日本の再処理政策のお手本の国フランスで、再処理政策中止の可能性を規制当局が口にする事態となっています。ラアーグ再処理施設の使用済み燃料貯蔵プールが満杯になる時期が2030年のはずだったのが、2028年以前、場合によっては2024年になる可能性が出てきているといいます。一方、満杯事態に備えて同施設内にフランス電力(EDF)が建設を計画している大規模な集中型貯蔵プールの完成予定時期が2030年のはずだったのが2034年以降に延期されています。二つの時期にギャップが生じているのです。
- 仏原子力安全局(ASN)も現状に危機意識
- 各地の原発で稠密貯蔵も乾式貯蔵もせず、自転車操業
- 悪化する再処理工場の状況と受け入れ・貯蔵プール満杯問題
- メロックスMOX製造工場の不良品の影響
- 2003年ガイドラインの下でも増え続けたフランスのプルトニウム保有量
- 時系列整理
- プール計画遅延の背景
- 日本のMOX利用に対する影響
- ふげんの使用済み燃料をフランスで再処理して、プルトニウムを買ってもらう?
「フランスには、余剰プルトニウムを発生させないために、一定期間の分離プルトニウムの利用見通しにしたがって、使用済燃料を再処理するという政府のガイドライン[2003年策定]がある。」
原子力委員会が2018年1月16日に発表した日本のプルトニウム利用の現状と課題」(pdf)はそう述べて、日本のプルトニウム保有量を増やさないようにするため、フランスの手本に倣うとしていました。そのフランスで再処理体制が崩壊の危機に晒されているという情報が、ここ数年、フランスのアナリストらから送られてきていましたが、事態はいよいよ深刻になっているようです。以下、現状を簡単にまとめた後、時系列を整理し、最後に日本のプルトニウム「消費」との関係を見ておきましょう。
仏原子力安全局(ASN)も現状に危機意識
フランスは、原子力発電所で発生した使用済み燃料を再処理して取り出したプルトニウムを劣化ウランと混ぜて混合酸化物(MOX)燃料にして普通の原子炉(軽水炉)で消費する政策をとっている。日本はこれに倣っている(元々は、プルトニウムをもんじゅのような高速増殖炉の燃料にして、運転しながら使った以上のプルトニウムを作るという計画だったが、フランスでもこの計画はとん挫している)。このMOX利用体制が回らなくなってきているのだ。状況を簡単に整理するとこういうことだ。
- 仏北西部のラアーグ再処理施設で老朽化が進行(二つの再処理工場の一つUP3が、蒸発缶腐食問題で2021年9月末から同12月初頭まで運転停止[1])。
- 仏南部のメロックスMOX製造工場で不良品が多くMOX利用が停滞。不良品はラアーグ再処理工場に送ってプールで貯蔵(最近、プルトニウム保管施設に移動)。
- ①と②のため再処理工場の受け入れ・貯蔵プールが満杯に達すると予測される時期が早まっていて、2028~29年より前、早ければ2024年と見られている。
- 使用済みMOX燃料は当座再処理の計画がないまま再処理工場のプールに保管されており、これがプール容量のひっ迫状況に拍車をかけている。
- ラアーグのプール満杯問題に対処するために、フランス電力(EDF)がラアーグ施設内に建設を計画している集中型貯蔵プールの完成予定が2030年から2034年以降に延期されている。同プールは容量6500トン(燃料集合体1万3000体)、六ヶ所再処理工場のプールの容量の2倍強[2] 。
- ラアーグの現存のプールに貯蔵されていたMOX不良品は、プルトニウム保管施設に移動されたが、今度は同施設が満杯状態に近づいている。
- MOX製品の搬出量低下(使用量の低下)は再処理量の低下をもたらしプールの満杯化を加速する恐れがある。仏にはプルトニウム使用量に合わせて再処理するガイドライン(方針)があるからだ。
- これらが合わさって、使用済み燃料の置き場がなくなって各地の原発運転で中止が起きる可能性がある。
図1 フランスの再処理危機状況の概観
この状況を深刻にとらえた仏原子力安全局(ASN)の ベルナール・ドロスチュク局長は、今年1月19日の会見で、再処理関連施設の様々な問題を考えると、再処理中止を選択肢として検討する必要があるとして、次のように述べている。「もし[フランス]で再処理を続けるなら、現在の設備の改修の準備をする、再処理を中止するなら、使用済み燃料の管理の別の手段が2040年までに得られるようにする必要がある[3]。」
この状況を受けて、再処理施設を運転するオラノ社は、ラアーグ施設の既存のプールでの稠密貯蔵(設計より多くの使用済み燃料をプールに詰め込む方式)の導入と900トンの容量の乾式貯蔵施設の建設を提案している(この乾式貯蔵施設は使用済みMOX燃料など再処理の計画のないものを貯蔵するためのもの)[4]。
各地の原発で稠密貯蔵も乾式貯蔵もせず、自転車操業
現在の事態の背景には、各原発の使用済み燃料プールの貯蔵容量の小ささがある。現在世界で運転中の一般的な原発(軽水炉)は、そのほとんどすべてが、使用済み燃料は数年の冷却の後、再処理工場に送られて、増殖炉の初期装荷燃料用にプルトニウムが回収されるとの前提の下に設計されている。したがって、その炉の1炉心あるいは2炉心分の量の使用済み燃料をラック(収納棚)に収める設計になっている[5]。米・日を始め多くの国では、プール内のラックの構造を変え、元の設計以上の量を保管する稠密貯蔵が導入されているが、フランスではこの方式の危険性に鑑み、実施されていない。また、使用済み燃料を5年ほどプールで冷やした後は、空気冷却の乾式貯蔵(原発敷地内外)に移すことができるが、フランスではこれも導入していない。このため、各原発からラアーグへの使用済み燃料の搬出、再処理、MOX燃料製造、MOX利用が自転車操業状態で行われているのだ。
悪化する再処理工場の状況と受け入れ・貯蔵プール満杯問題
UP3は、蒸発缶の取り換えを行うため、近いうちにまた運転を停止して、2023年半ばに運転再開と予定されているが、この予定は遅れるだろうとグリーンピース・ドイツのショーン・バーニーは見る[6]。そうすると受け入れプールの満杯が早期に訪れることになる。
<追記> 使用済みMOX燃料の貯蔵量のデータを2022年末のものに更新しました。
また、使用済みMOX燃料は、再処理の予定がなく、ラアーグの受け入れ・貯蔵プールに貯蔵されており、これがプールの満杯時期を早める結果をもたらす。グリーンピース・フランスのヤニック・ルスレがASNから得た情報をまとめた下の表にあるように、使用済みMOX燃料の貯蔵量は2022年12月31日現在、1840トンに達している(六ヶ所再処理工場の受け入れプールの総容量約3000トンの3分の2近い量)。使用済み低濃縮ウラン燃料の量は8194トン。その他と合わせ合計8523トンだ。
操業状況 単位:トン | 理論上[現在の] 工業的容量★ | [元々の] 許可容量 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
UP2 800 再処理燃料量 | 625* | 1000 | 531 | 573 | 443 | 423 | 562 | 445 | 618 | 578 |
UP3 再処理燃料量 | 625* | 1000 | 674 | 545 | 540 | 586 | 652 | 590 | 403 | 347 |
UP2 800 + UP3 | 1250 | 1700 | 1205 | 1118 | 983 | 1009 | 1214 | 1035 | 1021 | 925 |
EDFからの受入燃料 | 1216 | 1170 | 1161 | 1086 | 1029 | 1098 | 1152 | 898 | ||
外国からの受入燃料 | 21 | 13 | 13 | 6 | 13 | 6 | 0 | 9 | ||
プール内のMOX燃料 | 13,990 | 17,600★★ | 1306 | 1340 | 1400 | 1456 | 1496 | 1612 | 1727 | 1840 |
プール内のウラン燃料 | 8347 | 8359 | 8499 | 8551 | 8365 | 8290 | 8324 | 8194 | ||
保管中のその他の燃料 | 245 | 248 | 256 | 262 | 279 | 302 | 309 | 329 | ||
MELOX生産MOX量 | - | 195重金属トン | 125 | 124 | 110 | 93 | 90 | 85 | 51 | 59 |
Pierrelatteへ送られた 再処理ウラン(URT) | 1,221.86 | 1,212.07 | 1,035.34 | 765.3 | 1,006.70 | 1,131.20 | 864.95 | 901.7 |
* 現在の燃焼度での値
出典:ヤニック・ルスレから2023年5月3日受領の表(抜粋)
- ★訳注:「理論上の工業的容量」は、具体的な工業的状況(現在なら蒸発問題による再処理工場の処理量の低減など)に起因する現時点の容量を意味する。[理論上の]とあるのは、追加的制限などにより達成できない可能性があることを意味する。(後出のフランス在住ドイツ人専門家シュナイダーによる解説。2022年9月6日私信)
- ★★訳注:17,600トンの内訳は、平成29年度原子力の利用状況等に関する調査 核燃料サイクル技術等調査 報告書(pdf) 日本原子力研究開発機構 2018年2月(13ページ)によると、以下のとおり。
表 8 La Hague プラント貯蔵プールの認可貯蔵容量
*後述のように「プールNPH」は空にする作業が行われているので、これによる影響が「[現在の]理論上の工業的容量」(実際の満杯容量)の13,990トンにも出ていると推測される。
追記:
ネガワット・アソシエーションのイヴ・マリニャックが2021年12月に開かれたズーム会合(「核分裂性物資に関する国際パネル(IPFM)」の会合)用に用意した資料によると、2020年末の使用済み燃料プールの貯蔵容量は、公称1万7600トン、実際の運用容量は約1万2350トン。
ルスレは、貯蔵容量はトン数で表されるが、実際の状況は、使用済み燃料収納ラックの体積や配置状況に沿って評価しなければならないと説明する。オラノによると、プールの収容率は約93パーセントに達しているという。写真は、「原子力安全情報と透明性に関する高等委員会(HCTISN)の会合」でオラノが使ったパワポ資料(2016年:92.8%)。これは、その後も±0.5%で安定している。(ルスレ私信:2022/09/22)。
メロックスMOX製造工場の不良品の影響
南仏のメロックスMOX燃料製造施設で不良品の発生量が増えており、このため、上の表にあるように、使えるMOX製品の製造量が2015年125トン、2016年124トンだったのが、2021年には51トンまで下がっている。
この不良品発生問題は四つのことを意味する。
- MOX燃料製造量の低下はMOX利用量の低下をもたらす。現在MOX利用が許可されているのは、古い型の90万キロワットの24基。実際にこれまで使用は22基。過去数年は、18基で4分の1炉心のみ使用[7]。EDFはASNに各炉のMOX利用量の低減を申請している[8]。
- 利用(需要)に合わせ再処理をする「計画」なので、MOX利用量の低下は再処理工場での処理量の低下をもたらし、これが再処理施設のプールの満杯問題を悪化させることになり得る。
- 不良品は、以前は、受け入れ・貯蔵プール、特に一番古いNPHに入れていた(ペレット、燃料棒、燃料集合体などの形で)。だが、同プールは周りの建物のディコミッショニングのためブロックが落ちてくる恐れがあるということでASNが、オラノに早く同プールを空にするよう要請。これが他のプール(C、D、E)の満杯問題を悪化させることに。
- 不良品の方は、現在は再処理で取り出した粉末プルトニウム保管専用施設(BSI及びBST1)で保管するようになっている。このため、この保管施設の方の満杯問題が生じているとネガワット・アソシエーションのイヴ・マリニャックは説明する[9]。
7月発表のASN『年次報告2021年』は、この問題が続くと、フランスの「燃料サイクル全体に大きな影響を及ぼすことになり得る」と述べている。
オラノはASNに、新施設の建設許可を申請しているが[10]、その完成まで「暫定的に」一部を既存施設の廊下で保管できないかと要請している[11]。
不良品の増加の原因は、 MOX製造用の劣化ウランを供給していたオラノ社のマルヴェシ工場(南仏)が運転を停止したため、同社のリンゲン工場(ドイツ)からの供給に変ったことにあると見られている。前者はウェット・プロセスであるのに対し、後者はドライ・プロセスを採用していて、これが不均一性問題を起こしているとの判断だ。オラノ社は、マルヴェシに新工場を建設中で、2023年完成予定となっている[12]。
図2 フランスの使用済み燃料再処理・MOX燃料製造及び消費のフロー
図3 フランスの再処理体制危機状況の詳細
(MOX消費量低下➡再処理量低下[消費量に合わせて分離の方針]➡プール満杯化)
2003年ガイドラインの下でも増え続けたフランスのプルトニウム保有量
日本の原子力委員会がお手本とするフランスのガイドラインが2003年に出た後も、フランスのプルトニウム保有量は下のグラフが示す通り、増え続け、1995年に約30トンだったものが、2016年には65.4トンと2倍以上に増えていた。ASNはこの数年間、再処理工場で同量のプルトニウムを分離し、メロックスへ搬送することを許可しており、この結果、フランスのプルトニウム保有量は、2020年末現在で79.4トンに達している[13]。
- 追記 2021年末現在では84.9トンに達している。
出典:Communication Received from France Concerning Its Policies Regarding the Management of Plutonium(INFCIRC/549/Add.5-26, pdf)IAEA 11 October 2022
出典:プルトニウム削減の第一歩は再処理工場運転放棄 核情報 2018. 6.22
時系列整理
ここで、主としてASN『年次報告2020年』(pdf)の抜粋の形で時系列を整理しておこう(抜粋提供は、フランス在住ドイツ人エネルギー問題専門家のマイケル・シュナイダー)。
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2016年 EDFがANSの要求に応じて提出した「2016年サイクル・インパクト・ファイル」で、ラアーグのプールの満杯時期を2030年と予測。(2021年10月、ASNはグリーンピースとの会合で、満杯予測時期が2030年から2028年に早まったと明らかに。ASNが2022年7月に発表した『年次報告2021年』は、満杯時期は2028~2029年より早いとしている。)
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2017年 EDFは、2017年6月30日までに、新しい貯蔵容量を作るための選択肢をASNに提出するよう指示される。これに対し、 EDFは、ラアーグのプールの満杯状態に備え、集中型プール建設計画を提案(使用100年。場所未定。これがのちにラアーグでの建設案となる)
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2018年 ANSの要請により、EDFは(オラノ社と協力して)、新しい集中型プールの完成がラアーグの現存の貯蔵プールの満杯時期より遅くなる可能性に備えて、その対策案を提出。
対策案:
1)ラアーグのプールの稠密度を高める
2)MOX利用を許可されている出力90万キロワットの原子炉でのMOX使用を増やす。
3)使用済み燃料の乾式貯蔵を導入する。
*現在オラノ社は、集中型プール建造計画の遅延に対処するため、1)と3)を再提案している状況にある。 -
2019年 ASNがEDFの集中型プール建造案にOKを出す。
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2020年 EDFがラアーグの集中型プールは2034年まで稼働できないと報告。
これを受け、10月末、オラノ社がラアーグの貯蔵プールの稠密化を提案[14] -
2021年6月 「仏放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)」がプールC、D、Eの稠密化オプションを満足のいくものと判断[15]
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2021年7月 IRSNが、ラアーグの腐食のひどい蒸発缶の運用中止を勧告。運転続行(取り換え迄)決定について詳細な検討ができるまでとの内容。これを受けて、オラノは9月末から12月初めまでUP3運転停止。
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2022年3月 ASNは、「原子力安全情報と透明性に関する高等委員会」(HCTISN)の会合で、オラノとEDFの対応次第では、2024年にもプールの満杯状態が出現するかもしれないと警鐘を鳴らす[16]。
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2022年7月 ASN『年次報告2021』で、ASNは、プールの長期的稠密化は「現在の安全性基準を満たす技術的解決策ではない」と述べる。
プール計画遅延の背景
マリニャックはこの一連のながれを一種のゲームだと見て、次のように説明する。
プール満杯時期が2030年から2028年に早まることがASNとグリーンピースの会合で判明。一方、EDFがラアーグでの新しい集中型プール完成は2030年から2034~2035年に遅れると発表(もともと、集中型プールなら乾式貯蔵施設より早くできるという主張だった)。こうなってしまったから、ラアーグ再処理工場の既存のプールで稠密貯蔵を!との論理。
「これは、ある程度、ゲームの一環だ。二つの予定時期(満杯と新たなプール貯蔵施設完成)は、重なるはずだった。政策決定者に容量ギャップは生じないから現在の政策(再処理+MOX)は継続できるし、そうすべきだと説得するためだ。この政治的結果が得られた後、満杯時期と完成時期の間のギャップの増大というのは、政策決定者に圧力をかけて、ずっと安上がりの稠密貯蔵の許可を得るための方法だ。これが達成された後の次のステップは、集中型の使用済み燃料プールの必要性そのものを問うとか、少なくともこのプロジェクトの作業の速度を落とすかということになるかもしれない[17]。」
ラ アーグ核施設の西側に計画された集中型貯蔵プールの位置(赤枠内)EDFのWebサイトより
日本のMOX利用に対する影響
日本は、2021年末現在、フランスに14.76トンのプルトニウムを保有している(MOX工場のない英国には約22トン)[18]。日本は、これをフランスでMOX燃料にして日本に輸送し、消費する計画だ。したがって、メロックス工場の事態は日本のプトニウム消費計画・再処理計画に大きな影響を及ぼす。
2021年11月17日フランスから関西電力高浜4号用MOX燃料16体(629kg)が到着した。これは、2017年締結の高浜3号・4号のそれぞれ16体、合計32体の契約の一部だ。この契約に関して関電が原子力規制委員会に届けた到着時検査希望日は、2020年1月31日~2021年12月31日だった。本来なら高浜3号用16体も同時に輸送されるはずだったということだ。一緒に送られてこなかった理由について関電はプレスリリースで説明しなかったが、2022年2月15日にオラノ社から「オラノは日本への核物質の輸送を実施する計画」(英文)という発表があった。そこには「オラノは、日本への核物質の輸送を、製造が完了次第行う所存だ。しかし、具体的なタイミングは、製造の進展を考慮に入れ、関係者間の調整を経て決めなければならない」とだけ書かれてあった。メロックス工場の不良品問題のため、予定通り製造ができなかったということだ。ここで気になるのは、2017年9月21日に到着した高浜4号用16体のプルトニウム重量が703㎏だったことだ。今回のものが629㎏であるのは、MOX工場の状況と関係があるのかどうか、関電は説明すべきだろう。
関電は、2022年8月5日、「高浜発電所3、4号機用ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料)(第3回製造分)のうち、製造が完了した燃料の輸送ができる見通しが立ったことから、今年度に輸送する」と発表した[19]。2017年契約分の残りということなのだろうが、「輸送実績については、輸送終了後に公表」として、集合体数やプルトニウムの重量については触れていない。このMOX燃料を載せた船が2022年9月7日に仏シェルブール港を出発予定だったが、クレーン故障のため積み込みを終了できず、延期となっている[20]。
一方、2020年1月締結の3・4号計32体分の到着時検査希望日は、2020年1月31日~2023年3月31日だ。この輸送の「具体的タイミング」は決まっていないようだ。
参考
- プルトニウム削減への電力間融通、と報道──国際社会の懸念を払拭できるか? 核情報 2022. 2.18?
ふげんの使用済み燃料をフランスで再処理して、プルトニウムを買ってもらう?
日本原子力研究開発機構は、2022年6月24日、廃炉作業中の新型転換炉ふげん(福井県)の使用済み燃料の再処理をオラノ社に委託する契約を結んだと発表した[21]。燃料には1.3トンのプルトニウムが含まれている。
機構は、2018年10月26日、ふげんの使用済み燃料搬出について仏オラノ・サイクル社と準備契約を同25日に結んだと発表したが、再処理するか否かは未定とあやふやな態度に終始していた。4年近く経ってやっと再処理契約締結と発表したということだ。
「同機構によると、フランス側はプルトニウムを民生用原子炉の燃料の材料とし、日本以外の第三者が使う。譲り渡すプルトニウムについて、燃料の利用者が決まれば価格を定め、フランス側が同機構に対価を支払うことになった。利用者として電力会社などを想定している」と共同通信は報じている[22]。
各社の報道は、「譲渡」が具体的に何を意味するのか明らかにしていない。これまで見てきたフランスの状況を考えれば、フランスが機構に対価を支払ってプルトニウムを使用することがあり得るだろうか。フランス以外でも、たとえプルトニウムを只で貰っても燃料として使いたいという電力会社はないだろう。売れるものなら、MOX製造工場がない英国で「放置状態」にある約22トンの日本のプルトニウムもフランスに送って、MOX燃料にし、フランスその他の電力会社に買ってもらえばいい。大事な資源であるはずのプルトニウムを、日本の電力会社が買って使うという話にならないのか。マスコミ各社は、「譲渡」とは具体的にどういう意味か、フランス側が対価を支払うということがどうしてあり得るのか、という普通の質問を読者に代って機構及び日本政府にぶつけてみてはどうだろうか。そして、さらに、日本で使用できないプルトニウムを取り出す再処理をなぜフランスに委託するのかという問いも。最終的な費用がどうなるか分からない再処理委託契約が実施されようとしている。あたかも、フランスから「代価」を支払ってもらえるとの印象を持たせながら。
機構は、もんじゅの使用済み燃料も2034年度から37年度にかけて、フランスに送って再処理する計画だ。[23]
福井から搬出さえできれば後は野となれ山となれ・・・。
参考:ふげんの使用済み燃料搬出でプルトニウム1.3トン増大 核情報 2018.12. 3
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One of the two Orano factories in La Hague shut down for corrosion Teller Report 2021/10/9 ↩︎
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Nucléaire : le projet de piscine d’EDF sur le site d’Orano La Hague fait des remous
actu.fr 24 Nov 21 ; Nuclear pools - a safe storage of spent fuel before recycling Orano ↩︎ -
L’ASN envisage l’abandon du retraitement des dechets nucleaires
Reporterre 19 janvier 2022 ↩︎ -
Projet d’entreposage à sec des combustibles usés HCTISN – Réunion (pdf) 08 mars 2022 ↩︎
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過密貯蔵の進む日本の原発と乾式貯蔵──危険な稠密貯蔵の実態分析 核情報 2021. 9.29〜;『プルトニウム──原子力の夢の燃料が悪夢に』 緑風出版, 第5章 「実際よりずっと深刻な福島事故の可能性 稠密貯蔵状態の使用済み燃料プールでの火災」 ↩︎
-
ショーン・バーニー(グリーンピース・ドイツ)私信(2021年11月29日) ↩︎
-
ヤニック・ルスレ(グリーピース・フランス)私信(2022年8月12日) ↩︎
-
イヴ・マリニャック( ネガワット・アソシエーション)私信(2021年10月1日);ASN『年次報告2021』 ↩︎
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マリニャック私信(2021年10月1日 ↩︎
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Capacité d’entreposage de matières plutonifères : le collège de l’ASN auditionne Orano ASN 25/10/2021 ↩︎
-
ルスレ私信(2022年8月12日) ↩︎
-
Capacité d’entreposage de matières plutonifères : le collège de l’ASN auditionne Orano ASN 25/10/2021 ↩︎
-
Communication Received from France Concerning Its Policies Regarding the Management of Plutonium (INFCIRC/549/Add.5-25, pdf) IAEA 21 September 2021↩︎
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Consultation sur les projets d’observations et de demandes de l’ASN relatives aux options de sûreté proposées par Orano sur la densification des piscines C, D et E des INB 116 et 117 sur le site de La Hague ASN 2021; courrier DOS densification des piscines C, D et E (PDF - 393.68 Ko ) ASN 2021 ↩︎
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Avis IRSN illustré et commenté sur le dossier d’options de sûreté portant sur le projet de densification des piscines C, D et E de l’établissement Orano de La Hague IRSN 28/06/2021 ↩︎
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ロジャー・スパウツ(グリーンピース・ルクセンブルグ)私信(2022年9月1日) ↩︎
-
マリニャック私信(2021年10月6日) ↩︎
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日本のプルトニウム保有量 核情報 ↩︎
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港クレーン故障で出発延期 フランス、日本向けMOX燃料 秋田魁新報(共同通信) 2022年9月8日↩︎
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原子力機構週報Weekly Report (6/18~6/24) 日本原子力研究開発機構 2022年6月24日
6月24日(金):「ふげん」の使用済燃料の輸送及び再処理に係る履行契約(IC2契約)の締結
現在廃止措置中の「ふげん」の使用済燃料の輸送と再処理について、令和4年6月24日、オラノ・リサイクル社と履行契約を締結しました。
輸送については2023年度に開始し、2026年度夏頃までに終了する予定としており、再処理については2024年度から開始する予定としております。
なお、再処理により回収されるプルトニウムは、平和的利用のみに供することを前提に日本以外の第三者が使用するためにオラノ・リサイクル社に移転します。
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プルトニウムを仏に譲渡、ふげん燃料で原子力機構が発表 共同通信(日経新聞) 2022年6月24日 ↩︎
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核燃料、34年度から仏へ搬出 もんじゅ廃炉作業―文科省 時事通信 2022年03月30日↩︎