10月初めにエネルギー・環境会議に設置された「コスト等検証委員会」が原子力委員会に対し、できれば10月中に次の二つの問題に答えを出すよう依頼しました。1)使用済み燃料の再処理方針と直接処分のコスト比較と、2)将来「モデル原子力発電所」で事故が起きた場合のコストの算出です。依頼者の意図をはっきりつかめないまま突貫工事的に進められている作業は、担当者らも大変ですが、直接の関係者以外気づかないままに進んでしまうと言う意味でも大いに問題です。
- はじめに
- コスト等検証委員会が原子力委員会に解答を依頼した背景
- コスト等検証委員会の役割は?
- コスト等検証委員会で検討すべき原子力関連の論点は?
- 原子力委員会への依頼文書は?
- 10月7日に依頼して10月末または11月上旬に答えをという無理なスケジュールの理由は?
- 原子力委員会のスケジュールは?
- 課題1 バックエンド費用 (再処理方針と直接処分の比較)
- コスト比較は今回が初めてか?
- なぜ再処理政策が選ばれたのか。
- 問題はコストなのか
- 再処理はウラン資源の有効利用のためではなかったのか?
- 搬入済みが返却?
- 2005年原子力政策大綱は、「我が国の自然条件に対応した技術的知見の蓄積が欠如している」直接処分についてどうしようと言っているのか?
- 研究機関は、この5年間、「期待される」直接処分研究を進めたか?
- 再処理工場運転が、使用済み燃料の置き場確保のためなら、プルサーマル推進はなんのため?
- プルサーマルを受け入れなければ?
- 選択肢は?
- 六ヶ所再処理工場を運転しなければ、原子力発電所が止まるとの予言は当たるのか?
- コスト比較が鍵か?
- 課題2 将来リスク対応費用 (事故の際の賠償費用、除染費用、追加的な廃炉費用等)
- 原子力のモデルプラントは?
はじめに
依頼を受けた原子力委員会では、新たに設置された「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」で問題に取り組んでいます。「小委員会」では、多数決で決定する方法はとらず、異なる意見があれば併記するという方針になっています。これは、新しい試みで評価すべきでしょう。
2005年の原子力政策大綱でも、再処理と直接処分のコストを検討し、後者の方が安いとの結果が出たにも拘わらず、再処理をしなければ、使用済み燃料の行き先がなくなり、原子力発電が止まってしまうとの論法で、再処理政策推進を確認しました。この論法を持っている人々にまたコスト比較をしてもらっても答えは同じことになってしまうでしょう。重要なのは、この論法そのものを吟味することでしょう。「小委員会」が「コスト等検証委員会に提出する解答では、政策決定については触れないことになっていますが、どこで誰が政策決定の議論をするかが問題です。同時進行中の新政策大綱策定会議で議論が出てくることは間違いありませんが、他にどこでどのような形でこの問題が本格的に議論されるか曖昧です。
事故コストに関しては、事故の確率は出力120万キロワットの最新型のものを想定して算出し、事故のコストは福島の実際のものを試算して、これらを掛け合わせることで事故リスクコストを計算するという不思議なプロセスが浮上しています。また、確率はこれまでなされてきた研究を前提とするということですが、地震・津波、テロ攻撃などの外部的要因の検討はどうなっているのか。120万キロワットの原発をこれから建設しようという計画なのか、など疑問がわいてきます。
以下、エネルギー政策見直しのスケジュールと重なる部分もありますが、コスト等検証委員会が原子力委員会にコスト計算の一部を依頼した背景を概観したあと、依頼事項1)と2)について、それぞれの問題点をまとめてみます。
コスト等検証委員会が原子力委員会に解答を依頼した背景
コスト等検証委員会の役割は?
<背景>
これまでの試算が別々の場でなされていたり、その試算には含まれていなかった様々な事項が考慮されるべきと考えられるようになったこと。
<ミッション>
新たなエネルギーベストミックスの検討を、国民合意を得つつ行うために、各電源の発電コストなどについて、網羅的に、かつ整合性を持った、客観的なデータの提供を行うこと。
<留意すべき事項>
*特に、原子力の発電コストについての徹底的な検証は必須
*発電コストに加え、再生可能エネルギーの導入可能量など普及のポテンシャルについても、これまでの各省調査を検証本委員会の成果を踏まえて、エネルギー・環境会議と総合資源エネルギー調査会等関係機関が、エネルギーセキュリティや環境への適合などの観点も踏まえて、エネルギーベストミックスを検討
資料3-1 コスト等検証委員会のミッション及び論点について(案)(pdf) 3ページ
コスト等検証委員会で検討すべき原子力関連の論点は?
- バックエンド費用 原子力委員会に検討を依頼
(再処理方針と直接処分の比較) - 将来リスク対応費用 原子力委員会に検討を依頼
(事故の際の賠償費用、除染費用、追加的な廃炉費用等) - 追加的安全対策費用 コスト等検証委員会の事務局で整理
出典
コスト等検証委員会「本委員会での検討すべき論点」の4ページ、論点4【原子力関連】に関する10月7日第一回会議での事務局説明第1回 コスト等検証委員会 議事概要(pdf)(6ページ目)
原子力委員会への依頼文書は?
コスト等試算への協力のお願い(案)
平成23年10月7 日
原子力委員会 委員長 殿
エネルギー・環境会議
コスト等検証委員会委員長コスト等試算への協力のお願い(案)
平成23年7月29日に、エネルギー・環境会議において決定された『「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間的な整理』において、電源毎のコスト等の試算を、エネルギー・環境会議の下に分科会を設けて行うことになりました。
その決定を踏まえ、10月3日のエネルギー・環境会議において、コスト等検証委員会が設立されました。
今回、本委員会において、発電コストの試算を行うにあたり、特に、下記の内容について、その専門性に鑑み、貴委員会の技術等検討小委員会において検討をお願いいたします。
本委員会では、いただいた検討結果を踏まえて、原子力を含めた各種電源の発電コストについての取りまとめを行い、年末までに、エネルギー・環境会議に報告をすることになっておりますので、10月末あるいは11月上旬を目途に、貴委員会における検討結果を、本委員会にご報告いただくようお願いいたします。
記
(1)原子力発電の核燃料サイクル費用
原子力発電から生じる使用済核燃料の処理方法については、様々な方策が考えられるが、それらについて、最新動向などを踏まえ、その費用を算出する必要があります。
(2)原子力発電の将来リスク対応費用
東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、賠償費用、除染費用、追加的な廃炉費用等が生じていることを念頭に、原子力発電が有する将来顕在化する可能性のあるコストを算出する必要があります。
10月7日に依頼して10月末または11月上旬に答えをという無理なスケジュールの理由は?
こんなもの1ヶ月で出せと言うのは無茶だと近藤駿介原子力委員会委員長が言うような事態になっているのは、一つは、もともと無理の多かった6月7日段階のスケジュールを、菅政権末期に作業が足踏み状態があったにも拘わらず、当初通りに進めようとしているため。
エネルギー・環境会議の開催を発表した新成長戦略実現会議第9回会議(平成23年6月7日)で示したスケジュールは次の通り
第1段階
年央(7月ぐらい) 革新的エネルギー・環境戦略の策定に向け中間的整理
第2段階
年央から年末 中間的整理を受け、政策課題に応じて原子力委員会・総合エネルギー調査会などで検討を本格化
年末に革新的エネルギー・環境戦略の基本方針
第3段階
福島状況、事故調査、検証委員会の状況を踏まえながら原子力政策大綱、エネルギー基本計画、それぞれの改定の具体的作業を本格化
来年のしかるべきタイミングで革新的エネルギー・環境戦略のとりまとめ
第一段階の中間的整理は、なんとか7月29日に出たが、第2段階が始まらなかった。原子力委員会の原子力政策新大綱策定会議は、3月11日以降中断、総合エネルギー調査会「基本問題委員会」は委員長が決まったとの報道の後、音沙汰なしという状態だった。新大綱策定会議、エネルギー環境会議「コスト等検証委員会」、総合エネルギー調査会「基本問題委員会」がそろって動き出したのが中間整理から2ヶ月ほど経った9月末から10月初めだが、「年末に革新的エネルギー・環境戦略の基本方針」だけは動かない。
原子力委員会のスケジュールは?
原子力委員会の方は、本来なら、新大綱策定会議で議論すべきだが、こんな速いペースでは進みようがない。それで、原子力委員会に「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」を設け、そのメンバーを新大綱策定会議の委員から選んで何とか辻褄を合わせようとしている。第一回10月11日に「核燃料サイクルコスト試算モデル・条件の確認」、第二回10月13日「原子力発電所の事故リスクコスト試算の考え方」において計算方法を議論した。これに基づき、第三回10月25日「核燃料サイクルコスト・事故リスクコストについて」で計算結果について事務局案を出し議論した後、翌10月26日の第8回新大綱策定会議に報告、議論の結果を事務局でまとめて、11月15日、原子力委員会としてエネルギー・環境会議「コスト等検証委員会」に報告というスケジュール。
課題1 バックエンド費用 (再処理方針と直接処分の比較)
コスト比較は今回が初めてか?
2005年原子力政策大綱で次の4つのシナリオの間でコストを比較して、全量直接処分が安いと結論を下している。
- シナリオ1:全量再処理の後処分 1.6円
- シナリオ2:一部再処理・一部直接処分 1.4〜1.5円
- シナリオ3:全量直接処分 0.9〜1.1円
- シナリオ4:当面貯蔵後決定 1.1〜1.2円
なぜ再処理政策が選ばれたのか。
シナリオ3を選ぶと政策変更コストが伴うと主張された
(3)現実的な制約条件となる視点からの評価
・シナリオ1には現行政策からの変更はないが、シナリオ3については、政策変更を伴うため、①現時点においては我が国の自然条件に対応した技術的知見の蓄積が欠如していることもあり、プルトニウムを含んだ使用済燃料の最終処分場を受け入れる地域を見出すことはガラス固化体の最終処分場の場合よりも一層困難であると予想される、②これまで再処理を前提に進められてきた立地地域との信頼関係を再構築することが不可欠であるが、これには時間を要し、その間、原子力発電所からの使用済燃料の搬出や中間貯蔵施設の立地が滞り、現在運転中の原子力発電所が順次停止せざるを得なくなる状況が続く可能性が高い、といった「立地困難性」や「政策変更に伴う課題」がある。
出典 2005年原子力政策大綱の添付資料(1,322KB) 127─128,133ページ
そこで「政策変更コスト」約0.9〜1.5円/kWhをシナリオ3と4に追加して、後者の方が高いとしてしまった。
問題はコストなのか
上に見たように、2005年原子力政策大綱の論法では、問題は、1)直接処分の技術がない、2)使用済み燃料の置き場がない、の2点である。つまり、コストではない。
六カ所再処理工場を動かさなければ、原子力発電所が次から次へと止まってしまうというのがシナリオ比較を行った2005年原子力政策大綱の主張である。
各地の原発の使用済み燃料プールが満杯になりつつあり、その行く先を確保するために六ヶ所工場の横にある受け入れプールが必要だと言うことである。この容量3,000トンのプールも満杯に近づきつつある。このプールの使用済み燃料を再処理工場に送り、使い道のないプルトニウムや回収ウラン、高レベル廃棄物、低レベル廃棄物などに変える作業をすれば、プールに空きができ、また各地の原発からの使用済み燃料を受け入れられるようになる。
この論理がある限り、コストが高くても六カ所再処理工場を動かさなければならないということになる。原子力委員会が、原子力発電所の運転を止めようとの決定をするはずがない。つまり、コストなど関係ないということだ。
再処理はウラン資源の有効利用のためではなかったのか?
六ヶ所工場を今、無理矢理動かそうとしているのは、ウラン資源の有効利用などいろいろ公に説明されていることのためではなく、使用済み燃料貯蔵対策であることは、初代外務省原子力課長(1977─82年)の金子熊夫氏も『エネルギー』2005年11月号で指摘している。
多くの原子力発電所が使用済み燃料を抱えており、中には貯蔵能力の限界に近づいているものも少なくありません。そこで六ヶ所村に運び込んで再処理する必要があるわけです。もし同工場の運転を中止すれば国と青森県との合意事項が白紙に戻されることになり、すでに搬入済みの使用済み燃料も各発電所へ返却されねばなりません。そうなると、日本の原子力発電所は次々に操業停止に追い込まれ、大変な事態になります。
搬入済みが返却?
青森県、六ヶ所村と日本原燃株式会社との覚書(1998年7月29日)に次のようにある
「再処理事業の確実な実施が著しく困難になった場合には、青森県、六ヶ所村及び日本原燃株式会社が協議のうえ、日本原燃株式会社は、使用済燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずるものとする。」
出典
原子力委員会 新計画策定会議(第9回)資料 政策変更に伴う課題について(改訂版) 2004年10月7日(pdf, 55KB) p. 4
六カ所再処理工場を運転しなければ、この覚書により、すでに貯蔵されている使用済み燃料が各地に送り返される事態になるという。だが、覚書には、「搬出も含め・・・適切な措置を講ずる」とあるだけである。青森県が搬出という強硬措置を講じるかどうか、送り返すのにどのような手段が使われうるのか、それが青森県にとって何を意味するのか等は、吟味されていない。
2005年原子力政策大綱は、「我が国の自然条件に対応した技術的知見の蓄積が欠如している」直接処分についてどうしようと言っているのか?
(6)不確実性への対応
国、研究開発機関、事業者等は、長期的には、技術の動向、国際情勢等に不確実要素が多々あることから、それぞれに、あるいは協力して、状況の変化に応じた政策選択に関する柔軟な検討を可能にするために使用済燃料の直接処分技術等に関する調査研究を、適宜に進めることが期待される。
原子力政策大綱(2005年10月)本文(pdf, 286KB)(39ページ)
研究機関は、この5年間、「期待される」直接処分研究を進めたか?
表だって研究ができないらしい。
日本原子力研究開発機構油井副部門長は、次のように述べている。
現段階で、日本の国是として、再処理サイクルの路線で行けと言うことなので、なかなか表立って直接処分の研究ができるような状況ではございません。
第一回「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」(10月11日) 音声記録 107分頃
再処理工場運転が、使用済み燃料の置き場確保のためなら、プルサーマル推進はなんのため?「
平沼赳夫経済産業相(当時)によると、六ヶ所工場を動かすためらしい。
プルサーマルは、原子力発電を末永く続けていくために必要です。
我が国は、燃料として使う以外にはプルトニウムを保有しないことを国際的に明らかにしています。我が国のプルトニウム利用は、当面原子力発電所における燃料としての利用がほとんどとなるため、プルサーマル計画が進まず、原子力発電所における利用が進まないとなると、使い終わった使用済燃料のリサイクルが困難になります。
リサイクルをしないなら、使用済燃料を原子力発電所からリサイクル施設(青森県六ヶ所村)に運び出すわけにはいきません。原子力発電所の中に使用済燃料が溜まり続ける場合、使用済燃料の貯蔵施設が満杯になって、新しい燃料と取替えることができなくなるため、やがては運転を停止しなければならなくなります。柏崎刈羽原子力発電所もリサイクルの一環を担っているのです。
我が国の電力の3分の1以上を発電する原子力発電所が停止するようなことになれば、電力不足のような問題が発生します。
出典:2001年5月に新潟県刈羽村でプルサーマル実施に関する住民投票が行われた際に国が村内全戸に配布した平沼赳夫経済産業相の署名入りビラ、全文
プルサーマルを受け入れなければ?
2002年1月30日、双葉地方エネルギー政策推進協議会に出席した資源エネルギー庁原山保人部長(2001年3月に双葉郡全戸にプルサーマル推進のビラを配った)は、「プルサーマルを実施できない発電所の使用済み燃料は、それぞれの発電所で保管せざるを得ない」と、地元の出席者を脅かしていった。
出典 佐藤英佐久『知事抹殺 つくられた福島県汚職事件』76ページ
同書によると、刈羽村で配られたのと同様のビラが2001年3月に双葉郡全戸で配られたという。
選択肢は?
六ヶ所再処理工場を動かすのは、使用済み燃料の置き場を確保するため、プルサーマルは、六ヶ所再処理工場を動かすため。つまり、プルサーマル実施は、使用済み燃料の置き場を確保するためである。
従って、選択肢は、原子力発電所の運転を前提とするなら、「再処理運転+プルサーマル」か「使用済み燃料のサイト内またはサイト外中間貯蔵+直接処分」。
普通の経営感覚があれば、脅しとしてではなく、後者の選択肢を早くから残していたはずである。
六ヶ所再処理工場を運転しなければ、原子力発電所が止まるとの予言は当たるのか?
意識的無為による自己充足予言は当たるかもしれない
再処理・プルサーマルを推進するために、政府、各電力会社、電事連で一体となってキャンペーンを展開するために大金(国民税金+電力料金)を投入する一方、使用済み燃料のサイト内中間貯蔵や直接処分の「技術的知見の蓄積」については可能性を自ら断ってきた。電事連は、2004年5月、「再処理施設の操業に不退転の決意で取り組みます」と述べている。このほかにも、再処理推進派は、あちこちで「不退転の決意」を表明している。そして、2006年3月31日、実際の使用済み燃料を使ったアクティブ試験を始めてしまった。これにより、施設は放射能で汚染され、廃止措置には、何年も運転したのとほぼ同じコストがかかってしまうことになった。知見の蓄積の欠如、貯蔵場所の欠如に加えて、この廃止措置費用が直接処分の側の問題点に加えられてしまった。活用しないのに廃止措置に金がかかることが直接処分のデメリットとして数えられるのである。だから引き返せないと再処理推進派は言う。直接処分のデメリットとして挙げられているこれら項目は、再処理推進派が作り出したものである。批判されるべきは誰なのか。
退路を断てば、前に進むしかなくなる。選択肢を残さないことで、前に進まざるを得ないだろうとの予言が当たることになる。進んだ先も塞がってしまうかもしれないが。
コスト比較が鍵か?
コスト比較は、必要な作業ではあるが、鍵ではない。
2005年原子力政策大綱、言い換えれば日本の原子力政策は、コストがどうあっても、再処理をしなければ原子力発電所が止まってしまうとの考え方に立っている。この政策を立てて推進してきた同じ人々にコスト比較をやってもらっても、再処理推進の結論に変化が生じるはずがない。彼らが原子力発電を止めたくないことは言うまでもない。
鍵は、退路を断つ政策の立案・推進過程について分析し、現在退路が本当に断たれてしまっているのかどうかを検討することである。この作業は、これまでの原子力政策推進に関わってこなかった人々に任せるべきである。
原子力発電を直ちに止めても、使用済み燃料の貯蔵問題は残る。
再処理・プルサーマル推進キャンペーンのコストは検証してみる価値がある。
課題2 将来リスク対応費用 (事故の際の賠償費用、除染費用、追加的な廃炉費用等)
各種電源を比較するための計算方法は?
モデルプラント方式。各種電源施設を今建設したらいくらになるかを計算するために、それぞれ、過去3〜7年の間に稼働し始めた施設のデータに基づくという方針。
現在及び将来のモデルプラントを設定し、将来の見通しを示すことが可能であるモデルプラント方式による試算を基本とする。
但し、実績を確認するという観点から、有価証券報告書ベースの試算も行う。
出典 資料5-1 試算方法について(pdf) p6
モデルプラント方式とは
各電源毎に、モデルプラントを想定し、当該モデルプラントが、一定の運転年数にわたって毎年発生する費用を評価時点(運転開始時点)の価格に換算して合計した総費用を、当該運転期間中に想定される総発電量で除して求める方法。OECDが採用している「運転年数均等化発電原価計算法」と同様の考え方。
原子力のモデルプラントは?
原子力 120万kW
諸元のベース 直近7年間に稼働した発電所のデータ、関連事業者へのインタビュー
出典 資料5-3 モデルプラントの主な諸元や試算の条件について(pdf) 3ぺージ
2010年モデルプラントの主な諸元や試算の条件(ベース及びミドル)
過去7年に稼働開始の120万キロワット原発をモデルにする意図は?
過去7年に稼働し始めた120万キロワットの施設をモデルに計算する意図としては、次のような可能性が考えられる。
- これから原発を建てる政策があり、実施前にその政策を評価あるいは正当化するための試算である。
- 稼働開始後7年以上経ったのも運転するがこれは問わない。
- 稼働開始後7年以上経ったものは閉鎖する。
- 単に他の電源とコストを比較する際に何らかの基準を設けなければならないと判断し、すべてこれから建てるとしたらという仮定の下に計算する。
- 政策的には、実際には新規建設はしないとの明確な方針がある。
- 実際の新規建設を念頭においての計算要請ではないが、このモデル計算が建設中及び新規建設計画の判断基準となる可能性はある。
コスト等検証委員会における政府説明は2)のbに当たるが、実際に誰のどのような意志が背後で働いているのか、これから働くのかは定かではない。
過去7年とした理由については、以下を参照。
○大島委員
発電施設の想定を最近7年間というふうにした理由を教えていただきたい・・・。
○国家戦略室
・・・まず1点目ですけれども、直近7年間、これは実は前回の試算が2004年に行われていまして、そのとき以降につくったという整理で、確かに、では5年ではだめなのかと言われましたが、要は前回の試算で使ったもの以降、稼働したものっていなかったものだけで整理したということでございまして・・・・。
原子力委員会が提出するデータの使い方についての「コスト等検証委員会」事務局の説明は?
「コスト等検証委員会」でエネルギー・ベストミックス考察ためのデータとして検討し、エネルギー・環境会議及び基本問題委員会に提出して、そこでベストミックスについての議論をする。
基本的にはエネルギーベストミックスを考えるときの1つのデータというのをここで御検討いただき、提示する。それを踏まえて、まさしくこの間開始されました経済産業省の総合資源エネルギー調査会、更にはコスト等検証委員会の親委員会でありますエネルギー・環境会議の方でエネルギーベストミックスについての議論をコストの話だけではなく、エネルギー、セキュリティ、環境への適合等々を踏まえて議論していくというふうに考えてございます。
再稼働問題と事故リスクの関係は?
実際の政策に関連して、焦点の一つは、運転停止中の再稼働問題だが、これに関して、有益なデータを提供するようにとの指示はない。
事故リスク・コストの計算方法は?
原子力委員会事務局案は次の通り
事故リスクコスト試算の考え方
■ 事故リスクコストは下記の考え方で試算することでよいか
①損害費用(円)×事故発生頻度(/炉年)
②これを、コスト等検証委員会で検討しているモデルプラントに規格化
- *損害費用=東京電力に関する経営・財務調査委員会の試算(損失合計 5兆6,912億円)を基礎とする
- *モデルプラントは、モデルプラントはGen.III+に相当するので、確率は、1.2x10-5とする
出典 原子力発電所の事故リスクコスト試算の考え方(pdf)
外国の専門家は?
米国プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル公共・国際問題教授は核情報に対し次のように答えている(原子力委員会での詳細な議論などは伝えていない)
コストを計算してみるのは良いだろう。
だが、フクシマ後の現在、なぜ確率計算をやろうとするのだろうか。
日本政府は、賠償や除染コストについていろいろな推定を発表している。また、生産、観光、輸出などの損失から生じた日本全体の経済的損失のついての推定もあるだろう。
その総額が例えば、2000億〜5000億ドルとなったとしよう(日本の人々の方がもっと良い推定ができるだろう)。(1ドル80円として、16兆〜40兆円)。
フクシマ以前の原子力発電容量は4700万キロワットだった。
原子炉がそれぞれ40年間運転され、設備利用率が平均72%としよう(IAEAによる)。
そうすると、原子炉は寿命が尽きるまでに12兆キロワット時の発電をすることになり、キロワット時当たりの事故コストは、0.017〜0.042ドル/kWhとなる(1.4〜3.4円)。
発電設備容量で言うと、事故コストは、100万キロワット当たり40億ドル(3200億円)ほどになる。建設費を上回る。
これが原子力対再生可能エネルギーという議論において持つ意味合いは、十分に大きいと言えるだろう。
このコストを、世界の軽水炉の容量全体で平均すると、0.13を掛けた値となるだろう。だが、これは、世界の発電容量の残りの寿命の期間、深刻な事故もテロリスト攻撃もないとの前提に立つもので、スリーマイル・アイランドのような他の軽水炉の事故のコストを無視している。
このメッセージは、論争の引き金になるだろう。その結果に関心を持っている。
実際の経験は、常に、理論的確率計算よりも良い指標である。
これまで、約1万炉年の経験を持っている。従って経験された確率は、世界全体で10-4だ。
日本の経験は、部分的は、地震と津波の危険のため、約10-3だ。
GENIII原子炉は、よりよい原子炉かもしれないが、原子炉に対するテロリストや「暴漢国家」の攻撃のリスクは高くなっている。
- *このような議論をするためには、資料や議事録を英文で出すことが必要だが、議事録は日本語でさえ間に合っていない。
無理矢理モデルプラントで答えを出すべきか?
変なかけ算をすべきではない。コスト等検証委員会でやろうとしているのは、他の電源との比較のために一応、今建設したらどうなるかというコスト比較計算であることを念頭に置くべきである。
実際に起きた福島の事故の損害額の推定値とこれまで使われてきた確率の数値とを掛け合わせるのは、モデル・プラントの計算にはならない。
本当にモデル・プラントについて計算するなら、事故の際に放出される放射能、人口、天候、地震や津波、各種の意図的破壊行為(航空機、ミサイル、部内者の破壊行為、準軍事部隊による攻撃)なども考慮して数字を出さなければならない。
だがフォンヒッペル教授がいうように、将来についての確率的計算は、現実の経験ほど当てにはならない。チェルノブイリ、スリーマイル・アイランド、フクシマは、これまでの確率計算が当てにならないことを示している。地震によって福島原子力発電所がどれほどの損傷を受けたかについての検証も終わっていない現在、福島の経験をモデルに反映させることもできない。
出題に沿うなら、例えばフォンヒッペルの提示したような数字をモデル・プラントの建設コストの計算と並べて提出するのが妥当だろう。フォンヒッペルの計算は、実績を実存の発電容量に沿ってモデル化したような形を取っている。40年間の運転期間にこれ以上の事故は起こらないとの想定だ。完全実績方式だと、これまでの原発総発電量で割って計算することになる。
原子力委員会は、出題の意味を理解しているのか?
近藤委員長が分からないと言っている。
モデルプラント指定した側がどういう気持ちで指定したかと言うもあるんだけど、
1ヶ月でこんなものを出せと言うのがむちゃくちゃなんだけど・・・。
要求されているものが、本当に、「期待値」を出してくれと要求されていると解釈するかどうかと言うこともあります。これは、よく分からないわけで、いろいろなものがかかるでしょうというのなら、どんなコストになるか調べてくださいよと言われているのなら、生のデータを、確率の話は、確率としてもちろんあるわけだけども、それをメンションしつつ、どれだけ範囲の損害が想定されますというのを言うだけで良いのかもしれない。
向こうがそれをどう使うかは、向こうに任せるという・・・。
期待値でなくても良いのかもしれない。そこがよく分からないんですよね。・・・
[あと]1週間では何もできないかもしれない
出典
原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会、第2回 平成23年10月13日(木) 録音 オブザーバーとして出席していた近藤委員長の発言は115分頃
依頼した側の意図は明確か?
そうでもない。
最初に思いついた個人がどう考えたかは別として、形式的には、エネルギー・環境会議コスト等検証委員会委員長が原子力委員会委員長にコスト計算を依頼している。委員会のメンバーによって依頼内容についての解釈が異なるという問題が生じる。
大島堅一委員(立命館大学教授)は、「原子力委員会にコスト試算について協力を依頼するということですので、出てきたものがあとでもう一度ということになると二度手間になりますので、あらかじめ要望をということで」、パワポ資料の形で要望事項をまとめ、事務局に提出。10月7日の会議では、配布された同資料に基づき、原子力委員会への依頼事項について討議がなされた。
この討議の後、コスト等検証委員会事務局が、「資料3-1コスト等検証委員会のミッション及び論点について」4ページの「本委員会での検討すべき論点」論点4【原子力関連】に言及し、次のように説明した。
- バックエンド費用 原子力委員会に検討を依頼
- 将来リスク対応費用 原子力委員会に検討を依頼
- 追加的安全対策費用 コスト等検証委員会の事務局で整理
1と2について、コスト等検証委員会事務局が、大島委員の提出資料を基に展開された委員間の議論などを合わせて、原子力委員会に報告し、石田内閣府副大臣名で「11月上旬をめどに、途中段階でも検討状況を御報告いただくよう」依頼することが決まった。
原子力委員会によると、実際に同委員会に送られたのは、この第一回会合で配布されていた「コスト等試算への協力のお願い」だけだった
コスト等検証委員会の第1回会議の議事録(pdf)で言及されている大島委員の資料「原子力のコスト計算にあたって」が原子力委員会にも提示されず、コスト等検証委員会のサイトにも出ていないのではないかとの「核情報」の問い合わせの結果、同委員は、16日朝、コメントを付けて同氏のブログにアップ。
コスト等検証委員会の第2回会議が10月18日午前に開かれ、午後に掲載された配付資料の「資料1 原子力委員会への依頼について」(pdf)には、原子力委員会への依頼文の他、上述の大島委員パワポ資料と、第一回議事録の中の同資料を巡る討議部分の抜粋とが入っている。これを見ると、これらが10月7日に原子力委員会に届けられたかに見えるが、実際に届けられたのは依頼文だけだった。
誰が誰に依頼?
依頼主委員会と依頼された委員会に同じ人物が登場して複雑。
動き出した3つのエネルギー政策見直し作業:革新的となるのか?にある委員会メンバー・リストを見れば分かるように、このコスト等検証委員会には、原子力委員会「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」とダブっているメンバーが二人いる(山名元京都大学原子炉実験所教授及び松村敏弘東京大学社会科学研究所教授)。両委員は、大島委員の要望案に関する議論に積極的に発言し、そこは小委員会での議論に任せるべきなどと述べていた。しかし、両氏とも、10月13日に開かれた小委員会には欠席。両氏が出席していれば、小委員会への依頼内容について彼らから説明があったのだろうか。それも、不思議な構図である。
保険制度の分析はするのか?
依頼には保険の話は直接の文言としては入っていないため、原子力委員会事務局は保険制度については小委員会では議論しないことになっていると言う。だが、民間保険で賠償金を支払うための「賠償措置」について1事業所当たりの額を1200億円より大幅に上げるとか、無限賠償責任についてすべて民間保険で賄うべきだとかの政策が決定されれば、電力会社側に追加的コストが生じる。だから、将来リスク対応費用について検討を依頼された小委員会が保険制度について議論してはならないと言うわけではないはずだ。
近藤委員長も、だいたい次のように述べている。
損害賠償の話はしないと言うことだけど、何かそれがないとお金にならい、コストに翻訳できない。いろんなコストがあるということで、諸説あるんですよということは紹介して差し上げたら良いのかもしれない
保険制度についてのドイツでの分析は?
「保険フォーラム・ライプチヒ」に「ドイツ再生可能エネルギー協会」が委託した研究 Calculating a riskappropriate insurance premium to cover thirdparty liability risks that result from operation of nuclear power plants「原子力発電所の運転の結果生じる第三者賠償責任リスクをカバーする、リスクに見合った保険料の計算」)(pdf)(伴委員提出資料)が、重要な示唆を与えてくれる。
100社以上の保険会社に情報を提供している研究機関によるこの分析は、金融部門関係者による初めての試みである。発表は、2011年4月。研究作業は福島の事故の前に行われた。研究結果は、無過失・無限賠償責任を保険会社の保険だけでカバーしようとした場合、鍵になるのは、実際に事故が起きたときに必要となる賠償額を、保険会社側が何年以内に蓄積しておこうとするかであることを示している。1000年に1度の事故の起きる確率は、第一日目も1000年後も同じだから、巨大な賠償額を引き受けた保険会社は、その額が貯まらないうちに事故が起きれば倒産してしまうのである。原発の寿命に見合った短期間に必要額を貯めておこうとすると電気料金が異様に高くなってしまう。実質的に保険は成り立ち得ないというのが結論である。
計算の概要:
これまで出ている報告書類から完全メルトダウン(INES7)の被害額を推測。天候条件についても考慮。
事故の確率についてはこれまでの研究を使ったが、これらに入っていない以下のような外部からのリスクを追加して検討。
- 原発の老朽化
- テロ(航空機、誘導ミサイル、部内者の破壊行為)(1/1000炉年)
- コンピューター・ウイルス
- 人的ミス
- 地震
極値統計学の手法を使って、事故の際の予測される最大賠償額を6兆900億ユーロと推定。(1ユーロ120円として731兆円)これを保険会社が1000年に亘って貯めるというのは現実的でないとし、この賠償額を貯める期間を、10年、50年、100年、500年とした場合の保険料を計算。(原子炉の寿命から言って、50年も現実的でない。)これを、ドイツの17基全体の保険プールとして扱った場合と、1基毎に保険を掛けた場合に分けて、kWh当たりのコストを提示。
(日本の原発数を50基として、プールの大きさは約3倍。プール形式にした場合の保険料は約3分の1となる。)
単位:ユーロ/kWh (1ユーロ=約120円) | ||
貯める期間 | 1基毎 | 17基全体のプール |
500年 | 0.00074 | 0.00004 |
100年 | 2.36 | 0.14 |
50年 | 8.71 | 0.51(=61円) |
10年 | 67.3 | 3.96(=475円) |
保険制度についての米国での分析は?
米国の核問題専門誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』誌に掲載されたエネルギー・環境研究所(IEE)上級研究員による論文 MARK COOPER Nuclear liability: The market-based, post-Fukushima case for ending Price-Anderson(核の損害賠償責任:プライス・アンダーソン法を廃棄すべき市場ベースのポスト・フクシマ的理由)5 OCTOBER 2011は、事故の賠償責任額の上限を定めたプライス・アンダーソン法を批判。事故の責任を政府と国民に転嫁するものであり、事業者の事故防止努力に関してモラル・ハザードを起こしていると説き、事業者が保険などにより全面的責任を負うようにすべきだと主張。同法制定の背景には、有限責任にしておかなければ原子力分野に入ってくる民間会社がないとの考えがあった。GEやウエスティングハウス社は、同法制定を強く求めた。
日本の保険制度は?
日本の場合は、保険は1事業所当たり1200億円の措置をしていればいいが、事故が起きた際には無過失・無限責任を負うことになっている。「絶対安全」という神話を維持するためには、絶対起こらない事故については、当然無限責任を負う用意が電力会社の側になければならないという虚構のもとに現在の仕組みが決められた。小さな賠償措置額と、原子力発電所の事故がもたらしうる大きな被害に対する無限責任の組み合わせである。原発推進派の中には今になって、賠償責任をすべて私企業が負うのは無理だと言い始めている人々がいるが、なぜもっと前にそう言わなかったのだろうか。
*プライス・アンダーソン法及びそれを部分的に真似た日本の原子力損害賠償制度については、以下を参照。「原子力損害賠償支援機構法案と審査会・委員会」 核情報
新規建設・再稼働についての政権の考え方は?
新規の建設予定、14基あると思いますが、私は新たに作るということはこれはもう現実的には困難だというふうに思います。そしてそれぞれの炉が寿命が来る、廃炉にしていくということになると思います。寿命に来たものを更新をするということはない。廃炉にしていきたいというふうに思います。その上で、当面の話です。今のこれは基本的な姿勢ですよね。当面の問題なんですけれども、これはさっきの冒頭のご挨拶のところにも触れたように、ストレステスト含めて、安全性を厳格にチェックした上で、稼働できると思ったものについては、これは地元の皆さまのご理解をいただくためにしっかりと地元の皆さまにご説明をしながら再稼働をしていって、特にこの夏と冬については、これは電力の需給関係見ると何とか乗り越えることができると思いますが、来年についてはちょっと幾分心配なところがございますので、そういうことで、再稼働できるものについては、しっかりとチェックをした上でですよ、安易ではありません、安全性をしっかりチェックした上で、再稼働に向けての環境整備、特に地元のご理解を頂くということを当面はやっていくことが必要だろうというふうに思っています。
建設・準備中の原発について
Q: 今後の原発建設について重ねてお伺いします。
野田総理は就任会見で、今後の新設については困難だと明確に述べていましたが、先ほど枝野大臣は今後個別に具体的に検討したいと話されました。前大臣は新しい準備中の原発については、困難だと、総理の発言に沿うような考え方を示されましたが、枝野大臣としては、政府の手続を踏んだ決定がなされるまでは、結論めいたことを言うような考えはないという理解でよろしいのでしょうか。
A: お二人とも困難だという言い方をされていると、つまり客観的な状況に対する認識をおっしゃったのだと思います。認識については、困難であるという認識については、私も同じような認識を持っております。ただ、政府の方針をどう決めるのかということについては、今直ちに結論を言えと言われても、しっかりとした議論が必要だと思っていますが、ただ全くの新規については、相当困難であるということは、これは大前提だろう思っておりますし、そこから準備段階なのか、建設中なのかというのも、どこかでばしっと二つに切れるわけではなくて、いろいろな段階と地域の事情がありますから、そこは個別にいろいろと見ていって、困難でない、あるいは困難だけれども、超えられる部分があるのかないのか、ある場合に果たしてそれがいいことなのかということは、個別に検討しなければいけないと思います。
▽原発の再稼働と新増設
再稼働はストレステストなどを経て、地元の了解や国民感情などを踏まえて政治判断する。現時点で新増設は全体的には困難。ただ既に建設が相当進んでいるものは個々に判断する。まっさらな所から新しいものを作るのは極めて困難だ。
参考
- 朴勝俊 原子力発電所の事故被害額試算 国民経済誌 2005年3月 (初稿受付日2003年10月6日 採択決定日2004年9月22日))(pdf)(伴委員提出資料)
- 石川迪夫(エネルギー問題に発言する会)朴論文”原子力発電所の事故被害額試算”について
- 朴勝俊 朴勝俊論文に関するご批判にたいして 2004/3/30(pdf)
- 小出裕章(京都大学・原子炉実験所)第97回原子力安全問題ゼミ 2004年6月9日
原子力発電所の災害評価:原子力推進似非学者のレベルの低さと批判への回答(pdf) - 日本経済研究センター 原発の発電コスト、20年度には事故前の3倍に─福島事故の事故処理費が大きく 2011年7月19日(pdf)
- 原発「安価」神話のウソ、強弁と楽観で作り上げた虚構、今や経済合理性はゼロ 東洋経済 11/06/21 (大島堅一教授引用)
- 米国自然資源防護協議会(NRDC) インディアンポイント原子力発電所に関する研究2本 NRDC: Indian Point Nuclear Plant Study
(ニューヨーク市に隣接するインディアンポイント原子力発電所の事故の被害と同発電所を閉鎖と電力供給体制について:福島レベルの事故が起きれば、何百万人もの避難が必要となり、福島の10〜100倍の損害となると論じる)