、2018年にプルトニウムの量を増やさないと宣言した日本がその「約束」を守っているとして、日本の政策を称えている形となっているのが残念なところです。
六ヶ所再処理工場の運転開始時期を日本政府が意図的に遅らせてプルトニウム保有量が増えないようにしているとの見方がNTIの判断の背景にあるようです。しかし、実際の遅延理由は、工場を所有する日本原燃の能力の欠如のために、工場が原子力規制委員会の審査に合格できていないことにあります。
以下、2023年7月18日の『インデックス』発表イベント(録画)における「再処理批判」関連の発言部分を訳出した後、日本の宣言についてのNTIの分析が見落している日本の再処理政策の現状について検討してみましょう。
初稿 2023年10月
もくじ
- 2023年7月18日の『インデックス』発表イベントでの再処理関連発言抜粋
- 日本は約束を守っている?
- 日本の政策・現状についてのNTIの解釈確認
- 2018年約束とは
- なぜ「説明」が必要か?
- 約束後、日本は「保有量を数トン減らしてきた」?
- 「2018年以前は、日本のプルトニウムは着実に増えていた」?
- 六ヶ所再処理工場が運転開始となると?
- 六ヶ所で回収されたプルトニウムは、英仏保管のプルトニウムとともに消費できるか?
- 日本がお手本にしたフランスでは?
- 削減政策のためプルトニウム分離量の微調整がすでに計画との神話?
- 神話の原因の一つは、日本の再処理批判派が入っていない「国際専門家パネル」?
- 「約束」の実施方法についての日本側の説明は?
- 原子力委員会の意見表明の実態は?
- 世界と日本のNGO・研究者による日本政府への問いかけを
- 補遺:年表式整理 2018年までの流れと、今回の約束の特徴
- 資料編
- 原子力委員会の2018年の説明と2003年の説明の全文比較
- 「プルトニウムの適切な管理・利用」資源エネルギー庁 2018年3月20日
- 「再処理等拠出金法」に対する附帯決議 第190回国会国会 2016年
- 使用済燃料再処理等実施中期計画(2023年3月28日) 使用済燃料再処理機構
- 使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更について(見解)原子力委員会 2023年3月22日
- 年表式まとめ(詳細編)
- 工場運転開始遅延は政府の政策? 原子力規制庁と日本原燃のやり取り
- 脚注
参考
- 日本のプルトニウム削減宣言の実態──原子力規制委での珍問答と関連機関の説明責任 核情報 2019. 6.27
- プルトニウムの分離を禁止する──高速増殖炉・再処理の夢の実態と核拡散の恐怖 フランク・N・フォンヒッペル 田窪雅文、原子力資料情報室発行 2023年
2023年7月18日の『インデックス』発表イベントでの再処理関連発言抜粋
NTIは、2001年にニュース・チャンネルCNNの創設者のテッド・ターナーと保守中道的な元民主党上院議員サム・ナン(元上院軍事委員会委員長)が設立した団体です。ナン元上院議員に代って現在代表を務めているのは、アーネスト・モニーツ元米エネルギー省長官(オバマ政権)です。物理学者でもある同氏は、イベントで、再処理政策に経済性がないことを端的に指摘しています。
ここで紹介するイベントでの発言は以下の二つです。
- スコット・ローカーNTI副代表が一部の国々における再処理政策について触れた部分(同副代表は、オバマ政権の国家安全保障会議(NSC)で核脅威軽減担当ディレクターを務めた)。
- モニーツNTI代表がプルトニウムの経済的価値に関する質問に答えた部分。
再処理を続ける国々についての批判(スコット・ローカーNTI副代表:核物質セキュリティー担当)
16:34 ~ 18:36
今日、民生用の分離済みプルトニウムの量が驚くべき速さで増えている。2020年と比べ、世界の分離済みプルトニウムの量は、17トンも増えている。核兵器2100発分以上の量だ。核兵器2100発というのは、世界で3番目の核兵器保有量に相当する。これより多いのは、ロシアと米国しかない。過去3年間の民生用のプルトニウムの増加量だけでだ。少数の国々における商業用再処理活動がこの急成長の原因となっている。実際、活発な原子力発電計画を持つ31カ国と台湾のうち、再処理を実施中、あるいは近々に再処理開始を計画しているのは5カ国だけだ。中国、フランス、インド、日本、ロシアだ[1]。原子力発電を行っている他の26カ国と台湾は、低濃縮ウランでできた燃料だけを使っている。この燃料は核兵器の製造には適さない。このことは、プルトニウム燃料がなくとも原子力発電ができることを明確に示している。ごく少数の国々が、より危険なオプションを選択しているというだけなのだ。
原子力発電は、気候変動を緩和し、エネルギー安全保障を強化するための貴重な手段となり得るものだ。これは、リスクの少ない低濃縮ウランのような燃料を使って行うべきだ。第一歩として、私たちは、すべての国に対し、プルトニウムの保有量を現在のレベル以下に維持することを約束するよう呼びかけている。これは、現在プルトニウムを保有していない国の場合も含む。日本は、2018年にこのような約束をし、保有量の上限を47トンとした。そして、実際に、その保有量を数トン(by several metric tons)減らしてきた。この約束をした2018年以前は、日本のプルトニウムは着実に増えていた。だから、このアプローチは成功し得ることを私たちは知っている。さらに、政府や企業のステークホールダーは、プルトニウム燃料サイクルに基づく原子力技術の開発や推進を避けるべきだ。
再処理の意義に関する米国及び世界での議論についての質疑応答(アーネスト・モニーツ代表)
1:01:45 ~ 1:07:00
◎質問
10年ほど前、モニーツ[元エネルギー省]長官は、少なくとも50年間は、プルトニウムが経済的価値を持つかどうかさえ分からないという厳しい結論を述べた。今日の提言は、各国はプルトニウムを基礎とする燃料サイクルを避けるべきだというものだ。現在、プルトニウムを基礎とする燃料サイクルの有用性についてのコンセンサスは、米国と世界全体の両方でどうなっているのか。
◎モニーツ代表
ご指摘の「引用」では、私は、控えめな態度をとっていた。実際は、私たちは、プルトニウムが経済的価値を持つかどうかは分かっている。答えは「ノー」なのだ。今日では、[ウランとプルトニウムの]「混合酸化物(MOX)」燃料としてプルトニウムをリサイクルするというのが、経済的にまったく意味をなさないのは明らかだ。経済的基準で判断しようというなら、経済的利点は何もないことは分かっている。あるのは経済的デメリットだけだ。しかし、それとは別にしばしばなされている主張がある。 [在来型の炉(軽水炉)における]MOX燃料の使用は、高速炉、プルトニウム経済に向けた良いステップとなるというようなものだ。これに対する私の返答はこうだ。それなら、なんでいま[再処理で分離した]プルトニウムを[軽水炉に入れて]照射して、話を複雑にするのか? 将来の魔法の燃料サイクルのためにとっておけばいいじゃないかと。いろいろな再処理正当化論は、話の辻褄が合わないのだ。
再処理正当化のための最後の議論は、核廃棄物管理に役立つというものだ。これも、掘り下げていくと、この考えが正しいと主張するのは極めて難しい。まず、少なくとも数世紀の間は、核廃棄物の主要問題は、核分裂生成物についてのもので、これは、プルトニウムを使うか使わないかとは関係がないことを私たちはみんな知っている。[プルトニウム燃料サイクルを使えば、処分場に入れられる]プルトニウムを幾分か無くすことができるかもしれない。だが、そもそもプルトニウムは、地層処分場の最大の課題であったことなど一度もない。
だから、プルトニウム燃料サイクルを開発するために提示されてきたいろいろな議論について、その論理の穴を次々と指摘し続けることができるが、最終的に私たちが言ったのはこういうことだ。この議論を最後の最後までやり続けることは、今はしないことにして、今から1世紀後に何らかの賢明な燃料サイクルにプルトニウムが関係することになる可能性を排除しないということにしよう。使用済み燃料を1世紀の間、そのまま保管することにすれば、プルトニウムを使うオプションは排除されないから、と。私は、このオプションが実行されることはないと考えるが、それでも、オプションを維持するという提案だ。だから、ご質問に関して言うと、基本的に、10年ほど前の私の発言は、今も、有効だ。
もう一つ付け加えたい。人々は忘れがちなのだが、この再処理というのをもっとやると、燃料製造にロボットを導入するとか、いろいろなことをすることになる。そうすると、同時に起きてしまうことがある。いかなる形であれ燃料の処理をする、分離をする、何かから何かを分離するということになると、廃棄物フローが増えて、これがまた間違った方向に行き…ということになる。こういう問題がなければ、再処理は素晴らしいアイデアだ(笑い)。
日本は約束を守っている?
日本の約束についてのNTIの説明をもう一度確認した後、その解釈の問題点について検討してみましょう。
日本の政策・現状についてのNTIの解釈確認
私たちは、すべての国に対し、プルトニウムの保有量を現在のレベル以下に維持することを約束するよう呼びかけている。これは、現在プルトニウムを保有していない国も含む。日本は、2018年にこのような約束をし、保有量の上限を47トンとした。そして、実際に、その保有量を数トン(by several metric tons)減らしてきた。この約束をした2018年以前は、日本のプルトニウムは着実に増えていた。
2018年約束とは
2018年7月31日に原子力委員会が発表した『我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方』にある次の文言を指す
我が国は、上記の考え方に基づき、プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は、以下の措置の実現に基づき、現在の水準を超えることはない。
NTIは、日本は「保有量の上限を47トンとした」としている。これは原子力委が文書を発表した2018年の前年(2017年)末現在の保有量を指す。だが、原子力委の同文書には、「現在の水準を超えることはない」とあるだけで、「現在の水準」が何を意味するかの定義はなく、明確な上限の数字は示されていない。
六ヶ所再処理工場は、年間800トンの使用済み燃料を処理して最大約8トン(IAEAの計算方法で核兵器1000発分程度)のプルトニウムを分離するように設計されている。日本政府(及び原子力委員会)は、1991年以来、日本での本格的再処理開始を正当化するために、「分離されたプルトニウムは消費されるから余剰プルトニウムが生じることはない」との趣旨の説明をしてきた。1997年と2003年に、同工場の運転開始が間近に迫ったと予想された際には、「消費計画」を示した説明がされた[2]。NTIが褒めている2018年の「約束」も、それらと同様の「説明」であるにすぎない。
補遺:年表式整理で示したように、この2018年7月31日付けの新しい「説明」(2018年版「基本的な考え方」)は、日米原子力協力協定が30年の満期を同年7月16日に迎えるという文脈の中で、2017年から準備が進められていたものだ(同協定は、米国起源の使用済み燃料を日本が再処理してプルトニウムを取り出すことを一括して認めている。)2018年7月3日に閣議決定された「エネルギー基本計画」が、日本は「プルトニウム保有量の削減に取り組む」とし、「2016年に新たに導入した再処理等拠出金法の枠組みに基づく国の関与等によりプルトニウムの適切な管理と利用を行う」と述べた。日米原子力協力協定は、これを受ける形で、同7月16日、期限を定めない形──半年前の通告で破棄できる──の自動延長となった。
新しい「説明」の特徴は次のような趣旨の主張をしていることだ。
2016年5月の「再処理等拠出金法」 制定[3]により、同年10月に経産省管轄の認可法人使用済燃料再処理機構が設立された結果、同法人が日本原燃に再処理を委託する仕組みになったので、再処理計画に経産省が介入してプルトニウム・バランスを管理できるようになった。
だが、後述するように、その「管理」の具体的な仕組みの詳細は明確ではない。ここで忘れてはならないのは、「再処理等拠出金法」は、電力自由化の中でたとえ電力会社が倒産しても再処理が着実に実施されるように、電力会社に対し、使用済み燃料発生(発電)の時点で再処理料金を「使用済燃料再処理機構」に「拠出」させることを目的として作られた再処理推進法であるという事実だ。
なぜ「説明」が必要か?
下の図を見ると、日本が「約束」(説明)をする必要を感じた理由が分かる。
日本の民生用プルトニウム保有量は、非核保有国の中で突出しているのだ。
図1.民生用分離済みプルトニウム
出典:フランク・フォンヒッペル(未発表。協力:マイケル・シュナイダー)
約束後、日本は「保有量を数トン減らしてきた」?
上述のように、NTIは、「保有量の上限を47トンとした」としている。これは、2017年末の保有量(47.264トン)を指し、この量と2022年末の保有量(45.147トン)を比較しているようだ。これだと、約2.1トンの減少で「数トン減らしてきた」と言えなくもない。だが、これは、六ヶ所再処理工場の本格運転開始が遅延する中、MOX利用がわずかだけ実施された結果であるにすぎない。日本が政策により運転開始を遅らせて、保有量を減らしたわけではない。
しかも、実際の状況を見ると、減少分はさらに少ない。2018年3月に九州電力の玄海3号で640kgの未使用MOX燃料の照射が始まっており、これにより、「基本的な考え方」発表時(2018年7月31日)、日本の未照射プルトニウム保有量は、玄海3号での640kgの照射のため、46.624トンへと減少していた[4]。これと2022年末の保有量を比べると、約1.5トンの減少となる。「数トン減らしてきた」とは印象が異なる。
ここで、2018年には、新たな「約束」にかかわらず、日本のプルトニウムのある程度の削減が向こう数年間に亘って見込まれていたことを忘れてはならない。六ヶ所再処理工場の完成は2021年まで、プルトニウムの実際の分離は2022年まで、予定されていなかったためだ。日本原燃は前年の2017年12月、「2018年度上半期」という竣工(完成)目標(2015年11月発表)を、「2021年度上半期」に延期していた。
2018年8月1日付の『東奥日報』の記事は、「六ケ所再処理工場は完工までに3年、さらに稼働後からフル稼働までに4年ほどを要する見通し」だと指摘している。合わせて7年、フル稼働はこの時点で2025年との想定だ。新しいプルトニウム削減政策が再処理工場の稼働に与える影響については、「それまでに何トンをプルサーマルで燃やせるか」が左右するとの原子力委員会事務局のコメントを引用している。つまり、現段階で日本の「約束」の順守を賞賛するのは適切ではないということだ。[5]
「2018年以前は、日本のプルトニウムは着実に増えていた」?
図2を見れば分かるように、日本の保有量は、実は、2008年頃から上下していた。
出典:日本のプルトニウム保有量 核情報
2018年以前に「着実に増えて」はいなかった理由は、
- 六ヶ所再処理工場の本格運転が始まっていなかったこと
- 英仏に委託した日本の使用済み燃料の再処理がずっと以前に終わっていたこと、
の二つだ(2007年の新潟県中越沖地震で止まっていた東海再処理工場は、福島事故後の2014年に廃止決定)。
◎基本的に増えない理由1 六ヶ所再処理工場の運転開始の遅延
六ヶ所再処理工場の運転開始が延期され続けていたため、国内での再処理は2006-08年の試運転以来、実施されていない。
2018年「基本的考え方」発表後の遅延は次の通りだ。
- 2020年8月21日
- 「2021年度上半期」から「2022年度上半期」への竣工(完成)延期発表
- 2022年9月7日
- 延期発表(26回目)新しい竣工目標を示さず
- 2022年12月26日
- 日本原燃は「2022年度上期」との竣工時期を、「2024年度上期のできるだけ早期」(6月めど)に延期
この遅延が政府の政策によるものとの解釈が成り立たないことは、日本原燃の説明や原子力規制庁とのやり取りなどを見れば明らかだろう。[6]
近年で唯一、保有量が実質的に増えたのは、2006年から2008年のアクティブ試験(ホット試験)の結果によるものだ。この試験で425トンの使用済み燃料を処理し、約3.6トンのプルトニウムを取り出した。グラフにある2008年のピークがこれを示している。
◎基本的に増えない理由2 2018年よりずっと以前に英仏委託の再処理は終了
- フランス委託分:1999年に終了。
- 英国委託分:2006年に終了。
THORP(ソープ:酸化物燃料再処理工場)での軽水炉使用済み燃料の再処理は2004年に終了。東海第一原発(ガス冷却炉)の使用済み燃料の再処理も2006年に終了している。[7]
ただし、THORPで取り出されたプルトニウムは、帳簿上の日本への「割り当て」が実際の再処理終了後も、2020年まで続けられたため、これが日本の保有量の増加として現れるという現象が生じていた。英国のMOX製造工場はトラブル続きで、2011年の福島事故の後、運転継続が放棄された結果、日本のプルトニウムは英国で置き去り状態となっている。このため、英国における帳簿上「割り当て」による増加はそのまま、表1「日本のプルトニウム保有量推移」の英国保管分の増加として反映されている[8]。日本のプルトニウム保有量を示す図1で、上述の六ヶ所再処理工場のアクティブ試験の影響の他に、小さな山が複数、形成されているのは、このためだ。
表1 日本のプルトニウム保有量推移(単位:kg)
英国 | 仏国 | 英仏合計 | 国内 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
1993 | 1,270 | 4,890 | 6,160 | 4,684 | 10,844 |
1994 | 1,395 | 7,269 | 8,664 | 4,352 | 13,016 |
1995 | 1,399 | 9,892 | 11,291 | 4,722 | 16,013 |
1996 | 2,425 | 12,547 | 14,972 | 4,430 | 19,402 |
1997 | 3,533 | 15,382 | 18,916 | 4,468 | 23,384 |
1998 | 6,069 | 18,083 | 24,152 | 5,000*1 | 29,152 |
1999 | 6,903 | 20,406 | 27,309 | 5,318 | 32,627 |
2000 | 10,405 | 21,844 | 31,889 | 5,285 | 37,174 |
2001 | 10,618 | 21,571 | 32,189 | 5,682 | 37,871 |
2002 | 11,502 | 21,507 | 33,010 | 5,405 | 38,415 |
2003 | 13,450 | 21,443 | 34,894 | 5,475 | 40,369 |
2004 | 15,703 | 21,385 | 37,088 | 5,710 | 42,798 |
2005 | 16,582 | 21,270 | 37,852 | 5,923 | 43,775 |
2006 | 16,590*4 | 21,368*4 | 37,994*2 | 6,753 | 44,747 |
2007 | 16,545*4 | 21,246*4 | 37,827*2 | 8,721 | 46,548 |
2008 | 16,615*4 | 21,163*4 | 37,818*2 | 9,696 | 47,514 |
2009 | 16,879 | 19,318 | 36,196 | 10,063 | 46,259 |
2010 | 17,055 | 17,970 | 35,025 | 9,936 | 44,961 |
2011 | 17,028 | 17,931 | 34,959 | 9,295*3 (9,935) | 44,254*3 (44,894) |
2012 | 17,052 | 17,895 | 34,946 | 9,295*3 (9,935) | 44,241*3 (44,881) |
2013 | 20,002*5 | 16,310 | 36,312 | 10,833 | 47,145 |
2014 | 20,696 | 16,278 | 36,974 | 10,835 | 47,809 |
2015 | 20,868 | 16,248 | 37,115 | 10,832 | 47,947 |
2016 | 20,839 | 16,217 | 37,056 | 9,844 | 46,900 |
2017 | 21,232 | 15,486 | 36,718 | 10,546 | 47,264 |
2018 | 21,205 | 15,460 | 36,666 | 9,022 | 45,688 |
2019 | 21,180 | 15,435 | 36,615 | 8,860 | 45,475 |
2020 | 21,805 | 15,411 | 37,216 | 8,854 | 46,070 |
2021 | 21,780 | 14,760 | 36,540 | 9,279 | 45,819 |
2022 | 21,757 | 14,113 | 35,870 | 9,277 | 45,147 |
黄色のマーカーは増加を示す
出典:日本のプルトニウム保有量
六ヶ所再処理工場が運転開始となると?
下の図が示すように、日本原燃は、2023年末現在、2024年度上半期(2024年9月末まで)に工場を完成させ、翌年度に70トンの再処理から始め、2031年度には年間800トンの使用済み燃料再処理という設計能力を達成することを計画している。計画通りなら、その後は、年間約7トンのプルトニウムを回収するようになる。
図3 2023年10月10日関電発表の六ヶ所再処理工場の運転スケジュール[関電の使用済み燃料搬出・敷地外貯蔵計画も含む]
出典:関西電力 使用済燃料対策ロードマップの策定(pdf) 2023年10月10日
*関電は、原発敷地内乾式貯蔵も検討。
追記: 上の計画は、2024年4月1日に使用済燃料再処理・廃炉推進機構が発表した使用済燃料再処理等実施中期計画(pdf)と符合する。以下は同計画まとめ。なお、同機構は、2024年4月1日に「使用済燃料再処理機構」から名称変更となった。
年度 | 2024 | 2025 | 2026 | 2027 | 2028 |
---|---|---|---|---|---|
再処理を行う 使用済燃料の量(tU) | 0 | 70 | 170 | 70 | 280 |
(参考) プルトニウム回収見込量(tPut) | 0 | 0.6 | 1.4 | 0.6 | 2.3 |
再処理関連加工を行う プルトニウムの量(tPut) | 0 | 0 | 0.1 | 1.4 | 1.1 |
出典:使用済燃料再処理・廃炉推進機構 https://www.nuro.or.jp/pdf/medium-term_plan/2023.pdf 黄色の部分は、機構の表の下に参考として示されているデータ
六ヶ所で回収されたプルトニウムは、英仏保管のプルトニウムとともに消費できるか?
福島事故後、運転再開した12基のうち、MOX利用炉は4基のみ。4基によるプルトニウムの平均年間消費可能量は合計して約2トンに過ぎない。実績を見ると、日本の2016年~22年の平均プルトニウム使用量は、0.5トン/年以下だった。
4基のうち、現在実際にMOX消費できるのは関西電力の2基のみ。九州電力と四国電力は、MOX製造工場のあるフランスに貯蔵されている自社のプルトニウムを使い果たしている。(電気事業連合会の2023年2月及び2024年2月のプルトニウム利用計画参照)[9]
もう一つ重要なのは、六ヶ所再処理工場に隣接して建設中のMOX燃料製造工場が予定通り完成し、運転できるかどうかという問題だ。日本原燃の2022年10月26日の説明によると、同日現在の進捗率は約9.4%、完成予定は、2024年度上半期だという。この工場がたとえ完成したとしても、英国のMOX工場と同じ運命をたどると、再処理で取り出されたプルトニウムは蓄積される一方となる。
日本がお手本にしたフランスでは?
原子力委員は、2018年1月16日の定例会議で、前述の2003年8月の「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」(原子力委員会決定)を改訂することを決めた。上述のように、日米原子力協力協定の満期後も、再処理継続を米国に認めて貰うことを意識してのものだ。この定例会議で確認された事務局提出の文書「日本のプルトニウム利用の現状と課題」(pdf)に、フランスを手本にしてはどうかとの記載がある。「フランスには、余剰プルトニウムを発生させないために、一定期間の分離プルトニウムの利用見通しにしたがって、使用済燃料を再処理するという政府のガイドラインがある」からだという。[10]
だが、その手本のフランスの民生用プルトニウム保有量は、下の図が示しているように、1995年の約30トンから2022年末の91.9トンへと約3倍に増えている。
図.4
出典:プルトニウム削減の第一歩は再処理工場運転放棄 核情報 2018. 6.22 追補:古い虚構から新たな虚構へ? 検証の試み
削減政策のためプルトニウム分離量の微調整がすでに計画との神話?
日本政府がプルトニウム削減方針に沿って再処理工場運転計画の微調整をすでに始めているという誤解(神話)があるようだ。原子力委員会の「日本のプルトニウム利用について【解説】」(2017年10月3日, pdf)の以下の記述が、この神話の原因の一つかもしれない。「また、今後、六ヶ所再処理工場が竣工した場合、竣工後すぐに施設の最大再処理能力で運転されるものではなく、段階的に引き上げる計画としている。」また、上述の関西電力発表にある日本原燃の運転計画では、再処理量が最初から年間800トンとならないのに加えて、途中で上下している。だが、元々、六ヶ所工場の再処理量は、1996年の計画が示す通り、少しずつ増やし、数年かけてフル操業に至ることになっていた。[11] なお、再処理予定量が、2025年度のせん断開始(70t)後、2026年度の170tから2027年度の70tへと低下しているのは、ガラス固化用の溶融炉の取り換え予定によるものだ。[12]
そもそも、工場は、40年間、年間800トンのペースで、合計3万2000トン使用済み燃料を再処理することになっていた。これでも経済性がないことは、モニーツ代表が指摘している通りだ。MOXの消費能力に合わせ、年間の処理量を大幅に減らせば、再処理単価が上がり、さらに経済性が悪くなる。こんな運転の仕方を長期に続けることは意味をなさない。「このアプローチは成功し得ることを私たちは知っている」とのNTIの説明は、控えめに言っても、誤解を招く。
神話の原因の一つは、日本の再処理批判派が入っていない「国際専門家パネル」?
NTIのインデックスの国際専門家パネルに入っていた唯一の日本側の人物は、再処理・高速(増殖)炉計画を推進してきた日本原子力研究開発機構(JAEA)の直井洋介「核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)」センター長(当時)だ。同センターのニューズレター2023年9月号(pdf)は、このことの重要性について、次のように述べている。
我が国には厳しい目 を向けられていることもあり、我が国から専門家が招かれて、我が国の状況を説明しな がら調査に協力することは重要なことであろう。今回の調査には当センターの直井前 センター長がアドバイザーパネルのパネリストとして参加しているが、本インデックスで 我が国を客観的に評価してもらうためにも、こういった我が国の専門家の努力が今後 も継続されることを期待するものである。
日本の再処理批判派がパネルに入っていなかったことが、「客観的」な評価ではなく、前項で見たような神話を信じるバイアスをもたらしたのだろうか。いずれにしても、今後、再処理批判派からのインプットが重要であることは間違いない。
「約束」の実施方法についての日本側の説明は?
日本は、プルトニウム削減計画を実施するために、具体的にどの組織がどのようなタイミングでプルトニウムの「需給」関係を検討して再処理量の調整を命じる計画なのか。現在のレベルとは何を指すのか。その数値より1㎏も絶対増やさないというのが日本の国際的公約か。
このような疑問点について、日本政府は、これまで明確な説明をしていない。
具体的なプロセスの骨格については、資源エネルギー庁の2018年3月20日付け資料が「プルトニウムの適切な管理・利用」という項目において次のように要約している。
②電気事業者がプルトニウム利用計画を公表して、その妥当性を原子力委員会が確認。
③再処理等拠出金法に基づき、使用済燃料再処理機構が再処理量やMOX加工量等を記載した実施計画を策定し、原子力委員会の意見も聴きつつ経済産業大臣が認可。
これにより経済産業大臣がプルトニウムの回収量をコントロール。
といった仕組みの下、プルトニウムの適切な管理と利用を図っていく。
これは、上述の2016年「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律(再処理等拠出金法)」の規定と、同法を制定した際の国会の附帯決議に基づくものだ。
国会における同法の採択に際して合意された第190回国会閣法第17号 附帯決議に次のようにある。
3 プルトニウムの需給バランスに関して、「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を堅持するとともに、政府は原子力事業者に対して、この原則を認識したうえで再処理事業を実施するよう指導し、仮にこの方針に反する再処理等事業の実施中期計画を認可法人が策定した場合には、経済産業大臣はこれを認可しないものとすること。
4 認可法人が策定する再処理等事業の実施中期計画を経済産業大臣が認可する際には、原子力の平和利用やプルトニウムの需給バランス確保の観点から、原子力委員会の意見を聴くものとし、その意見を十分に斟酌して認可の適否を判断するものとすること。・・・
11 過去に発生した使用済燃料の再処理等に要する費用については、再処理等の適正な実施が図られるよう検討し、その積算に係る具体的な考え方を明らかにするとともに、適時その検証を行うこと。
(*11は遵守されていない。電力会社からの拠出金は、六ヶ所再処理工場の運転っ期間中に処理される予定の使用済み燃料の総量、使用済みMOX燃料を再処理する工場の建設計画などの影響を受けるはずだが、使用済燃料再処理機構は、その計算の根拠について公表していない。)
注2で触れた通り、2003年の「我が国のプルトニウム利用における基本的な考え方について」にも、資源エネルギー庁の資料の②と同様の規定があったが[13]、原子力委は虚構の「計画」を発表し続けただけだった。この「実績」について、2018年「基本的な考え方」は、触れていない。それどころか、原子力委員会は、その説明資料[我が国のプルトニウム利用について(pdf)](2018年7月31日)では、自慢げに、次のように述べている。
原子力委員会はかねてより、「我が国のプルトニウム利用の基本的な考え方(2003)」を公表している。今般、国際社会との連携・核不拡散の観点も重要視し、平和利用に係る透明性を高めるため、我が国の自主的な方針として本考え方を改定・公表することとする。
このような原子力委員会の態度から言って、前述の経産省の資料「これまでの議論の整理について」にある「経済産業大臣がプルトニウムの回収量をコントロール」というプロセスが再処理開始の段階で機能しそうかどうか、吟味が必要だろう。冒頭で述べた通り、2018年の「考え方」発表以降、日本のプルトニウムが増えていないのは、NTIの理解とは異なり、日本原燃の能力の欠如のために六ヶ所再処理工場が運転されていないからに過ぎない。
原子力委員会の意見表明の実態は?
再処理が始まっていない時点での原子力委員会の「意見」がどのような形で表明されているかを見ておこう。使用済燃料再処理機構の「使用済燃料再処理等実施中期計画(2023年3月28日)」発表に先立ち、経済産業省からこの「計画(案)」について意見を求められた(pdf)原子力委員会は、その回答「使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更について」(pdf)において、「現時点におけるプルサーマル炉の運転計画や六ヶ所再処理施設等の操業見通し等を踏まえれば、理解できるものである」とし、次のように付け加えている。
原子力委員会としては、今般の実施中期計画を経済産業大臣が認可するに当たっては、原子力の平和利用やプルトニウムの需給バランス確保の観点から、機構をはじめとする関係事業者に対して、以下の点について必要かつ適切な指導を行うよう求める。⓵再処理による回収を実際に進めていくに当たっては、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」(平成 30 年7月 31 日原子力委員会決定)を踏まえ、透明性を確保しつつ、国内施設で回収するプルトニウムの確実な利用とプルトニウムの需給バランスを踏まえた再処理施設等の適切な運転の実現に向けて最大限の努力を行うこと。② 今後、具体的な取組の進捗に応じて、実施中期計画の見直しが必要になった場合には、適宜・適切に行うこと。
項目①は、文法的な「主語」が抜けており、非常にわかりにくい。下に示すように、原子力委員会による英語版(pdf)では、主語の「電力会社」と「NuRO(使用済燃料再処理機構)」を追加した上、さらに、1つの長い文章を2つに分割して再構成している。これは、原子力委員会事務局の翻訳者が原文を理解不能なものだと判断したことを示しており、原子力委員会と経済産業省が本当に理解し合えたかどうか疑問が残る。国会議員はこの文章を読んだことがあるのだろうか?
項目①及び②の原子力委員会英語訳からの核情報訳
- NuROは、再処理によりプルトニウムを回収する場合には、『我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方』(2018年7月31日原子力委員会発表)に定めるとおり、透明性を確保しつつ、プルトニウムの需給バランスに配慮した六ヶ所再処理工場及びMOX燃料加工施設の適正な運用をするよう最大限の努力をしなければならない。電力会社は、J-MOXで製造されたMOX燃料を国内の原子炉で着実に消費するよう最大限の努力をすることが求められる。
- NuROは、具体的な取り組みの進捗に応じて、中期実施計画の修正報告を適時、適切に行うことが求められる。
これを読むと、次のような疑問が生じる。
- プルトニウム保有量の増加を防ぐために、実際に何時、誰が、何に責任を負うことになっているのか。
- 関係事業者が最大限の努力を行ってもプルトニウムが増えそうな場合(あるいは増えた場合)、だれがどのような措置をとるのか。
- 適宜・適切に見直しを行うとは何を意味するのか。「適宜・適切」については誰がどのような基準に基づき判断をし、「適宜・適切」でないとの結論に至ればどうするのか。
ここで注目すべきは、2018年「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」発表直後の記者会見での岡芳明原子力委員会委員長(当時)のコメントだ。削減の時期や目標の数値設定をしなかった理由について聞かれて、「具体的なことをわれわれが申し上げるのは適切ではない。民間事業なので地元との関係もあるし、(再処理を委託した)海外との契約もある」(産経)。「民間の経営をできるだけ生かす原子力利用をしたい」とし「具体的なことを申し上げない方が制約が少なくてうまく削減していくはず」(東奥)と答えている。また、「再処理工場は既に作られているし、民間事業だ。国が『止めろ』と言えば国に賠償責任が発生するし、止めたら廃止措置も国の責任になる可能性がある」(産経)とも述べている。[14]
世界と日本のNGO・研究者による日本政府への問いかけを
上述のような疑問点について、世界と日本のNGO・研究者が協力しながら日本政府に「説明」を求めることが必要だ。
NTIのインデックス作成の中心人物の一人、ロス・マツキン=ブリッジャー核物質セキュリティー上級ディレクターは、在日米国大使館で2016年6月 から 2021年3月まで 4年10ヶ月に亘ってエネルギー省主席担当官として勤務した経験を持つ[15]。まさに、2018年前後の日米交渉に関わった人物だ。2018年の「約束」について、当時日本側から聞かされていたことに基づき、日本は今、何をしようとしているのかと問う資格・権利を持つと言えるだろう。
冒頭で触れた通り、スコット・ローカーNTI副代表は、オバマ政権の国家安全保障会議(NSC)で核脅威軽減担当ディレクターを務めた経歴を持つ。[16]同副代表も日本の約束について確認できる立場にあるはずだ。
また、日本の反核運動には、日本の再処理政策の現状を詳細に調べ、正確に米国の──そして、世界の──NGO や政府に伝える責任がある。
補遺:年表式整理 2018年までの流れと、今回の約束の特徴
最後に、2018年の約束に至るまでの流れと、今回の約束の特徴を再整理しておこう。
(詳細は資料編の「年表式まとめ(詳細編)」を参照)
- 1991年
- 原子力委員会が、核燃料専門部会報告書『我が国における核燃料リサイクルについて』を発表して、「必要な量以上のプルトニウムを持たないようにすることを原則とする」と宣言。
- 1997年
- 六ヶ所再処理工場の計画が発表された1990年時点での完成予定の年。実際の建設開始は1993年
- 2月21日
- 政府の要請を受けた電気事業連合会が、2010年までに16〜18基でプルサーマル導入(年間7〜11トン消費)という計画を発表。年間8トンのプルトニウム分離能力を持つ六ヶ所再処理工場の運転を正当化しようとするものだ。
- 12月5日
- 日本政府、「余剰プルトニウムを持たないとの原則」を国際原子力(IAEA)に送った文書で国際的に宣言。
- 2003年8月5日
- 原子力委員会、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」を発表。「利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則」を再確認するとともに、間近に控えた六ヶ所再処理工場の試運転開始を念頭に、「電気事業者はプルトニウム利用計画を毎年度プルトニウムの分離前に公表」し「原子力委員会は、その利用目的の妥当性について確認」と述べる。
出典:第34回原子力委員会定例会議(10月3日)議事録(pdf)
詳しくは、資料編「年表式まとめ(詳細)」[2017年10月3日の項] 参照。
この日の資料「日本のプルトニウム利用の現状と課題」(pdf)に、前年10月3日に笑いでごまかした文言が似たような形で登場している。
日本のプルトニウムはこれら[再処理工場及びMOX燃料加工工場]の稼働当初は多少の増減はあるが、「長期的には、日本のプルトニウム保有量を削減するという目標を達成する」ことが必要。
我が国は、上記の考え方に基づき、プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は、以下の措置の実現に基づき、現在の水準を超えることはない。
資料編
原子力委員会の2018年の説明と2003年の説明の全文比較
2018年7月31日版説明『我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方』(pdf) と、2003年8月5日版説明『我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について』(pdf)を並べてみると、内容に大差ないことが分かる。2018年版の「利用目的を記載した利用計画」というのは、2003年版にある「プルトニウム利用計画の公表」にあるものと変わりがない。
我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方(2018年7月31日 原子力委員会決定)
我が国の原子力利用は、原子力基本法にのっとり、「利用目的のないプルトニウムは持たない」という原則を堅持し、厳に平和の目的に限り行われてきた。我が国は、我が国のみならず最近の世界的な原子力利用をめぐる状況を俯瞰し、プルトニウム利用を進めるに当たっては、国際社会と連携し、核不拡散の観点も重要視し、平和利用に係る透明性を高めるため、下記方針に沿って取り組むこととする。
記
我が国は、上記の考え方に基づき、プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は、以下の措置の実現に基づき、現在の水準を超えることはない。
1. 再処理等の計画の認可(再処理等拠出金法)に当たっては、六ヶ所再処理工場,MOX燃料加工工場及びプルサーマルの稼働状況に応じて、プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う。その上で、生産されたMOX燃料については、事業者により時宜を失わずに確実に消費されるよう指導し、それを確認する。
2. プルトニウムの需給バランスを確保し、再処理から照射までのプルトニウム保有量を必要最小限とし、再処理工場等の適切な運転に必要な水準まで減少させるため、事業者に必要な指導を行い、実現に取り組む。
3. 事業者間の連携・協力を促すこと等により、海外保有分のプルトニウムの着実な削減に取り組む。
4. 研究開発に利用されるプルトニウムについては、情勢の変化によって機動的に対応することとしつつ、当面の使用方針が明確でない場合には、その利用又は処分等の在り方について全てのオプションを検討する。
5. 使用済燃料の貯蔵能力の拡大に向けた取組を着実に実施する。
加えて、透明性を高める観点から、今後、電気事業者及び国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を改めて策定した上で、毎年度公表していくこととする。
※六ヶ所再処理工場は2021年度上期、MOX燃料加工工場は2022年度上期に竣工を計画。以上
我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について (2003年8月5日 原子力委員会決定)
我が国の原子力利用は、原子力基本法に則り、厳に平和の目的に限り行われてきた。今般プルトニウム利用を進めるにあたり、原子力委員会は、平和利用に係る透明性向上の観点から下記の基本的考え方を示すこととする。
記
1.プルトニウムの平和利用に対する考え方
我が国は核兵器の不拡散に関する条約(NPT)を批准し、それに基づく厳格な保障措置制度の適用を受けることにより、プルトニウムの平和利用に対する国際的な担保がなされている。しかしながら、プルトニウムという機微物質の利用に対する国内的及び国際的な懸念を生じさせないためには、プルトニウムの利用の透明性向上を図ることにより国内外の理解を得ることが重要である。そのため、原子力委員会としては、利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則を示すとともに、毎年プルトニウム管理状況を公表するなど関係者がプルトニウム平和利用に係る積極的な情報発信を進めるべきであるとの方針を示してきたところである。我が国初の商業用再処理工場である六ヶ所再処理工場については、現在建設が最終段階に達しており、アクティブ試験の段階から使用済燃料からのプルトニウムの分離、回収が開始されることとなる。
六ヶ所再処理工場の操業に伴い、今後は相当量のプルトニウムが分離、回収されることとなるため、原子力委員会としては、当該プルトニウムの利用目的を明確に示すことにより、利用のより一層の透明性の向上を図ることが必要であると考える。
2.プルトニウムの利用目的の明確化のための措置
プルトニウムの利用目的を明確に示すため、原子力委員会は、以下の基本的考え方を満たす措置を実施することが必要であると考える。この措置により明らかにされた利用目的の妥当性については、原子力委員会において確認していくこととする。①プルトニウム利用計画の公表
電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表することとする。利用目的は、利用量、利用場所、利用開始時期及び利用に要する期間の目途を含むものとする。ただし、透明性を確保する観点から進捗に従って順次、利用目的の内容をより詳細なものとして示すものとする。②利用計画の変更
プルトニウム利用計画が国内外に対する透明性の向上のための手段として実効性を有するためには、最新の状況をふまえた利用計画とすることが必要である。そのため、電気事業者のプルサーマル計画の進捗状況、日本原燃の再処理工場等の稼働状況等により利用計画への影響が懸念される場合には、電気事業者及び日本原燃は、取るべき措置についての検討を行い、必要があれば利用計画の見直しを行うこととする。3.海外で保管されるプルトニウム及び研究開発に利用されるプルトニウムについて
海外で保管されているプルトニウムは、プルサーマルに使用されるものについては、海外でMOX燃料に加工された上で我が国に持ち込まれることとなる。そのため、その利用について平和利用の面から懸念が示されることはないと考えられるが、透明性の一層の向上の観点から、燃料加工される段階において国内のプルトニウムに準じた措置を行うものとする。核燃料サイクル開発機構東海再処理施設において分離、回収されるプルトニウムについては、核燃料サイクル開発機構など国の研究機関において保管され、また研究開発等に利用されているが、これら研究開発に利用されるプルトニウムについても、研究開発が有する情勢の変化によって機動的に対応することが求められるという性格に配慮しつつ、利用の透明性向上が図られるよう、核燃料サイクル開発機構など国の研究機関は、商業用のプルトニウムに準じた措置を行うものとする。
*「利用目的の妥当性については、原子力委員会において確認」が如何に名ばかりのものであったかについては、本文注2及び次を参照。
プルトニウム削減の第一歩は再処理工場運転放棄 核情報 2018. 6.22,
追補:古い虚構から新たな虚構へ? 検証の試み
「プルトニウムの適切な管理・利用」資源エネルギー庁 2018年3月20日
出典:第17回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会(2018年3月20日)資料7 「これまでの議論の整理について」(事務局提出資料、pdf)「プルトニウムの適切な管理・利用」(26ページ)
「再処理等拠出金法」に対する附帯決議 第190回国会国会 2016年
[2016年1月4日~6月1日]国会閣法第17号 附帯決議
第190回国会閣法第17号 附帯決議
原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 核燃料サイクル政策は、今後の原子力発電所の稼働量、再処理施設の稼働時期、技術革新、国際情勢等と密接に関係しており、事業期間も長期にわたるため、将来の状況の変化に適切に対応できるよう柔軟性を確保すること。そのため、将来的に状況が変化し、政策の見直しが必要となるような場合には、政府は責任を持って、本法律案についても見直しを検討し、必要な措置を講じること。
また、本法附則第十六条の規定に基づく見直しに当たっては、政府答弁や附帯決議を踏まえて行うこと。
二 核燃料サイクル政策の将来における幅広い選択肢を確保する観点、さらに、すでに発生している研究炉の使用済燃料や福島第一原子力発電所の使用済燃料対策の観点から、使用済燃料の直接処分や暫定保管を可能とするための技術開発や必要な措置など、多様なオプションの検討を進めること。
三 プルトニウムの需給バランスに関して、「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を堅持するとともに、政府は原子力事業者に対して、この原則を認識したうえで再処理事業を実施するよう指導し、仮にこの方針に反する再処理等事業の実施中期計画を認可法人が策定した場合には、経済産業大臣はこれを認可しないものとすること。
四 認可法人が策定する再処理等事業の実施中期計画を経済産業大臣が認可する際には、原子力の平和利用やプルトニウムの需給バランス確保の観点から、原子力委員会の意見を聴くものとし、その意見を十分に斟酌して認可の適否を判断するものとすること。
五 再処理事業が及ぼす影響は、地域振興から国際安全保障に至るまで幅広いため、事業の推進に際しては、事業を総合的・大局的な観点から評価する仕組みを構築すること。
六 使用済燃料の貯蔵能力の強化や高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定を巡る課題の解決に向け、国がその責任と役割をより一層明確にしながら的確に対応すること。
また、使用済燃料の安全な貯蔵は、短期的のみならず、中長期的にも必要なものであり、政府の積極的かつ責任ある関与のもと、乾式貯蔵施設等による中間貯蔵能力の拡大を進めるものとすること。
七 使用済燃料の再処理等を進めるに当たっては、青森県、六ヶ所村など立地自治体等関係者の理解と協力が不可欠であることに鑑み、今後とも再処理事業について、これら立地自治体等関係者との信頼関係の下で、円滑かつ連携して進められるよう留意すること。
八 安全確保を大前提に、再処理等事業を適切かつ効率的に進めていくためには、これまで蓄積されてきた再処理等に係る人材・技術等を散逸させることなく最大限に活用することが不可欠であることを踏まえ、再処理等の現業を担う再処理事業者に対する使用済燃料再処理機構による管理・監督等に当たっては、適切な安全管理や民間企業の活力発揮を損なうことのないよう留意すること。また、従事者の雇用の安定や人材の確保・育成、関連技術・技能の継承に努めるとともに、憲法並びに労働基準法に基づく労使自治を尊重するものとすること。
九 我が国の核燃料サイクル政策の推進に責任を有する国は、その責任を果たすため、電力小売全面自由化により競争が進展し、また原子力依存度が低減していく中においても、認可法人が使用済燃料の再処理等を適正に実施できるよう、適切に関与すること。その際、我が国のエネルギー政策と整合して一体的に推進されるよう、認可法人に対し十分な指導監督を行うこと。
十 電力システム改革以降の競争の進展や原子力依存度の低減など新たな環境下においても、原子力事業者が、必要な人材・技術を維持しながら、今後国内において増加する廃炉の安全かつ確実な実施や新規制基準への対応、使用済燃料の処理、地球温暖化対策及び電力安定供給への貢献等の課題への適切な対処が可能となるよう、事業環境の整備について、今般の制度的対応を進めることと並行して検討を行い、必要な措置を講ずること。
特に、原子力損害賠償制度について、原子力損害賠償支援機構法附帯決議並びに改正電気事業法(第三弾)附帯決議等を踏まえ、電力小売全面自由化により小売事業者間競争が進展する中における国と事業者の責任分担や発災事業者とその他の原子力事業者との間の負担の在り方等を含め、速やかに検討を行い必要な措置を講ずること。
十一 過去に発生した使用済燃料の再処理等に要する費用については、再処理等の適正な実施が図られるよう検討し、その積算に係る具体的な考え方を明らかにするとともに、適時その検証を行うこと。
なお、原子力事業者における事業環境の変化等の個別事情も十分踏まえて、納付方法の変更等に可能な限り柔軟に対応すること。
また、経済産業大臣の認可を要する認可法人の設立にあたり必要となる事業計画書の記載事項については、使用済燃料の再処理等の実施及び拠出金の収納等の業務に関する事項のほか、財務に関する事項及び安全対策に関する事項を含めること。
使用済燃料再処理等実施中期計画(2023年3月28日) 使用済燃料再処理機構
出典:使用済燃料再処理等実施中期計画 使用済燃料再処理機構
使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更について(見解)原子力委員会 2023年3月22日
府科事第376号
令和5年3月22日経済産業大臣
西村 康稔 殿原子力委員会委員長
上坂 充使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更について
令和5年3月13日付け20230306資第11号をもって、原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議を踏まえて意見を求められた、原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律第45条第1項後段の規定に基づき使用済燃料再処理機構から経済産業大臣に変更認可申請のあった使用済燃料再処理等実施中期計画に対する原子力委員会の意見は、別紙のとおりである。
(別紙)
使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画の変更
について(見解)令和5年3月22日
原子力委員会この度、20230306資第11号をもって経済産業大臣から意見を求められた使用済燃料再処理機構(以下「機構」という。)が変更認可申請した使用済燃料再処理等実施中期計画(以下「実施中期計画」という。)について、原子力委員会は、以下のとおり意見を示す。
今般の実施中期計画には、2023年度から2025年度の3年間における再処理及び再処理関連加工の実施場所、実施時期及び量が記載されている。
実施場所については、日本原燃株式会社(以下「原燃」という。)の六ヶ所再処理施設及びMOX燃料加工施設となっている。これらの施設及び関連する施設はいずれも国際原子力機関(IAEA)の保障措置活動の対象とされている。
実施時期及び量については、六ヶ所再処理施設及びMOX燃料加工施設の稼働時期を踏まえ、再処理に関してのみ、2025年度に70トンの使用済燃料を再処理して0.6トンのプルトニウムを回収する計画となっている。回収されるプルトニウム0.6トンについては、加工や輸送等に必要な期間を踏まえて、2027年度以降に全量をプルサーマル炉で消費することが想定されている。これは、現時点におけるプルサーマル炉の運転計画や六ヶ所再処理施設等の操業見通し等を踏まえれば、理解できるものである。ただし、2026年度以降のMOX燃料加工施設の稼働状況やプルサーマル炉での消費状況については不確定要素を含むものであり、今後の進捗状況によっては変わり得るものである。
以上を踏まえると、原子力委員会としては、今般の実施中期計画を経済産業大臣が認可するに当たっては、原子力の平和利用やプルトニウムの需給バランス確保の観点から、機構をはじめとする関係事業者に対して、以下の点について必要かつ適切な指導を行うよう求める。
- ① 再処理による回収を実際に進めていくに当たっては、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方(」平成30年7月31日原子力委員会決定)を踏まえ、透明性を確保しつつ、国内施設で回収するプルトニウムの確実な利用とプルトニウムの需給バランスを踏まえた再処理施設等の適切な運転の実現に向けて最大限の努力を行うこと。
- ② 今後、具体的な取組の進捗に応じて、実施中期計画の見直しが必要になった場合には、適宜・適切に行うこと。
- ③ 実施中期計画に基づき事業を推進するに当たって、機構及び原燃は適切な役割分担及び実施体制の下、安全確保を最優先にして、効率的・効果的に事業を進めること。
- ④ 六ヶ所再処理施設及びMOX燃料加工施設の安全かつ順調な操業に向けて、原燃は、安全確保を最優先に適切な工程管理を行うとともに、技術的知見の蓄積・承継に取り組むこと。また、必要に応じて、電気事業者等は十分な技術的・人的支援を行うこと。
以上
年表式まとめ(詳細編)
- 1991年
-
原子力委員会核燃料専門部会報告書『我が国における核燃料リサイクルについて』発表
*「必要な量以上のプルトニウムを持たないようにすることを原則とする」と宣言 - 1993年4月28日
-
六ヶ所再処理工場着工
- 1995年12月8日
-
高速増殖炉もんじゅナトリウム漏れ事故
- 1997年
- 六ヶ所再処理工場の計画が発表された1990年時点での完成予定の年。実際の建設開始は1993年
- 2月21日
- 電事連、『今後の原子燃料サイクルの推進について』発表
*2010年までに16〜18基でプルサーマル導入(年間7〜11トン消費)という計画。年間8トンのプルトニウム分離能力を持つ六ヶ所再処理工場の運転を正当化しようとするもの。 - 12月5日
- 政府は、「余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持している」ことを国際原子力(IAEA)に送った文書の中で説明。
我が国は、原子力基本法に基づき、厳に平和目的に限り原子力開発利用を推進してきており、核燃料サイクルを推進するに当たっては、核拡散に係る国際的な疑念を生じないよう核物質管理に厳重を期すことはもとより、我が国において計画遂行に必要な量以上のプルトニウム、すなわち、余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持しつつ、プルトニウム利用計画の透明性の確保に努めている。
出典:余剰プルトニウムを持たない国際公約とは? 核情報 2005.12.12
- 2003年8月5日
- 原子力委、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」(pdf) 発表、核拡散防止面での懸念に応えるため、
電気事業者はプルトニウム利用計画を毎年度プルトニウムの分離前に公表」し「原子力委員会は、その利用目的の妥当性について確認」し「電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的(利用量、利用場所、利用開始時期、利用に要する期間のめど)を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表する
プルトニウムをウランと混ぜた混合酸化物(MOX)燃料にして軽水炉(普通の原発)で利用すること(プルサーマル利用)を同委員会が確認するから余剰は生じないとの主張だ。しかし、これまで電気事業連合会が発表した利用計画では各社、利用開始年を再処理工場に隣接して建設中のMOX工場の完成予定年以降としているだけだ。
*電事連が発表してきた利用計画の例については、次を参照。プルトニウム削減の第一歩は再処理工場運転放棄 核情報 2018. 6.22 - 2016年12月
- もんじゅ廃炉決定
- 2017年7月20日
- 原子力委「原子力利用に関する基本的考え方」(pdf)決定 (翌日閣議決定)
*削減の必要性についての国際的関心のため、現在、唯一の現実的な手段である軽水炉でのMOX利用での対応が求められ、日本の方針を「適切に説明」することが重要と。 - 10月3日
- 原子力委「日本のプルトニウム利用について【解説】」(pdf)について議論・決定
*「案」についての質疑の中で、阿部委員長代理が次の部分について質問する。
六ヶ所再処理工場操業開始までに電気事業者が、「最新の実績を踏まえた新たなプルトニウム利用計画を公表し、国(原子力委員会)がその妥当性を確認……以上のことから……長期的に、日本のプルトニウム保有量の削減という目標が達成されるであろうと認識している」阿部委員長代理 ここは非常に重要な文章で、原子力委員会としては減っていくと、こういう認識であると、こういうことですね。川渕さん、この長期的にって、どのぐらいの期間を考えられておられるんですか?
川渕英雄企画官 えーっと、まあ非常に難しいところでありますけれども(笑い)、あの、えー、まあ、あの、そこまではまだ検討はしていないということ。出典:第34回原子力委員会定例会議(10月3日)議事録(pdf)
参考:原子力委員会の滑稽な論議──プルトニウム利用について 核情報 2017.11.27 - 2018年1月16日
-
原子力委、2003年「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」の改訂作業をすると決定
*岡委員長発言私の意見ですが、日本がプルトニウム利用について国際的にきちんと説明をするということは重要で、今日の資料もそういう趣旨でつくってあるというふうに思います。
特に1ページがそういう説明になっているわけです。日本は世界の中で特殊な立場にあると。昔から、1950年代から核燃料サイクルの開発を民生用でやっておりますというようなこと。国際原子力機関の保障措置を初め核不拡散の優等生であるというようなところ。それから、最近、商業用のプルトニウムについて再処理機構というのができまして、経産省はその計画を認可するということで、国も民間の再処理事業の計画を見ることができるようになったというようなところが重要なメッセージかと…今後の在り方についてということで、平成15年のときのは、そのときとしてはよかった、適切だったのだろうと思いますが、利用目的のないという言い方は少し曖昧であるというところもあって、もう少しアップデートしていくことは日本として必要ではないかということで、その検討をする必要があるのではないかというふうに思います。出典:第1回原子力委員会定例会議議事録(2018年1月16日)(pdf)
*資料「日本のプルトニウム利用の現状と課題: 2018年1月16日(pdf) 原子力委員会 抜粋
日本のプルトニウムはこれら[再処理工場及びMOX燃料加工工場]の稼働当初は多少の増減はあるが、「長期的には、日本のプルトニウム保有量を削減するという目標を達成する」ことが必要。
- 7月3日
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エネルギー基本計画(pdf)閣議決定
平和的利用を大前提に、核不拡散へ貢献し、国際的な理解を得ながら取組を着実に進めるため、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を引き続き堅持し、プルトニウム保有量の削減に取り組む。これを実効性あるものとするため、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮しつつ、プルサーマルの一層の推進や、2016年に新たに導入した再処理等拠出金法の枠組みに基づく国の関与等によりプルトニウムの適切な管理と利用を行う。
- 7月16日
-
日米原子力協力協定(30年の効力期限)、期限を定めない形で自動延長
*米国起源の使用済み燃料を日本が再処理してプルトニウムを取り出すことを一括して認めるもの。 - 7月31日
-
原子力委、我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方(pdf)決定
我が国は、上記の考え方に基づき、プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は、以下の措置の実現に基づき、現在の水準を超えることはない。
1. 再処理等の計画の認可(再処理等拠出金法)に当たっては、六ヶ所再処理工場,MOX燃料加工工場及びプルサーマルの稼働状況に応じて、プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う。その上で、生産されたMOX燃料については、事業者により時宜を失わずに確実に消費されるよう指導し、それを確認する。
2. プルトニウムの需給バランスを確保し、再処理から照射までのプルトニウム保有量を必要最小限とし、再処理工場等の適切な運転に必要な水準まで減少させるため、事業者に必要な指導を行い、実現に取り組む。・・・
今後、電気事業者及び国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を改めて策定した上で、毎年度公表していくこととする。
工場運転開始遅延は政府の政策? 原子力規制庁と日本原燃のやり取り
原子力規制庁議事録(2022年11月25日)
件名:「日本原燃(株)再処理施設の設工認に関する面談」 2.日時:令和4年11月25日(金) 10時30分~12時00分
https://www2.nra.go.jp/data/000411510.pdf
5.要旨 本年11月15日の審査会合を踏まえ、日本原燃株式会社(以下「日本原燃」 という。)が今月目処に実施するとした、既に実施した設計における設計プロ セス等の確認のうち、外部火災に関する設計等の確認状況について、日本原燃 と以下のとおり面談を行った。
(1)日本原燃から、主に以下の説明があった。
外部火災に関する設計は、新規制基準の追加事項であるので、関連する 設工認対象設備全てを説明する必要がある。主要な説明事項は、許可で設 定した火災源である森林火災、近隣の産業施設等の火災及び爆発、航空機 墜落火災の大きく3つの評価内容に係る説明と、設計条件を踏まえた防護 設計として、耐火被覆、遮熱板の施工等の具体的な設計内容の説明となる。 その際、主要な説明事項同士の関連性で一定の説明パターンとなるので、 それが類型となり、その類型の中で代表的に説明ができるものと考えている。
(2)原子力規制庁からは、主に以下の旨伝えた。
・これまで、本日説明があった外部火災のほか、耐震、溢水及び材料構造に 係る設計に関して面談を実施してきたが、他の要求事項についても同様に 整理すれば、おのずと設計プロセスのパターンができるので整理を進める こと。
・日本原燃は、現場で設備の設計の妥当性等を確認できるほど許可の内容を 十分理解できておらず、また、現場に行っていないことが明らかになって いるため、早急に改善すること。
原子力規制庁議事録(2022年11月29日)
議事要旨(pdf)
(日本原燃(株)再処理施設の設工認に関する面談)
1. 件名:「日本原燃(株)再処理施設の設工認に関する面談」 2.日時:令和4年11月29日(火) 15時30分~17時45分
5.要旨
・・・
(1) 日本原燃から、主に以下の説明があった。
・適切にできていないことが明らかになっている事項として、許可や設計図 書の確認とその理解、また、既に工事が進んでいる現場の確認について、 最優先で確認を進めている。
・設工認申請対象機器等の分類(新規に設置する機器、既設である設備のう ち設計条件が変更になり改造をする機器や新規制基準で新たに設工認の 対象となった機器等)と、前回11月25日の面談で話のあった設計評価 事項に対する共通した設計プロセスとの関係を整理することの重要性を 認識し、現在、それらについて、技術基準規則の各条文に展開した際の具 体的な整理を実施している。
(2)原子力規制庁からは、主に以下の旨伝えた。
・原子力に携わる者として、許可や設計図書の内容を理解し、それを現場と 関連付けて全体を理解し、安全を確保するのは常識であり、しっかりと対応していただきたい。
・これまで面談で話してきたことを踏まえ、次回の審査会合で次回以降の申請に係る進め方や説明の方針等に関して説明できるようにすること。
脚注
-
オランダも、同国唯一の発電用原子炉ボルセラ(50万kWe)の使用済み燃料の再処理をフランスに委託している。1973年に運転を開始した同炉は、2034年に閉鎖予定となっていたが、2022年12月政府は、2033年までの寿命を延長する計画を発表した。実現可能性について安全性当局が検討中。以下を参照: Nuclear Power in the Netherlands, World Nuclear Association, December 2022. オランダとフランスの複雑な契約については、次を参照。フランク・フォンヒッペル 田窪雅文 カン・ジョンミン(姜政敏)[田窪雅文訳]『プルトニウム──原子力の夢の燃料が悪夢に』緑風出版, 2021年, 第6章, 140~141ページ。 ↩︎
-
◎政府に促された電気事業連合会が1997年2月21日に発表した『今後の原子燃料サイクルの推進について』には、2010年までに16~18基でプルサーマル導入とある。2000年までに4基(関西電力2基、東京電力2基)、2000年初頭に5基(東京/中部/九州電力で各1基、原電で2基)、2010年までに7~9基(東京電力0~1基、関西電力1~2基、北海道/東北/北陸/中国/四国電力および電源開発で各1基)プルサーマルを導入するというもの(合計16~18基)。
詳細は次を参照:1997年に登場した計画の中身は? 核情報
福島事故時のMOX利用営業運転炉は玄海3号、 伊方3号、 高浜3号、それに、福島第一3号の合わせて4基だけだった。そして、現在再稼働している炉のうちMOX利用炉の数も4基だ(高浜3・4号炉、伊方3号炉、玄海3号炉)。
◎ 2003年8月5日に原子力委員会が発表した『我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について』(pdf)は、次のように述べている。電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表することとする。利用目的は、利用量、利用場所、利用開始時期及び利用に要する期間の目途を含むものとする。…この措置により明らかにされた利用目的の妥当性については、原子力委員会において確認していくこととする。
しかし、実際に電気事業連合会が発表してきた「利用計画」の「利用開始時期及び利用に要する期間の目途」の項には、下の例にあるように、「XX年度以降」とあるだけだ。XX年度というのは、六ヶ所再処理工場に隣接して建設中のMOX燃料製造工場の(その時点での)運転開始予定年だ。つまり、「計画」は、MOX工場ができるまで六ヶ所で取り出したプルトニウムは消費できないと宣言しているだけだ。何年何月から何年何月までの間に利用するという計画ではない。いずれ使うつもりという意思宣言に過ぎない.
例:[六ヶ所再処理工場回収プルトニウム利用計画(平成 22 年度)2010年](http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/sonota/__icsFiles/afieldfile/2010/09/17/plu_keikaku.pdf) 電事連
詳細は次を参照:プルトニウム削減の第一歩は再処理工場運転放棄 核情報、2018. 6.22、追補:古い虚構から新たな虚構へ? 検証の試み ↩︎
-
「再処理等拠出金法」は、正式には、「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律」という。2016年に「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律[2005年制定]の一部を改正する法律」が制定され、この改正により、法律の題名も変えられて、「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律」となった。詳しくは次を参照。再処理永久化法10月1日施行の計画──資料整理 核情報 2016. 5.27 ↩︎
-
2018年3月の玄海3号での640㎏の照射については、次を参照。
日本のプルトニウム保有量、MOX 燃料輸送・装荷・保管まとめの2018年(及び2011年、2013年)の項;日本、プルトニウム保有量を640kg過小報告ーー玄海3号装荷後使用せず取り出したMOX燃料 核情報 2014. 5.28。 ↩︎ 再処理「必要量だけ認可」 プルトニウム削減へ新指針決定 東奥日報 2018年8月1日(リンク切れ)↩︎
日本原燃社長の説明については、例えば次を参照。社長記者懇談会(2022年11月25日)
再処理工場のしゅん工時期の検討状況一日も早いしゅん工・操業に向け、安全を最優先にオールジャパン体制で全力で取り組んでまいります。
原子力規制庁と日本原燃の面談の様子については、例えば、次を参照。設工認に関する面談(2022年11月25日, pdf)(2)原子力規制庁からは、主に以下の旨伝えた。・・・ 日本原燃は、現場で設備の設計の妥当性等を確認できるほど許可の内容を十分理解できておらず、また、現場に行っていないことが明らかになっているため、早急に改善すること。
設工認に関する面談(2022年11月29日, pdf)(2)原子力規制庁からは、主に以下の旨伝えた。
詳細は、次を参照。資料編「工場運転開始遅延は政府の政策? 原子力規制庁と日本原燃のやり取り」 ↩︎
・原子力に携わる者として、許可や設計図書の内容を理解し、それを現場と関連付けて全体を理解し、安全を確保するのは常識であり、しっかりと対応していただきたい-
仏及び英国委託の再処理終了年
1)仏での再処理終了年(1999年)については以下を参照
Orano Recyclage, Traitement des combustibles usés provenant de l’étranger dans les installations d’Orano la Hague Édition 2022 (pdf)
2)英国委託の再処理終了年(2006年)については以下を参照
再処理施設の閉鎖・除染に当たっている英「原子力廃止措置機関(NDA)」から故マーティン・フォーウッドさん(英国再処理施設の地元で反対・監視運動を約30年に亘って展開)が2016年に得た回答。THORPにおける日本の軽水炉の使用済み燃料の剪断作業は04年9月に終了、酸化プルトニウム製造は05年3月31日までに終了(東海ガス冷却炉の使用済み燃料の再処理は06年に終了)。
出典:英再処理問題専門家逝く──日本のプルトニウムの謎解明に協力 核情報 2020. 2. 3
以下に、NDA回答(対訳)がある。
英国保管のプルトニウム、核兵器500発分の急増隠ぺいか無能力か、どちらも問題だ 核情報 2016.11. 7、添付資料1 英原子力廃止措置機関(NDA)回答 ↩︎ -
表1の13年の英国保管分の約3トンの増加のうち、純増は「割り当て」分の2.3トンだ。
残りの650㎏は、英仏両国での保管分のスワップによるもの。MOX燃料使用によるプルトニウム処分を急ぐドイツが英国に保有していたプルトニウムを東電分とし、代わりに、MOX製造工場のあるフランスにある東電のプルトニウムをドイツ所有に移したもの。
*2017年以後、増えていなかった英保管分が2020年に増えたのは、最後の0.6トンが割り当てられたため。参考:英国保管のプルトニウム、核兵器500発分の急増隠ぺいか無能力か、どちらも問題だ 核情報 2016.11. 7 ↩︎
-
電気事業連合会の2023年利用計画(2023年2月17日発表)については、次のまとめを参照。
出典:計画が遅れ続けても、「絵に描いた餅」計画を示し続ける電事連 核情報 2023. 3. 8 の表「2023年利用計画まとめ」
九電・四電は、両社がMOX工場のない英国で保管しているプルトニウムを仏保管の東電分と交換して仏でMOX燃料を製造する予定。玄海3号と伊方3号でのMOX燃料装填は、早くてそれぞれ「2026年度以降」、「2027年以降」となっている。
出典:名義変更をすれば、迅速に消費できる? 核情報 2022. 2.18〜
追記
電気事業連合会が 2024年2月16日に発表した利用計画(pdf) を見ると、電事連の想定でさえプルトニウムの消費が遅々として進まない様子が分かる。下は、同計画のまとめ。
電気事業連合会 プルトニウム利用計画(2024年2月16日)まとめ 2024年度 2025年度 2026年度 2027年度 2028年度 利用量(トンPut) 0 0 0.7 2.1 1.4 再処理による回収見込みプルトニウム量(トンPut) 0 0.6 1.4 0.6 2.3 [電力会社]所有量合計値(トンPut) 40.1 40.7 41.4 出典:電気事業連絡会プルトニウム利用計画(pdf) 黄色の部分は電事連の表及び使用済燃料再処理・廃炉推進機構の使用済燃料再処理等実施中期計画(pdf)(2024年4月1日)の下に参考として示されているデータ ↩︎
-
原子力委員会の資料「日本のプルトニウム利用の現状と課題: 2018年1月16日(pdf)に次のようにある。
↩︎フランスのプルトニウムマネジメント
再処理量のガイドラインがフランス政府によって明示されている。
58基のうち22基がMOX燃料で運転している。
余剰プルトニウムを発生させないために、分離プルトニウムの利用 見通しにしたがって、使用済燃料を再処理する。
2003年に示された方針は次の通り。「用途のない分離済みプルトニウムの量の増加を避けるために、使用済み燃料は抽出されるプルトニウムの利用目的が発生するのに合わせて再処理される(イコール・フロー(同等流量)の原則)。この原則は、後に、「流量(フラックス)適切性」の原則と改称される。 次を参照: 「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」の下でのフランス第一回報告 First national report on the implementation by France of its obligations under the Convention (pdf) (ダウンロード用),2003, page 9. -
例えば、1996年4月再処理事業所再処理事業変更許可申請書 日本原燃 から作成した次の表を参照。(年号などの表記を一部変更)
予定生産量 年度種類1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 ウラン酸化物
(t・U)0 0 0 0 0 36 180 330 470 620 730 Pu混合酸化物
(t・(U+Pu))0 0 0 0 0 1 4 7 11 14 16
↩︎ -
日本原燃は、ガラス溶融炉のリプレースの影響について次のように説明している。
②せん断開始以降、安全・安定運転を最優先に、段階的に再処理量を増やしていくと共に改良型ガラス溶融炉の導入を行い、2031 年度までに年間の最大再処理能力である 800tUPrまで再処理可能量を引き上げていく。
③ガラス溶融炉は、所定の寿命到達までに計画的にリプレースすることとしており、その1系列目のリプレースを2027 年度から 2028年度にかけて予定している(2 系列目は、1 系列目のリプレース以降に予定)。ガラス溶融炉は2 系列あるが、リプレース期間中は安全に作業を実施するためリプレースしないガラス溶融炉も含めて運転を停止することから、2027 年度は再処理可能量が低下する。出典:六ヶ所再処理施設およびMOX燃料加工施設 暫定操業計画(処理可能な年間再処理量および加工可能な年間加工プルトニウム量)日本原燃 2023年2月10日 ↩︎
-
2003年版と2018年版の該当部分は次の通り。
2003年版電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表することとする。利用目的は、利用量、利用場所、利用開始時期及び利用に要する期間の目途を含むものとする。…この措置により明らかにされた利用目的の妥当性については、原子力委員会において確認していくこととする。
2018年版
↩︎加えて、透明性を高める観点から、今後、電気事業者及び国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を改めて策定した上で、毎年度公表していくこととする。
-
次を参照:【原発最前線】プルトニウム削減は「フランス流」で 原子力委員長会見 産経新聞 2018年8月7 日、「『六ケ所しっかり動かして』 委員長、削減と両立求める] 東奥日報 2018年8月1日 ↩︎
-
次を参照。The 2020 International Forum on Peaceful Use of Nuclear Energy, Nuclear Nonproliferation and Nuclear Security, Mr. MATZKIN-BRIDGER Ross,Energy Attaché and DOE Director, U.S. Embassy 日本原子力研究開発機構;
Ross Matzkin-Bridger LinkedIn ↩︎ -
次を参照:「核保安サミットの日本開催期待」 元米高官スコット・ローカー氏 朝日新聞 2022年8月18日
↩︎聞き手・渡辺丘2022年8月18日
──オバマ大統領(当時)の呼びかけで2010年に始まった、主要国の首脳らが核テロ対策を話し合う核セキュリティーサミットは16年を最後に開かれていない。日本での開催を専門家が提案しています。
「サミットは、核セキュリティーの前進に対して、政治的な関心を高めた。新たな脅威に対処するため、日本でサミットを開催するなら歓迎だ。日本は核セキュリティーに強く関与している。来年5月の主要7カ国(G7)の広島サミットで表明すれば素晴らしいし、広島は最高の開催地の一つだと思う」