核情報

2018. 4.27〜

米専門家、プルトニウム増大をもたらす再処理政策中止をと訴え
使用済み燃料は再処理ではなく、敷地内乾式貯蔵を

プルトニウム問題の専門家プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル名誉教授が4月20日、東京での講演で、日本は経済性の全くない再処理を止めるようにと訴えました。そして、使用済み燃料は、再処理によって核兵器の材料になりうるプルトニウムを取り出すのではなく、そのまま、プール貯蔵より安全な空気冷却の乾式貯蔵方式で最終処分場ができるまで保管するベきだと論じました。この時も紹介されましたが、日本でよくある議論は、敷地内・外の乾式貯蔵を許すと原発の延命に繋がるというものです。乾式貯蔵と再処理の両方を阻止すれば原発のプールは満杯になって原発が止まるという論理です。この論理の問題点は?

以下、乾式貯蔵反対論の問題点に簡単に触れておきます。その下に、教授が当日使った資料(1)「分離済みプルトニウム処分のためのオプション」)と、同教授が2016年11月22日に行った講演の資料(2)「使用済み燃料火災の危険低減のための提案: 米国原子力規制委員会(NRC)の反応」)を掲載します。

乾式貯蔵に反対する場合に考慮すべきこと

  1. 現実には、使用済み燃料は反対運動の一番弱い方へ、つまりは英仏と国内の再処理施設の方に流れていく。その結果、日本は約48トンのプルトニウムを保有するに至っている(国際原子力機関(IAEA)の数え方だと核兵器約6000発分)。日本政府は青森県六ケ所村の再処理工場をできるだけ早く運転することを望んでいる。同工場は年間8トン(1000発分)の分離能力を持つ。工場を所有する日本原燃は2021年運転開始を計画している。日本の反原発運動・反核運動はこれを阻止する運動を展開できるか。

  2. 資料(2)が示すように、福島第一原発4号機ではプールの冷却水がなくなってプール火災が起きることが心配された(これが起きなかったのは偶然がもたらした幸運)。これが起きていれば、160万人から3500万人の避難が必要になった可能性がある。原子力規制委員会の田中俊一委員長も更田豊志現委員長も再三、プール貯蔵よりも安全な乾式貯蔵を導入するべきだと主張している。反対運動にかかわらず原発が再稼働してしまうと新しい使用済み燃料がプールに詰め込まれ危険性が増大する。自然の対流による空気冷却方式なら、福島第一原発4号機のプールの場合のように冷却材喪失による火災を心配しなくていい。また、出来るだけ多くの使用済み燃料を早期に乾式貯蔵に移すことによってプール内の密度を下げれば火災が発生しにくくなるし、発生した場合も放出される放射能が少なくて済む。

    参考:


  3. 敷地内乾式貯蔵は、それがそのまま最終処分場になってしまう恐れがあるため地元は反対するだろうという議論があるが、果たしてそうか。
    1. 浜岡原発や東海第二原発の場合、地元の反原発運動や自治体も安全性の観点から早期の乾式貯蔵への移行を要請している。
      参考:「貯蔵施設を立地することが地元に受け入れられるかどうか」? 核情報
    2. 最近の例では、関西電力の高浜原発のある福井県高浜町の音海(おとみ)地区の自治会が2017年11月、プール貯蔵よりも安全な乾式貯蔵に移して町内に貯蔵すべきとの意見書をまとめ、県、町、関電に提出した。(同自治会は2016年末には1,2号機の寿命延長に反対する意見書を出している。)下の地図を見れば同地区の住民が持つ危機感が理解できる。地元住民のこのような切実な声を無視できるか。

関連資料集

核情報から

その他


資料(1)「分離済みプルトニウム処分のためのオプション」


資料(2)「使用済み燃料火災の危険低減のための提案: 米国原子力規制委員会(NRC)の反応」2016年11月22日


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