核情報

2017.11.27

原子力委員会の滑稽な論議──プルトニウム利用について

原子力委員会が『日本のプルトニウム利用について【解説】』(案)(pdf)について議論した10月3日の定例会議の録音は英国BBC の風刺ドラマのようで、「一聴」に値します。映像がないのが残念ですが。

長期的にはプルトニウム削減目標達成っていつ頃?「えーっと・・・」

まず、『解説』の結論部分に関する阿部信泰委員長代理と事務局のやり取りから。

『解説』「以上のことから、プルトニウムが溜まり続けることはなく、六ケ所再処理工場等の操業・加工に伴うある程度の増減はあるものの、一定のバランスの下で管理することが可能であると考えられ、長期的に、日本のプルトニウム保有量の削減という目標が達成されるであろうと認識している。」

阿部委員長代理「ここは非常に重要な文章で、原子力委員会としては減っていくと、こういう認識であると、こういうことですね。川渕さん、この長期的にって、どのぐらいの期間を考えられておられるんですか?」

川渕英雄企画官「えーっと、まあ非常に難しいところでありますけれども(笑い)、あの、えー、まあ、あの、そこまではまだ検討はしていないということ。」

林孝浩参事官(?)「軽水炉の再稼働がどれぐらいのスパンで動き出すかというところがかかわってくる話だとは思いますけども、やはり10、20[年]、そういう単位だと思っております。」

参考:

現存する全ての原子炉が40年で運転終了するとすれば、2031年に設備容量が現在の半分、2038年に現在の2割を切り、2064年にはゼロとなる。

出典 原子力発電における論点(pdf) 2015年3月 資源エネルギー庁
7ページ

質問は、使用済み燃料の再処理で取り出したプルトニウムをウランと混ぜて「混合酸化物(MOX)」燃料にして普通の原子炉(軽水炉)で燃やす計画に関するものです。1997 年に電気事業連合会が発表した計画では2010年までに16~18基でプルサーマル(MOX 利用)導入ということになっていましたが、下の表にあるように福島事故時にMOX 利用の許可を受けていた炉が10基。装荷して運転を開始していたのはわずか4基。現在MOX 利用許可炉で再稼働となっているのは3基です。年間8トンを分離する能力を持つ六ヶ所再処理工場を運転せず、再稼働がどんどん進んだとしても、英仏保管分を燃やすだけで10 年はかかってしまいます。

参事官は内閣府の人だから政府の政策を守ろうと・・・

事務局は、世界に向けてこのような解説を出すのは、1997年にIAEAに提出した『日本のプルトニウム利用計画』以来のことだと説明しています。同文書で「計画遂行に必要な量以上のプルトニウム、すなわち、余剰プルトニウムを持たないとの原則」に従うとの方針を国際的に宣言した際の日本のプルトニウム保有量は約24トンでした。現在ではその約2 倍の47トンに達しています。2018 年末までに英国で日本に割り当てられる予定の約1トンを入れると48トン。核兵器約6000 発分です。

阿部委員長代理は、「日本はエネルギー資源に乏しく、ウランの埋蔵量も限られていると考えられていたことら、使用済燃料を再処理してプルトニウムを利用する核燃料サイクル政策」に昔決めたという説明はいいが、ウランは豊富に存在することが判明し、MOX 利用が高くついているというような現在の状況についてなぜ語らないのかと何度も批判を展開しましたが、『解説』はほぼ「案」のまま発表されることとなりました。

委員長代理は、参事官がエネルギー基本計画にもある通り政府の政策がプルトニウム利用を決めているのだからというような現状追認の発言を繰り返すのに業を煮やして次のような趣旨の反論でチクリと一刺し。参事官は内閣府の人だから政府の政策を守ろうとしてどんな議論をしても守るというのだろうが常識的にはなかなか受け入れられないだろう、と。委員会の事務局を務めるのは内閣府原子力政策担当室です。一方、岡芳明委員長は、阿部先生は××だけしか知らないからそういうのだろうが、とか応戦。

是非、音声記録でお聴きください。第34回原子力委員会定例会議 ストリーミング
(このテーマの部分は、0:46 ⇒ 2:28。冒頭のやり取りは01:44:50 ⇒ 01:45:54 辺り。)会議の議事録が出ているのは2017年2月7日のものが最後です。

本格工事の始まっていない原子炉も「存在」?

『解説』には事実関係の間違いもあります。「日本の商業用原子力発電炉は60基あったが…現在は45基の軽水炉が存在する」と述べていますが、実際に存在するのは下の表にある通り、42基です。建設中の3基(島根3号、大間、東電東通1号)を足した数字が45基。東京電力東通原発1号機は2011年1月25日認可を得て着工。福島事故のため同年4月に予定されていた本格工事は見合わせたままです。同原発に関する東京電力の紹介ページのタイトルは「東通原子力建設所」となっています。

私は原子力の専門家だからと繰り返す岡委員長と内閣府は、これを「存在する」と世界に向けて主張しています。委員会ドラマから目が離せません。次回放送、乞うご期待!

原子力発電所新規制基準適合性審査状況(2017年11月末現在)とMOX利用
福島事故時MOX利用許可10基(福島第一3号含む:柏崎刈羽3号は2002年9月12日地元県・市・村が事前了解取消決定)
福島事故時の合計は 54 基(42 基+廃炉 6 基+福島第一 6 基)
稼働済み(定検中含) 5 基高浜3高浜4伊方3川内1川内2  
合格(新規性基準に基づく設置許可)7 基高浜1高浜2美浜3大飯3大飯4玄海3玄海4
審査中 14 基 ( 大間:建設中)泊1泊2泊3東北電力東通1女川2柏崎刈羽6柏崎刈羽7
浜岡3浜岡4★志賀2島根2東海第 2◆敦賀2*大間
上記合計 26 基 建設中の大間(炉心全体に MOX 燃料装荷の設計)を除くと 25 基
未申請 18 基 ( 島根3号:建設中(ほぼ完成)女川1女川3柏崎刈羽1柏崎刈羽2柏崎刈羽3柏崎刈羽4柏崎刈羽5
福島第二1福島第二2福島第二3福島第二4*島根3伊方2玄海2
浜岡5志賀1大飯1◆大飯2◆   
上記合計 44 基 建設中の大間・島根3を除くと 42 基
廃炉6基(福島事故前廃炉決定の
東海第一、浜岡1、敦賀1 2 号、及び
福島第一の 6 基、計9基を除く)
敦賀1 美浜1美浜2島根1伊方1玄海1 
福島事故時の合計は 54 基(42 基+廃炉 6 基+福島第一 6 基)
出典:電気事業連合会 http://www.fepc.or.jp/theme/re-operation/ 他
赤字は福島事故時MOX利用営業運転原子炉(玄海3号, 伊方3号, 高浜3号)。福島第一3号と合わせて4基。
現在運転中でMOX燃料を装荷しているのは3基(高浜3及び4号、伊方3号)。玄海3号が来年動き出せば計4基となる。
★浜岡4号は2014年4月2日静岡県知事がMOX利用事前了解白紙表明
◆は40年寿命問題炉。東海第二(1978年11月28日~), 大飯1号(1979年3月27日~), 大飯2号(1979年12月5日~)。東海第二は2017年11月24日延長申請。許可済みの高浜1及び2号、美浜3号は20年延長許可も取得済み。

「存在する」東京電力東通原子力発電所

【 平成23年7月 工事現場全景 】
平成22年3月
《 工事現場の状況 (平成23年10月撮影) 》
平成23年7月

資料

追補


以下、当日の論点のいくつかと、あやふやなままにされた数字に関するデータを挙げておきます。上の表は数字の整理の試みの一つです。

原子力についての説明か、プルトニウム利用についての説明か?

議論になった日本のプルトニウム利用について【解説】案(pdf)の冒頭部分

1.日本における原子力発電とプルトニウム利用の背景・歴史

(1)日本のエネルギー事情:エネルギーの安定供給

エネルギーの安定供給は、日本国民の健康で文化的な生活に必須である。日本は、エネルギー資源に乏しく、化石燃料(石炭、原油、天然ガス)のほぼ全量を輸入に依存している。原子力発電を除くと、1次エネルギーの自給率はわずか6%程度である。これは、先進国の中でも極めて低い。

2015 年に国(経済産業省)が作成した長期エネルギー需給見通しでは、2030 年度の電源構成として、再生可能エネルギーを 22~24%程度、原子力を 20~22%程度とする見通しを立てている。しかし、それでもなお1次エネルギー自給率(原子力発電を含める)は概ね 25%程度と、他の先進国より低い。・・・

(3)日本のプルトニウム利用の歴史

日本は、軽水炉用燃料集合体を国内で製作できるが、現在、原料のウランは、すべて海外からの輸入である。

使用済燃料中には、プルトニウムが生成蓄積している。日本はエネルギー資源に乏しく、ウランの埋蔵量も限られていると考えられていたことから、使用済燃料を再処理してプルトニウムを利用する核燃料サイクル政策を、原子力利用の当初より採用してきた。

〇阿部委員長代理発言の趣旨

エネルギー自給率が低いという説明は原子力を使うということの説明ではあってもプルトニウムを使うことを正当化する理由にはならない。低濃縮ウランで原子力発電はできる。一般の人は自給率が低いからプルトニウム利用をするのだという説明だと思ってしまう。過去にウランが希少だと思って、再処理で取り出したプルトニウムを高速増殖炉で使う計画を進めるという決定をしたというのはそうだが、その後変化があった。一般の人や外国の人に分かりやすい説明・解説を目指すなら、例えば次のような変化した事実をニュートラルに書くべきだ。

ウランが豊富にあることが判明した。

米英独など高速炉開発を止めた。

特にカーター政権は核拡散の観点から他国にも再処理をしないようにと働きかけた。

再処理は高くつく。

〇事務局+岡委員長発言趣旨

この紙は歴史現状を説明したものでプルトニウム利用推進のためのものではない。阿部委員の言っていることは政策論であり、この文書で必要なのは説明・解説だ。

〇核情報 と言うが、阿部委員長代理の指摘通り、プルトニウム利用政策決定当時と状況が変わったことやMOX利用は高くつくことを書かず、結論として「長期的に、日本のプルトニウム保有量の削減という目標が達成されるであろうと認識している」と書けば、現状のまま推し進める政策でいいという政策文書になる。

プルトニウム利用は民間事業か国策か?

1:28~1:32 まとめ

〇岡委員長

再処理は民間事業だ。民間事業が投資してやっているから、やめろと言うと財務上も保証しなければならなくなるからできない。

〇阿部委員長代理

電事連も日本原燃も国策だからやっていると言う。閣議決定されたエネルギー基本計画でもサイクル、プルトニウム利用、MOX利用と決めている。しかも政府は、再処理の認可法人を作って金を徴収している。

〇岡委員長

電事連は団体として、これをやろうとしている。国に責任があるというような言い方は通じない。そんな甘いものではない。

〇核情報 デジャブ? 以下を参照:
無理のある近藤駿介原子力委員会委員長の論法 2012. 2. 16 核情報

MOX利用と低濃縮ウラン燃料とどちらが経済的か?

1:16:30

〇阿部委員長代理

ウランを買って濃縮して低濃縮ウランの燃料棒を作って発電するのと使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出してMOX燃料を作って軽水炉に何%か入れて発電するのとどっちが経済的ですか。

〇林参事官

過去に試算していたかと思いますが、確か、再処理が少し高いという結果だったとは思います。

〇核情報 原子力委員会が2011年に出した文書にある次の表が再処理してMOX燃料を製造するコストは、ウランを買って低濃縮ウラン燃料を製造するのと比べ約12倍になることを示している。

工程別の事業要素の単価
各事業要素の単価
割引率0%1%3%5%
ウラン燃料 (万円/tU)25,90026,20027,10028,200
MOX燃料 (万円/tHM)40,60040,70041,50042,700
再処理等 (万円/tU)37,20037,80041,10046,400
SF輸送
(発電所→再処理)
(万円/tU)1,7001,7001,7001,700
SF輸送
(発電所→中間貯蔵)
(万円/tU)1,6001,6001,6001,600
中間貯蔵 (万円/tU)3,6004,0005,2006,900
高レベル放射性
廃棄物処分
(万円/tU)8,5008,70011,00015,700
SF輸送
(中間貯蔵→直接処分場)
(万円/tU)1,6001,6001,6001,600
直接処分(最小値) (万円/tU)13,20013,70017,40024,900
直接処分(最大値) (万円/tU)15,70016,30020,10027,600
出典:電気事業者、日本原子力研究開発機構及び資源エネルギー庁提示資料より内閣府作成 

出典:

核燃料サイクルコスト、事故リスクコストの試算について(見解)2011年11月10日(注)(pdf)資料集1 核燃料サイクルコストの試算(PDF形式: 1.5MB)2011年11月10日 28ページ

核情報による計算方法

1トンのMOX燃料を作るのに7.5トンの使用済み低濃縮ウラン燃料を再処理してプルトニウムを取り出す必要があるとして、上の表の割引率0の数字を使う:

1)1トンのMOX燃料のコスト

7.5トンの使用済み燃料の再処理コスト:37,200x7.5=279,000 万円

取り出したプルトニウムを使って1トンのMOX燃料を製造するコスト:40,600 万円

合計 319,600 万円

2)ウランを買ってきて濃縮をし、1トンの低濃縮ウラン燃料を製造するコスト

25,900 万円

3)1)÷ 2) 319,600÷25,900=12.3

阿部委員長代理の質問に対する核情報の答え:

1)低濃縮ウラン燃料使用の方が圧倒的に経済的で、MOX燃料使用は12.3倍のコストがかかります。

2)プルトニウムをタダでもらってMOX燃料を製造するコスト(40,600万円/トン)も、「ウランを買って濃縮して低濃縮ウランの燃料棒を作る」コスト(25,900万円/トン)の1.5倍以上になります。

できてしまったものを使うのは普通?

1:52

〇『解説』

使用済燃料中には、プルトニウムが生成蓄積している。・・・使用済燃料を再処理してプルトニウムを利用する核燃料サイクル政策を、原子力利用の当初より採用してきた。

〇中西委員

ウランを燃やすとプルトニウムができる。できてしまったものを利用するのは普通かなと思います。

〇核情報 「なぜエベレストに登るのか」と聞かれて、「それがそこにあるからだ」と答えたという登山家ジョージ・マロリーのような「名言」。 国民がいくら金を払わされようが、核拡散・核テロの問題があろうが、関係ない?

低濃縮ウラン燃料に含まれるプルトニウムの割合:約1%


出典 電気事業連合会図面集(pdf)
3ページ

未使用MOX燃料に含まれるプルトニウムの割合


出典 電気事業連合会図面集(pdf)
20ページ

MOX使用軽水炉におけるMOX燃料の割合


沸騰水型炉の例

燃料集合体の数にして炉心の約4割。沸騰水型炉の場合、MOX燃料集合体の中に低濃縮ウラン燃料棒も入っているので、炉心全体の重金属重量に対するMOX燃料棒の重金属重量の割合は約1/3。

変更の概要 3号炉において、燃料集合体560体のうち、ウラン・プルトニウム混合酸化物(以下、「M OX」という。)燃料集合体を最大228体装荷する(*)。 なお、MOX燃料集合体は、高燃焼度8×8燃料集合体と同一の構造を持ち、プルトニウム含 有率を燃料集合体平均ウラン235濃縮度で約3.0wt%相当以下に調整したものである。 MOX燃料に関して、9×9燃料(A型)及び9×9燃料(B型)と比較した基本仕様を第1 表に、構造図を第1図に示す。 (*)MOX燃料集合体が最大228体装荷された場合、炉内の全重金属(ウラン及びそれ以上 の質量数を持つ元素)の初期重量に対するMOX燃料棒に含まれる全重金属の初期重量の比は、 約32%となる。

出典:東北電力株式会社 女川原子力発電所原子炉設置変更(3号原子炉施設の変更)の概要(pdf) 2010年3月


出典:女川原子力発電所3号機のプルサーマルについて(pdf) 2009年8月 原子力安全・保安院


加圧水型炉の例

燃料集合体の数にして炉心の約1/4。重量割合も同様。

使用済燃料を再処理して得られるプルトニウムを利用したMOX燃料を取替燃料の一部として装荷する(157体中最大40体)。

*MOX燃料の構造・寸法・形状等は17行17列型ウラン燃料と同一

*プルトニウム富化度

・ペレット最大 13wt%以下

・集合体平均 約4.1wt%濃縮ウラン相当以下

・3種類の富化度分布

・燃料集合体最高燃焼度 45,000MWd/t

出典:高浜3、4号機における導入計画(pdf) 2008年3月29日 関西電力株式会社

核燃料サイクルコスト、事故リスクコストの試算について(見解)2011年11月10日(注)(pdf)
資料集1 核燃料サイクルコストの試算(PDF形式: 1.5MB)2011年11月10日は、原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会(第1回 2011年10月11日(火)~第15回 2012年5月16日)によるものである。同小委のページには、核燃料サイクル政策の選択肢について(2012年6月21日委員会決定)(PDF形式: 258KB)他、核燃料サイクル政策の選択肢に関する検討結果について(原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会 座長報告)(PDF形式: 803KB)など各種文書・資料が掲載されている。この小委員会の運営が原子力産業よりだとの批判を当時精力的に展開した一部マスコミ関係者には、事務局の持つ体質に縛られた面のある小委員会の準備した資料でさえ、再処理推進に都合の悪いものを無視しようとする現原子力委及び同委事務局の動きについて注目していかれるよう期待したい。

参考資料



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