2007年06月28日
パキスタン、3基目のプルトニウム生産炉建設中:米国の研究所、米印原子力協力に警鐘
米国の「科学・国際安全保障研究所(ISIS)」が、パキスタンの3基目のプルトニウム生産炉の建設の様子を示す衛星写真を発表しました。
ISISは2007年1月の報告書で、パキスタン中部パンジャブ州チャシュマで再処理工場が建設されている可能性が高いと説明していました。また、2006年7月には、チャシュマの東80kmにあるフシャブ(クシャブ)でプルトニウム生産炉1号炉(重水炉)よりも大きな2号炉が建設中だとする報告書を発表していました。
今回の報告書 (pdf)は、この2号炉の北に数百メートルの位置に、そのレプリカと見られる3号炉が建設中だと説明しています。報告書は、2007年6月3日の写真が示す3号炉の建設は、ほとんどが過去10ヶ月で進んでいると述べ、米印原子力協力に見られる米国の近視眼的政策は、急速に進む南アジアの核軍拡競争を助長すると警鐘を鳴らしています。
報告書は、濃縮ウランを使った核兵器を持つパキスタンは、次のような核兵器の改良のためプルトニウムが必要と判断したのではないかと論じています。
- 現在開発中の巡航ミサイル用の小型核
- 現在より威力の大きな核分裂型核兵器(50−100kt)
- 実用水爆
2006年7月の報告書は、2号炉の能力を次のように推定しています(2号炉は写真で見られるとおりまだ建設中)。
炉型 | 重水減速 |
重水必要量 | 100−150トン |
原子炉容器直径 | 5メートル |
熱出力 | 1000メガワット |
プルトニウム生産能力 | 200kg/年(フル出力で年間220日と想定) 核兵器40−50発分/年(4−5kg/発として計算) |
報告書は、次のように結んでいます。
投稿者 kano : 2007年06月28日 12:37クシャブとチャシュマにおける最近の活動は、インドとパキスタンの間の核軍拡競争の加速の兆候として見なければならない。・・・米印原子力合意案に関する最近の両国の論争は、インドが、既に大量にあるプルトニウムのストックをさらに増やすことのできる大規模な兵器用プルトニウム生産能力を維持したがっていることを浮かび上がらせる格好となった。
パキスタンとインドは共に、今まさに、核爆発用物質と核兵器−−威力の大きなものも含め−−の製造能力を大幅に拡大しようとしている。核兵器用のプルトニウム及び高濃縮ウランの製造の検証可能な全面的停止の交渉による合意は、核分裂性物質のストックの増大がもたらす危険について懸念している全ての国にとって、とりわけ、過剰の危険な核兵器を持った国々にとって、優先課題でなければならない。しかし、ブッシュ政権は、前例のない形の米印原子力協力協定の締結と、パキスタンとアフガニスタンでの対テロ戦争の維持を追求する中で、印パ両国の核兵器のリスクを過小評価し続けている。核不拡散政策に対するこのような近視眼的アプローチは、深刻な影響を伴う。中でも重要なのは、インド亜大陸におけるプルトニウム及び高濃縮ウランのストックの危険な増大である。