2007年09月19日

ノーベル平和賞受賞の医師グループ、米印原子力協力協定に反対

南アジアの核軍拡競争を悪化させると警鐘

1985年ノーベル平和賞を受賞した「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)」と、その米印両国支部は、2007年8月17日、米印原子力協力協定 は「インドの核分裂性物質の生産能力を相当に拡大することにより、南アジア における現在の核軍拡競争をさらに悪化させることになる」と警告し、日本を含む「原子力供給国グループ(NSG)の加盟国に対し、この協定をNSGの目的に反するものとして拒否するよう呼びかける」声明を発表しています

2007年8月17日

米印原子力協定:世界の安全保障とエネルギー安全保障にとってまずい合意

「平和と開発のためのインドの医師(IDPD)」と「社会的責任を考える医師(PSR)」──それぞれ、「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)」のインド及び米国支部──は、米国のジョージ・W・ブッシュ大統領とインドのマンモハン・シン首相が締結した合意について重大な懸念を抱いている。この合意は、インドがその民生用原子炉を国際的な査察措置下に置くのと引き替えに、米国の1978年核不拡散法によるインドへの核燃料及び民生用核技術の輸出禁止措置を実質的に撤回するものであり、1968年核不拡散条約による核拡散防波堤を侵食するものである。この合意の下で、インドは、その核兵器計画を維持し続け、その原子炉の3分の1を、国際的査察を受けない軍事的支配下に置くことになる。これらの原子炉の中には、核兵器用の燃料を作ることのできる2基の「高速増殖炉」も含まれる。合意はまた、インドに対し、将来高速増殖炉を建設してそれらを国際的査察の外に置くことも許している。

−核兵器の使用、実験、製造、輸送、貯蔵は、ヒトの生命と健康に対する深刻な脅威である。

−核兵器の拡散は、世界の安全保障にとって深刻な脅威である。

−私たちのグループは、核戦争の防止と核兵器の廃絶を支持している。

−米国とインドの間の「米国原子力法セクション123」合意は、核物質・技術の平和的協力と管理・保安措置のための──不十分とはいえ一般的となっている──国際的な法的スタンダードをさらに弱体化する。

−米印原子力協力協定は、核拡散に対する世界的な規範を弱める。協定の下で提供されるインドに対する特別な免除措置は、核不拡散体制の差別的な性格をさらに悪化させ、NPT第6条で規定されている核廃絶に向けて誠実に交渉するとの米国の義務の達成に向けた進展を妨げる。協定は、現在の不安定な核不拡散体制をさらに弱体化させることにより、他の国々に対しても核兵器を取得するよう奨励し、世界的核軍縮の可能性に深刻な打撃を与える。協定はまた、インドの核分裂性物質の生産能力を相当に拡大することにより、南アジアにおける現在の核軍拡競争をさらに悪化させることになる。

−この協定の結果としてインドにおける原子力計画が劇的に伸びれば、それは、風力、太陽その他の環境に優しい再生可能エネルギー源開発のための投資を窒息させてしまい、長期的なエネルギー安全保障の展望に深刻な影響を与えるだろう。平和と軍縮のために活動している職業的医師の団体として、私たちは、発電のための原子力の利用について警告することが私たちの義務だと考える。原子力の利用は、安全でも経済的でもなく、人々の健康に対する膨大な危険に満ちている。これらの危険は、数週間前に日本の柏崎・刈羽原子力発電所が地震による損傷のために運転中止になったことによって再度明らかになった。さらに、7月に『ガン治療ヨーロピアン・ジャーナル』(2007年16号355-363ページ)で発表された研究は、カナダ、フランス、ドイツ、英国、日本、スペイン、及び米国の原子力施設周辺の子供達の間で白血病の発症率が最高24%上昇していると結論づけている。

従って、「平和と開発のためのインドの医師(IDPD)」と「社会的責任を考える医師(PSR)」、さらに核廃絶に取り組んでいる各国の医療関連協会の連合組織であるIPPNNW全体は、

  • 1)インド議会及び米国議会に対し、国際的平和及び安全保障にとって危険なこの合意を拒否することを呼びかける。
  • 2)原子力供給国グループ(NSG)の加盟国に対し、この協定をNSGの目的に反するものとして拒否するよう呼びかける。
  • 3)国連安全保障理事会に対し、NSGのガイドラインと、核拡散防止と核軍縮推進のための国際的な法的規則の改善との支持に取り組むよう呼びかける。

グンナール・ウエストベリIPPNW共同会長
イメ・ジョンIPPNW共同会長
キャサリン・トマソンPSR会長
L・S・チャウラIDPD会長

投稿者 kano : 2007年09月19日 16:16