核情報

2017. 1. 13

トランプの指を発射ボタンに触らせるな:核ミサイルを一触即発の警戒態勢から外せ

米国の反核NGOプラウシェアーズ財団が、トランプ大統領が登場する前に核ミサイルの一触即発のミサイル発射態勢を解除するようオバマ大統領に要請するキャンぺーンを展開しています。米国の反核運動の危機感を示すものです。ウイリアム・ペリー元国防長官も、この昨年末に始められたこの要請文署名キャンペーンに協力するようツイッターで呼びかけています。署名数は、1月13日段階で約10万3000筆となっています。

参考

以下、呼び掛け文(日本からも署名できます)と大統領への要請文の翻訳です。(警戒態勢の簡単な解除方法の一つ──ミサイル・サイロ内の安全管理スイッチを使って発射できないようにする方法──については訳文の下にある図を参照。)


トランプの指を発射ボタンに触らせるな:核ミサイルを一触即発の警戒態勢から外せ

1月20日、米国の核兵器発射用パスコードを持った将校がバラク・オバマ大統領に後に続いて新大統領就任の壇上に向かう。オバマが立ち去ると、将校はドナルド・トランプ大統領の後に続く。

そして、次のように語ったと報じられている人物が大統領となる。「核兵器を持っているなら、なぜ使えないのか。」彼は、今後の4年間のうちに本当に核攻撃の命令を下すだろうか。それは誰にも分からない。しかし、もし彼がそうすると、誰にも止められない。

トランプ大統領は、数分間のうちに、一発あるいは1000発の核弾頭を発射できる。投票も、チェックも、真剣な検討さえなく。ミサイル1基だけで何百万人もが殺せる。ミサイルはひとたび発射されれば呼び戻すことはできない。

しかし、オバマ大統領には、この危険を減らすための最後のチャンスがある。ペンを走らせるだけで、大統領は、米国の核ミサイルを一触即発の警戒態勢から外すことができる。この行為により、これらの核兵器を使おうとしても、何時間も、あるいは何日もかかるようにすることができる。

核兵器を高度の警戒態勢から外すことは、わが国の防衛能力に障害をもたらすことを意味しない。我が国は、やはり、攻撃に対する報復はできる。ただし、大統領が議会や他の指導者と協議し、冷静な判断のできる人々の意見が採用されるようにするための時間を稼ぐことができる。核戦争を始める決定を急いですべきではない。

オバマが2008年に言った通りである。

「核兵器を一瞬のうちに発射できる態勢に置いておくのは、冷戦の危険な遺物だ。このような政策は、壊滅的な事故や判断の誤りのリスクを高める。この危険な状態の問題の解決に取り組まなければならないと私は考える。」

今や、トランプ大統領は、140字を書くのと同じ時間で140発の核弾頭を発射できる。だが、重大な違いがここにある。ツイートは削除できるが、一発の核弾頭による破壊は元に戻すことはできないのである。

オバマ大統領に対し、核ミサイルを一触触発の警戒態勢から外すという権限を行使するよう要請するこの文書に署名して欲しい。

そして、この要請文のことを友人に、家族に、同僚に知らせて欲しい。力を合わせれば、これらの兵器が二度と使われないよう保証することができる。 www.ploughshares.org

大統領宛て書簡

バラク・オバマ大統領

私たちは、米国の核ミサイルを一触即発の警戒態勢から外すよう要請します。

私たちは、あなたの2008年の発言についてその通りだと思います。「核兵器を一瞬のうちに発射できる態勢に置いておくのは、冷戦の危険な遺物だ。このような政策は、壊滅的な事故や判断の誤りのリスクを高める。この危険な状態の問題の解決に取り組まなければならないと私は考える。」

私たちは以前にも増して、冷静な判断のできる人々の見解が採用されることを保証するようお願いします。この極めて重要な措置を講じれば、核の惨事のリスクを減らし、安全保障上の大きな利益をすべての米国人にもたらすことになるでしょう。



大陸間弾道ミサイル(ICBM)の警戒態勢を解除する簡単な方法

ミサイル・サイロ内の発射システム機器室、安全管理スイッチ

ミサイル・サイロ内の発射システム機器室と安全管理スイッチ

普段、ミサイルの保守点検に当たる要因はサイロに着いたらまずミサイル・サイロ内の「発射システム機器室」(左の赤い楕円)にある装置の「安全管理スイッチ」(右の赤い楕円)にカギを差し込んで安全側に回し、ロックピン・アセンブリーという部品ごと抜き取って、作業中にミサイルが発射できないようにする。警戒態勢の解除の一つの方法として提案されているのは、この状態のままにしておいてミサイルが短時間で発射できないようにするというものである。この措置は数日で終えられると見られている。1991年にブッシュ大統領が旧式のミニットマンⅡの警戒態勢の解除のためにこの措置を命じた際は2日以内で完了したと報告されている。

出典:UCS: FACT SHEET:A Simple Method for Taking U.S. Land-Based Nuclear Missiles Off High Alert (pdf)



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