核情報

2018. 2.16

日米原子力協定と反核運動

日本に再処理を認めた日米原子力協力協定が、今年7月16日に30年の効力期限を迎えます。両国とも通告をしないまま6か月前の1月16日が過ぎた時点で期限を定めない自動延長が確定しましたが、米国は、日本のプルトニウム使用計画については説明を求めるとのことです。今後も一方の国が6か月前までに文書で通告すれば協定を終了させたり、期限を定めた新協定の交渉を要求したりすることができます。

参考:

再処理の包括的事前同意付与の皮肉な経緯

1974年にインドが平和利用という名目で使用済み燃料を再処理して取り出したプルトニウムを使った核実験をしたのを受けて米国は高速増殖炉・再処理奨励策を変更しました。カーター政権時代に制定された1978年核不拡散法は、各国と原子力協力協定の再交渉を行い、米国起源の使用済み燃料、あるいは米国の輸出規制の対象となっている部品または設計情報を有する原子炉で照射された使用済み燃料は、米国政府の事前同意なしには再処理できなくするよう定めています。

ところが、1987年にレーガン政権が再交渉の結果署名した日米協定は、皮肉な結果となっています。1968年の元の日米協定の場合、米国起源の使用済み燃料の日本国内での再処理と外国への輸送は個別に米国が同意することが必要とされていたのに、新協定では、プルトニウムの物理的防護に関する要件などの追加と引き換えに、日本による再処理に包括的事前同意を与えてしまったのです。

自ら再処理を放棄したヨーロッパの非核兵器国

一方、1958年の米・ユーラトム(EURATOM = 欧州原子力共同体)協定は、西ヨーロッパにおけるヨーロッパ側の使用済み燃料の再処理に関して米国側の事前同意を必要としていませんでした。ヨーロッパ諸国が協定の再交渉を拒否したため、カーター大統領を皮切りに歴代の米国大統領は同協定を大統領令で延長するという形で核不拡散法違反問題に対処しました。最終的にクリントン政権で1995年に新協定が結ばれたころには、パイロット再処理プラントを建設していたドイツ、ベルギー、イタリアは、主として経済的理由のため再処理放棄を決定していました。このため、新協定には核兵器国である英仏の再処理工場だけが運転を承認されたものとして記載されるという状態となりました。日本は経済性の悪さにも関わらず再処理を放棄するに至っていない唯一の非核兵器国なのです。

核兵器物質蔓延の中で核兵器廃絶?

使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理は、元々、プルトニウムを燃やしながら使った以上のプルトニウムを生み出す夢の「高速増殖炉」に初期装荷燃料を提供するために構想されました。しかし、心配されたウラン枯渇も起きず、しかも2016年12月のもんじゅ高速増殖原型炉の放棄決定に見られるように、増殖炉の技術は予想以上に難しく、いつまで経っても夢は実現しない。そのため、たまったプルトニウムをウランと混ぜて「混合酸化物(MOX)燃料」にして軽水炉で燃やすことを計画したが、これも上手く行かない。その結果、日本は核兵器6000発分ものプルトニウムを抱えるに至っています。それにもかかわらず年間1000発分のプルトニウムを取り出す能力を持つ六ヶ所再処理工場を運転しようという日本の再処理政策についての懸念が米国で高まっています。韓国が日本と同じ再処理の権利を与えよと米国に要求していること、中国が民生用再処理政策の導入に向けて動いていることが背景にあります。

核のない世界の夢の実現を阻む日本の再処理政策

2008年の大統領選挙で登場したオバマ大統領は、翌2009年4月のプラハ演説において「核兵器のない世界」の夢を語った中で、核物質の量の最小化とセキュリティ(保安体制)強化を最優先課題の一つと捉え、「国際核セキュリティ・サミットを1年以内に開催」すると約束しました。オバマ大統領は、第2回核セキュリティ・サミットのため2012年3月に韓国を訪れた際にこう述べています。「分離済みプルトニウムのような我々がテロリストの手に渡らぬようにしようと試みているまさにその物質を大量に増やし続けることは、絶対にしてはならない」。

日本に対する批判に気づかぬふりをする日本政府

また、2016年3月17日、上院外交委員会で証言したトーマス・カントリーマン米国務次官補は再処理には経済性も合理性もなく、核拡散防止の観点から「すべての国が再処理の事業から撤退してくれれば、非常に嬉しい」と述べました。さらに、日中韓の現状に触れ、「我々は、本質的な経済性という問題があると考えており、米国とアジアのパートナー諸国が、経済面および核不拡散面の重要な問題について共通の理解を持つことが重要だ。例えば[2018年に迫った]日米原子力協力協定の更新について決定をする前に」と結んでいます。岸田文雄外相(当時)は国会で、次官補発言は一般論としての米国の見解だと主張しましたが、日本についての具体的な話です。ジョン・ウルフソル国家安全保障会議(NSC)上級部長も、米国は日本と「明確な使用・処分の道もない」大量のプルトニウムを保有する日本の決定が再処理とウラン濃縮を制限しようとする世界的な取り組みにとって持つ意味合いについて議論してきたと述べています。もし、日本がプルトニウムのリサイクルを続けるなら「他の国がまったく同じことを考えるのをどうして止められるか」(共同通信、2016年5月21日)。

日本の再処理は「国際安全保障の問題」

ロバート・ガルーチ元国務次官補・北朝鮮核問題担当大使は、再処理をどうするかは日本にとっては「エネルギーの問題だが、それが米国や北東アジアの[日本の]近隣諸国の安全保障に影響を与えるのだ。これは、国際安全保障の問題だ」と指摘しています(2016年4月21日ワシントンDC会合)。幸い、六ヶ所再処理工場の運転開始予定は昨年暮れに2018年から2021年に延期されました。協定問題を含めた国際的議論を喚起し再処理の完全中止に追いやることができるかどうか。日本の反核運動の正念場です。


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