核情報

2016. 5.24

オバマ大統領広島訪問と日本の核燃料・核兵器政策再考

5月27日に予定されている米国バラク・オバマ大統領の広島訪問を控えて「核のない世界」の実現に向けて日本ができること、すべきことについて考えるため、これまで取り上げてきた最近の日本の核政策・核燃料政策を巡る状況をまとめました。国際原子力機関(IAEA)の数え方で核兵器6000発分に相当する約48トンものプルトニウムを保有しながら年間8トンの分離能力を持つ六ヶ所再処理工場でさらにプルトニウムを取りだそうする日本の政策とオバマ大統領の政策の対立関係が浮かび上がってきます。

さらに、核兵器の唯一の役割を核攻撃の抑止に限定しようとするオバマ政権内の動きと、生物・化学兵器及び大量の通常兵器による日本に対する攻撃に対しても米国が核兵器で報復するオプションを残しておいて欲しいとする日本政府の政策の対立関係も見えてきます。今検証すべきは、オバマ政権の核軍縮の成績だけなのでしょうか。日本の核政策は?日本の反核運動の課題は?


  1. プラハ演説──核兵器の役割縮小と核物質の管理・最小化の宣言が出発点
  2. カントリーマン国務次官捕発言──再処理には経済性も合理性もない
  3. 懸念を伝えられたことはないとプルトニウム増産に邁進する日本
  4. 米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)上級部長発言
  5. 2015年7月の広島・長崎訪問要請キャンペーン

参考

プラハ演説──核兵器の役割縮小と核物質の管理・最小化の宣言が出発点

2009年4月プラハでのオバマ大統領演説

「冷戦時代の考え方に終止符を打つために、米国は国家安全保障戦略における核兵器の役割を縮小し、他国にも同様の措置を取ることを求める」とともに、「管理が不十分な核物質が世界各地に存在すること」の問題を指摘し、「世界中の脆弱な核物質を4年以内に」十分な保安体制の下に置く必要を唱え、「核セキュリティー(保安)に関する国際サミットを今後1年以内に開催」すると宣言。(2010年から1年おきにワシントンDC、ソウル、ハーグで開かれてきた同サミットの最後の会議が3月31日~4月1日にワシントンDCで開催。)

参考 バラク・オバマ大統領のフラチャニ広場(プラハ)での演説 米大使館訳

2012年3月 第2回サミットのため訪れた韓国での演説

分離済みプルトニウムのような我々がテロリストの手に渡らぬようにしようと試みているまさにその物質を大量に増やし続けることは、絶対にしてはならない

2014年3月 ハーグでのサミットにおける日米共同声明

「2009年4月5日にチェコ共和国プラハのフラチャニ広場で行われたオバマ大統領の演説を想起し」「共通の目標である核テロの阻止に向けて・・・核セキュリティを強化し更なる協力を進めるとの決意を再確認」し、東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)にある331キログラムのプルトニウムを米国に送る計画を発表。両国は「高濃縮ウラン(HEU)とプルトニウムの最小化のために何ができるかを各国に検討するよう奨励」。

2016年4月1日 ワシントンDCでのサミットにおける日米共同声明

FCAから全てのHEUびプルトニウム燃料の撤去を完了したことを表明し再度、「分離プルトニウムの保有量を最小化する我々の互いの目標」に沿うものであり、「権限のない者や犯罪者,テロリストらによるそのような物質の入手を防ぐことに貢献する」と表明。

カントリーマン国務次官捕発言──再処理には経済性も合理性もない

3月17日 上院外交委員会公聴会でトーマス・カントリーマン米国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)証言

使用済み燃料再処理計画は、経済性も合理性もなく、核拡散防止の観点から「すべての国がプルトニウム再処理の事業から撤退してくれれば、非常に嬉しい」。(米韓原子力協力協定の交渉過程で韓国が日本と同じ再処理の権利を与えよと主張し、また、中国が民生用再処理の導入を検討していることについて)「東アジアの主要国の間には競争があって、それは私の考えでは非合理的レベルにまで至っている。」「本質的な経済性という問題があり、米国とアジアのパートナー諸国が問題になっている経済面および核不拡散面の問題について共通の理解を持つことが重要だ──日本との原子力協力協定の更新について決定をする前に」

4月21日 「戦略・国際問題センター(CSIS)」で発言

(その後のオンライン記者会見(3月28日)で日本の核燃料政策を「承認するとか反対するとかというのは米国の役割ではない」と述べたこととの関係について)

二つは「完全に矛盾のないものだ」。「私がさらに言ったことは日本だけでなく、米国の他のパートナーにも当てはまる。すなわち、プルトニウム分離に携わろうとする国は、米国とだけでなく、その国の人々とも、そのような選択に関連する経済性、核不拡散、国の安全保障などの問題について完全かつ透明な話し合いをしなければならない、ということだ。」

懸念を伝えられたことはないとプルトニウム増産に邁進する日本

3月18日 菅義偉官房長官

日本の核燃料政策について米政府側から懸念を伝えられたことは? 「それは全くありません」

参考:官房長記者会見 3月18日午後(01:48~02:45)

3月24日 岸田文雄外務大臣 衆議院本会議

御指摘の[カントリーマン国務次官補の]発言については、一般論として民生用再処理に関する米国政府の従来の見解を述べたものと認識をしております。我が国が再処理を含む核燃料サイクルを推進していくとの方針については、米国政府の理解を得ていると考えており、今後とも、米国との間で円滑かつ緊密な原子力協力の確保に努めていく考えです。

5月11日 再処理促進法案成立

電力市場の自由化で原発保有電力会社が倒産しても使用済み燃料の再処理ができるよう発生段階で再処理費用を再処理主体に払いこませておくための認可法人「使用済燃料再処理機構」新設法案が成立。

参考:再処理等拠出金法が成立 デーリー東北(2016/05/12)

5月15日 プルトニウムを増やす高速増殖炉開発続行の方針

原子力規制委員会が運転主体の見直しを勧告した高速増殖原型炉「もんじゅ」について、「政府、もんじゅ存続を表明へ」との報道

参考:政府、もんじゅ存続表明へ 機構に代わる受け皿探しは難航 産経新聞 5月15日

米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)上級部長発言

5月21日 米高官、日本の政策に懸念との報道

「ウルフソル上級部長(軍縮・不拡散担当)は20日までに、日本の使用済み核燃料再処理を容認した日米原子力協定の効力延長について『大きな議論を呼ぶ問題になる可能性があると指摘』」との報道。米国側の懸念を再確認。

参考:米高官、核燃サイクル見直し支持 日本の政策に懸念 共同通信 2016年5月21日

U.S. would back a rethink of Japan's plutonium recycling program: White House KYODO MAY 21, 2016 (ジャパンタイムズ掲載)

*英語版から(核情報訳):米国と日本は、「明確な使用・処分の道もない」大量のプルトニウムを保有するとの決定が再処理とウラン濃縮を制限しようとする世界的な取り組みにとって持つ意味合いについて議論してきたと上級部長は述べた。もし、日本がプルトニウムのリサイクルを続けるなら「他の国がまったく同じことを考えるのをどうして止められるか」とウルフソルは述べた。

*以前の発言については:ジョン・ウルフスタール 米国家安全保障会議(NSC)で核不拡散担当2009~12年 核情報 2014.11.14

(*社によって名前の表記方法が異なるが、共同通信の表記の方が米国での発音に近い。ウルフサタールはドイツ語読みに近い。)

2015年7月の広島・長崎訪問要請キャンペーン

2015年7月10日 米国での訪問要請の動き

米国の「憂慮する科学者同盟(UCS)」ほか著名な団体代表および個人(計12名)がオバマ大統領に対し、広島・長崎原爆記念日に両地を訪れるよう呼びかける。「米国の核兵器の唯一の役割(目的)は米国及びその同盟国に対する核攻撃の抑止にあると宣言すること」、「1000~1100発のレベルに米国の配備戦略核の数を独自に削減すること」などを広島・長崎で発表するよう要請。

7月13日 日本の団体による訪問要請

原水禁と原子力資料情報室は、UCSの要請を支持するとの書簡を大統領に送付。日本の団体として、唯一の役割(目的)政策等に反対しないように日本政府に要請すると約束すると共に、大統領に対して、「プルトニウム及び高濃縮ウランをこれ以上蓄積しないように世界各国に呼びかけること」などを要請。(生物・化学兵器及び通常兵器による攻撃を抑止するために、これらによる攻撃に対して米国が核兵器で報復する可能性を示すことによって威嚇して欲しいというのが1982年以来、日本政府が表明してきた立場。核兵器の唯一の役割は核攻撃を抑止することだとの政策を米国がとると、日本の安全保障に不安を感じた日本が核武装するのではないかとの懸念が米国側にある。)

参考:日米団体、オバマ大統領に被爆地訪問要請──核なき世界に向けた行動の発表を 核情報 2015. 7.29

先制不使用問題早わかり 核情報 2009.6.19





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