核情報

2013. 6. 4

関電MOX輸送──利用計画明示の原子力委員会決定を無視

関西電力の高浜原子力発電所3号機用のMOX燃料が、6月後半に到着することになっていますが、関西電力は、この燃料を実際に装荷するかどうか未定としています。原子力委員会は2003年8月の決定において、六ヶ所村の再処理工場について、毎年度プルトニウムの分離前に「利用量、利用場所、利用開始時期及び利用に要する期間の目途」を含め公表するよう要求していますが、そこで、海外保管のプルトニウムについても、「燃料加工される段階において、六ヶ所工場に準じた措置を行う」としています。今回の輸送は、この原子力委員会決定に矛盾しています。

2003年08月05日の原子力委員会決定「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」は、核兵器利用可能物質「プルトニウムの利用の透明性向上を図ることにより国内外の理解を得る」ために、「利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則を示す」などしてきたが、一層の透明性向上のために、六ヶ所再処理工場について次のような措置が必要と述べています。

電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表することとする。利用目的は、利用量、利用場所、利用開始時期及び利用に要する期間の目途を含むものとする。

そして、海外保管のプルトニウムについて次のように定めています。

海外で保管されているプルトニウムは、プルサーマルに使用されるものについては、海外でMOX燃料に加工された上で我が国に持ち込まれることとなる。そのため、その利用について平和利用の面から懸念が示されることはないと考えられるが、透明性の一層の向上の観点から、燃料加工される段階において国内のプルトニウムに準じた措置を行うものとする。

今回輸送されているのは、関西電力が、2010年9月30日に、高浜3号機用MOX燃料20体の製造が終了したと発表していたものの全部または一部です。この段階では、国内のプルトニウムに準じた措置により、同3号機で使用予定との発表がされていました。しかし、現在では、3号機が再稼働になるかどうか分かりません。たとえ再稼働になったとしても、このMOX燃料を使用するかどうか決めていないと関西電力自身が述べています。日本政府は、核兵器利用可能物質の輸送を、利用計画もないまま許していることになります。未使用のMOX燃料からプルトニウムを取り出すのは、簡単です。現在、すでに、約960kgのプルトニウムを含むMOX燃料が5つの原子力発電所で保管されたままになっています。柏崎刈羽原子力発電所の場合は、この状態が2001年3月以来、12年間も続いています。米国政府内にはこの状況を核セキュリティーの観点から心配する声があります。高浜3号機用の20体には約900kgのプルトニウムが入っています。

原子力委員会は、2003年8月の原子力委員会決定と今回の輸送の矛盾をどう説明するのでしょうか。2010年にこのMOX燃料製造段階で利用計画があったから、いま、利用の見込みがないとしても、輸送してもかまわないと説明するのでしょうか。また、核物質のセキュリティーに責任を持つ原子力規制委員会は、国際社会に対し、この状況をどう説明するのでしょうか。


参考


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