核情報

2016.11. 7

英国保管のプルトニウム、核兵器500発分の急増
 隠ぺいか無能力か、どちらも問題だ

もんじゅの廃炉を検討するが、再処理政策は続行するという日本政府。今回のサイクル維持の方針の基礎だという「2014年エネルギー基本計画」検討過程で抜け落ちていた英国保管のプルトニウム4トン強。2005年原子力政策大綱策定過程でも言及がない。隠ぺいか無能力か、どちらも大問題。以下、核情報と原子力情報室で11月2日のこの問題について開いた記者会見の資料を紹介します。

  1. 2016年11月2日 核情報プレスリリース もんじゅを放棄しても再処理継続──ずさんなプルトニウム・データ管理
  2. 記者会見パワポ資料
  3. 添付資料1 英原子力廃止措置機関(NDA)回答
  4. 添付資料2 我が国のプルトニウム管理状況議事録まとめ2014-2016年

ウェブサイト核情報 プレス・リリース 2016年11月2日 もんじゅを放棄しても再処理継続──ずさんなプルトニウム・データ管理

  • 英国保管に保管されている日本のプルトニウム急増問題
    • 2013年から急増:2018年までに合計約4トン
      2013年2.3トン、14年0.7トン、15年0.2トン、18年までにあと約1トン
    • 原子力委不確かな説明──英原子力廃止措置機関(NDA)」回答で急増理由明らかに
    • 搬出した使用済み燃料データから予測できたはずの4トン増を公表してなかったのは?
  • さらに公表すべきデータ
    • 1992年以前の分離済みプルトニウム量
    • 東海村再処理工場の各年のプルトニウム分離量

政府は9月21日高速増殖炉原型炉もんじゅについて、事実上、廃炉を決断したと思わせる発表をしたが、「核燃料サイクルを推進する」という。民主党政権時代に策定された「原子力革新的エネルギー・環境戦略」(2012年年9月14日)が、2030年代末までに原発ゼロの方針を謳いながら再処理政策は継続としたことを想起させる。日本は何がどうあれ、再処理だけはやめられないようである。今回のサイクル維持の方針は2014年エネルギー基本計画に沿ったものというが、その判断の基礎になったはずの「プルトニウム需給」のデータが正確でなかったことを原子力委員会での議論が示している。英国に置かれている日本のプルトニウム保有量が2014年9月に発表された2013年末のデータから急増している。最終的には2018年までに核兵器500発分に相当する合計4トン強の増加が発生するという。

原子力委員会事務局(内閣府原子力政策担当室)が毎年日本の保有するプルトニウムのデータを発表する会合で、担当者はこの急増の理由について間違った説明をする一方、委員らは真相を明らかにするための議論に集中せず、日本のプルトニウム蓄積がなぜ問題ないかについて自説・珍説を展開するのに時間を費やしている。委員も事務局も、原子力の平和利用の担保に責任を負う組織としての責任を果たしていない。

英国保管の日本の分離済みプルトニウム量の推移 出典:『我が国のプルトニウム管理状況』
 英国保管量前年からの純増分
2005〜2012年約17トン(16.6〜17.1トン) 
2012年末17,052 kg 
2013年末20,002 kg約2,300 kg (2,950 kg)*
2014年末20,696 kg 694 kg
2015年末20,868 kg 172 kg
 約3,216 kg
  • *約650 kgは仏での保管分との帳簿上の交換で生じたものであり純増は約2.3トン

また、日本政府は、次のようなデータについて存在しないと議員事務所に答えているが、原子力委員会はこれらのデータを入手して公表すべきである。

  1. 1992年末までの各年の日本の分離プルトニウム保有量
  2. 東海再処理工場の1977年試運転開始以来の各年のプルトニウム分離量

英国に保管されている日本のプルトニウムが2013年から急増している理由は?

  • 原子力委員会事務局 2014年からの原子力委員会での説明
  • 「xx年中に分離され、在庫として計上されたxxトン」残り約1トンが「英国の再処理工場が操業を終了する2018年頃までに分離され、在庫として計上されるという予定」。2013年以来、日本の使用済み燃料の実際の再処理作業が行われ、分離されたかの説明。中西委員は2016年7月28日の会合でこの件について質問したが、誤解したままに終わった。

    中西委員:「イギリスは少し増えているのですが、これは燃料をまだ処理していなかったということなので、これでお願いしていた処理分は大体終わると見てよろしいのでしょうか。」

    横井参事官補佐:「ありがとうございます。ここは1ページに書かせていただきました。イギリス分につきましては、あと残り約1トンぐらい、まだ残っておりますので、今後、イギリスの再処理工場が終了する2018年までには、この残りの約1トンというのがプラス計上されていくという見通しになっております。」

    中西委員:「ありがとうございました。そうしますと、フランスはもうしていないので、少しずつ、年間大体0.2%ぐらい、崩壊して減っていくということですね。分かりました。」

     *なお、問題の1ページ目には次のように書かれている。

    「A英国においては、平成27年中に分離され、在庫として計上された約0.2トンを含む約20.9トンの分離プルトニウムが保管中であり、英国に再処理を委託した使用済燃料に含まれる、残り約1トンの分離プルトニウムについては、英・再処理工場が操業を終了する2018年頃までに分離・計上される予定である。」

  • 英国NDA 情報公開法に基づく質問に対する回答 要旨
  • (2016年8月31日及び9月29日)

     プルトニウムは各年の個々の顧客の使用済み燃料の再処理とは関係なく割り当てられる。

     日本の軽水炉の使用済み燃料の再処理は2005年度に終了(東海第一の使用済み燃料の再処理は2006年に終了)している。

疑問:隠ぺいか無能力か──豊洲の地下スペース?

問題は二つある。

1)2014年9月にこの急増問題が明らかになってから2年経った2016年7月になってもまだ、委員(及び説明に当たった事務局担当者)でさえ正確な理解ができないでいる。

2)英仏に送った使用済み燃料の量と初期濃縮度、原子炉、燃焼度などについて細かいデータを持つ電力会社側はそれに基づき、当然、後、4トンあることを把握していたはずである。(プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル名誉教授は以前から日本から英仏に送られた使用済み燃料の量と英仏でのプルトニウム分離量データの間に矛盾があると指摘していた。)しかし、この4トンの存在が2014年まで明らかにされなかった。2014年になって2.3トンの急増が報告された後、後何トンあるのかとの阿部議員事務所の質問に対し、事務局は電事連に問い合わせ、約1トンと答えた。合計3.3トンということである。ところが、2015-16年の発表で、実は合計約4トンであるとことが明らかになった。

海外再処理委託の状況(単位: トン)
 BNFLCOGEMA合  計
軽 水 炉
約 2,700
約 2,900
約 5,600
東海ガス炉
約 1,500
────
約 1,500

委託契約量は2001年6月に全量搬出済み
出典 2003年原子力白書 148ページ 核情報 日本のプルトニウム保有量

2004−2005年の原子力政策大綱策定過程、途中で放棄した新大綱の策定過程、2012年エネルギー基本計画策定過程、2014年エネルギー基本計画策定過程でも、予測されたはずの約4トン増加について議論されていない。

電気事業連合会と政府、原子力委員会は、この4トンのプルトニウムの存在を意図的に隠していたのか。政府は把握できていなかったのか。隠ぺい、無能力、どちらにしても問題である。

米国や国際社会の懸念を無視する日本

2016年3月17日に上院外交委員会での公聴会においてトーマス・カントリーマン米国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)が日本に警告を発している。再処理には経済性も合理性もなく、核拡散防止の観点から「すべての国が再処理の事業から撤退してくれれば、非常に嬉しい……本質的な経済性という問題があり、米国とアジアのパートナー諸国が問題になっている経済面および核不拡散面の問題について共通の理解を持つことが重要だ──日本との原子力協力協定の更新について決定をする前に」と述べた。協定は2018年に満期を迎える。

しかし、日本は米国や国際社会の懸念をよそに、無意味なプルトニウムの蓄積を続けようとしている。電力自由化の中で原発所有電力会社が倒産しても再処理を続けるために考案された「使用済燃料再処理機構」が10 月3 日に発足した。電力会社は発電時点で使用済み燃料の再処理・MOX 燃料製造費用を同機構に拠出する(実際の再処理は、これまでの計画通り、日本原燃が行う)。原発がなくなってもプルトニウムを貯め込み、MOX 燃料を作るという「悪夢」遂行の「不退転」の決意だ。

日本政府は、今こそ国民及び同盟国米国との対話を

次官補は、4月21日に開かれたパネルディスカッションにおいて、「プルトニウム分離に携わろうとする国は、米国とだけでなく、その国の人々とも、そのような選択に関連する経済性、核不拡散、国の安全保障などの問題について完全かつ透明な話し合いをしなければならない」と述べている。

もんじゅの廃炉を議論している今こそ、原子力政策大綱やエネルギー基本計画策定過程における間違ったプルトニウム・データの扱い方についての正確な説明をするとともに、再処理政策に関する日本国民及び同盟国米国との透明な対話を進め、計画の見直しをすべきである。

プルトニウム利用計画のまやかし

「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」(原子力委員会決定2003年8月5日)に基づいて出されている利用計画は

  1. ヨーロッパに保管中のプルトニウムの存在を無視している
  2. 六ケ所で分離されるプルトニウムについては、再処理工場に隣接するMOX工場が稼働するまで消費できないと言っているに過ぎない。
https://www.fepc.or.jp/about_us/pr/sonota/__icsFiles/afieldfile/2010/09/17/plu_keikaku.pdf

平成27年度というところには、計画発表時点で、MOX工場の完成がいつと想定されているかが書き込まれる。委員会決定は、プルトニウムの「利用開始時期」について示すことを求めているが、MOX工場の完成予想時期以降という表現でごまかされてきたのである。使用済燃料再処理機構」の再処理等実施中期計画について、原子力委員会が2016年10月28日に出した「見解」は「これらの施設がIAEAの保障措置下にあること等から、原子力の平和利用の観点からは妥当」とするとともに、再処理実施前、時期・量を示すことを求めているが、少なくともこれまでのような表現では受け入れられないと明言すべきである。

参考:

資料編

1.急増の理由説明

原子力委員会事務局 (詳細は添付資料2参照)

2014年9月16日「英国の再処理施設のほうで処理が進んだことによりまして、25年内に新たに約2.3トン、日本に返還予定のプルトニウムというものの割り当てと申しましょうか、保有量の追加が行われたというふうに聞いております」「(阿部委員)ということは、イギリスの再処理工場はまだ動いているということですかね。(事務局)イギリスの再処理工場はまだ稼働しております。」

2015年7月21日 「英国におきましては平成26年中に分離され、在庫として計上された約0.7トン、これを含みます約20.7トンの分離プルトニウムが保管」「英国に再処理を委託したこの使用済燃料に含まれる残りの約1トンのプルトニウムにつきましては、英国の再処理工場が操業を終了する2018年ごろまでには分離され、在庫として計上されるというような予定」

2016年7月27日「英国におきましては、平成27年中に分離され、在庫として計上された約0.2トン、具体的には後ろの表にまた出てまいりますが、172キログラムとなります」「英国に再処理を委託した使用済燃料に含まれる、残り約1トンの分離プルトニウムにつきましては、英国の再処理工場が操業を終了する2018年頃までに分離され、在庫として計上されるという予定」「ここで記載しております残り約1トンというところにつきましては、イギリスにおける今後の見通しであるとか規模感を示すために、電気事業連合会さんから御提供いただいたデータを基にしておりますけれども、そのデータは核分裂性プルトニウムということでございましたので、全プルトニウムと核分裂性プルトニウムのバランスを考慮いたしまして、内閣府にて概算をさせていただいたものを記載」

「(中西委員)イギリスは少し増えているのですが、これは燃料をまだ処理していなかったということなので、これでお願いしていた処理分は大体終わると見てよろしいのでしょうか。(事務局)ありがとうございます。ここは1ページに書かせていただきました。イギリス分につきましては、あと残り約1トンぐらい、まだ残っておりますので・・・」

英原子力廃止措置機関(NDA)回答要約 (英国の再処理施設監視団体「放射能の環境に反対するカンブリア人(CORE)」のマーティン・フォーウッドによる情報公開法に基づく質問に対する回答(2016年8月31日及び9月29日))(詳細は添付資料1参照)

軽水炉の使用済み燃料の剪断作業は2004年9月に終了し、溶液からプルトニウムを取り出して酸化プルトニウムを製造する作業は2004年会計年度末(2005年3月31日までに終了)。

THORP(酸化物燃料再処理工場)における使用済み燃料の再処理に関する顧客との契約の中には、グループとして一緒に扱われるものがあり、日本の各電力会社との契約もこのグループに入っている。この契約グループに属する燃料の再処理から得られたプルトニウムが、グループ内の個々の顧客に対し様々なタイムスケールで割り当てられる。この方式の下では、特定の顧客の燃料から得られたプルトニウムがその顧客に直接割り当てられるのではない。したがって、個々の顧客に対するプルトニウムの割り当てのタイミングは、その顧客の燃料が再処理されるタイミングとは独立したものであり、プルトニウムは、その顧客の燃料の再処理の前に割り当てられることも、後で割り当てられることもある。

2.阿部知子議員事務所と原子力委員会事務局のやり取り──「後1トン」の混乱

事務局は、2014年10月6日から11月13日にかけての阿部知子事務所との複数回のやり取りにおいて、電事連に問い合わせるなどした結果、実際の再処理のタイミングとは関係のなくプルトニウムが割当てられていること認めた。

また、2.3トン急に増えたということは、今後増えるものがあるかもしれないことを意味するが「今後、さらに追加割り当てが予想されるか。されるとするとどの程度の規模のものとなるのか」という質問に対して、即座に答えられなかった事務局は、電事連に問い合わせた結果、11月13日の面談において2013年時点で後1トン残っていると答えた。さらに、ではフランスの場合はどうかとの質問には答えられず、12月1日のメールで「電事連に確認したところ、新たな割り当てはないと聞いている」と阿部議員事務所に伝えた。

だが事務局はこれらの事実を即座に公表しなかった。翌2015年7月21日の会議では、2014年0.7トンの追加割り当てについて「平成26年中に分離され、在庫として計上された」との表現を使った。また、これから再処理されて分離されるものが約1トン残っており、「英国の再処理工場が操業を終了する2018年ごろまでには分離され、在庫として計上される」と説明。核情報では、約1トン残っているとの説明が2014年11月にあり、その後0.7トン割当てが増えたのにまだ約1トン残っているとする説明の矛盾を指摘した。

2016年7月の会合で、事務局は、残っている約1トンについて、電事連から得た数字は核分裂性プルトニウムの数字であり、事務局でこれを全プルトニウムに換算していると説明。つまり、阿部事務所に対する答えで約1トンと述べたのは核分裂性プルトニウムの量だったが、そのことを認識せず伝えたということのようだ。2014年10−11月の事務局・阿部議員事務所間のやり取りは、全量プルトニウムに関してのものである。11月13日の面談で後1トンと答えた際、この1トンだけが核分裂性という説明はなく、阿部事務所に1トンの存在について回答した事務局担当者も理解していなかったと推測される(意図的にだます理由は考えられないから)。

3.搬出した使用済み燃料データから予測できたはずの4トン増を公表してなかったのは?

保有プルトニウムの量は、プルトニウム消費計画と合わせて、再処理計画の是非を論じる際に重要な意味を持つデータである。

2005年原子力政策大綱の策定過程でこの4トン余りのプルトニウムについて言及はなかようである。また、核情報が2013年5月2日の原子力委員会会議で当時得られる最新のデータを反映した次のようなグラフを示して六ヶ所再処理工場の運転が始まれば日本のプルトニウムが増え続けると指摘した際に近藤委員長が以下のように反論した時、この4トン余りのことは意識されていたのか。


近藤委員長:「グラフにありますように……ようやくピークを打って保有量が下がり始めた……どんどんふえると表現されるけれども……いずれ下がることになることは、このことからも想定できる。」

下がり始めたのは、六ケ所再処理工場がガラス固化の技術問題を抱えて、いつまでたっても六ヶ所再処理工場の運転が開始できなかったためだが、そのことは置くとしても、2014年発表のデータを入れるとこうなってしまう。


近藤委員長はこうなることを2013年5月段階で知っていたのか知らなかったのか。いずれにしても、「実はイギリスで後4トン増えるんですよ」と指摘するべき立場にあったことは確かである。また、2004〜2005年にかけての原子力政策大綱の策定作業過程で、電事連・政府・原子力委員会は都合の悪い数字を意図的に隠したのか。誰が知っていて誰が知らなかったのか。豊洲の状況を思わせる事態である。

4.他の公開すべきデータ

●日本が初めて分離プルトニウムを保有して以来、1992年末までの各年の日本の分離プルトニウム保有量(保管国別内分けを含む)

日本は1994年発表の『我が国のプルトニウムの保有量』において1993年末分を示してして以来、毎年、データを公表しているが、それ以前のものは公表していない。原子力委員会事務局は照屋寛徳議員事務所に対し、1993年以降のデータしか保有していないとしている(2014年6月23日)。

原子力規制委員庁放射線防護対策部放射線対策・保障措置課保障措置室は、照屋寛徳議員事務所に対し、日本がIAEAの保障措置を受け入れた1978年以降しかデータがなく(2014年6月25日)、しかも使用済み燃料中に含まれるプルトニウムを含めた量しか把握できていないため、1992年以前の分離プルトニウムのみのデータは提供できないとしている(2014年8月1日)。

●東海再処理工場の1977年試運転開始以来の各年のプルトニウム分離量

文部科学省研究開発局原子力課は、照屋寛徳議員事務所に対し日本原子力研究開発機構が発足した2005年までしか遡ってデータを把握することはできないとしている(2014年6月25日)。また、2005年以後のデータについてもプルトニウムの全量(元素重量)のみを示し、核分裂性物質重量については核セキュリティの観点から回答できないとしている(同上)。日本は、英仏保管分については、発表年により全量、核分裂性物質量のいずれか、または両方を示している

5.急増の謎を解明・説明せず日本のプルトニウムに問題がないとの自説を展開する委員

2014年9月16日

(阿部委員長代理)……あとは、この全体の数字について核的損耗、核分裂物質が自然に減ってしまうというものがあるので数値が若干減っているんですと、こういうことなんですが、これはプルトニウムの半減期の短いアイソトープが保管中にだんだん減っていくんだということですね。(前田参事官補佐)はい。正確にはプルトニウム241がアメリシウム241に、時間としては14年間、半減期14年間で自然崩壊してくるようでございます。……

(阿部委員長代理)……今年発表する数字はそれが合計すると47トンになるからまた3トンも増えたと、こういうことで、ひょっとすると国際的にいろいろまた騒がれるかもしれないということですが、その説明は、国内分がまず1.5トン増えていますね。それは完成したMOX燃料を運び込んだということと、九州電力玄海の一旦入れて取り出したものを未照射ということで在庫量に加えたので1.5増えたんですと。それから国外のものは、これはイギリスで割当てが増えたので1.5トン増えたんですと、こういう説明になるわけですね。簡単にわかりやすく言えば、そういうことでよろしいんですか。(前田参事官補佐)そのとおりでございます。……

(岡委員長)私のほうからは特にありませんが、MOX燃料になっているものは核拡散の懸念から言えば、大きくないと。あとはたくさんあるのは海外にあるプルであるというようなところが特徴かと思うのですが、……

核情報注:フランスから運び出されたMOX燃料と国内に運び込まれたMOX燃料は同じものであり、そこに含まれるプルトニウム901sは当然相殺され、日本の保有総量の変化には表れない。総量に反映されるのは、英国で増えた純増は2.3トンと国内分の増加640sの合計約3トンである(国内の増加は、玄海の原子炉に入れられたMOX燃料に含まれていたプルトニウムを誤ってデータから除外していたものが、プールに戻され、また出現した結果である)。したがって、増加分については、国外2.3トン+国内0.64トン=約3トンというのが素直な要約だろう。阿部委員長代理が言及している英国分の1.5トンは何か?核分裂性の量の1.5トンだと、議論されているのは全プルトニウムの量なので、この数字を使うのは間違いとなる。1.5トン+1.5トンは確かに約3トンとなるが、それと日本の総量の3トンの増加とは関係がない。国外増加分=2.3トン−搬出MOX燃料901s=約1.4トンとし、これと国内増加1.5トンを足すといういうことを阿部委員長代理が考えた可能性はある。しかし、それはやはり妙な足し算だし、搬出について言及しなければ状況の要約になっていない。)

2015年7月21日

(阿部委員長代理)日本の原子力発電所でつくった使用済み燃料から分離したプルトニウムというのは、核兵器には余り向かないんだという議論がよくあります。だから、それは余り心配する必要ないと。実はアメリカなんかで核兵器に使っているプルトニウムは、プルトニウム239ですね。これが95%以上という非常に高い純度のものを使っていると言われておりますが。ここの例えば4ページにあります海外保管の分離プルトニウムの量と、その中の核分裂性プルトニウムの量というのがありますね。これ簡単に割り算すると、大体3分の2なんですね。核分裂性のものは。95%と比べるとかなり落ちるんですね。しかもこの中の恐らくほとんどは、241なんですね。核分裂性ですけれども。これはますますこの核兵器には使いにくいと言われています……

核情報注:前年に前田参事官補佐がプルトニウム241は半減期が14年だと説明している。日本の保有する核分裂性プルトニウムのほとんどが241だとすると核分裂性プルトニウムはどんどんなくなっていくから軽水炉で消費するなどという話は出てこないはずだが、原子力委員会・事務局内ではどんな話をしているのだろうか。日本の保有する核分裂性プルトニウムのほとんどが241というのはそもそもあり得ない。こういう発言が、誤認との指摘もなくそのまま原子力委員会の議事録に載っているのはなぜだろうか。


姜政敏(カン・ジョンミン)博士 米天然資源防護協議会(NRDC)

ORIGEN2コードを使っての分析 2015年7月29日私信

阿部委員長代理:原子炉に入れて照射してしまうと、中性子が出てきて非常に扱いにくくなるのでやりにくいと。これはこの集計表でもそうだということで、一旦照射された部分は除くことになっていますよね。ですから、日本が増える増えるという心配な人のためには、ある意味ではどこかの原子炉に早く入れてしまえば減るんで、安心ができるかもしれません。ただ、そういう意味で不思議なのは、11ページの各国の保有量の集計の中に、全部未照射のプルトニウムと書いてありますよね。確かにそうなんですけれども、でも厳密に考えてみると、科学的には未照射のプルトニウムというのはないんですよね。全部原子炉の中から取り出した使用済燃料からやっていますから、全部照射されているんですね。その生成過程において。これは恐らく、室谷さんどこか定義があるんでしょうね。(室谷参事官)はい。このガイドライン、IAEAが発行したものの中には、どういう工程を経てどういう状況にあるものということで、基本的には再処理を経て分離された状況で未照射のものというのがその対象になっています。……

阿部委員長代理:未照射プルトニウムということでまとめようじゃないかというのがこの表であるということで、かなりの問題にする人たちにも、こういうことをいろいろ説明すると、うん、わかったという方は大分いるんですけれども、中にはどうもなんか日本の悪口を言うために何かこういうことを言うようじゃないかということで、いずれにしろ言う人もいるので、そういう人たちにはなかなか説明は難しいんですね。……

このぐわっと左の人とぐわっと右の人が、核燃料サイクルというのがあって、再処理をして、プルトニウムを取り出すと。わっと右の人が、だから将来の日本のために核燃料サイクルをやる必要もあるんだと。つまり、軍事利用を考えて。これは私は全く間違っていると思います。核兵器をつくるために、あんな大きなものは必要ないし、使用済燃料から取り出すプルトニウムは兵器には余り向かない。それから逆に今度、物すごい左の人は、だから核燃料サイクルはやめるべきだと。それから原子炉の再稼働もやめるべきだと。これは議論があるんです。これは私は両方ともかなり誤解があると思うんですね。核燃料サイクル、使用済燃料の再処理は、正しくやっている限りにおいては軍事利用は非常に難しい。それとは関係ないし、かつ非常に安全の問題もいろいろ確保できるというものだと私は思います。そこのところのいろいろな誤解がたくさんありますので、これはいろいろまた今後とも議論していかなければいけないと思います。

核情報注:原子力委員会は、「科学的には未照射のプルトニウムというのはない」という不思議な主張をしたり、日本の再処理政策に懸念を持つ米国政府関係者らが日本の「日本の悪口を言うため」だけに議論をしていて、再処理に反対をするのは「ぐわっと左の人」だとの主張をしたりするための場所なのか。英国保管のプルトニウムの急増の理由について詳細を解明し、説明するのに時間を割くことの方が筋だろう。

2016年7月27日

阿部委員長代理:そもそもそんな扱いにくいプルトニウムを使って日本が核兵器をつくるのかという議論がありますし、あるいは、そもそもIAEAがグラム単位まで細かく調べて、保障措置で調べて確認されているプルトニウムなので、何ら軍事その他転用の心配はないのだと。プラス、日本の場合は追加議定書というものもやっているわけで、全く問題はないので、なぜそれを世界の一部では問題視するのかという問題もあるのですが、

岡委員長:あと、英仏にMOXが日本よりもたくさんあるわけで、これはMOX燃料集合体に加工してかえってくるので、それを無視したような、核不拡散上懸念があるとの意見を聞くことがありますけれども、輸送も含めて燃料集合体、しかも酸化物ですので、核不拡散上のバリアとしては非常にあると。日本の再処理も混合転換ですので、プルトニウムとウランを分離しない転換法ですので、そういう意味では核不拡散の抵抗性は大きいと。そういうふうなところは全体の概要として背後にある情報かと思うのですけれども……。

核情報注:ウランとプルトニウムの酸化物を1:1の割合の「混合酸化物(MOX)」として取り出すのは不拡散の面で効果がないことは1977年の日米交渉に当たった米国側は認識していた。この混合物からプルトニウムを取り出すのは簡単だからである。ブレジンスキー大統領特別補佐は、1977年8月13日にカーター大統領に宛てたメモの中で、これを日本に強いるのは、「不拡散の面で有望とみなされていない方向に進むよう日本に強要することになる」と述べている。また、IAEAの保障措置上は、この混合物と2酸化プルトニウムは同じ範疇に入っており、ともに「週のオーダー(1−3週間)」でPu金属構成要素に転換できるとされている。

参考:

なお、阿部委員長代理は、毎日新聞のインタビューで次のように述べている。

ウランはもんじゅ開発当初の想定と異なり、「かなりの量が世界中に存在することが分かり、少なくとも今世紀中は確保できるとも言われます。それなら、プルトニウムを一生懸命、頑張って生産する必要があるのか……高レベル放射性廃棄物の減容化や、半減期の低減などの研究に役立てるべきだとの意見もありますが、工学的にできるということと、経済的に意味があるかどうかは別問題です」(毎日新聞2015年12月16日)

同代理はまた、2016年10月28日の原子力委員会定例会議で「使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画について(案)」が検討された際には、全量再処理を前提するのでなく、柔軟性を持たせるべきという趣旨の提案をしている。

記者会見パワポ資料

添付資料1 英原子力廃止措置機関(NDA)回答

添付資料2 我が国のプルトニウム管理状況議事録まとめ2014-2016年


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