核情報

2013. 7. 29

長崎被爆68周年を迎えて─年間1000発分を追加する六ヶ所再処理工場

日本原燃は、5月27日、六ヶ所再処理工場のガラス固化試験が前日深夜終了したと発表しました。2006年3月末に使用済み燃料を使った試験を始めたものの、2007年11月からの高レベル廃液ガラス固化試験で様々な技術的問題に直面し、本格運転に入れないでいましたが、これでいよいよ来年に運転開始となる可能性が出てきました。そうすると、現在約44トンという日本のプルトニウムを保有量は、数年で米国が冷戦時代に製造した核兵器用プルトニウムの量を超えてしまうかもしれません。

68年前の8月9日に長崎市に投下された原爆には、約6kgのプルトニウムが入っていました。長崎原爆投下記念日を迎えるに当たり、プルトニウムに関する数字を整理してみましょう。

核兵器に必要なプルトニウムの量4kg~8kg

「国際原子力機関(IAEA)」は、8kgのプルトニウムが行方不明になれば、工程でのロスを計算に入れても、1発の原爆ができている可能性があると見なすという基準「有意量」を採用しています。原子力発電所の使用済み燃料から分離される「原子炉級」プルトニウムで核兵器はできないと主張する人々が日本にはまだいますが、国際的にはそのような主張は通りません。日本の原子力委員会もこのことは認めています。そして、IAEAの基準は、「兵器級」、「原子炉級」などの質に関係なく当てはめられる数字です。


長崎原爆の頃より進んだ設計の米国の核兵器に含まれるプルトニウムの量はどの程度でしょう。2010年4月13日にヒラリー・クリントン国務長官(当時)が、軍事用の余剰プルトニウムの処分に関するロシアとの合意に署名するに当たって行った発言がヒントになります。「いま、私たちは、両国の相互安全保障を高め、二国間協力を深めるためにもう一歩進もうとしています。今署名しようとしているこの協定のもと、米ロは、それぞれ、逆転不能な透明な形で34トン以上の兵器級プルトニウムを処分します。合わせると、これは、核兵器1万7000発近くになります。」

両国合わせると(34,000kgx2)÷17,000=4kg。つまり、約4kgということのようです。

日本の保有量44トン=5500発分

日本が英仏の再処理工場と東海村・六ヶ所村の再処理工場での再処理の結果蓄積した分離済みプルトニウムは、約44トンです。英仏に約34トン、国内に約10トンあります。来年にも商業運転開始が予定されている六ヶ所再処理工場の使用済み燃料の年間処理量は、約800トンです。使用済み燃料の約1%がプルトニウムですから、年間約8トンのプルトニウムが取り出されることになります。各地の原子力発電所に運び込まれている未使用の「ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)」燃料に含まれているプルトニウムは、5月末時点で、約960kgでした。6月に関西電力高浜3号機用MOX燃料が搬入され、約900kgが追加されました。

IAEAの数字を使って控えめな計算をすると、日本がすでに保有するプルトニウム44トンは、原爆約5500発分になります。六ヶ所再処理工場の運転によって分離されるプルトニウムは、原爆約1000発分になります。

世界のプルトニウム非民生用230トン、民生用260トン

表は、2011年末の世界の高濃縮ウラン及びプルトニウムについて「核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM)」がまとめたものです。世界の分離済みプルトニウムの量は、合計約495トンで、約235トンが非民生用、約260トンが民生用です。米国の非民生用87.6トンの内、政府が余剰と宣言してるのが、前述の34トンも含め、49.3トンです。核弾頭に入っているものと、保管しているものと合わせた軍事用が38.3トンです。

世界の核分裂性物質の量(単位:トン 出典:IPFM)
 高濃縮ウラン非民生用プルトニウム民生用プルトニウム
ロシア69512850.1
米国60487.60
フランス31657.5
中国161.80.014
英国21.23.591.2
パキスタン30.150
インド0.85.20.24
イスラエル0.30.84
北朝鮮00.03
その他1561
(日本:44.3)
(ドイツ:5.8)
合計1390約235約260

軽水炉でのMOX使用を主体とした余剰プルトニウム処分計画はMOX工場の建設費高騰に悩まされ、オバマ政権は、地下処分の可能性を検討しています。

非核兵器国の民生用約61トンの内、日本が44.3トン、ドイツが5.8トンで、日本のプルトニウムの量がいかに突出しているかが分かります。(北朝鮮のプルトニウムは約30kgです。)日本の保有量は、数年で倍になる可能性があります。前号で見たとおり、現在ある世界の核兵器の数は、解体待ちの退役核を入れると総数約1万7000発。実際に配備されているものと予備を含めた「軍用保有」核が約1万200発。総数をひとまず1000発にし、不要なプルトニウムを処分するとすると、核兵器用の総量が4~5トンとなります。経済的に意味をなさない再処理を続け、プルトニウムの量を増やすことは、核軍縮の障害を大きくすることを意味します。


注:

米国の保有量に関しては次の二つの文書の数字の対照作業が複雑であるため、エネルギー省の担当者に確認中

  1. The United States Plutonium Balance, 1944-2009
  2. 米国のIAEAへの2012年報告(INFCIRC/549文書, pdf)

参考


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