核情報

2013. 6. 27

「利用目的のないプルトニウムを持たない」原則に無頓着の原子力委
──高浜MOX輸送の次は六ヶ所再処理開始?

MOX燃料が高浜原発に到着、原発事故後初
2013年06月27日 11:30

【6月27日 AFP】フランスで再処理されたウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を積んだ輸送船が27日、厳重警備の下、福井県の関西電力((Kansai Electric Power、KEPCO…… ≫続きを読む  AFPBB News
(c)AFP/KAZUHIRO NOGI

関西電力高浜原子力発電所3号機用MOX燃料が、27日朝、同発電所に到着しました。「利用目的のないプルトニウムを持たない」との原則を示している原子力委員会は、2003年の決定で、英仏でのMOX燃料加工に先立ちその燃料の利用計画を確認するとしています。製造契約・加工開始の時点では確かに「利用計画」がありましたが、福島事故で輸送中止となって以後、再稼働があるかどうかも分からず、関電自身が利用について判断していない言っています。ところが、原子力委員会は、この輸送が問題かどうか議論もしてないとのことです。六ヶ所再処理工場の運転については?


  1. 核兵器利用可能物質の輸送について無頓着な原子力委員会
  2. 六ヶ所再処理工場でのさらなる分離についての判断の試金石
  3. 再稼働と再処理開始の競争──原子力員会は判断基準を明確に

参考


核兵器利用可能物質の輸送について無頓着な原子力委員会

6月25日、原水爆禁止日本国民会議(原水禁)がこの件に関する2度の申し入れ(3月22日及び6月12日)について、原子力委員会事務局に見解を質したところ、加工と輸送は一体になっているので、輸送について別途考えるという発想はなかったと答えました。通常ならそうかもしれませんが、加工と今回の輸送の間には、福島事故がありました。マスコミで大きく報道され、また、原水禁の2度の申し入れがあったにも拘わらず、原子炉で使われないかもしれないプルトニウムが輸送されることについて問題意識を全く持っていないということになります。「利用目的のないプルトニウム」=核兵器製造に使われるかもしれないプルトニウムが日本に運ばれて来ないようにするという国際社会に対する約束の意味について考えてもみなかったということでしょうか。今回の輸送に関しては、加工段階で利用計画を確認していたことは、言い訳にはなりません。関電自身がマスコミに対して、「MOX燃料の装荷については再稼働の議論や地元の判断を踏まえて決める方針で現時点では判断していない」「27日に運び込んだMOX燃料をいつどのような形で使うのかは、まだ決まっていない」などと説明をしてます。つまり、利用目的のない0.9トンのプルトニウムを含むMOX燃料が日本に運び込まれたということです。

六ヶ所再処理工場でのさらなる分離についての判断の試金石

次の問題は、日本原燃が今年10月に竣工としたがっている六ヶ所再処理工場について原子力委員会がどのような判断を示すかです。今回の輸送についての原子力委員会の判断は、再処理についての判断に関する試金石でもありました。2003年8月の委員会決定は、六ヶ所再処理工場で分離されるプルトニウムについて、「電気事業者は、その利用の場所・時期・期間などについて公表し、委員会がその利用目的の妥当性について確認するとしています。今年3月26日の原子力委員会定例会議(配布資料)(議事録pdf)において、電気事業連合会は、「運転中及び停止中の発電所の新安全基準の適合性確認方法、及びその手続きは未定であるため、再稼働の見通しが立たない状況にある。また、建設中の発電所も今後の工程の見通しが立たない等、同様である」として、利用計画をいまは提出できないと説明しています。

再稼働と再処理開始の競争──原子力員会は判断基準を明確に

原子力規制委員会は、原子力発電所の再稼働に関する審査を7月以降、六ヶ所再処理工場の運転に関する審査を12月以降行うことになっています。MOX利用可能な原子炉について規制委員会が再稼働可能と判断し、地元自治体がMOX燃料装荷について同意する以前に再処理工場運転を認める判断を規制委員会が出した場合、「利用目的のないプルトニウムを持たない」原則について、原子力委員会はどう判断するのでしょうか。

各社が六ヶ所再処理工場で分離されるプルトニウムの「利用計画」を出したのは2010年第14回原子力委員会定例会議(2010年3月16日)(配布資料)(議事録pdf)が最後です。原子力委員会は、これがあったし、電力会社はMOX利用を含む再稼働について原子力規制委員会に申請しているからOKとの判断をするのでしょうか。それとも、もっと厳密な判断をするのでしょうか。国際的な懸念に応えて一歩踏み込み、今回の輸送後もヨーロッパに残っている約34トンのプルトニウムの処分の目処も立たないのに核兵器利用可能なプルトニウムをさらに分離することは、「余剰プルトニウムを持たない」との方針に反すると明言するのでしょうか。

原子力委員会事務局は、仮定に基づく質問には答えられないとしています。しかし、基準とは、仮定に基づき、それぞれについて方針を提示することではないでしょうか。原子力委員会に対し、判断基準の提示を求めていく必要があります。

今のところ、手がかりになるのは、次の二つです。

  • 鈴木達治郎委員長代理 3月26日定例会議(議事録 pdf)

    利用目的のないプルトニウムを持たないという原則はたぶん十分ではなくて、利用の見通しを明確にし、その見通しの上で再処理をするという方向で検討していただきたい」

  • 近藤駿介委員長 5月2日定例会議(議事録 pdf)

    なお、我が国につきましては、田窪さんの紙の7ページのグラフにありますように、我々の当初の予定とは時間のずれはあるけれども、ようやくピークを打って保有量が下がり始めたわけです。どんどんふえると表現されるけれども、勿論、これはプルサーマルの取組の進展も遅れている一方、六ヶ所再処理工場の操業開始が遅れている結果であって、これをもって長期トレンドとしてのトータルでの低下モードに入ったというのは早計かもしれませんが、いずれ下がることになることは、このことからも想定できるわけですね。

    ただ、さっき申し上げたように、そうはいっても、実際には例えばイギリスの工場は動かないということになると、イギリスにあるものは動かせないという問題が生じている現実があります。英仏海峡を渡せばいいじゃないかと簡単におっしゃる方もいるんだけれども、プルトニウムの国際移転の厄介さというのは、きょうお話にはなかったけれども、高濃縮ウランと同じように大変ですから、この問題をどうしようかと悩んでいる。そういうことは確かにあるんですね。ですけれども、基本的にはこういう構想で進めてきたと。

    それから、国内にあるものについては、すべてここで使うんだという旗が立っていますし、これからも、その旗を用意してから再処理することも約束されている。その分についてはMOX工場が操業を開始するまでは在庫となり、開始後はランニングストックになる、これがこれまでの取組ですね。旗は絵に描いた餅と言われるかもしれないけれども、その絵は社会との約束を交わして書かれるわけだから、クリディビリティがなくなった瞬間に全体が破壊する、崩壊するわけだから、それは守っていただけるものとこれは信じるべきだと思っています。

    ただし、3.11後は約束の内容に変更が生じているのではないかというのは当然に持たれる疑問です。だから、3月末までに実情が把握できれば、このルールを今後ともアプライしていくにはどういう課題があり、それを原則を維持しつつどう解決するか考えることができるかと思っていたのですが。それは適いませんでした。しかし、そのルールで身動きできなくなったらどうするかと言われれば、そのルールは我々の国際社会との約束だから、そのなかで工夫することをまず考えるべきという立場だということを申し上げているわけです。

    このことは、また、いってしまいましたが、規制委員会の所掌に関わることかもしれませんので、これ以上余り言わないようにというか、言い方を変えるべきかもしれませんね。


    参考:同日の関連のやり取り

    (鈴木委員長代理)ありがとうございました。

    では今度は田窪さんにお聞きしいたいのですが、委員長のお言葉から大分引用されているんですけれども。ポイントは原子力委員会に対するプルトニウム利用政策についての要求ということだと思うんですけれども。先日私が個人的見解として「供給ありきではなく、需要見通しのあるものにしか再処理はしない」とか、それから「在庫削減」と、それから「プルトニウム利用については柔軟な計画を」という3つ、これは個人的見解とさせていただいたのですが。現実にはどういう今みたいな新しい基本的考え方ですね、プルトニウム利用の考え方として田窪さんとしてはどういうことを期待されているのか。この点何かご意見がありましたら少しいただいて。

    (田窪氏)ありがとうございます。鈴木さんの提案というのは相当衝撃的な、鈴木さんのような立場にある方の発言としては衝撃的なものだったと思うんですけれども、余りマスコミでは注目されていなくて残念だと思っております。

    1つだけ細かい点かもしれませんけれども、需要ありきというほうに考え方を変えていくということなんですけれども。これは2つあるんですけれども、1つは利用計画というのが今のところできていないということです。電事連自体が利用計画を今の段階では出せるような状況ではとてもないと言っているわけですね。それで再処理工場の運転を始めようとしている。こうなれば原子力委員会が定めていた利用計画のないものは再処理をしてはいけないという方針に従えば、当然再処理のしようがないということだと思うんです。そういう意味で非常に重要な発言だと思います。結論は再処理稼働しないということにしかいかないんじゃないかと思います、今の段階で。

    もう1つは需要という言葉にこだわって言うなら、そもそもこんなものは需要ではなかったと。先ほどの冒頭の発言でもお話ししましたけれども、もともと需要として考えられていたのは高速増殖炉のほうです。これを動かすに当たって初期装荷燃料が必要である、これは軽水炉の使用済燃料を再処理してプルトニウムを取り出すしかない、こう考えられていたわけです。ところが、この高速増殖炉の開発が遅れているために需要は出てきていないわけです。需要がないけれども、再処理を続けた結果プルトニウムがたまってしまっている。このたまっているプルトニウムを何とか減らさないと国際的にも責任が果たせないということで、これを処理するための計画というのがプルサーマルとして出てきてい るわけです。既にあるプルトニウムの処理方法の1つとしてプルサーマルを考えるというのが1つの考え方だろうと思います。これについては異論もありますけれども、それは1つの考え方であると思います。

    しかし、六ヶ所をどうするかということを考える時には、利用計画があれば六ヶ所を運転していいということにはならないと思うんです。既にヨーロッパにもプルトニウムが35tほどたまっている。これを処理するための方針というのがプルサーマルであっただろうと思うんです。それがまだうまくできていないのにここで六ヶ所の運転を始めてプルトニウムをつくり出している。その六ヶ所のプルトニウムだけについて何とはない利用計画なるものが出ていれば再処理をしていいという政策になっていたと思うんです。ですから、鈴木委員のご提言は非常に重要であるという前提に立って、もう少し突っ込んでいうと、実は利用計画というのは需要計画では全くない、消費計画であると。消費計画がうま くいっていないということでしょう。こういう消費計画もないし、本質的な需要もないのに再処理政策を進めることの意味を国務次官補は指摘されているんじゃないかと思うわけです。もちろんこの引用は鈴木委員のまとめからの引用ですので、その場でどういう雰囲気でこのお話が出たかわかりませんけれども、文字の上で読む限りでは今のような状況で六ヶ所再処理工場を運転するなんてとても考えられないというご意見を表明されたのではないかと理解をしております。

    (鈴木委員長代理)要は、ここの4ページに書かれていますけれども、英仏に置かれたプルトニウムの利用を進めることが先決だと、こういうことですかね、単純に言えば。

    (田窪氏)そうですね、英仏のプルトニウムの処分方法のめどが立っていない段階で六ヶ所運転なんていうのを考えるのはもっての他だというのが結論ですね。じゃあ英仏に置かれているプルトニウムをどうするか、プルサーマルでいくのかどうかというのはもう1つ次の段階の議論になりますけれども、いずれにしてもこれが相当量減ってしまわない状況で六ヶ所運転を考えるなどということはあり得ないだろうと。国際的にそう見られているだろうと思います。


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