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世界の核分裂性物質の量
2012年1月現在、世界全体で存在する高濃縮ウラン(HEU)の量は、約1440トンと推定されている。分離済みプルトニウムの量は、約500トンである。大まかに言って、この半分が核兵器用に生産されたもので、残り半分が民生用原子力計画で生産されたものである。
(詳細は、2011年IPFM報告を参照)
高濃縮ウラン
トン核兵器プルトニウム
トン原子炉級プルトニウム
トンロシア 737 128 48.4 米国 610 91.9 0 フランス 30.6 6 56.0 中国 16 1.8 0.01 イギリス 21.2 7.6 87.7 パキスタン 2.75 0.14 0 インド 2.0 0.5 0.24 イスラエル 0.3 0.82 - 北朝鮮 0.03 - ドイツ - 7.6 日本 - 44.9 スイス - <0.05 ベルギー - <0.05 その他 20.0 - 10.7 合計 1440 241 256
米国及び英国の兵器用プルトニウムの数字は、公式データに基づいている。民生用プルトニウムのほとんどの数字は、IAEAに対する申告に基づいている。他の数字は、非政府筋の推定で、大きな不確実性を伴うことが多い。高濃縮ウランの量は、90%濃縮ウラン等量。詳細は、各国についての記述を参照。
軍事用核分裂性物資の生産が続いているのは、インド(プルトニウムと海軍の推進力用高濃縮ウランの生産)、パキスタン(核兵器用にプルトニウムと高濃縮ウランを生産)、イスラエル(プルトニウムを生産と考えられている)。北朝鮮も、兵器級プルトニウムの生産能力を持つ。
フランス、ロシア、英国、日本、インドは、発電用原子炉の使用済み燃料からプルトニウムを分離する民生用再処理施設を持っている。中国は、パイロット再処理施設を建設中。
11ヶ国−−ロシア、米国、フランス、英国、ドイツ、オランダ(これら3か国は、URENCO加盟)、日本、ブラジル、インド、パキスタン、イラン−−が、ウラン濃縮施設を運転している。
世界における再処理計画の遺産
(軍事用と同量の民生用分離済みプルトニウム 核兵器が何万発もできる量)

- 出典 IPFM(核分裂性物質に関する国際パネル)
共同議長フランク・フォンヒッペル講演資料(pdf)
各国の現在の再処理政策
再処理中又は計画中の国 (発電容量にしめる割合%) (GWe, [109 Watts]) | 顧客国で再処理を中止した国、中止を計画している国 (GWe) | 再処理をしたことのない国 (GWe) |
---|---|---|
中国 (20%) 11.7 | アルメニア (露で)0.4 | アルゼンチン 0.9 |
フランス(85%) 63.1 | ベルギー (仏)5.9 | ブラジル 1.9 |
インド (≈50%) 4.4 | ブルガリア (露)1.9 | カナダ 12.6 |
日本 (100% 計画) 44.2 | チェコ (露)3.7 | イラン 0.9 |
オランダ (仏) 0.5 | フィンランド (露)2.7 | メキシコ 1.3 |
ロシア (10%) 23.6 | ドイツ(英仏) 13.1 | パキスタン 0.7 |
ウクライナ (5%露で) 13.1 | ハンガリー (露) 1.9 | ルーマニア 1.3 |
英国 (90%, 軽水炉除) 9.9 | スロバキア (露) 1.8 | スロベニア 0.7 |
英国、それに恐らくオランダと ウクライナは、再処理を停止予定。 フランスと日本の再処理の将来は不確か | スペイン(英仏) 7.6 | 南ア 1.8 |
スウェーデン (英仏) 9.3 | 韓国 18.7 | |
スイス (英仏) 3.3 | 台湾 5.0 | |
米国 (1972以来) 101.1 | ||
合計 (65%) 170.5 | 合計 52.6 | 合計 146.6 |
- 出典 IPFM(核分裂性物質に関する国際パネル)
共同議長フランク・フォンヒッペル講演資料(pdf)
国際プルトニウム管理指針と公表データ
1997年、米、露、英、仏、中、日、独、ベルギー、スイスの9ヶ国が、民生用分離済みプルトニウムの量を「国際原子力機関(IAEA)」に共通の書式で報告することを決めた。1998年3月16日、国際原子力機関(IAEA)がこの「プルトニウム管理指針」をINFCIRC/549(英文pdf)(2009年修正英文pdf)(JAEA仮訳)として発表。以後、これらの国々のプルトニウム保有量は、INFCIRC/549文書として毎年IAEAに報告されている。下のIAEA文書集に収められている
Information Circulars Documents Numbers 501 - 550のINFCIRC/549/Addというのが頭に付いた文書が参加各国の各年の報告。
549参加国の民生用分離済み未照射プルトニウム

日本国内の未照射プルトニウム

出典
- ISIS Reports CGuidelines for the Management of Plutonium (INFCIRC/549):Background and Declarations (pdf) (April 1, 2004, Revised August 16, 2005, September 16, 2010)(国別グラフもある)
参考
- 国際プルトニウム指針の公表について 科学技術庁 1997/12/10
- 日本のプルトニウム保有量 核情報
原子炉級プルトニウムで核兵器ができる:論文リスト(抜粋付き)
- MOX燃料輸送と核拡散─原子炉級プルトニウムでできる核兵器(『軍縮問題資料』 1999年5月号より)
*原子炉級では核兵器はできないとの神話形成において中心的な役割を果たした今井隆吉氏の発言についての説明のほか、以下の引用を含む
- ロスアラモス国立研究所のロバート・セルデン氏が1976年に開いた「原子炉級プルトニウムと核爆発装置」と題された説明会の結論。使用された資料(英文、訳文)
[原子炉級プルトニウムに含まれる]プルトニウム240は原子炉では明らかにまったく望ましくない。・・・見落とされているのは、高速中性子による分裂システムでは、プルトニウム240はまったく問題がないという点である。」失敗の場合でも「1キロトン」(破壊半径は、広島の場合の3分の1から2分の1)
- 「国際原子力機関(IAEA)」のハンス・ブリックス事務局長(当時)が1990年に核管理研究所に送った書簡での結論。
当機関は、高度燃焼の原子炉級プルトニウム、それに、一般にいかなる同位体組成のプルトニウムも・・・核爆発装置に使うことができると考える。当機関の保障措置部門にはこの点に関して論争はまったくない。
- ロスアラモス国立研究所の理論部の部長を47年から72年まで務めたカーソン・マークが1993年に発表した「原子炉級プルトニウムの爆発特性」(『科学と世界の安全保障』誌)Explosive properties of reactor‐grade plutonium
Science & Global Security: The Technical Basis for Arms Control, Disarmament, and Nonproliferation Initiatives Volume 4, Issue 1, 1993 (pdf)の解説とマークの結論簡単なタイプの効果的な設計を開発する難しさは、原子炉級プルトニウムを使った場合も、兵器級プルトニウムを使った場合に直面するものと比べそれほど大きくない。
- ロスアラモス国立研究所のロバート・セルデン氏が1976年に開いた「原子炉級プルトニウムと核爆発装置」と題された説明会の結論。使用された資料(英文、訳文)
- Management and Disposition of Excess Weapons Plutonium
*米国科学アカデミー報告書(1994年)
Calculations demonstrate, however, that even if pre-initiation occurs at the worst possible moment (when the material first becomes compressed enough to sustain a chain reaction), the explosive yield of even a relatively simple device similar to the Nagasaki bomb would be of the order of one or a few kilotons.
While this yield is referred to as the "fizzle yield", a 1-kiloton bomb would still have a radius of destruction roughly one-third that of the Hiroshima weapon, making it a potentially fearsome explosive.
早発が最悪の時点(連鎖反応維持できるのに十分な程度に初めて圧縮された時)に起きたとしても、長崎原爆に似た比較的単純な装置でも、爆発の威力は1キロトンあるいは数キロトンとなるだろう。この威力は、『フィズル威力』と呼ばれるが、1キロトンの爆弾の破壊半径は、広島型爆弾の約3分の1であり、恐ろしい爆発物となりうる
- Reactor-Grade and Weapons-Grade Plutonium in Nuclear Explosives (pdf)
*米国エネルギー省1997年1月の文書
"In short, reactor-grade plutonium is weapons-usable, whether by unsophisticated proliferators or by advanced nuclear weapon states. Theft of separated plutonium, whether weapons-grade or reactor-grade, would pose a grave security risk."
結論を言うと、原子炉級プルトニウムは、洗練されていない核拡散者であると先進核兵器国であるとにかかわらず、核兵器に利用することができる。分離済みプルトニウムの盗取は、それが兵器級であれ原子炉級であれ、深刻な安全保障リスクをもたらす。
- 原発のプルトニウムで核兵器は出来ない?──文科省vs両鈴木氏
鈴木篤之(元日本原子力研究開発機構理事長)・鈴木達治郎(元原子力委員会委員長代理)両氏が、東京大学在職時に韓国出身の科学者姜政敏(カン・ジョンミン)氏(東京大学で原子力工学博士号取得)らと日本原子力学会の英文誌2000年8月号に発表した論文で以下のように結論。
図3 6kgのRGPuとWGPuの爆発特性(中性子発生時間 10 - 8秒)
プルトニウムの同位体組成の劣化は、その核拡散抵抗性を若干高めることはできる。これは、原子炉級プルトニウム(RGPu)の自発核分裂による中性子、ガンマ線、熱の発生率の高さが、核兵器の設計や製造を複雑化するからである。しかし、米国エネルギー省は、基本的にいかなる組成のプルトニウムも核兵器の製造に使うことが出来ると述べている。それは以下のように確認できる。
プルトニウムの爆発特性は、マークの論文(*注)に良く説明されている。原子炉級プルトニウム(RGPu)と兵器級プルトニウム(WGPu)の同位体組成を表7に示す。図3は、RGPuとWGPuの爆発特性を示している。表8に示された自発的核分裂中性子の発生率に基づくものである。図3においては、爆発出力の割合を示した横軸の値1.0は、核分裂性物質1キログラム当たりTNT火薬にして20キロトンという基準出力を示している。トリニティーの原爆で使われた比較的遅い圧縮時間10- 5秒を使った場合でも、粗野なつくりの原爆で、TNT火薬にして数百トン(つまり、20kt x 0.027=0.5kt)の最低限出力が得られる。この点ではRGPuとWGPuとの間に差はない。だが、同じ圧縮時間(10- 5秒)を使った場合、早発(predetonation)の累積確率を同じ値でそろえて比べると、RGPuとWGPuの間の爆発出力の違いは相当なものになりうる。しかし、もっと進んだ現在の兵器設計を使って圧縮時間を短縮すると、RGPuは、WGPuに匹敵する爆発出力を持つことができる。
- 日本・核兵器・原子炉級プルトニウム
*マサチューセッツ工科大学(MIT)の物理学者マービン・ミラーが米国の民間団体『核管理研究所(NCI)』のセミナーで行った報告の原稿。(2002年3月27日)
私の結論は、日本は、その原子炉級プルトニウムを使って信頼性のある高い威力の核兵器を作ることができるが、他の核分裂性物質のストックを使うこともできる、というものである。技術的観点からいえば、日本は、潜在的核保有国である。
- 日本のプルトニウム・プログラムは、核拡散防止体制を脅かすとノーベル賞受賞者らが警告
六ヶ所使用済み燃料再処理工場の運転を無期限に延期することによってNPTを強化するようにとの日本への要請 (2005年5月5日)
いろいろ間違ったことが言われているが、テロリストも、民生用のプルトニウムを使って強力な核兵器─少なくともTNT火薬換算で1000トン(1キロトン)の破壊力を持つもの─を作ることができる。
- 核爆発装置における原子炉級プルトニウムの有用性 (2015年11月6日 於東京)
ブルース・T・グッドウィン(ローレンス・リバモア国立研究所国家安全保障・政策研究担当統統合副所長)
ロバート・セルデンの著述を元に
“第一世代の核兵器に使われたものと同程度の設計及び技術を使った潜在的核拡散国家又は国家レベル以下の集団は、1キロトン又は数キロトンの威力を確実かつ信頼性のある形で生みだす(そして恐らくはそれよりも相当高い威力を生み出す)核兵器−−を原子炉級プルトニウムを使って作ることができる。” *
“米国やロシアのような進んだ核兵器国は、新型の設計を使うことによって、兵器級プルトニウムから作られた核兵器とほぼ同等の信頼できる威力、重さ、その他の特性を持った核兵器を原子炉級プルトニウムから作ることができる。” *
* 以下より引用: US Department of Energy Publication “Nonproliferation and Arms Control Assessment of Weapons-Usable Fissile Material Storage and Excess Plutonium Disposition Alternatives, January 1997 http://www.osti.gov/scitech/biblio/425259
- 六ヶ所再処理工場の製品で核兵器ができることを示す米国文書──1977年日米再処理交渉関係カーター図書館文書類
- 「憂慮する科学者同盟(UCS)」エドウィン・ライマン博士六ヶ所問題ツアー関連論文類
- ウランとプルトニウムの混合酸化物のIAEA保障措置上の扱い
- 原子炉プルトニウムと核爆発装置 ロバート・セルデン(ロスアラモス国立研究所) (1976年11月)
Reactor Plutonium and Nuclear Explosives ─ Robert W. Selden
《米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science; AAAS)のCenter for Science, Technology and Security Policy と Nonproliferation Policy Education Center(ヘンリー・ソコルスキー所長)共催の会合(2009年5月12日)でセルデンが使った注入りのものの訳、原文》
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