核情報

2015. 5.15

4団体、ニューヨークでプルトニウム問題要請文を政府に

核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれているニューヨークで5月7日、日本の4つの反核・平和団体が、安倍首相に対し、日本のプルトニウム保有量に関する正確な情報を発表し、六ヶ所再処理工場運転開始計画を中止するよう求める要請文を国連の日本政府代表部に送付するともに、国連本部内の会議室で日本のプルトニウム問題についての説明会を開きました。

参考

4団体(ピースボート、原子力資料情報室、原水禁、ピースデポ)がニューヨークで発表した安部首相宛書簡は、次の3点を要請しました。

  1. 日本の使用済み燃料の再処理を2006年に終えている英国でさらに1トンのプルトニウムが日本のものとして割り当てられる予定であることを国際的に公表すること(2013年末の日本の保有量として発表されている47トンと合わせると48トンになる)。
  2. 少なくとも、この合計量48トン(1発当たり8kgというIAEAの計算方法で核兵器6000発分)が大幅に減り、たとえば、「需要量」1年程度にならない限り、六ヶ所再処理工場を運転してさらにプルトニウムを分離するようなことはしないと発表すること。
  3. 日本の保有プルトニウムに関する透明性を高めること。

以下、婦人国際平和自由連盟(WILPF)の「リーチング・クリティカル・ウィル」が発行するNPT関連情報交換誌NPT NEWS IN REVIEW (pdf)に核情報が投稿した記事の翻訳と書簡全文を紹介します。

核不拡散体制の強化への日本の貢献

世界の関心が核拡散問題に集中しているなか、日本は、六ヶ所再処理工場2016年3月に完成させようと計画している。非核兵器国の中で唯一の産業規模のこの再処理工場は、毎年8トンのプルトニウムを分離する能力を持つ。日本はすでに保有する48トンを保有している(48トンというのは一発当たり8キログラムという国際原子力機関(IAEA)の計算方法を使えば6000発分に相当する)。

5月7日(木曜日)日本の4つの平和団体(原子力資料情報室、原水禁、ピースデポ、ピースボート)が安倍首相に合同で要請文を送り、「少なくとも、現在の保有量の48トンが大幅に減り、例えば『需要量』1年程度にならない限り、六ヶ所再処理工場を運転してさらにプルトニウムを分離するようなことはしないと発表する」よう呼びかけた。

これに先立ち、ピースボートの川崎哲と原子力資料情報室の松久保肇がNPT再検討会議が開かれている国連本部の会議室で日本のプルトニウム問題について説明会を開いた。説明会には、ウエブサイト核情報の田窪雅文とフランスで活動する世界的に著名なエネルギー・原子力政策の専門家マイケル・シュナイダーが参加した。

プルトニウムは、元々、発電をしながらプルトニウムを増やす増殖炉の初期装荷燃料として使われるはずだったが、この増殖炉計画は頓挫している。マイケル・シュナイダーは、プルトニウムは「資産」ではないと強調した。実際、英国は、日本が十分なお金を払えば英国にある日本のプルトニウムを英国で処分してもいいと申し出ている。

松久保は、核拡散との関係について次のように説明した。「再処理・ウラン濃縮技術を持つ国は、NPTを遵守している場合でも、その意図について隣国から疑いの目で見られ、これが緊張関係をもたらす。だから、日本が核のない世界を求めるなら、六ヶ所再処理工場の運転を始めるべきではない。」

2014年3月のハーグ核セキュリティー・サミットの際、安倍首相とオバマ大統領は、日本の「高速炉臨界実験装置(FCA)から、高濃縮ウラン(HEU)及び分離プルトニウムを全量撤去し処分することを表明」した。これにより331キログラムのプルトニウムが米国に輸送されることになっている。共同声明は、さらに「HEUとプルトニウムの最小化のために何ができるかを各国に検討するよう奨励」した。

その6カ月後、日本の原子力委員会事務局は、2013年末現在の日本のプルトニウム保有量は前年の44トンから47トンに増えたと発表した。

この約3トンの増加のうち、640kgは、玄海原発3号機に装荷されたが照射されずに出てきたものである。

実質的な増加は、日本の使用済み燃料の一部が再処理されてきた英国で日本に割り当てられた2.3トンである。英国における日本の使用済み燃料の再処理は2006年1月に終わっているが、契約では、英国に送られた使用済み燃料に含まれるプルトニウムの全量は最終的に日本に割り当てられるが、その割当ては、その年に実際に日本の使用済み燃料を再処理し分離された量とは関係ない形で実施されることになっている。

2014年11月13日、原子力委員会事務局は国会議員に対し、英国にある日本のプルトニウム保有量に割り当てられるプルトニウムが後1トンあることが判明したと認めた。田窪は、六ヶ所再処理工場との関連でプルトニウムの需給関係が議論された際に、この合計3.3トンの追加割当てが残っているという事実を明らかにすべきだったと指摘した。

要請文は、安部総理に対し、2013年末の日本のプルトニウムの総量は、実質的に48トンであることを国際的に表明するよう呼びかけた。

川崎は、透明性の原則は、核兵器国だけでなく非核兵器国にも適用されるべきだと述べ、核セキュリティ・サミットが高濃縮ウランとプルトニウムの使用及びストックの最小化を呼びかけていると指摘した。

内閣総理大臣 安倍晋三様

NPT再検討会議に際して日本が核不拡散体制の強化に貢献するための要請:

  1. 日本の使用済み燃料の再処理を2006年に終えている英国でさらに1トンのプルトニウムが日本のものとして割り当てられる予定であることを国際的に公表すること(2013年末の日本の保有量として発表されている47トンと合わせると48トンになる)。
  2. 少なくとも、この合計量48トン(1発当たり8kgというIAEAの計算方法で核兵器6000発分)が大幅に減り、たとえば、「需要量」1年程度にならない限り、六ヶ所再処理工場を運転してさらにプルトニウムを分離するようなことはしないと発表すること。
  3. 日本の保有プルトニウムに関する透明性を高めること。

2015年5月7日

日本の平和運動に関わる私たちは、ニューヨークの国連本部で続いている核不拡散条約(NPT)再検討会議での議論と日本のプルトニウム利用政策の関係について強い関心を持っています。

安倍総理は、昨年3月にオランダのハーグで開かれた「核セキュリティ・サミット」の際に発表された日米首脳共同声明において東海村にある「日本原子力研究開発機構(JAEA)の高速炉臨界実験装置(FCA)から、高濃縮ウラン(HEU)及び分離プルトニウムを全量撤去し処分することを表明」しました。共同声明は、「この取組は、数百キロの核物質の撤廃を含んでおり、世界規模でHEU及び分離プルトニウムの保有量を最小化するという共通の目標を推し進めるものであり,これはそのような核物質を権限のない者や犯罪者,テロリストらが入手することを防ぐのに役立つ」と述べると共に、「HEUとプルトニウムの最小化のために何ができるかを各国に検討するよう奨励」しました。総理はまたハーグにおける総理ステートメントで「プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮します」と述べています。

ところが、その直後の4月11日に閣議決定されたエネルギー基本政策では再処理政策を推進するとしており、現在の計画では年間8トンのプルトニウム(核兵器1000発分)を分離する能力を持つ六ヶ所再処理工場を2016年3月に完成させ、その後間もなく運転を開始することになっています。

また、ハーグの会議から半年後の昨年9月16日、日本原子力委員会の事務局を務める内閣府原子力政策担当室(以下原子力委事務局)は、同委員会の定例会議において、日本の保有するプルトニウムの量は2013年末で約47トンとなり、前年末から約3トン増えたと発表しました。ハーグで発表した決定により米国に送られることになったプルトニウムの量の10倍近い量の増加です。

この3トンの増加のうち、約2.3トンは日本の使用済み燃料の一部を再処理してきた英国における日本への割当てから来ています。英国における日本のプルトニウムの保管量は2005年末以来ほとんど変化がなかったのですが、急に増加した格好です。英国における日本の使用済み燃料からプルトニウムを取り出す作業は2006年1月に終わっています。ところが、契約では、日本のプルトニウムは、それぞれの年に分離された日本のプルトニウムの量とは関係のない方式で、何年かかけて、日本から送られた使用済み燃料に含まれていたプルトニウムの全量が日本に割り当てられるとしているためこのような事態が生じたとのことです。この点に関する昨年9月16日の原子力委員会定例会議における説明は十分ではなく、記事録は委員たちも理解できていないことを示しています。

また3トンの増加のうち640kgは、2011年3月に玄海原子力発電所3号機に装荷されたプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料に含まれるプルトニウムです。この炉はその後再稼働されていません。原子力委員事務局は、先にこの未照射のプルトニウムの量を、単に原子炉に入れたからというだけで、分離済み未照射プルトニウムの総量から消してしまっていました。これらの状況について明確な説明がなければ、国際社会からはなぜいきなり3トンも増えたのかとの疑念が生じても仕方ありません。また、他に割当ては残っていないのかとの疑問が当然生じますが、この点を議員事務局に聞かれた原子力委員会事務局は、電力業者等に問い合わせた結果、2014年11月13日、時期は未定だがさらに1トンのプルトニウムが日本に割り当てられる予定であることが判明したと答えています。この1トンを合わせると日本は48トンを保有することになります。IAEAの計算方法で核兵器6000発分に達する量です(なおフランスではもう残っている割当て量はないとのことです)。このことはまた、合計3.3トン(2.3+1)のプルトニウムがこれまでのプルトニウムの「需給」計算において除外されていたことを意味します。

ハーグでの総理自身の声明・約束からいって、48トンものプルトニウムを抱えながら、プルトニウムを消費できる(MOX燃料を装荷できる)原子炉がいつ、何基運転再開となるかも分からない状況で、年間8トンものプルトニウムを分離する能力を持つ六ヶ所再処理工場の運転をできるだけ早く開始しようとする日本の政策は国際社会の理解を得られないでしょう。

私たちは、冒頭に述べた3項目について要請します。

  1. 2013年末の日本のプルトニウム保有量は実質的に48トンであると国際的に公表すること。
  2. 少なくとも、現在の保有量の48トンが大幅に減り、例えば「需要量」1年程度にならない限り、六ヶ所再処理工場を運転してさらにプルトニウムを分離するようなことはしないと発表すること。
  3. 日本の保有プルトニウムに関する透明性を高めること。

なお、今年、3月24日にも、添付したように、この問題に関する詳細な説明を含む要請書をお送りしましたが、NPT再検討会議のために集まった世界各国の指導者・外交官らが、核拡散を防ぐと共に核のない世界に向かうための具体的方策を求めて向けて話し合いを続けているここニューヨークの地から、再度要請します。

川崎哲 ピースボート共同代表
伴英幸 原子力資料情報室共同代表
藤本泰成 原水爆禁止国民会議事務局長
田巻一彦 ピースデポ代表

連絡先:原水爆禁止日本国民会議
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11連合会館1F
phone: +81-3-5289-8224 fax: +81-3-5289-8223
ニューヨーク連絡先:ピースボート peaceboat.us.office@gmail.com


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