2009年12月03日

米「核態勢の見直し」議会提出2月1日に延期

米国のNGOや米政権内部からの情報によると、議会に12月末までに提出されることになっていた「核態勢の見直し(NPR)」の期限が2月1日に延期されたとのことです。予算及び「4年ごとの国防計画見直し(QDR)」と合わせて提出というのが現時点での計画です。これは、核兵器の役割を核攻撃の抑止に限定することに反対し、核付きトマホークの延命などを求めてきたこれまでの政権の方針は新政権や日本国民の考え方ではないとの声を米国に届ける時間が少し長くなったことを意味します。

現在締め切りとされているのが、2月1日ですが、提出がさらに遅れる可能性もあるとのことです。提出の後、議会での議論が始まり、それを見ながらオバマ大統領は「核態勢の見直し」の結論を米国の実際の核政策にどう反映させるか(無視するか)について決定を下すことになります。

作業が遅れているのは、政権内部で意見の対立があるためです。「核態勢の見直し」は、基本的にペンタゴンが案を出し、それを省庁間会議で継続的に議論する形式ですが、その会議で、「核態勢の見直し」をオバマ大統領のプラハ演説に沿った内容にしようと頑張っている勢力がいるということです。

残念ながらペンタゴンの「核態勢の見直し」草案を突き返したオバマ大統領でお伝えした英国ガーディアン紙(9月20日)の「オバマは、ペンタゴンによる核態勢の見直しの最初の草案を臆病すぎると拒絶し、核兵器を最終的に廃絶するという彼の目標に沿ったもっと大幅な変更の様々なオプションを出すように要求した」という記事の内容には誇張があるとのことで、状況は極めて厳しいようです。

ここで重要なのが日本政府の態度です。

共同通信の11月23日付けの記事「小型核の保有促す 日本の対米工作判明」は次のように述べています。

日本政府が9月の政権交代前に「核の傘」の堅持を狙い、米国の中期的な核戦略検討のために米議会が設置した「戦略態勢委員会」に行っていた対米工作の全容が23日、分かった。現在米国が持たない地中貫通型の小型核の保有が望ましいと指摘し、短距離核ミサイルの退役も事前に日本と協議するよう求めていた。複数の委員会関係者が明らかにした。

この記事で触れられている「米科学者連合(FAS)」のハンス・クリステンセンは、『世界』12月号の記事で次のように述べています。

日本政府は、公式には、核廃絶を提唱し、「冷戦思考に終止符を打ち・・・我が国の安全保障政策における核兵器の役割を低減する」とのオバマ大統領の約束を支持しているが、日本政府関係者は、秘密裏に米国政府に対し冷戦時代の核能力を維持するよう要請している。米国の情報によると、日本政府関係者が、米国議会戦略態勢委員会に対し、太平洋における米国の核能力について次のような「欲しいものリスト」を入れたペーパーを提示したとのことである。

  •  信頼性 近代化された核弾頭を含め、信頼性を持つ戦力
  •  柔軟性 様々なターゲットをリスクに曝す能力
  •  対応性 非常事態に迅速に対応する能力
  •  ステルス性 戦略原潜及び攻撃原潜の配備 
  •  可視性 B2/B52のグアムへの配備
  •  十分性 潜在的敵国を思いとどまらせる

 この「欲しいものリスト」は、冷戦型核能力の範囲全体に及ぶものであり、核戦力を警戒態勢に置き、核弾頭を近代化すること、さらには、低威力の核兵器の使用の可能性をも提唱しているように見える。

このような日本の働きかけを無視すると日本は核武装してしまうとの見方が米国にはあり、これが核政策の現状維持派に利用されています。

2013年に退役予定の核付きトマホークを日本用に延命しなくても、また、核兵器の唯一の役割は核攻撃の抑止にあると宣言しても、日本は核武装などしないと現政権が明言する必要があります。同時に、日本の各種の団体の他、現政権、旧政権の関係者などが、オバマ大統領の大胆な動きを支持するとの声を様々な形で米政府・議会に届けることが重要です。

投稿者 kano : 2009年12月03日 16:19