核情報

2014. 4.22

核兵器利用可能物質の最小化を世界に呼びかけて六ヶ所で増やす?
世界に問われる日本の反核運動の姿勢

3月24−25日にオランダで開かれた「核セキュリティー・サミット」で日米首脳が発表した共同声明は、プルトニウムの最小化を各国に奨励しました。一方、安倍政権は4月11日に閣議決定した新「エネルギー基本計画」で、「再処理やプルサーマル等」を推進すると宣言しました。使用済み燃料を再処理してプルトニウムを分離し、これをウランと混ぜてプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料にして原子力発電所で使うプルサーマル計画をこれまで通り進めるということです。

これに先立ち、静岡県知事は、共同通信のインタビューで、「今すぐプルサーマルができるかというと、やらせてくれるところはどこもない」と述べています。六ヶ所再処理工場が運転開始となり、プルサーマルができないとなると、分離済みプルトニウムの量は増える一方となります。この問題を意識してか、「エネルギー基本計画」は、「プルトニウムの回収と利用のバランス」に触れています。以下、これらの文書・発言を抜粋して問題点を検討してみましょう。

  1. エネルギー基本計画 再処理は推進だが柔軟性?
  2. セキュリティー・サミット プルトニウムの最小化を
  3. 県知事 プルサーマルは無理
  4. 反核運動の課題

参考

山梨日々新聞 4月10日
山梨日々新聞 4月10日

山梨日々新聞 4月10日


エネルギー基本計画 再処理は推進だが柔軟性?

再処理やプルサーマル等を推進する.。・・・プルサーマルの推進、六ヶ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工等を進める。・・・利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を引き続き堅持する。これを実効性あるものとするため、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮しつつ、プルサーマルの推進等によりプルトニウムの適切な管理と利用を行う。・・・様々な不確実性に対応する必要があることから、対応の柔軟性を持たせることが重要である。特に、今後の原子力発電所の稼働量とその見通し、これを踏まえた核燃料の需要量や使用済燃料の発生量等と密接に関係していることから、こうした要素を総合的に勘案し、状況の進展に応じて戦略的柔軟性を持たせながら対応を進める。

セキュリティー・サミット プルトニウムの最小化を

これらの核物質[高濃縮ウランや分離済みプルトニウム]の最小化に取り組んでいきます。また、プルトニウムについては、「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を引き続き堅持します。これを実効性あるものとするため、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮します。

プルトニウムの最小化のために何ができるかを各国に検討するよう奨励する。

また,唯一の戦争被爆国として日本は・・・軍事用核物質について,少なくとも民生用核物質と同程度のセキュリティが保たれるべきであると考える。核テロが起これば,核兵器が使用された場合の壊滅的な人道面での結末と同様の事態を招きかねず、そのような事態を生じさせないためにも,あらゆる核物質に関して核セキュリティを強化する必要がある。・・・プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮する。

我々は,国家がそれぞれの国内的要請と一致する形で,HEU[高濃縮ウラン]の保有量を最小化し,また分離プルトニウムの保有量を最小限のレベルに維持することを奨励する。

県知事 プルサーマルは無理

  • 静岡県知事 共同通信インタビュー
    静岡知事、プルサーマル「白紙」 核燃サイクルの先行き懸念 共同通信4月3日
  • プルサーマルは「白紙」。「今すぐプルサーマルができるかというと、やらせてくれるところはどこもない。非常に厳しい」。蓄積している核兵器利用可能なプルトニウムは「一番大きな問題だ。44トン、原爆5千発分。どう処理するか、今まで大きな形で表立って議論はされてこなかった」。プルトニウムの処分を実現する技術開発が重要。使用済み燃料は、安全性の観点から、早く乾式貯蔵にすべき。すでに六ヶ所再処理工場に送られている使用済み燃料が送り返されるとなった場合は、引き取って乾式貯蔵する。「出たごみは自分のところで(一時)貯蔵するのが筋。」

  • 新潟県知事(4月9日記者会見)
    柏崎原発再稼働「議論段階にない」泉田知事 新潟日報 2014/04/10

東京電力は(福島第1原発事故の)事実を隠蔽(いんぺい)した。それがどうしてかに踏み込まずして、柏崎刈羽原発は(再稼働の議論の)入り口に立てない。

反核運動の課題

日本がハーグの核セキュリティー・サミットで発表した国別報告で「軍事用核物質について、少なくとも民生用核物質と同程度のセキュリティが保たれるべきであると考える」と述べていることは、裏を返せば、民生用プルトニウムについて、軍事用核物質と少なくとも同程度のセキュリティーを保つべきと理解していることを意味します。そして、日本は、その分離済みプルトニウムの最小化を各国に呼びかけています。

このことと「エネルギー基本計画」が「プルトニウムの回収と利用のバランス」を考慮し再処理計画に柔軟性を持たせると述べていることを考え合わせれば、当面の六ヶ所再処理工場の運転開始はないのだろうと世界の反核運動が考えても不思議はありません。折しも再処理工場を所有する日本原燃は、4月11日、MOX燃料加工工場の完成予定時期を2016年3月から2017年10月に延期すると発表しています。再処理が今秋始まった場合、少なくとも3年間はそのプルトニウムの消費ができないということです。

原発の再稼働の見通しが立たず、近い将来大規模でプルサーマルが実施される見込みがない状況で六ヶ所再処理工場の運転が開始されるようなことになれば、安倍政権だけでなく日本の反核運動の姿勢も問われることになりかねません。


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