
6月27日、衆議院第2議員会館で開かれた国会議員との意見交換会「日米原子力協定と核燃サイクル、アジアの核不拡散政策に関する米著名識者との意見交換会」の米側発言者の一人、トーマス・カントリーマン元米国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)の発言メモを当人の了解を得て訳出しました。
使用済み燃料を再処理してプルトニウムにするという「閉じられた燃料サイクル」に対する日本のコミットメントは、この地域にとって真の懸念材料だ。世界の安全保障・核不拡散という観点からもそうだ。こういったからと言って、日本が核兵器を追求するようになるだろうという懸念があることを意味しているわけではない。また、発電のために原子力に依存し続けるという日本の意向について反対することを意味するのでもない。
米国も世界も、韓国や中国が日本の真似をして、民生用再処理の分野に入るのを望まない。そうなると、核セキュリティーに対する脅威、つまり、犯罪者やテロリストによる盗取のリスクが高まる。そして、便益よりもずっと大きなリスクをもたらすテクノロジーの分野で地域競争が増大する。
47トンのプルトニウム――5000発以上の核兵器に十分な量――を持つことは、大量破壊兵器の拡散を防止するための世界的な外交努力の分野における日本の信頼性を損なわせている。今では、懸念すべき理由がもう一つある。米国が北朝鮮の完全な非核化を追求する中、米国にとって日本の再処理能力を容認することは以前よりさらに難しくなっている。
日本が閉じた燃料サイクルを採用した1970年代・80年代以来、その政策の基礎となった想定が相当に変わっている。
- ウランは、当時予測されていたよりずっとずっと豊富で安い。
- 経済的に成功した国はない。米英両国は、明確にサイクルの追及を放棄した。
- 2011年の大地震以来、十分な数のプルサーマル炉が再稼働され(あるいは建設され)すでにあるプルトニウムと将来六ヶ所で製造されるプルトニウムを消費すると考えるのは合理的な想定ではなくなっている。
地域的緊張を高め、転用の脅威をもたらし、日本の信用性を損ない、そして、その価値以上に製造費用がかかる物質を生産する政策の継続を擁護するのは難しい。このことは、閉じたサイクルに経済的利点がないならとりわけそうだ。日本の国会として、閉じた燃料サイクル継続の真のコストと、「ワンススルー」サイクルと乾式貯蔵のコストとをゼロベースから比較検討することを命じるべき時だ。
六ヶ所にすでにつぎ込まれた数兆円を計算に入れなくても、「ワンススルー」に切り替える総コストは、現在の政策を続けるより安くつく。発電にとって最も高くつくオプションを追求し続けることは、政府の支出にとって、消費者にとって、そして、とりわけ、日本の製造業者の競争力にとって重要な影響をもたらす。
もちろん、このような変更は、相当の調整を必要とする。とりわけ、電力会社が保有するプルトニウムが資産だとする想定にとってはそうだ。いうまでもなく、米日両国は、もっと経済的で維持可能なアプローチを確立するために、これまで原子力時代を通じてやってきたように――密接に連携していくことになるだろう。
参考:
- 核セキュリティー・サミットを前に日本の再処理政策にいらだつ米国 核情報 2016. 3.24
- 米高官が日本の核燃政策「懸念ない」と発言修正?──カントリーマン国務次官補、実は懸念確認 核情報 2016. 3.30
- 米高官、再処理反対の立場をNHKに再度表明──核セキュリティー・サミットに合わせ単独インタビュー 核情報 2016. 4. 4
- カントリーマン米国務次官補、再処理批判の考えを再度詳述──日本の主権の尊重と矛盾しないと 核情報 2016. 4.29
- 米高官、日本の核燃料サイクル政策に懸念表明発言──今度は、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)上級部長 核情報 2016. 5.23
- 六ヶ所再処理工場運転開始を懸念する米国 核情報 2014.11.14
カントリーマン国務次官補
*鈴木原子力委員長代理出張報告(2013年4月22日)及び「原子力平和利用と核不拡散・核セキュリティに係る国際フォーラム」(日本原子力研究開発機構主催 2013年12月3-4日)での発言