2006年06月22日
人工衛星発射か軍事ミサイルか
北朝鮮が発射準備をしているのは、人工衛星用ロケットか軍事用ミサイルか。先に紹介した米国の民間団体のウエッブサイトGlobalSecurity.org 掲載のC. P. Vick(旧ソ連のミサイルに詳しい)による解説は、北朝鮮が発射しようとしているテポドン2C/3に搭載される通信衛星の模型が数年前に北朝鮮で展示されていたと述べています。前回の打ち上げと同じく、実施されれば、人工衛星の打ち上げの試みであるとともにミサイルの能力を示すものともなるということでしょうか。
このヴィックの解説は次のように述べています。
数年前、北朝鮮がその科学博物館で最初の人工衛星の模型の展示を催した際、数年後に発射されるとされた通信用人工衛星の模型も展示した。この人工衛星が、今回の初めてのテポドン2C/3発射実験の搭載物となるということだろう。この打ち上げ実験の特性は、おそらく、このブースターが650kgの核弾頭を搭載物として載せて8000〜1万2000km飛べることを示すことになるだろう。搭載重量が250kg程度なら、その能力は1万5000km程度ということになるだろうが、これは後数年間は実現されないだろう。
一方、朝鮮総連の機関紙『朝鮮新報』の朝鮮語のページに6月21日に掲載された記事は次のように述べています。
朝鮮には朝鮮の論理がある。「衛星保有国になることはあまりにも堂々たる自主権の行使だ」ということだ。「自主権の行事」と言うのは他人の干渉を受けないということだ。論理的にいえば、運搬ロケット 「白頭山2号」による人工衛星「光明星2号」の打ち上げはこれからいつでもあり得る。それは一月後かもしれないし、1年後かもしれない。
なお、ヴィックは、イランで1月17日に行われたノドンBの「イラン・北朝鮮共同」実験の成功が当初予定されいたテポドン2とはまったく異なる新たな設計のテポドン2C/3の機能を示すものだと説明しています。
振り返ってみると、これが北朝鮮のいわゆる自主的な実験モラトリアムの真の目的であったようだ。つまり、この改良型設計能力の打ち上げ機(launch vehicle)を開発する時間を稼ぐためであって、それ以外のことをする気はなかったということだ。
参考
- <北朝鮮ミサイル>北太平洋公海へ発射後に「人工衛星」主張しうる 韓国中央日報2006年6月20日
- 政府「北朝鮮ミサイルではなく衛星発射体であるかも」 韓国中央日報 2006年6月20日
- 【社説】世界中が「ミサイル」だと言うのに、「人工衛星」と言い張る韓国政府 韓国朝鮮日報 2006年6月21日
- 北朝鮮からの直接対話の提案、米国は拒否 (YONHAP NEWS)2006年6月22日