核情報

2018. 3. 1〜

オバマ・トランプ両政権の「核態勢の見直し」


2009年米議会委員会への日本側提出文書から見る米核政策の裏側
米NGOが入手──提出者は現外務次官

2月2日にトランプ政権が発表した「核態勢の見直し(NPR)」は、サイバー攻撃も含む核兵器以外の攻撃に対しても核で報復する可能性を強調し、核を使いやすくするために威力の小さな核弾頭の開発計画を打ち出すなど、核のない世界を目指すとしたオバマ政権が発表した2010年4月のものと比べ核廃絶の目標から大幅に後退するものとして注目されています。上院に対し「包括的核実験禁止条約(CTBT)」の批准を求めないと断言したのも、批准を追求したオバマ政権と異なるところです。

その反面、オバマ政権下でも向こう30年で総額1.2兆ドル以上(2017年のドルで計算)という核兵器の長期維持・近代化・改造計画が続けられていたのも事実です。また、米国及び同盟国に対する敵の核攻撃を抑止すること――そして、必要とあれば報復すること――を米国の核兵器の唯一の目的(役割)とすることを目指すとしながらも、結局「唯一の役割」宣言を出せずに終わりました。この理由の一つが日本の核政策だと報じられています。

二つのNPRは全く違うのではないのか。日本の核政策が米国の核政策に影響を与えるとは?これらの疑問を解く一つのカギになる文書をこのほど米NGO「憂慮する科学者同盟(UCS)」が入手しました。2009年にオバマ政権のNPR作成の参考にするための報告書を作成していた米国議会委員会に日本が提出した文書です。文書には今回のNPRにある思考方法と相通じるものが見られます。以下、世界の核兵器と米国の核兵器について概観した後、両政権の核政策の違いと連続性、そして、両者と日本の核政策の関係について見てみましょう。

  1. 世界の核兵器と米国の核兵器概観
  2. 低威力核爆弾「ギャップ」を埋める新たな開発計画
  3. すでにある低威力核兵器とオバマ政権下での二つの開発計画──B61-12と空中発射「長距離巡航ミサイル(LRSO)」
  4. オバマ政権「核態勢の見直し」と日本側「欲しいものリスト」
  5. 日本側説明の解釈・利用
  6. 日本の平和運動に対するクリステンセンの警鐘と岡田外相(当時)の反応
  7. 真の懸念か利用か
  8. 日米拡大抑止協議の影響は?
  9. トランプ政権のNPRは状況の変化の産物?
  10. 「攻撃原潜発射巡航ミサイル(SLCM)」開発と持ち込み問題──日本の反核運動の課題
  • 資料編
    1. 秋葉文書全訳
    2. 議事要約(委員会スタッフからモートン・ハルペリン委員に宛てた文書)
  • 参考リンク集
    1. トランプ政権「核態勢の見直し(NPR)」関係
    2. 米国の核兵器
    3. 2010年「核態勢の見直し(NPR)」関連
    4. 核付きトマホーク問題
    5. オバマ政権末期の先制不使用問題
    6. オバマ政権下での開発計画
    7. 日米拡大抑止協議
    8. 追補 秋葉文書・沖縄核貯蔵庫建設問題

    世界の核兵器と米国の核兵器概観

    「米国科学者連合(FAS)」のハンス・クリステンセンと「自然資源防護協議会(NRDC)」のロバート・スタン・ノリスの二人による表1は、2017年末現在、世界には解体待ちの核弾頭も含め約1万5000発もの核兵器があり、その90%以上を米ロ両国のものが占めていることを示しています。NPRは中国の核兵器の脅威を強調しますが、「憂慮する科学者同盟(UCS)」のスティーブン・ヤングが同団体のブログ ALL THINGS NUCLEARで指摘する通り、その数は米国の20分の1以下。弾頭はミサイルと離して保管。米国に届くミサイルに搭載されるのは100発以下です。

    表1: 2017 年末の世界の核兵器(FAS・NRDC)
    国名 戦略核 戦術核 予備/非配備 保有核 総数
    ロシア 1710 0 2590 4300 6800
    米国 1650 150 2200 4000 6600
    フランス 280 10 300 300
    中国 0 ? 270 270 270
    英国 120 95 215 215
    イスラエル 0 80 80 80
    パキスタン 0 130-140 130-140 130-140
    インド 0 120-130 120-130 120-130
    北朝鮮 0 ? 10-20 10-20
    合計(概数) 3670 150 5515 9450 14550

    出典: Status of World Nuclear Forces(2017年12月)

    表2も二人のものです。複雑に見えますが、弾頭の種類などについて考える際に役立ちます。この表によると、米国は戦略核弾頭を3700発保有しています。大陸間弾道弾(ICBM)、戦略原子力潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機用核爆弾及び空中発射巡航ミサイル(ALCM)の核弾頭を合わせた数字です。非戦略(戦術)核約300発を足した合計数は4000発。解体待ち退役核2550発を合わせると総数6550発。実際に運用配備されている戦略核の数はICBM用が400発、SLBM用が約945発、戦略爆撃機基地配備のものが約300発で、合計約1645発です。攻撃原子力潜水艦には核兵器は搭載されていません。非戦略(戦術)核爆弾のうち実際に配備されているのは欧州5カ国(ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコ)の6基地にある約150発です。このうち、80発がNATO諸国の航空機用。戦略・戦術を合わせた配備核合計は約1800発となります。

    表2: 米国の核兵器 2018年 (FAS・NRDC)
    カテゴリー/名称運搬手段数配備年搭載能力個数
    弾頭名 x 威力kt
    核弾頭数
    ICBM
    ミニットマンⅢ
    Mk-12A20019791-3 W78 x 335(MIRV)600
    Mk21/SERV20020061 W87x300200
    合計400 800
    (注1)
    SLBM
    トライデントⅡ D5
    Mk-4 19921-8 W76-0 x 100 (MIRV)216
    Mk-4A 20081-8 W76-1 x
    100 (MIRV)
    1320
    Mk-5 19901-8W88 x 455
    (MIRV)
    384
    合計240 1920
    (注2)
    爆撃機B-52H
    ストラトフォートレス
    87/441961ALCM/W80-1 x 5-150528
    B-2A
    スピリット
    20/161994B61-7, -11,
    B83-1
    452
    合計107/60
    (注3)
     980
    (注4)
    戦略核計3700
    非戦略
    (戦術)核
    B61-3, -4 爆弾19790.3 -170300
    (注5)
    保有核総計(概数) 4000
     解体待ち退役核 2550
     解体待ちを含む総数 6550
     保管中のピット(注6) 20000
    以上
    • 注1:このうち400が実際に運用配備。残りは長期的貯蔵状態。
    • 注2:このうち約945が発射管搭載のミサイルに運用配備。
    • 注3:最初の数字は総機数(訓練・実験・予備用を含む)/次の数字は主要ミッション用
      (戦争時用)機数のうち核ミッションに割り当てられていると見られる機数。
    • 注4:実際に爆撃機基地に配備されているのは約300発。ALCM 約200発と核爆弾約100発。
      残りの680発は長期的貯蔵状態
      [新START 条約では1 機= 1 発という特殊な計算方法を採用]
    • 注5:約150 発のB61-3 及び4 がヨーロッパに配備。残りは米国で集中的に保管。
    • 注6:解体で取り出されたプルトニウムの芯の部分。テキサス州パンテックスで保管。
    • ICBM =大陸間弾道ミサイル
    • SLBM =潜水艦発射弾道ミサイル
    • MIRV =複数目標多弾頭
    • ALCM =空中発射巡航ミサイル
    • 出典:United States nuclear forces, 2018, Bulletin of the Atomic Scientists: Vol 74, No 2

    低威力核爆弾「ギャップ」を埋める新たな開発計画

    トランプ政権のNPRは、ロシアが多様な非戦略核を多数有しているうえ、1987年に調印した「中距離核戦力(INF)」全廃条約に違反して陸上発射巡航ミサイルの実験もしていることを強調し、ロシアは低レベルでの核戦争で優位に立てると考えて攻撃してくるかもしれないと述べています。

    ロシアは、核エスカレーション(段階的拡大)の脅し、あるいは、実際の核兵器の最初の使用(ファーストユース)は、紛争をロシアにとって都合のいい形で「ディエスカレート(段階的に縮小)」するのに役立つという間違った評価をしている。

    (NPR 8ページ)

    との見解に基づくものです(クリステンセンは後述の記事でこの見解自体が間違っていると指摘)。米国ではこのロシアが持っているとされている方針を「エスカレート・トゥ・ディエスカレート」(紛争をディエスカレート(緩和)するために紛争をエスカレート(激化)させる)ドクトリンと呼んでいます。

    さらに、中国も近代化を進めているし、北朝鮮も核開発を進めている。イランも「包括的共同作業計画(JCPOA)」の合意はあるが短期間で核開発をする能力を持つ。そのため、近代化され、柔軟(フレクシブル)で状況に適合させられる(アダプタブル)、強靭な核抑止能力が必要だと述べます。テーラーメイドの服のように個々の状況に「合わせて仕立てた」(テイラード=tailored)抑止力が必要だとNPRは言います。敵の核攻撃を抑止するのが核兵器の「唯一の役割」ではないと明言し、敵の通常兵器による攻撃や威力の小さな核兵器攻撃に対して使える威力の小さな核兵器が必要だ、と説きます。そして「柔軟な核兵器のオプション(低威力のオプションも含む)の拡大は、地域的侵攻に対する信頼性のある抑止を維持するために重要だ」と言います。大威力の核兵器だと使えないだろうと高をくくられてしまうというわけです。そしてこの面での遅れ「ギャップ」をなくすことは同盟国を安心させ、独自核武装を防ぐことにもなる、つまりは核拡散防止にもつながるという論理を展開します。

    この「ギャップ」を埋めるためとして計画されているのが、

    1. 戦略原潜発射ミサイル(SLBM)用の低威力弾頭と
    2. 「海洋発射巡航ミサイル(SLCM)」の開発です。

    前者は短期的目標として掲げられていて、現在SLBMに搭載されているW76-1の一部を改造する計画です(原爆を起爆装置にして水爆を爆発させる仕組みの弾頭の第二段階を不能にするか、外してしまって、原爆だけが作動する構造にする計画のようです)。敵は海から飛んでくるミサイルが低威力か全面核戦争用のものか区別できず、間違った反応を招くことになる危険が指摘されています。後者は、長期的に新型SLCMを開発する計画で、この開発計画を示すことにより「ロシアがその非戦略核兵器削減について真剣に交渉することにつながる」かもしれないと言います。(新型SLCMは一般に攻撃原潜搭載用と考えられているが、米戦略軍司令官は2月16日、どのタイプの艦船に新型SLCMを載せるかは決めていないと述べている。)

    ギャップは存在するのでしょうか。米国は以前、SLCMを持っていました。核付きトマホーク(TLAM/N)です。ブッシュ大統領(父)が1991年に水上艦及び攻撃原潜の核兵器を撤去するとの一方的措置宣言を行った際に陸に上げ、その後2010年にオバマ大統領が不要として廃棄を確定したものです。12年に解体が終了しました。その後もオバマ政権は、TLAM/Nの復活を提唱などしていませんでした。ところが、トランプ政権のNPRはTLAM/Nは「何十年間も抑止力に、そして同盟国──とりわけアジアの同盟国──に安心感を与えるのに貢献してきた。我々は、この能力を回復するための取り組みを直ちに開始する」と述べています。91年以来実質的には何の役割も果たしていなかったことは忘れ去られています。また、クリステンセンは、核問題専門誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ(BAS)』のNPR特集記事(2018年2月2日)で、「SLCMを導入すればロシアがINFを順守するようになるというのは間違い。米国にTLAM/Nがあるときに違反は始まっていた」と指摘しています。そして、「ロシアの非戦略核の規模と構成についての決定をもたらしているのは、米国の通常兵力の優位性だろう」と言います。さらに、ヨーロッパとアジアにおいて「必要な非戦略核地域プレゼンスを提供する」という新しいSLCMの追求はロシアによる非戦略核への依存を逆に強化し、場合によっては中国がこのような能力に対する関心を持つことにつながるかもしれないと警告しています。

    米国は、冷戦時代の初期、圧倒的優位を誇るとみなされていた旧ソ連・ワルシャワ条約機構(WTO)の通常兵力による進攻に対し、核攻撃で応じるの可能性を示すことによって、ヨーロッパへの進攻を抑止する(抑止が失敗すれば核で対処する)という方針を採用しました。1954年から核砲弾、核爆弾、短距離ミサイル、核地雷など米国のさまざまな核兵器の欧州配備が進められ、1971年には、その数は最高の約7300発に達しました。これらの「自爆」的兵器はとっくの昔に撤去され、今では立場が変わって、ロシアが通常兵力での不利を感じています。

    トーマス・カントリーマン元米国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)は、後述の米国NGO「軍備管理協会(ACA)」のパネル・ディスカッション(2018年1月23日)で、クリステンセンやその他のトランプ政権批判派と同じくロシアのINF条約違反は大いに問題だとした上で、次のように述べています。「ロシアが『エスカレート・トゥ・ディエスカレート』ドクトリンを持っているかどうかは知らないが、我々が冷戦時代の『単純な反射的行動』に逆戻りする危険を冒すのが気がかりだ。ロシアがそういう方針なら、我々もそのような能力を持たねばというものだ。」

    NPRは、ロシアの核使用の方針を問題にしながら、米国側は核以外による「非核戦略攻撃」にも核で対処する可能性があると強調します。「非核戦略攻撃」は、米国やその同盟国の民間人、インフラ、核戦力、指揮・統制・警戒能力などに対する攻撃を含むとして、定義を明確にしていません。米国版「エスカレート・トゥ・ディエスカレート」ドクトリンとも言えます。ロシア側の方針はけしからんとしながら、自国がこれに似た方針をとることには問題ないとする自己矛盾をきたしています。ロシアのこのドクトリンの実際の存在の有無の問題とは別に、核が国を偉大にするとプーティン大統領が発言し、それと同じことを文法的にはプーティンよりレベルの低い形でトランプ大統領が口にするような状況では非核兵器国に核を持たないようにと働きかける上での米国の能力がさらに損なわれるとカントリーマンは指摘しています。

    すでにある低威力核兵器とオバマ政権下での二つの開発計画──B61-12と空中発射「長距離巡航ミサイル(LRSO)」

    実は現在も米国には低威力の核兵器があります。表2にあるように、非戦略自由落下核爆弾B61-3,-4,-10は威力を調節できるようになっていて、とりわけB61-3は0.3 ~ 170キロトンの幅を持ちます。広島・長崎は20キロトン程度です。(NATO諸国に配備されているこれらの核兵器は、無用の長物であり早く米国に戻すべきだと軍縮派は指摘しています。参考:B61核爆弾欧州配備についての批判)また、B52戦略爆撃機は5 ~ 150キロトンに調節可能の「空中発射巡航ミサイル(ACLM)」を搭載できます。

    B61型核爆弾
    米国の自由落下爆弾(2017年)
    自由落下爆弾威力(キロトン)航空機使用者
    B61-30.3, 1.5, 60, 170F-15E, F-16, PA-200U.S., NATO130
    B61-40.3, 1.5, 10, 50F-15E, F-16, PA-200U.S., NATO130
    B61-710–360B-2A, (B-52H)U.S.350
    B61-100.3, 5, 10, 80F-15E, F-16, PA-200U.S.40
    B61-11400B-2AU.S.30
    B83-1低威力–1,200B-2A, (B-52H)U.S.200
    合計約900
    統合(2020年代頃)後の総数
    自由落下爆弾威力(キロトン)航空機使用者
    B61-120.3, 1.5, 10, 50F-15E, F-16, F-35A, PA-200, B-2A, B-21U.S., NATO480

    (ハンス・クリステンセン及びロバート・ノリスによる核弾頭威力及び数の推定)
    出典: Hans Kristensen, B61-12 Guided Nuclear Bomb, Nuclear Threat Initiative 発行のBuilding a Safe, Secure, and Credible NATO Nuclear Posture (pdf) p.24


    さらにオバマ政権の下でも、二つの核兵器の「開発」が進行中でした。一つは、B61-4に誘導装置を付けて精度を上げるとともに、「地中貫通」能力も付け加えたと推測されるB61-12です。これも0.3 ~ 50キロトンまで調節可能です(2020年3月に生産開始の予定だったが、2年遅れるとの報告がある)。新たな能力の付加はオバマ大統領の「新しい核兵器を開発しない」との約束に反すると批判されていました。

    現在配備されている戦略自由落下核爆弾B61-11(地中貫通型:400キロトン)はB-2戦略爆撃機にのみ搭載可能ですが、B61-12は核搭載可能なすべての米軍機及びNATO機に搭載できるようになります。( Video Shows Earth-Penetrating Capability of B61-12 Nuclear Bomb, Posted on Jan.14, 2016 in NATO, Nuclear Weapons, United States by Hans M. Kristensen)
    *注:砂漠での実験。表面の硬いツンドラでの実験でないことに注意。
    ** 記事内にある投下実験ビデオの長いバージョン Los Alamos Study Group, http://www.lasg.org/videos/B61-12_SAND8928_2015.mp4

    (注:地中貫通型と言っても核爆弾の頂部が地表から数メートルだけ潜り込むことにより小さな威力でもその衝撃を直に伝えて地下施設を破壊することに狙いがある。地表部分での核爆発は大量の放射能をばらまくため、都市部で1キロトンの貫通型が爆発すれば数万人が死亡との研究がある。2005年3月の公聴会でリントン・ブルックス「国家核安全保障局(NNSA)」長官(当時)が、「われわれ政権内にいるものが、全ての放射性降下物を閉じこめられるほど深く潜ることのできる核爆弾を持つことが可能だと思わせるようなことを言っていたとしたら、私の方で正確さが欠けていたことについて本当にお詫びしなければなりません。……あるのは広範な地域に膨大な破壊力を持つ核兵器です。正気の人なら、そういう核兵器を簡単に使ったりしません」と述べている。)

    もう一つは、敵地から遠く離れ、撃墜されない場所から狙える空中発射「長距離巡航ミサイル(Long-Range Stand-Off weapon=LRSO)」で、2030年までの配備を目指す計画です。ペリー元国防長官は2015年10月15日、
    オバマ大統領に公開書簡(英文)を送り計画中止を要請しました。理由は、敵のレーダー網を潜り抜けることのできるステルス爆撃機B-2Aがあり、新型ステルス機計画もある現状ではLRSO計画は無駄遣いだし、通常兵器型と核搭載型の両方を保有する計画であるため敵の側に混乱を招き危険だというものです。

    AGM-86型空中発射巡航ミサイル(1980年の飛行テスト)
    AGM-86 ALCM.JPEG
    By R.L. House - http://www.defenseimagery.mil/imagery.html;jsessionid=606F2084E293421C1FE10F3522132711#a=search&s=ALCM&guid=66c8d2f75034d5c1295e5a2dd9c8189d2482f8f2, Public Domain, Link

    オバマ政権下でも軍縮派の批判を呼ぶこのような開発計画があったのです。トランプ政権のNPRにある二つのシステムの開発計画は、これらのオバマ政権下で進行中だった計画に加えて実施することが提唱されているものです。

    なお、オバマ政権下の計画から消えたものもあります。ICBM用の核弾頭W78全てとSLBM用の核弾頭W88の一部の両方の代わりに使える核弾頭「共用核弾頭(IW-1=Interoperable Warhead One)」の開発計画です。新しいNPRでは、それぞれ別々の「寿命延長計画(LEP)」を進めることになりました。

    オバマ政権「核態勢の見直し」と日本側「欲しいものリスト」

    オバマ政権のNPRの際、その参考に供する報告書を作成するためとして議会が設置した「米国戦略態勢議会委員会」の会合(2009年2月25日)で秋葉剛男公使(当時)らが核抑止力に関する日本の見解を説明しました。委員会の委員長はペリー元国防長官、副委員長はシュレシンジャー元国防長官です。秋葉公使による説明に使われた3ページの文書と議事要約文書を米国の「憂慮する科学者同盟(UCS)」が最近入手しました。(沖縄への再持ち込み問題に焦点を当てたUCSのグレゴリー・カラキーのブログ Nuclear Hawks Take the Reins in Tokyo

    秋葉文書は、上述のTLAM/Nを巡るオバマ政権時の議論の流れに日本がどのような影響を与えたかを示す重要な文書です。また日本が米国の核抑止力に何を期待するかを述べた同文書にある用語・概念はトランプ政権のNPRと重なるものがあり、現在の米国の核政策と日本の関係について考える上でも重要です。(全文訳原文)。例えば、秋葉文書は次のように述べています(粗訳は核情報。[* ]は委員会スタッフによる手書きメモ)。

    日本は、米国の拡大抑止を必要としており、必要とし続ける。……
    我々は、米国の抑止能力は (a) 柔軟で、(b) 信頼性があり、(c) 即応性を持ち、(d)[対象を]区別・選別する能力、(e) ステルス性・示威可能性を持ち、(f) 他国に対し、その核能力を拡大・近代化することをあきらめさせるのに十分でなければならない、と考える。……
    日本は、米国の拡大抑止に──それが信頼性を持つ限りにおいて──依存する。[*この意味については説明がなかった]

    文書は続いて「我々にとって、米国がどのような兵器システムを維持・獲得すべきかを具体的に言うのは難しい。しかし、米国の抑止能力が持つべきいくつかの望ましい特性を――網羅的ではないが――リストアップすることはできる」として上の (a) から (f) の特性について説明しています。

    「柔軟な能力」
    「日本はTLAM-Nを依然として必要とするか」との質問に関しては、日本は、この兵器システムの詳細を知る立場にはない。しかし、TLAM-Nはオプションの柔軟性を提供すると言われている(低威力であり、海洋発射型(ステルス性)、スタンドオフ型([遠くから発射するので]生き延びる能力を持つ)で、遊弋できる。)米国がTLAM-Nを撤廃すると決定するのなら、この能力の損失がどのように埋め合わされるのかについて十分に前もって協議して欲しい。

    ……

    [対象を]区別・選別する能力
    米国の抑止能力は、意図したターゲットだけを区別・選別する能力を持つべきである。このような攻撃(それが必要な場合)に伴う付随的ダメージを最小限にできるようにするためである。このような特性は、人道主義的観点からだけでなく、米国の抑止力は効果的で信頼性のあるものでなければならないという理由からも重要である。米国による攻撃が常に大量の民間人の死傷をともなうとなると、潜在的敵国は、このような攻撃[の脅し]は信頼性(信ぴょう性)がないと考えるかもしれない。

    ……

    十分な能力
    米国の抑止能力の質と量は、潜在敵国にその核能力の拡大あるいは近代化をあきらめさせるのに十分でなければならない[*ペリー:我々はどうすればこの要件を満たせるのか]……
    米国の運用配備戦略核弾頭のいわゆる「ディープ・カット」(大幅削減)に関しては、十分に前もって日本と緊密な協議をすることが非常に重要である。米国の配備戦略核弾頭の一方的な削減は、日本の安全保障に悪影響をもたらすかもしれない。米国がロシアとの核削減交渉を行う際には、中国の核増強と近代化について常に念頭に置くべきである。日本と十分に前もって協議して欲しい。

    文書はサイバー攻撃の抑止も核の任務とする柔軟性も要望しています。さらに、委員会スタッフによる議事要約文書には、日本大使館の「金井氏[金井正彰日本大使館政務班一等書記官・現アジア大洋州局北東アジア課長]は、低威力・地中貫通型核兵器は、拡大核抑止の信頼性を強化するだろうと述べた」とあります。

    日本側説明の解釈・利用

    このような日本の説明は、どう解釈されたのでしょうか。
    委員会の最終報告書(2009年5月6日)は「我々の作業の中で、アジアの幾つかの米国の同盟国の一部は巡航核ミサイルの退役について非常に憂慮するだろうということが明らかになった」と述べています

    シュレシンジャー副委員長は最終報告発表の際の議会公聴会で、次のように述べています。

    日本は、米国の核の傘の下にある30ほどの国の中で、自らの核戦力を生み出す可能性の最も高い国であり、現在、日本との緊密な協議が絶対欠かせない。過去においては日本は旧ソ連の脅威についてはそれほど心配していなかった。しかし、最近中国がその能力を高めており、日本の懸念が高まっている。それで日本は我が国との協議を望んでおり、我が国のさらなる確約を求めているのだ。

    同氏は、「TLAM/Nの重要な抑止能力が認識されていないこと」を嘆いた報告書(2008年12月)を出した「国防長官タスク・フォース」の委員長を務めた人物なので、日本の主張を誇大広告的に利用したとする見方ができるかもしれません。

    しかし、北朝鮮程度の核能力であれば、通常兵器による報復の威嚇で十分に抑止できるとの見方をしめし、核兵器を先に使わないとの「先制不使用政策」(あるいは「唯一の役割」宣言)を米国が採用することを提唱するペリー委員長も次のように述べています。

    ヨーロッパとアジアの両方において我々の拡大抑止の信頼性についての懸念が存在している。彼らの懸念について注意することが重要だ。我々は抑止が我々の基準において有効かどうか判断するのではなく、彼らの基準も考慮しなければならない。それに失敗すると……これらの国々が、自前の抑止力を持たなければならないと感じてしまう。

    日本の平和運動に対するクリステンセンの警鐘と岡田外相(当時)の反応

    この公聴会の後、FASのハンス・クリステンセンは、ほとんど廃棄の決まっている核弾頭型巡航ミサイル「トマホーク」を復活させようという米国内の動きの原動力に日本核政策がなろうとしていると警鐘を鳴らしました。2009年5月12日核情報へのメールで次のように述べています。

    「国防長官タスク・フォース」(2008年12月最終報告)や「米国戦略態勢議会委員会」(2009年5月最終報告書)に対して日本政府関係者が行ったとされる不確かな発言が、ここワシントンでは、オバマ政権の核軍縮のアジェンダを阻止し、不必要な核兵器(つまり核弾頭型潜水艦発射巡航ミサイル)の維持の必要性を主張するために使われている。

    そして、同19日のメールでこう説明します。

    潜水艦発射巡航核ミサイルは、戦術核が世界中に配備されていた時代の冷戦型兵器だ。「基本抑止」には必要のないもので、米軍は、長年これを廃棄しようとしてきている。世界中における巡航ミサイルの拡散ペースを考えれば、米ロ両国にとって核巡航ミサイルを全面的に廃棄した方が得策だ。

    核情報では、2009年6月4日、墓場行きを免れるか核トマホーク、日本の協力で?という記事を掲載して注意喚起を試みました。

    正確な内容の分からないまま日本側がしたとされる「発言」がTLAM/Nの維持のために使われている状況がマスコミでも報道されました。これを受けて岡田克也外相(当時)が、同年12月24日、米国務・国防両長官に書簡を送り、

    前内閣の下で行われた協議ではありますが、私は、我が国政府として、上記委員会を含む貴国とのこれまでのやり取りの中で、TLAM/NやRNEP(堅固な地中貫通型核兵器)といった特定の装備体系を貴国が保有すべきか否かについて述べたことはないと理解しています。もし、仮に述べたことがあったとすれば、それは核軍縮を目指す私の考えとは明らかに異なるものです。

    と伝えたこともあり、前述のようにTLAM/Nの廃棄が決まりました(岡田氏は2009年9月に発足した鳩山由紀夫内閣で外務大臣に就任)。

    真の懸念か利用か

    米国側は日本のTLAM/N維持の「要望」や核武装の可能性について深刻にとらえているのかそれとも、利用しているのか。米国側の懸念の背景には、日本に対する核以外の攻撃に対しても、核で報復するオプションを米国が維持することを望むとしてきた日本の政策があります。日本政府は、核を先には使わないとする「先制不使用策」に反対する立場を1982年以来国会その他の場で繰り返し表明してきました。この立場を裏返せば、米国が核兵器の役割を縮小すれば、日本の核武装をもたらすという議論となります。「真の懸念」と「利用」の度合いは人によって異なるでしょう。上述のペリー元国防長官の発言は深刻な懸念が存在することを示しています。

    委員会スタッフの「議事要約文書」は次のように指摘しています。

    秋葉公使に対する質問は、委員らの元々の見解を追認する意見を引き出そうとする形でなされた。ほとんどの出席者は米国の拡大核抑止に関する日本の見方について、ありうる限り極端な形で描こうとする傾向がある。

    ペイン博士、シュレシンジャー博士及び・あるいはフォスター博士が、来月の委員会の会合で、議論について次のような形で誇張した説明をするだろう……。

    1. 米国の同盟国の中には、米国の拡大抑止の信頼性について深刻な懸念を持つようになった国々がある。
    2. 日本の中には、米国の拡大抑止の信頼性が失われれば、他の安全保障オプションを検討する必要があると考える者がいる
    3. 日本の中には、米国の核戦力の特定の特徴が拡大抑止にとってとりわけ有益だと考えるものがいる。これには、TLAM-Nと低威力地中貫通型核兵器が含まれる。例えば、金井氏は、低威力・地中貫通型核兵器は、拡大核抑止の信頼性を強化するだろうと述べた。……

    残念ながら、出席していた委員らは誰も、どのようなステートメントが、あるいは、これらの兵器に代わる通常兵器能力があれば、米国の核兵器が削減される、あるいは最終的に廃絶された場合に安心できるのかとは聞かなかった。

    委員も同席していたスタッフの誰も、核軍縮と不拡散面での米国のリーダーシップを復活させるというオバマ大統領の約束を日本がどう見ているかについて尋ねなかった。

    日韓と米国の核態勢、核の傘について詳細な対話のプロセスを始めるべきだ……
    同時に、信頼性のある拡大抑止を維持することと米国の核戦力の大きさと重要性を減らすこととの二つの目的が両立し得ないことを示唆するものは何も聞かなかった。

    問題は、先制不使用に反対する日本の政策があること、そして、米国側の一部の「誇張された」説明を封じようとする姿勢が日本にないことでしょう。岡田外務大臣(当時)の国務・国防両長官宛て書簡は「誤解」のないように説明を試みた稀有な例と言えるでしょう。

    ここで注目されるのは秋葉文書にある「日本は、米国の拡大抑止に──それが信頼性を持つ限りにおいて──依存する」という文言です。委員会スタッフの手書きメモによると、これについて説明がなかったとのことですが、「信頼性がないと日本側が判断すれば日本は独自核武装の道を選ぶかもしれない」との警告ととられても不思議はありません。米国では日本のTLAM/Nについての発言も、先制不使用についての発言も、この独自核武装の可能性と関連付けられて考えられているようです。そして、その際、その判断が妥当かどうかは別として、日本国内の反核の声は頼りにするに値しないと見られているようです。

    オバマ大統領が「核態勢の見直し」の際と退陣直前に、核兵器を先には使わないとする「先制不使用政策」採用を検討しながら、不採用に終わった重要な理由の一つが日本の反対でした。後者の場合、ケリー国務長官が「米国の核の傘のいかなる縮小も日本を不安にさせ、独自核武装に向かわせるかもしれないと主張した」ことが不採用決定の裏にあったとニューヨーク・タイムズ紙(2016年9月5日)が伝えています。結果的に、日本は独自核武装の「脅し」を武器に、米国の核軍縮の様々な試みを阻止していることになります。

    クリステンセンは2009年に警鐘を鳴らした際、秋葉文書を入手していませんでした。最近になって文書を目にしたクリステンセンは、2018年2月9日、核情報へのメールで、冒頭の要件 (f) について「途方もなく非現実的だ」と述べています。

    このセンテンスは驚くべきものだ。なぜなら、拡大抑止に何ができるか、それが何を意図しているかに関する全く非現実的な期待を示しているからだ。抑止は、「(f) 他国に対し、その核能力を拡大・近代化することをあきらめせる」ことはできないし、また現実的にそれを意図してもいない。抑止は、他国が核攻撃を行使するのを抑止するために策定され、意図されている。核戦力は、これまで一度も、敵国がその核能力を拡大・近代化するのをあきらめさせることができたことはない。それどころか、(a) 柔軟で、(b) 信頼性があり、(c) 即応性を持ち、(d)[対象を]区別・選別する能力、(e) ステルス性を持つ能力で威嚇された場合、敵は近代化、そして必要とあれば、その能力の拡大による対抗措置を講じることで対応する傾向にある。

    ペリー元国防長官が「我々はどうすればこの要件を満たせるのか」と尋ねたというのは当然です。トランプ大統領が、2月12日、州政府及び地方政府関係者を招いた会合で、核の近代化・拡大を他の国が止めれば米国も止めるが、他の国が止めないなら、米国はこの分野で「常にナンバーワンとなる。私が大統領でいる限り、他のどの国をもはるかに凌駕する」と述べたのは、秋葉文書と同様の精神の表明と言えるでしょうか。

    秋葉氏は今年1月、外務省事務次官に就任しました。


    日米拡大抑止協議の影響は?

    委員会報告書で日米協議の重要性が強調されたのを受ける形で、2010年から年2回の割合で日米拡大抑止協議が開かれるようになりました。これは、ペリー元国防長官のような考えを持つ人々が日本側に、「唯一の役割」宣言をしても日本のための拡大抑止は十分機能すると考える理由を説明する場になる可能性もあったのですが、実態はそうではなかったようです。

    「ペリー・シュレシンジャー委員会[議会委員会]でこの問題を最初に取り上げた秋葉氏、そして、ペリー・シュレシンジャー委員会報告の作成で中心的な役割を果たしたブラッドリー・ロバーツは、拡大抑止協議に参加する両国の代表団をそれぞれ率いることになった」とUCSのグレゴリー・カラキーは説明します。(日本の核配備禁止(持ち込ませない)原則の危機──米「憂慮する科学者同盟(UCS)専門家の警告

    ロバーツは秋葉文書が提出された上述の委員会会合にも出席していました。委員会報告書をまとめた後、国防省に入り、オバマ政権のNPRのまとめでも中心的な役割を果たしました。2009年4月から13年3月まで国防次官補代理(核・ミサイル防衛政策担当)を務めた後、13年春には日本防衛省防衛研究所でフェロー(招へい研究員)として過ごし、その研究成果を同8月に『北東アジアにおける拡大抑止と戦略的安定性』 としてまとめて発表しました。8月16日にワシントンDCのスティムソン・センターでこの報告書について講演した際(ビデオ)、ロバーツは、日本は米国の同盟国の中でも最も抑止について詳しいとし、日米拡大抑止協議の日本側参加者は今では組織の中で重要なポストに就いていると述べています。質疑応答の際に、貝原健太郎日本大使館参事官(現総合外交政策局主任外交政策調整官)が拡大抑止協議におけるロバーツの役割に感謝し、「あなたのおかげで我々は多くを学んだ。まだ学習過程にあるが、あなたは間違いなく我々のレベルを上げた」と述べています。文字通りの「外交」辞令の部分があるだろうことを考慮しても、日本の外交官が米国内の特定の見方をする人物を師と仰ぐ雰囲気が気になります。

    2015年末に出版されたロバーツの著書『21世紀の米国の核兵器擁護論』(The Case for U.S. Nuclear Weapons in the 21st Century (アマゾン)の裏表紙の紹介文には次のようにあります。「本書は米国はその安全保障戦略における核兵器の役割と数の両方を減らすことができるし、減らすべきだとの一般通念に対する反論である。」そして、それはオバマ政権での核政策策定・実施に関わった著者の経験に基づくものだとのことです(上のアマゾンのページでも見られます)。

    ジョン・ウルフソル国家安全保障会議(NSC)上級部長はトランプ政権のNPRにある考え方は新しいものではなく、ずっと前から同じような議論を展開してきた人々がいたのだと述べています(2018年1月11日にネットメディア「ハフポスト」がリークされたトランプ政権NPRの草案を掲載したのを受けて米国NGO「軍備管理協会(ACA)」が同23日に開いたパネル・ディスカッションでのことです)。その例としてロバーツに言及しています(ロバーツは現在、核兵器開発をしているローレンス・リバモア国立研究所の「世界安全保障研究センター」所長)。また「テイラード抑止」について語ってきた論客としてワシントンのシンクタンク「国家公共政策研究所(NIPP)」のキース・ペインにも触れています。前述の「委員会」スタッフの議事要約文書の中で、日本側の発言の一部を誇張しそうな委員として名前の挙がっていた人物です。これらの人々の考え方がトランプ政権で「非常に肥沃な土壌」を見出したということだというのがウルフソルの分析です。そして、このような考え方は、日米拡大抑止協議などを通じ、日本政府内部でも根を下ろしているようです。

    トランプ政権のNPRは状況の変化の産物?

    今回のNPRについて2010年とは北朝鮮による核・ミサイル開発の進展等状況が変わっていると擁護する向きがありますが、わずか1年前の2017年1月11日、オバマ政権のバイデン副大統領は、2010年にはできなかった「唯一の役割」宣言が今やできる状態になっていると確信していると述べています。

    米国の計画における「攻撃下発射」手順(敵核ミサイルの発射確認後、着弾を待たずに報復用ミサイルを発射すること)への依拠を減らすようにとのオバマ大統領の指示の一環として、国防省は、わが国の計画・プロセスの調整を行ってきた。核攻撃の様々なシナリオにいかに対応するかを決める上で大統領に以前より大きな柔軟性を提供するためである。

    私たちは、2010年の「核態勢の見直し」において、核兵器の唯一の目的が他国による核攻撃の抑止となるような条件を作り出すことを約束した。これに従い、我が政権の期間中、私たちは、第二次世界大戦以来我が国の安全保障政策において核兵器が持ってきた重要性を着実に減らしてきた――いかなる敵も核兵器に頼ることなく抑止し打ち負かすための我が国の能力を改善し、同盟国にそのことについて安心してもらうようにしながら。

    我が国の核兵器以外の能力、それに今日の脅威の性格を考えれば、米国による核兵器の先制使用が必要となる――あるいはそれが意味を成す――信憑性のあるシナリオを想像するのは難しい。オバマ大統領と私は、核以外の脅威は、核以外の方法で抑止し、わが国及び同盟国を守ることができると確信している。

    次の政権は、その政策を提示することになる。しかし、「核態勢の見直し」の指示から7年、大統領と私は、これまでに目標達成に向けて十分な進歩を遂げており、核攻撃を抑止すること――そして、必要とあれば報復すること――を米国の核兵器の唯一の目的(役割)とすべきであると確信している。

    出典:オバマ政権、核兵器の唯一の役割は核攻撃の抑止と確信、昨年500発一方的に削減──バイデン副大統領、退陣直前の演説で

    またシュルツ元国務長官はトランプ政権のNPRが公表される直前の1月25日に開かれた上院外交委員会の公聴会で、低威力の核兵器の開発は危険だと証言しています。

    核兵器は核兵器だ。小さなのを使えば、大きなものへ進んでしまう。私は核兵器は核兵器だと考える。そこで線を引くべきだ。……

    私にとって気がかりなことの一つは、小さな核兵器と呼ばれるものを持っていいという考え方だ。私はロシアはそれをやっていると理解している。そして、それが使用可能だという考え。ああ、核兵器は使えるんだと思ってしまかもしれない。そうなると、本当に問題だ。大規模な核攻撃の応酬は世界を全滅させてしまうからだ。

    状況の変化の問題ではなく、誰の言葉に耳を傾けるのか、核の本質をどう見るのかという問題です。

    「攻撃原潜発射巡航ミサイル(SLCM)」開発と持ち込み問題──日本の反核運動の課題

    オバマ政権でTLAM/Nが廃棄されたことで、核兵器を搭載する艦船は戦略原潜だけとなりました。上述のブッシュ(父)大統領の措置で水上艦船・攻撃原潜から核兵器が撤去され、続くクリントン政権が水上艦船の非核化を決定しました。最後に残っていたのが攻撃原潜用の核付き巡航ミサイル(SLCM)だったのです。2012年10月のパンテックス工場報告書が、トマホーク用核弾頭W80-0の解体終了と記しています。同年11月10日、橋下徹大阪市長が、広島市での囲み取材で、核廃絶の実現可能性について疑問を呈し、非核三原則の「持ち込ませず」についても無理だと述べました。その根拠は、第7艦隊が核兵器を持っていないはずがないというものです。実際は、米国海軍で核兵器を持っているのは、戦略原潜だけなのです。昨年9月、石破茂元防衛相がテレビ朝日の番組で、米国の核の傘で守ってもらいながら「持たず、つくらず、持ち込ませず、議論もせず」でいいのかと発言して論議を呼びましが、現在は艦船による持ち込み問題は存在しません。しかし、新たにSLCMが開発されれば、日本に寄港する攻撃原潜に核が積まれているかどうかという「持ち込み」問題が再浮上することになります。クリステンセンは上述のBASのNPR特集の記事で、核の持ち込みを許さない国々で「持ち込み」問題があったことに言及し、SLCMの再導入は、このややこしい外交問題をヨーロッパやアジアの主要同盟国で復活させることになると指摘しています。

    SLCMを搭載した攻撃原潜が日本の港に入ろうとしたら大きな反対運動が巻き起こるという明確なメッセージを日本の反核運動が米国議会に送ることができれば、議会におけるSLCM開発の予算化を阻止しようとしている米国の軍縮・平和運動にとって大きな力になるでしょう。

    最後に、持ち込み問題に関連して沖縄に触れた部分について見ておきましょう。秋葉文書自体には、沖縄は登場しませんが、委員会スタッフの議事要約に次のようにあります。

    沖縄かグアムに核貯蔵施設を建設することについて日本はどう見るかとのシュレシンジャー博士からの質問に対し、秋葉公使はこのような提案は説得力があると思うと述べた。

    この部分は、秋葉文書に書かれた委員会スタッフの手書きメモでは、公使が日本で非核三原則の三つ目(持ち込ませない)を修正することを提唱するものもあるが、政治的には現実的でない、だが我々は脅威を感じていると説明した後、シュレシンジャーが沖縄に兵器なしの貯蔵庫というのはどうかと尋ねたとあります。流れからすると、すぐに持ち込むのは別として、ひとまず、核貯蔵庫を作るのはどうかという意味のようです。それに公使がpursuasive(説得力がある/妥当)と答えたようです。これは日本にとって、SLCM問題と並んで具体的で現実的な核問題です。


    追補:手書きメモの沖縄関連部分抜粋訳

    シュレシンジャー:地上核能力に関する日本と[5ヵ国に米核爆弾が配備されている]NATOとの違い。日本はこの政策を調整することに関心はあるか。

    [秋葉]公使:日本の政治体制は非核三原則を変更することには関心がない。しかし、非核三原則の三つ目[持ち込ませない]の修正について議論している者もいる。しかし、政治的には現実的でない。しかし、我々は脅威を感じている。

    シュレシンジャー:沖縄に兵器なしの貯蔵庫?

    [秋葉]公使:説得力があると思う。

    議会委員会スタッフ手書きメモ入りの3ページ下部)


    資料編

    秋葉文書全訳

    核情報粗訳
    ([ ]内は核情報注、[* ]内は委員会スタッフによるメモから)
    「米国の拡大抑止に関する日本の視点」
    (米国戦略態勢議会委員会)
     2009年2月25日

    I. 要約

    • 日本は、米国の拡大抑止を必要としており、必要とし続けるクリントン国務長官の日本訪問の際の2月17日、中曽根外務大臣は長官に日本を防衛するとのコミットメントについて、核抑止のコミットメントも含め、日本に再度保証するよう求めた。これに対し、長官は、大臣にこのようなコミットメントを再保証した。麻生首相のワシントン訪問の際の2月24日、オバマ大統領は首相に対し、日本の防衛と拡大抑止に対する米国のコミットメントを再保証し、米国の核抑止は日米安全保障体制の中核だと述べた)
    • 我々は、米国の抑止能力は (a) 柔軟で、(b) 信頼性があり、(c) 即応性を持ち、(d) [対象を]区別・選別する能力 (e) ステルス性・示威可能性を持ち、(f) 他国に対し、その核能力を拡大・近代化することをあきらめさせるに十分でなければならない、と考える。

    II. 以前のコメント――10月の会合

    1. 日本は核のない世界という究極的な目標を支持する。しかし、現在の日本を取り巻く安全保障環境は、米国の抑止――その核抑止を含む――を必要とする(中曽根外相がクリントン長官に確認したように)。
    2. 日本は、米国の拡大抑止に――それが信頼性を持つ限りにおいて――依存する。[*どういう意味か説明しなかった]
    3. 抑止は、日米の協力によるものである。日本は、抑止の信頼性に貢献する。例えば、BMD、在来線、ISR[情報· 監視 · 偵察]、非軍事オペレーション(諌止及びコストをもたらす外交政策など)
      10月の会合における質問の一つは「具体的に米国のどのような能力が必要だと日本は考えるか」というものだった。
    4. 我々にとって、米国がどのような兵器システムを維持・獲得すべきかを具体的に言うのは難しい。しかし、米国の抑止能力が持つべきいくつかの望ましい特性を――網羅的ではないが――リストアップすることはできる。

    III. 追加的コメント(米国の抑止能力に望まれる特性)

    1. 柔軟な能力
      • 我々は、現在の新トライアド――(ⅰ)攻撃的打撃戦力(ICBM、SLBM、爆撃機、通常精密誘ミサイル)、(ⅱ)弾道ミサイル防衛、それに(ⅲ)状況に対応できるインフラ――が大統領に緊急事態に対処するオプションの柔軟性を提供していると理解している。
      • 米国の抑止能力は、 敵の多様な脅威をリスクにさらすことができるような柔軟性を持つべきである。
      • 「敵の多様な脅威」には次のものが含まれる
        • 地下深くの硬化施設;
        • 可動ターゲット;
        • サイバー攻撃、対衛星攻撃及び;
        • 接近阻止・領域拒否能力[中国の軍事戦略]
      • 「日本はTLAM-Nを依然として必要とするか」との質問に関しては
        • 日本は、この兵器システムの詳細を知る立場にはない
        • しかし、TLAM-Nはオプションの柔軟性を提供すると言われている(低威力であり、海洋発射型(ステルス性)、スタンドオフ型([遠くから発射するので]生き延びる能力を持つ)で、遊弋できる。)
        • 米国がTLAM-Nを撤廃すると決定するのなら、この能力の損失がどのように埋め合わされるのかについて十分に前もって協議して欲しい。
    2. 信頼性のある能力
      • 米国の抑止能力は、潜在的敵国の米国・日本を攻撃しようとの取り組みがそもそも無意味になるほどの信頼性(信ぴょう性)を持つものでなければならない。
      • 我々は、老朽化する核兵器の問題に対処しなければならないことを理解しており、核弾頭の信頼性を維持するための米国の継続的な取り組みに感謝する。
      • 信頼性のある能力は次のようなものを必要とするかもしれない。
        • 信頼性のある核弾頭;
        • 敵による最初の攻撃に耐える残存性
        • 強力な情報 · 監視 · 偵察能力;
        • 強靭で多重性の(複数の)コマンド・アンド・コントロール・ネットワーク。
    3. 即応能力
      • 米国の抑止能力は、非常事態に迅速に対応できなければならない。
    4. [対象を]区別・選別する能力
      • 米国の抑止能力は、意図したターゲットだけを区別・選別する能力を持つべきである。このような攻撃(それが必要な場合)に伴う付随的ダメージを最小限にできるようにするためである。
      • このような特性は、人道主義的観点からだけでなく、米国の抑止力は効果的で信頼性のある者でなければならないという理由からも重要である。米国による攻撃が常に大量の民間人の死傷をともなうとなると、潜在的敵国は、このような攻撃は信頼性(信ぴょう性)がないと考えるかもしれない。
    5. ステルス性・示威可能性
      • 場合によっては米国は、潜在敵国によって察知されることなく、その能力を配備あるいは準備することができるようになるべきである(例えば、当該地域へのSSBNや攻撃原潜の配備)。
      • また別の場合には、米国は、その強い意志を表明するためにその能力を示して見せることができるべきである(例えば、B-2やB-52のグアムへの配備)。
    6. 十分な能力
      • 米国の抑止能力の質と量は、潜在敵国にその核能力の拡大あるいは近代化をあきらめさせるのに十分でなければならない。[*ペリー:この要件はどうしたら満たせるのか]
      • 米国の運用配備戦略核弾頭のいわゆる「ディープ・カット」(大幅削減)に関しては、十分に前もって日本と緊密な協議をすることが非常に重要である。
      • 米国の配備戦略核弾頭の一方的な削減は、日本の安全保障に悪影響をもたらすかもしれない。
      • 米国がロシアとの核削減交渉を行う際には、中国の核増強と近代化について常に念頭に置くべきである。日本と十分に前もって協議して欲しい。
        以上

    原文

    Japan’s Perspective on the U.S.’s Extended Deterrence
    (Congressional Commission on the U.S. Strategic Posture)

    February 25th, 2009

    I. Summary

    • Japan needs, and will continue to need, the U.S.'s extended deterrence. (When Secretary Clinton was in Japan on Feb. 17th, FM Nakasone requested her to reassure Japan of U.S.’s commitment to defend Japan, including its commitment to nuclear deterrence. In response, she did reassure him of such commitments.
      When PM Aso was in Washington on Feb. 24th, President Obama reassured PM of the U.S.’s commitment to the defense of Japan and extended deterrence, and stated its nuclear deterrence as the core of Japan-U.S. security arrangements)
    • We think the U.S.’s deterrence capabilities should be (a) flexible, (b) credible, (c)prompt, (d) discriminating and selective, (e) stealthy/ demonstrate, and (f)sufficient to dissuade other from expanding or modernizing their nuclear capabilities.

    II. Previous Comments at the October Meeting

    1. Japan supports an ultimate goal of a world free of nuclear weapons. But the current security environment surrounding Japan requires U.S.’s deterrence, including its nuclear deterrence (as FM Nakasone confirmed to Secretary Clinton)
    2. Japan relies on the US’s extended deterrence as long as it is credible.
    3. Deterrence is a combined effort between Japan and the U.S. Japan will contribute to the credibility of deterrence: For example, BMD, conventional warfare, ISR, and nonmilitary operations (dissuasion and cost-imposing foreign policy etc.)
    4. At the October meeting, one of the questions was “What specific capabilities in the U.S. does Japan think necessary?”
      • It is difficult for us to specify the weapon systems which the U.S. should maintain or acquire. But we can list, though not exhaustively, several desired characteristics which the U.S. deterrence capabilities should have.

    III. Additional Comments (Desired characteristics of U.S.’s deterrence capabilities)

    1. Flexible Capabilities
      • We understand that the current New Triad- (i) offensive strike forces (ICBMs, SLBMs, bombers and conventional precision guided missiles), (ii) ballistic missile defense, and (iii) responsive infrastructure- gives the President the flexibility of options in responding to contingencies.
      • The U.S.’s deterrence capabilities should be flexible enough to hold a wide variety of adversary threats at risk.
      • “A wide variety of adversary threats” include”
        • deep and hardened underground facilities;
        • moveable targets;
        • cyber attacks, anti-satellite attack and;
        • anti-access/ area denial capabilities
      • As for the question “Does Japan still need the TLAM/N (Tomahawk Land Attack Missile/ Nuclear)?
        • We are not in a position to know details of this weapon system.
        • But it has been said that TLAM-N provides the flexibility of options (namely it is low yield, sea-based (stealthy), stand off (survivable) and can loiter).
        • If the U.S. decides to remove TLAM-N, we would like to consulted well in advance on how the loss of this capability will be offset.
    2. Credible Capabilities
      • The U.S.’s deterrence capabilities should be so credible that potential adversaries’ efforts to attack the U.S. and Japan are pointless in the first place.
      • We understand aging nuclear weapons need to be addressed, and appreciate the US’s continued efforts to maintain the credibility of nuclear warheads.
      • Credible capabilities may require
        • credible nuclear warheads;
        • survivability after adversary’s first attack
        • strong intelligence, surveillance and reconnaissance capabilities;
        • Resilient and redundant (multiple) command & control networks
    3. Prompt Capabilities
      • The U.S.’s deterrence capabilities should be able to respond to contingencies promptly
    4. Discriminating and selective Capabilities
      • The U.S.’s deterrence capabilities should be able to discriminate and select intended targets only so that such attacks are accompanied with minimum collateral damage, if necessary.
      • Such characteristics are important not only from a humanitarian perspective, but also because the U.S.’s deterrence should be effective and credible. If the U.S.’s attacks are always associated with massive civilian causalities, potential adversaries may not believe such attacks are credible.
    5. Stealthy/ demonstrate Capabilities
      • In some cases, the U.S. should be able to deploy or prepare its capabilities without being noticed by potential adversaries. (For example, the deployment of SSBNs and attack submarines in the region.)
      • In other cases, the U.S. should be able to demonstrate its capabilities to express its strong will. (For example, the deployment of B-2s and B-52s to Guam.)
    6. Sufficient Capabilities
      • The quantity and quality of the U.S.’s deterrence capabilities should be sufficient enough for potential adversaries to be dissuaded from expanding or modernizing their own nuclear capabilities.
      • As for the so-called “deep cuts” in the U.S. operationally deployed strategic nuclear warheads, close consultations with Japan well in advance are essential.
      • The US’s possible unilateral reduction of its operationally deployed strategic nuclear warheads may have an adverse effect on Japan’s security.
      • When the U.S. engages in nuclear reduction talks with Russia, China’s nuclear expansion and modernization should always be borne in mind. Japan should be consulted well in advance.

      (End)

    原文(議会委員会スタッフ手書きメモ入り)

    Japan's perspective on extended deterrence

    議事要約(委員会スタッフからモートン・ハルペリン委員に宛てた文書)

    全訳

    TO:モートン・ハルペリン博士

    DATE: 2009年2月27日

    SUBJECT:日本の公使(政務)との話し合い

    水曜日の委員会の全体会合の後、私は残って、日本大使館の新しい秋葉剛男公使(政務)との会合に出席した。秋葉公使は二人の大使館員を伴っていた。そのうちの一人は金井氏だった。出席していた委員はペリー委員長、シュレシンジャー副委員長、キース・ペイン、ジョン・フォスター、ハリー・カートランド。ポール・ヒューズ、ブルース・マクドナルド、ブラッド・ロバーツ、ジョン・ハーベイのアシスタント、ウェイド・ボーズ、それに私も出席した。

    [核情報注:出席していない委員ジョン・グレン、モートン・ハルペリン、リー・ハミルトン、フレッド・アイクル、ブルース・ターター、エレン・ウイリアムズ、ジェイムズ・ウールジー]

    秋葉公使はプレゼンテーションの前に、米国の拡大抑止に関する日本の見解を要約した3ページのメモを配布した(できるだけ早くファックスすることも、次の会合に持っていくこともできる。ご指示のままに)。公使の最初の発言は、このメモの文言に忠実に従ったものだった。

    秋葉公使は、石井公使による10月のステートメントを「撤回」するようなことは何もしなかった。秋葉公使に対する質問は、委員らの元々の見解を追認する意見を引き出そうとする形でなされた。ほとんどの出席者は米国の拡大核抑止に関する日本の見方について、ありうる限り極端な形で描こうとする傾向がある。ペイン博士、シュレシンジャー博士及び・あるいはフォスター博士が、来月の委員会の会合で、議論について次のような形で誇張した説明をするだろうとほとんど保証できる。

    1. 米国の同盟国の中には、米国の拡大抑止の信頼性について深刻な懸念を持つようになった国々がある;
    2. 日本の中には、米国の拡大抑止の信頼性が失われれば、他の安全保障オプションを検討する必要があると考える者がいる;
    3. 日本の中には、米国の核戦力の特定の特徴が拡大抑止にとってとりわけ有益だと考える者がいる。これには、TLAM-Nと低威力地中貫通型核兵器が含まれる。例えば、金井氏は、低威力・地中貫通型核兵器は、拡大核抑止の信頼性を強化するだろうと述べた

    この話し合いの後、キース・ペインはウェイド・ボーズと私に、今聞いたことは「驚くべきこと」だと言った。ペイン博士は、日本人が彼らの懸念についてあれほどはっきりと言うのを聞いたことがないし、彼らはこれらの懸念をこれほど明確かつ率直な形で列挙して書いたものを配布するというのはしたことがないと主張した。

    私が重要と考える話し合いの要点:

    • 日本は明らかに、中国と北朝鮮が突き付けている脅威について心配している。
    • 日本の政府関係者は、米国の配備核の一方的な削減が日本の安全保障に与えるマイナスの影響について神経質になっている。
    • しかし、秋葉公使は米国の配備戦略核の「大幅削減」について反対を表明しなかった──十分に前もって日本との間の協議が行われ、中国の核拡大と近代化が考慮されるのであれば。米国の運用配備核弾頭の数が中国の保有数より何千発も多いという状況からいって、米国は、拡大抑止を危うくすることなく、相当数の削減を実施できるだろう。公使は、米国の中国との話し合いに反対はしなかった。単に、このような交渉の形式や内容について驚かされるようなことは避けたいというだけだ。
    • NATOの「核計画グループ」のような高レベル協議を望むかという点について、秋葉公使は、日本の憲法、それに日本国内の反対からいって、このようなフォーラムは「難しいだろうと述べたが、秋葉公使自身はこれがいいと思うという。米国との協議の形態がどのようなものになるにせよ、秋葉公使及び彼と来た大使館員らは、日本としては米国の核態勢や計画についてもっと情報が欲しいと述べた。
    • 沖縄かグアムに核貯蔵施設を建設することについて日本はどう見るかとのシュレシンジャー博士からの質問に対し、秋葉公使はこのような提案は説得力があると思うと述べた。
    • 米国がTLAM-N及びALCM能力を維持すべきかどうかという質問に対しては、秋葉公使は米国がこれらの能力をなくそうと考えているのなら、この能力の喪失をどのようにして補完するのか十分に前もって協議して欲しいと述べた。残念ながら、出席していた委員らは誰も、どのようなステートメントが、あるいは、これにかわる通常兵器能力があれば、米国の核兵器が削減される、あるいは最終的に廃絶される場合に安心できるのかとは聞かなかった。
    • 委員も同席していたスタッフの誰も、核軍縮と不拡散面での米国のリーダーシップを復活させるというオバマ大統領の約束を日本がどう見ているかについて尋ねなかった。

    要約すると、この話し合は日韓と米国の核態勢、核の傘について詳細な対話のプロセスを始めるべきだというあなたの考えを強化するものだと思う。同時に、私は、信頼性のある拡大抑止の維持、そして、米国の核戦力の大きさ及び重要性の低減という二つの目的が両立し得ないことを示唆するものは何も聞かなかった。

    原文

    TO: Dr. Morton Halperin

    DATE: February 27, 2009

    SUBJECT: Discussion with Japanese political counselor

    Following the full Commission meeting on Wednesday, I stayed to attend the meeting with the Japanese Embassy’s new political counselor, Takeo Akiba. Counselor Akiba was accompanied by two other Embassy officials, one of whom was Mr. Kanai. The Commissioners present were Chairman Perry, Vice-Chair Schlesinger, Keith Payne, Johnny Foster, and Harry Cartland. Paul Hughes, Bruce MacDonald, Brad Roberts, John Harvey’s assistant, Wade Boese, and I also attended. Prior to his presentation, Counselor Akiba circulated a three-page memo summarizing Japan’s perspective on the U.S. extended nuclear deterrent (I can either fax this to you ASAP or bring it with me to our next meeting, your choice). The Counselor’s opening remarks precisely followed the memo text.

    Counselor Akiba did nothing to “walk back” the October statements by Minister Ishii. The questions asked of Counselor Akiba were framed in such a way as to illicit responses that confirmed the previously held views of the Commissioner’s in attendance, most of whom tend to paint Japan’s perspective on the U.S. extended deterrent in the most dire possible light. I can almost guarantee that during next month’s Commission meeting, Dr. Payne, Dr. Schlesinger, and/or Dr. Foster are likely to point to the discussion to overstate the extent to which:

    1. some U.S. allies have become seriously concerned about the credibility of the U.S. extended nuclear deterrent;
    2. some in Japan believe that other security options will have to be examined if the U.S. extended nuclear deterrent loses credibility; and
    3. some in Japan see specific characteristics of U.S. nuclear forces as particularly beneficial for extended deterrence, including TLAM-N and low-yield earth-penetrating weapons. For example, Mr. Kanai stated that low-yield earth-penetrating weapons would strengthen the credibility of extended deterrence.

    Following the discussion, Keith Payne told Wade Boese and me that what we just heard was “mind-blowing”. Dr. Payne claimed that he’s never heard the Japanese be so explicit about their concerns, nor have they ever circulated something in writing that lays out these concerns in such a precise and straightforward manner.

    My key “take-aways” from the discussion were:

    • Japan is clearly worried about the threats posed by China and North Korea.
    • Japanese officials are nervous that unilateral reductions of U.S. operationally deployed nuclear warheads could have an adverse effect on Japanese security.
    • However, Counselor Akiba did not express opposition toward “deep cuts” in U.S. operationally deployed strategic warheads, so long as close consultations with Japan are held well in advance and China’s nuclear expansion and modernization are kept in mind. Given that the size of the U.S. operationally deployed forces is thousands of warheads larger than China’s holdings, the U.S. would likely be able to make substantial reductions without compromising extended deterrence. The Counselor also stressed that he did not oppose U.S. engagement with China, but that Japan merely did not want to be surprised by the form and content of such negotiations.
    • On the issue of whether Japan would like to see a high-level consultations with the U.S. along the lines of NATO’s Nuclear Planning Group, Counselor Akiba noted that Japan’s constitution as well as domestic opposition with Japan might make such a forum difficult, but that he himself favored it. Regardless of the form consultations with the U.S. may take, the Counselor and the Embassy officials that accompanied him stated that Japan wants to be more informed about the U.S. nuclear posture and planning.
    • In response to a question from Dr. Schlesinger on how Japan might view the construction of a nuclear storage site on Okinawa or Guam, Counselor Akiba stated that he found such a proposal persuasive.
    • On the question of whether the U.S. ought to maintain its TLAM-N and ALCM capability, Counselor Akiba stated that if the U.S. were to consider eliminating these capabilities, Japan would like to be consulted well in advance on how the loss of this capability would be offset. Regrettably, none of the Commissioners present pressed the Counselor on what statements or alternative conventional capabilities might reassure Japan as U.S. nuclear weapons are reduced or eventually eliminated.
    • None of the Commissoners or staff members present asked how Japan views President Obama’s promise to renew U.S. leadership on disarmament and nonproliferation.

    In sum, I think the discussion reinforced your view that the U.S. should begin a process of in-depth discussions with Japan and the ROK about the US nuclear posture and the nuclear umbrella for the two countries. At the same time, I heard nothing that would suggest that the twin goals of maintaining a credible extended deterrent and reducing the size and salience of our nuclear forces are incompatible.


    参考リンク集

    トランプ政権「核態勢の見直し(NPR)」関係

    ◎UCSの関連記事

    ◎日本政府の見解

    米国の核兵器

    2010年「核態勢の見直し(NPR)」関連

    核付きトマホーク問題

    オバマ政権末期の先制不使用問題

    オバマ政権下での開発計画

    ◎LRSO

    ◎B61-12

    B61核爆弾欧州配備についての批判

    日米拡大抑止協議

    • 外務大臣会見記録(平成22年2月26日(金曜日)15時00分~ 於:本省会見室)

      【共同通信 井上記者】戦術核の分野に入るものですが、米国が核トマホークの退役を決めたということで、大臣は昨年12月のクリントン米国務長官への書簡で、「トマホークが退役する場合は拡大抑止への影響、及びそれをどう補っていくのか説明してほしい」と仰っていましたが、米国からはこれまでどういった説明が来ているのか、大臣の受け止めにいてお聞きしたいと思います。

      【大臣】私(大臣)が手紙の中で言ったことはそれだけではなくて、「個別の兵器について、やめる、やめないということを日本は言う立場にありません」ということを申し上げました。それがあの手紙の主たる狙いですので、そのことをまず申し上げた上で、トマホークについてのお尋ねですけれども、今、私(大臣)は特にコメントすることはございません。米国が通知をしてきたという報道もありますが、私(大臣)からは、確かに最近日米協議、核拡大抑止に関する日米協議を行ったところでありますけれども、その協議の具体的内容についてはお話をしないという約束のもとで行われておりますので、コメントはございません。

    • 首相「普天間移設とグアム移転、ともに進める」朝日新聞 2012年2月7日9時42分
    • 日米拡大抑止協議 平成25年4月8日

       4月9日から11日まで(米国時間)、日米両国は、米国ワシントン州キトサップ海軍基地内において、日米拡大抑止協議を実施します。日本側からは、秋葉外務省北米局審議官、真部防衛省防衛政策局次長他が、米側からは、フリート筆頭国務次官補代理(核・戦略政策担当)、ズムワルト国務次官補代理(日本・韓国担当)、バン国防次官補代理(核・ミサイル防衛政策担当)他がそれぞれ出席します。

       日米拡大抑止協議は、日米安保・防衛協力の一つとして、いかに日米同盟の抑止力を確保していくかについて率直な意見交換を行うものであり、米国から抑止力の提供を受けている我が国が米国の抑止政策について理解を深め、わが国の安全を確保する上で必要な政策調整を行う場として機能しています。

       なお、日米間では、従来から拡大抑止に関する協議を様々な形で行っていますが、2010年以降、定期的に行っています。

    • 日米が拡大抑止協議 時事通信 2013.11.11
    • 「核の傘」の役割、日米政府が議論 / 日本当局者が核原潜視察 米との抑止力協議で

    追補 秋葉文書・沖縄核貯蔵庫建設問題


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