2005年12月07日
韓国で高まる六ヶ所再処理工場運転延期要求の声
青森県の六ヶ所再処理工場で実際の使用済み燃料を使ったプルトニウム抽出試験「アクティブ試験」が来年2月に迫っているなか、韓国のNGOの間で、同工場が北東アジアおよび世界全体の核拡散問題に与える影響についての関心が高まっている。
○9月12日には、NGO4団体(緑色連合、参与連帯、平和ネットワーク、平和博物館建立推進委員会、環境運動連合、KYC(韓国青年団体連合会))による「六ヶ所再処理工場稼働計画を直ちに撤回しろ」と題された共同声明が発表された。
○11月8日には、韓国の国会図書館で「朝鮮半島非核化と日本・六ヶ所村の脅威」と題されたセミナーが開かれた。韓国の国会議員グループ「東北アジア研究会」とNGO(緑色連合、参与連帯平和軍縮センター、平和ネットワーク、環境運動連合 )が共催したもので、与党(ヨルリン・ウリ党)のシン・ゲリュン(申渓輪)議員やNGO代表らの他、韓国外交通商部のクウォン・ヘソク氏が出席した。日本からは、川崎哲(ピースボート)、野川温子(グリーンピース・ジャパン)、田窪雅文(核情報)の3人が参加した。
- 韓国インターネット新聞「コリア・フォーカス」の記事
原子力賛成派も、原子力反対派も、こぞって日本再処理を阻止すべきだ
核専門家田窪「2011年から年間1千個の原爆を製造可能な分量のプルトニウムを生産」
パク・ドクチン記者 2005-11-08 午後 9:52:13
「環境問題とエネルギー問題二つとも重要です. しかし再処理を許容するかどうかと言うのはこれらとは全然別個の問題です。原発賛成反対を論ずる時間が私たちにはありません。原発反対論者でも原発賛成論者でも再処理問題にはすぐ跳びこんで阻まなければなりません。」
日本が非核3原則を破って六ヶ所村で核廃棄物再処理の動きを見せており、これに精力的に対応しなければならないという主張がなされた。これに関し、日本人核専門家である田窪氏は論議が原子力の危険性とエネルギー問題の方に向けられてしまってはならないと注意を促して上のように語った。
彼は特に「原子力開発論者たちこそ直ちに再処理を阻止しなければならない」と述べた。プルトニウムの抽出は経済性を無視したものであり今後の原子力発電を安定的にするためにも再処理を中断させなければならないというのだ.
国会東北アジア研究会、緑色連合、参与連帯平和軍縮センターなどは、8日午後、「韓半島非核化と日本六ヶ所村の脅威」というテーマでセミナーを開いて日本の核武装脅威に対して警告した。この席には日本の核問題研究者の田窪雅文とピースボート共同代表の川崎哲、グリーンピース核問題担当の野川温子など日本人も参加した
韓半島核危機はプルトニウム 11kg、日本は年間 8tプルトニウム生産
日本はその最大の島、本州北端に位置する青森県六ヶ所村再処理工場でプルトニウム生産試験稼動を実施する計画だ。これは劣化ウランを使ったこれまでの試験とは異なり、原子力発電所から出た実際「使用済み核燃料」を再処理してプルトニウムを抽出するものだ。プルトニウム抽出は、核兵器と直結しうる。
日本は 2007年 5月まで400tの使用の後核燃料を再処理して4tのプルトニウムを生産する計画で、2011年からは年間800tを処理して8tのプルトニウムを生産する。広島と長崎に落ちた原爆を年間1千個ずつ作ることができる分量だ.
初提案を引き受けた田窪氏は「1990年代初まで北朝鮮が使用済み核燃料で抽出したプルトニウムは、11kg 未満と推算されたが、これは、核爆弾 1個にプルトニウム 5kgが必要だとして、1〜2個の核爆弾を作ることができる量と考えられた」「北朝鮮と比べると六ヶ所村の4t、8tというプルトニウム抽出量がどの位か実感できる」と述べた。
彼は引き続き六ヶ所村問題で気を付けなければならない点三種類を指摘した. ▲六ヶ所再処理工場稼動に反対することと原子力発電所に反対することは完全に別個の問題だということ▲再処理は使用済み核燃料処理問題を解決することができないという点 ▲日本のプルトニウム政策が核拡散問題に及ぶ影響を論ずることは日本の核武装計画の有無とは関係がないというのだ.
韓国は日本向かって反核を叫べ
田窪氏は、「北東アジアで六ヶ所プルトニウム分離開始は特別な意味を持つ」と「6者会談と韓半島非核化宣言に日本の核再処理が影響を及ぼす可能性がある」と述べた。東アジア地域で、特に韓国と北朝鮮で『どうして日本にだけ再処理が認められるのか』という不満が出ることは明白だというのだ。
また日本のプルトニウム政策の裏に核武装意図があるのてはないかという疑惑が出ることは自明だ. 田窪氏は、それが「南北朝鮮や中国、台湾など周辺国家の核政策に影響を及ぼす可能性がある」と延べ、「ウォルストリート・ジャーナル」紙(6月17日付け)の「アジア全体で反核感情衰退」というタイトルの記事を紹介した。*http://kakujoho.net/blog/archives/000014.html#more
田窪氏は「六ヶ所村再処理工場稼動は『第2の核時代-大規模核拡散時代』を開く恐れがある」とし、「韓日平和運動の連帯で阻止しなければならない」と強調した。
- 韓国インターネット新聞「オーマイ・ニュース」の記事
オーマイ・ニュース
2005.11.10日本、第2 核時代の開幕か
六ヶ所核再処理工場稼動反対韓日国際会議
兵頭圭児記者
原文日本青森県六ヶ所村で来年初めから稼動が予定されている核再処理工場がもたらす環境への脅威及び韓半島の核脅威に関して論議する韓日国際会議が8日開かれた。
この会議は国会東北アジア研究会のと、緑色連合、参与連帯平和軍縮センター、平和ネットワーク、環境運動連合の4つの市民団体が共同主催した。
六ヶ所村核再処理工場が稼動されれば大量の放射能が放出されるだろうとの指摘が何回もされた。
この日の会議で グリーンピース・ジャパンの核問題担当である野川温子氏は同団体が調査した資料を発表した。資料によると六ヶ所村核再処理工場は普通の原子力発電所が 1年に放出する量の放射能を一日に放出する。使用済み核燃料に入っているクリプトン85が減少されるように処理されないまますべて大気中に放出される。クリプトン85は皮膚癌を起こす放射性物質だ。
クリプトン85を減少させる技術がすでに開発されているが日本政府はこれを取り入れないと発表した。すなわち、放射能を大気中にそのまま放出することに決めたのだ。六ヶ所再処理工場から排出される放射性ガスは1年ほどで北半球の大気を汚染させると言う。
現在民需用再処理工場を持つ国はイギリス、フランス、ロシア、インドの 4ヶ国だ。六ヶ所村再処理工場が稼動されれば世界でも最大級の放射能放出施設が東アジアに初めて誕生することになる。この再処理工場が日本だけでなく東アジア環境に与える影響は数え切れない。また再処理工場は、多くの化学物質を扱っており、絶えず引火及び爆発の危険性を持っている。
今年 5月に最新鋭を誇るイギリスのソープ(Thorp) 再処理工場で漏出事故が発生して現在稼動を中止している。このような施設で事故が起こっていることにもかかわらず日本政府が核再処理工場を稼動しようするのはなぜか。
プルトニウム利用という古い発想に固執する日本政府
再処理工場と言うのは、原子炉で残った使用済み燃料をとかして、プルトニウムと、残ったウランを分離・抽出することだ。一般的な原子炉が低濃縮ウランを燃料にしているのに比べて、再処理で抽出したプルトニウムを燃料にするのが高速増埴炉と言う特殊な原子だ。
高速増埴炉の発想は 1960年代に出た。当時はウランの埋蔵量が足りないと見られており、使用済み燃料を再処理して抽出したプルトニウムを燃料にすることでウランの枯渇を避けることができると考えられた。このため、アメリカとヨーロッパ各国はプルトニウムの原子力発電利用計画に着手した.
しかし当初予想よりウラン埋蔵量が多いことが明らかになった。その結果、元々予想したウラン価格の上昇はなかったし、プルトニウム利用はウランに比べて極めて経済效率が悪いことになった.
それだけでなく放射線が強いプルトニウムを扱うことは危険性が高く、費用もかかるため、各国はプルトニウム利用、すなわち再処理工場建設・稼動を中止しているのが現状だ。
日本では 1995年 12月稼動されてからまもない高速増殖炉 「もんじゅ」がナトリウム漏出事故を起こして稼動が止められた。現在、世界で稼動中の高速増埴炉は一つもない。プルトニウム利用という発想はあまりにも危険で費用も高くつく過去の産物だ。
日本政府はなぜプルトニウム利用に固執するのか?
日本の原子力発電政策とその問題点に関して長い間取材をして来た日本のフリーランサー記者田窪雅文氏によれば日本政府は 「もんじゅ」事故 2年後の 1997年にプルトニウムとウランを混合した混合酸化物(MOX) 燃料を普通原子炉で利用する具体的計画を発表した.
六ヶ所村施設で製造されるこの MOX 燃料を日本各地にある普通原子炉で使うことで蓄積したプルトニウムを消費しようとする計画だった。しかしこの計画も一般的なウラン燃料に比べてずっと経済的費用がかかると世界の核専門家たちが指摘している.
またこの MOX 燃料導入計画はプルトニウムを日本内で恒常的に輸送する体制を作り上げることを意味する。国際原子力機関(IAEA)(IAEA)によれば, プルトニウム 8 kgなら長崎に投下されたような威力原爆を作ることができる.
再処理工場ではプルトニウムを 2007年 5月までに4トン、2011年からは年間 8トンを生産する計画だ。MOX燃料はプルトニウムをウランと混合したものだが、それからプルトニウムをまた抽出することは易しい。
したがって MOX 燃料は輸送途中にテロ組職の標的になるとか核兵器製造用に流出される可能性も否定することができない。田窪氏は 「日本中で事故の起こる可能性が高いのみならず国際的にも核拡散が憂慮される」と指摘した。
国際社会の核非拡散の流れにさからって行く日本
現在日本が核再処理工場を稼動すれば、国際社会からの反発は不可避で, 核非拡散体制に深い亀裂をもたらす可能性がある。
川崎哲さん(ピースボート共同代表)は 「エルバラダイ国際原子力機関(IAEA) 事務局長が今年 5月に開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議で核再処理工場建設を 5年間凍結することを検討するように主張したし、コフィー・アナン国連事務総長も NPT会議で、核再処理施設建設を各国があきらめなければならないと指摘した」、「日本が核再処理工場を稼動することは国際的核非拡散潮流にさからって行くことだ」と批判した.
韓国と北朝鮮は 1992年に署名した 「韓半島非核化に関する共同宣言」で核再処理工場とウラン濃縮施設を持たないという約束をした。これら二つの施設は軍事用核兵器製造に必須でこの二つがあれば核兵器完成は時間の問題だから国際社会は敏感に応じるしかない.
日本が核再処理工場を稼動するということはたとえ核兵器製造の意図がないと言っても近隣諸国緊張を起こす。「日本が作ったら我が国も」というふうに東アジアだけでなく世界で核規制を解く動きが生じる可能性がある。
非核国家と言いながらも 「その気になれば 2、3ヶ月で核兵器を作ることができる」と指摘されるほどの設備と技術を取り揃えた日本は現在非核国家の中でも極めて突出した存在だ.
来年初に予定される稼動計画を撤回するように今回の会議に参加した団体を初めとする日本市民団体が要求して来たが、日本政府及び世論がまだ大きく動いていない.
この問題は韓国を含めた周辺国も見逃すことはできない.
無謀で安全面でもリスクが大きい六ヶ所村核再処理工場稼動計画は、世界の非核化に障害をもたらし、また、東アジア地域の安全保障にも障害をもたらすだろう。韓国側団体でも韓国政府が積極的に日本に反対意思を伝えて IAEAにも稼動を中止するように要求するのが必要だという意見も出た.
また川崎氏は東北アジア次元で核兵器用になる高濃縮ウランとプルトニウムの生産を禁止するだけでなく、原子力発電用になる低濃縮ウラン燃料及び核廃棄物処理問題において地域多国間協議・協力を実施することを提案した。彼は「このためには 1992年に濃縮・再処理放棄を宣言した韓国の役目が大きい」と語った。
○11月18−19日には、東京で開かれた「止めよう再処理!国際連帯集会」および「止めよう再処理!集会・デモ」に、参与連帯のホン・ソンデ(洪性太)尚志大学教授が参加した。
投稿者 kano : 2005年12月07日 14:56