核情報

2016. 5.23

米高官、日本の核燃料サイクル政策に懸念表明発言
 今度は、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)上級部長

5月21日、共同通信が米ホワイトハウス国家安全保障会議上級部長が「日本の使用済み核燃料再処理を容認した日米原子力協定の効力延長について『大きな議論を呼ぶ問題になる可能性があると指摘』」と報じ、「核物質プルトニウムを大量に生産する日本の再処理事業に対する米政府の懸念が改めて裏付けられた」と解説しました。米国から懸念が伝えられたことは「まったくない」(菅官房長官)とか、国務次官補の発言は一般論であり、「我が国が再処理を含む核燃料サイクルを推進していくとの方針については、米国政府の理解を得ている」(岸田外務大臣)とかと説明してきた日本政府。オバマ大統領広島訪問を控えて、日本の反核運動の反応は?

  1. 懸念は伝えてきたと米政府
  2. 懸念を伝えられたことはないとする日本政府
  3. 一般論を述べたのではないカントリーマン国務次官捕
  4. 外務官僚の用意した答弁を読み上げた岸田外務大臣 どうする日本の反核運動?
  5. 2016年3月17日上院外交委員会公聴会でのカントリーマン国務次官補の発言

参考

懸念は伝えてきたと米政府

ジャパンタイムズ掲載の共同通信の記事(核情報訳)を見ると、ジョン・ウルフソル国家安全保障会議(NSC)上級部長が米国は日本と懸念について議論してきたと述べていることが分かります。

米国と日本は、「明確な使用・処分の道もない」大量のプルトニウムを保有するとの決定が再処理とウラン濃縮を制限しようとする世界的な取り組みにとって持つ意味合いについて議論してきたと上級部長は述べた。もし、日本がプルトニウムのリサイクルを続けるなら「他の国がまったく同じことを考えるのをどうして止められるか」とウルフソルは述べた。

懸念を伝えられたことはないとする日本政府

3月17日の上院外交委員会の公聴会でトーマス・カントリーマン米国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)が日本の原子力発電所の使用済み燃料再処理計画について、経済性も合理性もなく、核拡散防止の観点から「全ての国が再処理事業から撤退すれば非常に喜ばしい」と述べた時に、菅義偉官房長官と岸田外務大臣は米国側から日本の懸念が表明されたことはないと説明していました。

3月18日 菅義偉官房長官

(記者)米国の国務次官捕が上院の公聴会で日本の核燃料サイクル政策に関しまして核安全保障と不拡散にとって懸念をもたらす政策だと述べ、計画停止が望ましいとの認識を示しましたが、政府としての受け止めをお願いします。

米国のそうしたことが、具体的に申し上げたらどうかというのは、正直言って承知をしていませんので、答えることは差し控えたいと思います。

(記者)特段核燃料政策について米政府側から懸念とか伝えられたということは?

「それは全くありません」

出典:官房長記者会見 3月18日午後(01:48~02:45)

3月24日 岸田文雄外務大臣 衆議院本会議

御指摘の[カントリーマン国務次官補の]発言については、一般論として民生用再処理に関する米国政府の従来の見解を述べたものと認識をしております。我が国が再処理を含む核燃料サイクルを推進していくとの方針については、米国政府の理解を得ていると考えており、今後とも、米国との間で円滑かつ緊密な原子力協力の確保に努めていく考えです。

一般論を述べたのではないカントリーマン国務次官捕

公聴会でカントリーマン国務次官捕は、東アジアの主要国間における非合理的なレベルのプルトニウム生産競争に触れ、日本の政策に具体的に言及していました。

日本その他のアジアのパートナーとの対話ということでいうと、我々は、より技術的なレベルではエネルギー省を通じて、セキュリティーや核拡散面の関心事項のレベルでは国務省を通じて、両方をやっている。我々は、本質的な経済性という問題があると考えており、米国とアジアのパートナー諸国が、経済面および核不拡散面の重要な問題について共通の理解を持つことが重要だ──例えば日本との1-2-3協定[原子力協力協定]の更新について決定をする前に。

外務官僚の用意した答弁を読み上げた岸田外務大臣 どうする日本の反核運動?

岸田外務大臣の答弁は、下の議事録の抜粋から分かる通り、実は前日の外務委員会で相川一俊外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長が読み上げた答弁を繰り返したものでした。核情報は、3月半ば、米国政府関係者から「米国のいろいろな高官が外務省に伝えていることと日本の核燃料政策の続行・強化を意味するように見える再処理等拠出金法法案(5月11日成立)との関係をどう考えたらいいのか」と聞かれていました。

岸田外務大臣は、外務省の担当者らから米国側の懸念についてまったく聞かされていなかったのか。あるいは、米国側の懸念について知りながら外務省の用意した答弁を読み上げることにしたのか。国会やマスコミによる事実解明が待たれます。また、外務大臣の選出地広島の反核運動の動きも注目されます。

3月23日衆議院外務委員会での相川一俊外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長発言

辻清人委員(自民党)

 もう御承知のとおり、今月末から合衆国のワシントンで核セキュリティーサミットが行われます。総理も出席する予定ですが、それに関連して、ちょっと私、最近、懸念といいますか、報道を通じて知ったことで危惧していることがあります。アメリカの上院議会の公聴会で、月末にオバマ大統領も出席する核セキュリティーサミットに向けてヒアリングが行われまして、先週の話ですが、そこで合衆国のカントリーマンさんという国務次官補が、日本と中国を同列に、今の日本のプルトニウムの再処理施設、核燃料サイクルについて大変批判的な発言、異例的な発言をしたんですね。その中で、何が背景にあるかといいますと、日本のそういった再処理の方向性と、これから中国と韓国も同じような方向で検討を進めているが、これが核不拡散に反するんじゃないかという形で、上院のヒアリングで答弁をしているんです。

 日本は、もう一九八八年に、日米原子力協定以降、今のIAEAの査察も全て、抜き打ちのものも含めて受け入れていますし、透明性に関してはしっかりと担保している国でございます。ですので、そういった懸念を合衆国側が持つ、そして、そういった情報をもとに月末に行われる核セキュリティーサミットでオバマ大統領が挑むというのは、私は大変これはゆゆしきことだと思っています。

 そういった中で、日本側として、そういった月末のサミットもそうですが、反論といいますか、どういったお立場でこれは説明をしているのでしょうか。お願いします。

○相川政府参考人 先生御指摘の米国務省次官補の発言でございますけれども、一般論として、民生用再処理に関する米国の従来の見解を述べたものと認識しております。我が国が再処理を含む核燃料サイクルを推進していくという方針に関しましては、米国政府も理解していると考えているところでございます。

 先生御指摘のとおり、我が国におけるプルトニウムを含む全ての核物質はIAEAの保障措置のもとに置かれておりまして、IAEAより平和的活動であるという結論を得ているところでございます。また、我が国は、プルトニウムに関し、国際的な指針よりもさらに詳細な情報を独自の自発的な措置として公表するなど、核物質の透明性を適切に確保しているところでございます。

出典 第190回国会 外務委員会 第6号(平成28年3月23日(水曜日))

3月24日衆議院本会議での岸田文雄外務大臣発言

木下智彦君 おおさか維新の会、木下智彦です。

 ただいま議題となりました本法案について質問します。(拍手)

 我が党は、原子力発電については、福島第一原発事故の教訓をしっかりと踏まえることが再稼働の条件であると訴えてきました。具体的には、原発再稼働責任法案に示したルールを整備すべきであり、それができないのであれば再稼働すべきではないと考えています。

 そのような立場から、以下の質問をさせていただきます。

 この法案は、我が国の核燃料サイクルの推進のために、必要となる資金を確実に確保することを目的としています。したがって、この法案について問われるべきは、まず、核燃料サイクル自体の正当性であります。

 国際的な正当性という点でいえば、我が国は、日米原子力協定によって核燃料サイクルの運用を認められています。我が党への本法案の事前説明の際、資源エネルギー庁は、この法案は、同協定への対応という面があり、核拡散への疑念を持たれないことが重要であると説明していました。

 ところが、今月十七日、米国のカントリーマン国務次官補が、米国上院外交委員会公聴会で、理性的ではない形で競争が激化している、経済的にも合理性がないと、日本の核燃料サイクル政策や中国、韓国の計画に懸念を示し、事業停止が望ましいとの認識を示しています。

 政府は、現時点で米国の真意をどう理解しているのでしょうか。外務大臣の御認識をお伺いします。

 そして、もし米国が、我が国の核燃料サイクル自体に既に疑念を示しているのであれば、二〇一八年七月に満期を迎える日米原子力協定の継続見込みに影響するのではないでしょうか。この法案で米国の懸念を払拭することができるのか、経済産業大臣の御見解をお伺いします。……

○国務大臣(岸田文雄君) 米国政府高官の核燃料サイクルに関する言及についてお尋ねがありました。

 御指摘の発言については、一般論として民生用再処理に関する米国政府の従来の見解を述べたものと認識をしております。

 我が国が再処理を含む核燃料サイクルを推進していくとの方針については、米国政府の理解を得ていると考えており、今後とも、米国との間で円滑かつ緊密な原子力協力の確保に努めていく考えです。(拍手)

○国務大臣(林幹雄君) 木下智彦議員から三つの質問がありました。

 まず、日米原子力協定をめぐって、本法案と米国の懸念との関係についてお尋ねがありました。

 日米原子力協定に関しては、我が国の原子力活動の基盤の一つをなすものであり、今後とも、米国との間で円滑かつ緊密な原子力協力を確保すべく努めてまいります。

 我が国は、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を堅持しています。今までも、この方針を遵守するために、事業者がこの政府の方針を明確に認識した上で事業を実施するよう指導しており、また、プルトニウムの平和利用に係る透明性の向上を使命とする原子力委員会が、事業者が策定する計画の妥当性を確認するとともに、IAEAとの協定に基づく厳格な監視の受け入れ等を行ってきております。

 こうした従来からの取り組みに加えて、今回の法案が成立すれば、経済産業大臣が、認可法人が策定する再処理等事業の実施計画を認可することとなります。政府の方針に反する計画が策定されることは想像しがたいのですが、万が一そのような計画が策定された場合には、当然のことながら、認可いたしません。

 このため、本法案は、米国との関係でも、国際社会との関係でも、我が国のプルトニウム管理に関する信頼性をより高めるものと考えています。

出典 第190回国会 本会議 第19号(平成28年3月24日(木曜日))

2016年3月17日上院外交委員会公聴会でのカントリーマン国務次官補の発言

[冒頭のステートメント]

……

使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理が、核不拡散、安全性、セキュリティーの問題を引き起こすという事実についてのあなたの懸念を共有する。アジアの友人達との話し合いについてはさらに詳しく説明することもできる。……

(コーカー委員長:私はまた、[オバマ]政権が日本に対し六ヶ所の再処理施設の運転再開の更なる延期を要請する一方で、韓国及び中国による米国起源の物質の再処理を禁止することによってアジアにおけるプルトニウムのタイムアウト(一時停止)を提唱する機会を失っていることについて心配している。……[イラン合意に言及]……我々は、プルトニウムのタイムアウトを提唱することができたのに、そうしていない。とりわけ、東京が六ヶ所の稼働再開を延期する用意があるというのに。[核情報注:日本政府の態度についてどうしてこのような理解になっているのかは不明]だから、なぜ政権がプルトニウムの再処理を奨励する政策を確立しつつあるのか分からない。この部分でこそ核拡散が拡散が起きつつあるのに。)

率直に言って、我々がプルトニウムの生産を奨励する政策を持っているというのは、同意でない。米国は──これはエネルギー省の方がずっと良く説明できるが──プルトニウムを混合酸化物(MOX)燃料にする再処理の高い経済性コストについて十分に認識している。そして、この経済性は何処の国でも同じことだ。再処理には、経済的正当性が、まったくでなければ、ほとんどない。そして、先に言った通り、核セキュリティーと核不拡散の懸念を惹起する。

米国は、再処理を支援も、奨励もしない。中国あるいは韓国との123協定(原子力協力協定)においてもそうしていない。すべての国がプルトニウム再処理の事業から撤退してくれれば、非常に嬉しい(happy=喜ばしい)。

[マーキー議員の質問に答えて]

 東アジアの主要国の間には競争があって、それは私の考えでは非合理的レベルにまで至っている。連中が[再処理]技術を持っているんだから、我々も持たなきゃいけないという感じだ──この技術が経済的にまったく意味をなさなくて、世界における地位の向上にも役立たないなんてことはお構いなく。

 (マーキー上院議員:日米原子力協力協定は数年後に更新が必要だ。現行の1982年協定では日本が再処理のためにヨーロッパに使用済み燃料を送ることなどについて事前同意を与えている。次の協定を検討するに当たって、次期政権は、日本の再処理依存を減らし、使用済み燃料処分の別の手段を採用するようよう奨励するのにどのような措置を講じるべきか。中国と日本の再処理の危険の一つは、韓国にその再処理計画を追求するようにとの圧力をもたらし、それにより、朝鮮半島を非核化して北朝鮮の核の野望が更なる拡散の圧力をもたらすのを防ごうとの我が国の取り組みを台無しにするということだ。この点について日本との話し合いはどうなっているか。日本は核拡散問題を、そして、その方向 に向かえば危険が増すことを理解しているか。)

……本質的な経済性という問題があり、米国とアジアのパートナー諸国が問題になっている経済面および核不拡散面の問題について共通の理解を持つことが重要だ──日本との原子力協力協定の更新について決定をする前に

出典 2016年3月17日上院外交委員会公聴会での発言

元は:米議会公聴会 Reviewing the Administration's Nuclear Agenda March 17, 2016 録画



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