2015年12月28日

再処理すれば核のゴミは減る? 米専門家の論文掲載

日本政府は「高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から」再処理を推進するのだと強調しています。再処理で得たプルトニウムを混合酸化物(MOX)燃料にして軽水炉で使った後の使用済みMOX燃料を処分場に入れれば、その発熱量のため処分場の面積は削減されません。プルトニウムを増やすはずの高速増殖炉をプルトニウムやウランより重い長寿命の超ウラン元素を燃やして減らすために使えばどうなるか。高速炉を1基導入すればたちどころにプルトニウムや超ウラン元素が消えてなくなるわけではありません。


参考:

大量の高速炉を導入して何百年、何千年も運転することが必要です。しかも、その間に地下の処分場に送られるゴミは減るかもしれませんが、その間、地上で大量のプルトニウムや超ウラン元素が核燃料サイクルの中を回り続けることになります。もんじゅ1基さえまともに動かせない状況の今はいずれにしても、所詮絵に描いた餅。たとえこんなことが可能になるとしても、そこで得られるメリットは? そんな長期にわたるエネルギー計画にコミットする用意は?。

この問題について考える参考にと、「核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM)」の報告書『原子力計画におけるプルトニウムの分離──世界の民生用再処理の現状、問題点と今後の展望』(2015年7月)第10章「核変換」を訳出して載せました。主著者は、米プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル名誉教授(元ホワイトハウス「科学・技術政策局」国家安全保障担当次官)です。

以下、同論文冒頭部から。

今日再処理と高速中性子炉の正当化のために使われている主要な議論の一つは、使用済み燃料の中の長寿命の超ウラン元素を核分裂させれば長期的危険性を減らすことになるというものである。プルトニウムの同位体やその他のウランより重い超ウラン放射性同位体(ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム)の一部は数千年から数百万年の半減期を持っている。いかなる処分場であっても、放射性核種が漏れ出して地表の水を汚染することがないようこのような長期間にわたって保証することはできないから、超ウラン元素を核分裂させてもっと短い半減期の核種に変えた方がいいとの主張がなされる。この主張は、普通、超ウラン元素の入った使用済み燃料と入っていないものの経口摂取毒性を示すグラフを使って説明される(図10. 1参照))(これらの元素は元素のアクチニウムと化学的に似ているためアクチニドとも呼ばれる)。

投稿者 kano : 2015年12月28日 17:51