核情報

2013. 6. 2

六ヶ所再処理工場試験終了 始まるか、核兵器利用可能物質の大量生産

日本原燃は、5月27日、六ヶ所再処理工場のガラス固化試験が前日深夜終了したと発表しました。2006年3月末に使用済み燃料を使った試験を始めたものの、2007年11月からの高レベル廃液ガラス固化試験で様々な技術的問題に直面し、本格運転に入れないでいましたが、これでいよいよ来年に運転開始となる可能性が出てきました。そうすると、現在約44トンという日本のプルトニウムを保有量は、数年で米国が冷戦時代に製造した核兵器用プルトニウムの量を超えてしまうかもしれません。

日本原燃は、7月にも試験終了報告書を原子力規制委員会に提出したいとしていますが、規制委側は、再処理工場関係の新しい規制基準ができあがる12月までは審査はしない方針です。従って、日本原燃側が唱えている今年10月の竣工はありえないことになりますが、来年には運転が始まるかもしれません。

年間800トンの処理能力まで少しずつ上げていく計画で、フル稼働となると年間約8トン(核兵器1000~2000発分)のプルトニウムが分離されることになります。


もともと、再処理は、プルトニウムを燃やしながらプルトニウムを作るという「夢の高速増殖炉」に最初の燃料を提供するためのものでした。ところが、この高速増殖炉計画は進んでおらず、分離したプルトニウムを無理矢理軽水炉で消費する計画も遅れて来た結果、プルトニウムがどんどん増えて行きました。この話を5月2日の原子力委員会の会議でしたところ、近藤駿介委員長は、会議の最後につぎのような趣旨のまとめを述べています。核情報の提供したグラフを見ても分かるとおり、日本のプルトニウム保有量のピークはもう超えており、減りつつあるというのが、3・11まえの状況だった、というのです。実際は、このプルトニウム保有量の減少は、わずかの「プルサーマル」が始まったこともありますが、ガラス固化試験の問題で六ヶ所再処理工場の運転開始が遅れていたために起きたことです。上のグラフが示すように、現状で運転が始まれば、プルトニウムの量は一気に増えていきます。


  • 出典:「プルトニウム分離の停止:日本の使用済み燃料管理への別のアプローチ」(レビュー・ドラフト 2013年5月) 田窪雅文 フランク・フォンヒッペル

六ヶ所で分離したプルトニウムをウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料にする工場について、日本原燃は、2016年3月完成という3・11前からの予定を掲げていますが、地震の後工事が1年ほど中断しており、今年4月現在の工事進捗(しんちょく)率は3.5%。この種の工事の遅延の歴史を見れば、本格稼働の遅れは必死です。たとえこの工場が現在の予定の1年遅れで完成したとしても、そこでできたMOX燃料を使う原子力発電所の再稼働がいつになるか、電気事業連合会でさえ分からないと言っています。このような状況で、再処理工場運転開始となれば、核拡散・核セキュリティーの面で、日本は諸外国から批判されることになるでしょう。

5月2日の原子力委員会定例会議でこの問題について発表した際に使ったパワーポイント形式の原稿(及びノート)を下に掲載します。


参考:


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