2008年02月09日

米国家情報長官、「北朝鮮の核は抑止・強制外交のため」

J・マイケル・マコネル米国家情報長官は、2月5日、上院情報特別委員会に提出した年次脅威評価報告書のなかで、北朝鮮は、「その能力を、戦闘のためというよりは、抑止と強制的外交のためのものとみなしており、特定の限られた状況でのみ核兵器の使用を考えるだろう」と述べました。以下、『上院情報特別委員会のための国家情報長官年次脅威評価』 (pdf)北朝鮮関連部分および、公聴会での実際の発言を訳出して載せました(粗訳)。

北朝鮮の核兵器及びミサイル・プログラムは、多くの強大国の紛争を経験し、世界最大の経済の幾つかを有する地域を不安定化する恐れがある。北朝鮮は、すでに、弾道ミサイルを中東の数カ国、そしてイランに売り渡している。われわれは、北朝鮮が核兵器を拡散させる可能性があることを今も懸念している。

北朝鮮の軍隊は、韓国に勝つことは出来ないが、韓国に何十万もの死傷者と深刻な被害をもたらすことは出来る。数百のスカッド・ミサイル及びノドンミサイル——2006年7月に飛翔実験されたもの——を始めとするミサイル運搬システムは、韓国への脅威を追加するものであり、その脅威は日本にも及ぶ——これは両国の米軍基地をも含む。北朝鮮の2006年10月の核実験は、同国が核兵器を製造したとの我々の以前の評価を裏付けるものである。この実験は、1キロトン以下の威力しか生み出さなかった。これはほとんどの国の最初の核実験の威力よりずっと小さなものである。実験の前、北朝鮮は、少なくも半ダースの核兵器分に相当するプルトニウムを作っていた。IC(インテリジェンス・コミュニティー)は、北朝鮮は少なくとも過去にはウラン濃縮能力を追求したことがあるとの評価を変えておらず、この努力は継続されていると、少なくとも中程度の確信をもって、判断している。

ピョンヤンは、恐らく、その能力を、戦闘のためというよりは、抑止と強制的外交のためのものとみなしており、特定の限られた状況でのみ核兵器の使用を考えるだろう。我々はまた、ピョンヤンは、その体制が軍事的敗北の危機に瀕しており、回復不能な統制の喪失の恐れがあるとみなさない限り、米軍や米国領土に対して核兵器を使おうとはしないだろうと評価する。

我々は、2006年7月に飛翔実験に失敗した北朝鮮のテポドン2は、米国本土まで核兵器規模の搭載物を運搬する潜在的能力を持っているだろうと評価する。しかし、実験が成功していない状態では、運搬に成功する可能性は低いと我々は評価する。

北朝鮮と六ヶ国協議

北朝鮮は、ミサイル実験を行い、そして2006年にその最初の核爆発実験を行った。昨年交渉の席に戻って以来、ピョンヤンは、完全な非核化についての2005年9月の約束を原則的に再確認し、ヨンビョンの核施設の運転を停止し、これらの施設の無能力化のプロセスを開始している。しかし、北朝鮮は、昨年10月に合意されたその核計画の完全な申告の12月31日の締め切りを逃した。体制は安定しているようであるが、経済的窮乏や自然災害——例えば昨年8月の深刻な洪水——それに後継者に関する仕組みの不確実性などが、予測不能の結果を伴う国内不安の可能性を生み出す。

公聴会での実際の発言 (アメリカンセンター提供の議事録より)

ミサイル実験と2006年の核爆発実験の後、北朝鮮は、昨年、交渉の席に戻りました。

ピョンヤンは、完全な非核化についての[2005年]9月の約束を再確認しました。彼らは、ヨンビョンの核施設の運転を停止し、現在これらの施設を無能力化する過程にあります。ピョンヤンは、ウラン濃縮のプログラムを否定し、また、拡散活動を否定しいますが、我々は、北朝鮮は、これら両方の活動を行い続けていると考えます。我々は、金正日が、六ヶ国協議で約束した通り、完全な非核化にコミットしているかどうか確信が持てないままでいます。

投稿者 kano : 2008年02月09日 10:52